新卒者の就職難打開、芸術文化への支援拡大、文科相に要請
16日、国会内で川端達夫・文部科学相に、「新卒者の就職難打開、とりわけ就職活動のルールづくり」と「芸術・文化への公的助成の抜本的拡充・改善」を申し入れました。(写真左、宮本たけし衆議院議員・文部科学委員とご一緒に行いました)
前者は、日本共産党が4月に発表した政策「新卒者の就職難打開へーー社会への第一歩を応援する政治に」に基づいて、行ったものです。
後者は、5月26日に行われた日本共産党議員団と芸術。文化団体との懇談を受けて、練り上げたものです。芸術助成の中心である重点支援事業を3年で2分の1に削減する文科省の計画を撤回し、さらに拡充することをはじめ、芸術・文化の発展につながるよう助成のあり方を改善することなどを求めました。
<続きを読む>に、要請文全文を掲載します。
芸術・文化への公的助成の抜本的拡充・改善の申し入れ
2010年6月2日
日本共産党国会議員団
人びとに生きる力を与える芸術・文化の役割はいよいよ重要になっている。しかし、経済危機で国民が文化に親しむ機会が奪われ、芸術団体の運営は厳しくなっている。文化を自由に創造し享受することは国民の権利であり、文化は人類の進歩の源泉である。文化の発展において重要な役割を果たしているのが芸術家であり、芸術・文化団体の活動は、芸術を生み出し、観客を組織し、芸術家を育てる原動力となっている。その活動を支える公的助成を抜本的に拡充し、改善させることこそが芸術・文化の発展の道である。
政府は「事業仕分け」で、短期的な効率や成果を求め、芸術・文化の「予算縮減」という判定を下した。これには多くの文化人、国民が反対の声をあげた。ところが、文部科学省はこうした声に背を向け、現在の芸術助成の中心である重点支援事業を「3年で1/2に縮減する」計画を打ち出し、今年度予算から削減を始めている。
日本共産党は、この問題を重視し、質問主意書を提出した。また、5月26日、幅広い芸術・文化団体のみなさんと懇談し、要望を聞いた。そこでも、公的助成拡充と改善の強い願いが出された。そこで、政府として以下の対応をとるよう求める。
1、文化の公的助成縮減計画を撤回し、拡充することを求める
①政府は、公的助成を「事業仕分け」の「評価結果をふまえて縮減を行った」としている。他方、政府は「短期的な経済的効率性を一律に求めるのではなく、長期的かつ継続的な視点にたって展開する必要がある」とのべている。「事業仕分け」は、文化の公的助成に対して「効果説明が不足」などとして短期的な成果を求めたが、これは「長期的かつ継続的な視点」とは相いれない。今後、短期的な効率主義で文化への助成縮減するようなことがないよう求める。
②文部科学省は重点支援事業を「3年で1/2まで縮減する」計画を発表した。政府は、計画が今年度予算編成時の「文部科学省の考え方」であって、来年度以降は「その時々の情勢を踏まえて要求を行う」としたが、芸術・文化をとりまく情勢は公的助成の拡充こそ求めている。計画を撤回し、公的助成を抜本的に拡充するよう求める。
③日本の文化予算は、ヨーロッパや韓国に比べて著しく少ない。とくに芸術文化振興費は年間400億円にも達しない。これを倍増するにも400億円の増加ですむ。重点支援事業助成額を最高時にもどすには33億円で足りる。米軍再編経費や「思いやり予算」の一部を削るだけで実現できるものであり、抜本的拡充をはかるよう求める。
2、芸術団体の基盤を強くし、芸術・文化の発展につながるよう助成のあり方の改善を求める
①現在の助成方式は、芸術団体に無理な自己負担を強いる「赤字補てん方式」になっている。文化審議会でも「支援制度の抜本的見直し」が求められており、芸術団体への持続的な支援方式へ転換すべきである。自己負担金枠を撤廃し、分野の特性に応じた支援や年間活動を通じた助成へ改善を求める。
②わが党は、これまでも助成金の一部「前払い」制度の実施を求めてきたが、政府は条件付で可能としていると表明した。条件を緩和し本格的に「前払い」を実施することを求める。
③劇場・音楽堂や映画館は、創造と鑑賞の両面から、芸術の発展になくてはならない場所である。ところが、旧政権時代に指定管理者制度が導入され、予算が削減されている。ここでも予算縮減から拡充への転換が求められている。運営への芸術家と市民の参画を促し、舞台技術者など専門家の身分を保障するよう支援をつよめること、また、民間劇場・音楽堂や映画館への固定資産税の軽減を図るなど積極的支援をおこなうことを求める。
3、専門家の地位向上のために具体的な施策を講じるよう求める
日本の文化の発展のうえで人材養成は急務であるが、大きな障害になっているのが専門家の置かれた劣悪な状態である。芸術団体の調査でも、実演家の収入は5年前よりも悪化し、年収300万円未満が5割以上となっている。芸術・文化を志しても生業として続けていくことが困難な現状を打開することが必要である。
芸術家は、一般勤労者に比べて低収入であるうえに、社会保障がほとんどない。ユネスコの「芸術家の地位向上勧告」(1980年)やILOの「実演家の雇用労働条件に関する三者構成会議」(1992年)は、芸術家の地位向上をはかることを求め、「社会の規範に則した適切な生活水準に到達できる」ような収入の向上や、社会保障制度の規定が実演家を不利に扱っていないかを検討し、そのような規定を実演家の実情に適合させることを求めている。日本ではまともに専門家の地位向上がはかられず、実演家・スタッフは、仕事のうえでの怪我であっても労災認定もごくわずかである。専門家の地位向上を理念で掲げるだけでなく、一般勤労者並みに改善することを目標に施策を実施することが必要である。
①実演家の低収入を改善するために、芸術活動の場や雇用の機会を増やすことが必要であり、この点でも公的助成の拡充が重要である。映像スタッフやアニメーターが仕事をしている制作会社の多くは中小企業であり、テレビ局などから仕事を受託するさい低い制作費を押し付けられたり、途中で制作費を削られたりしている。テレビ局などと中小企業との公正な取引を保障するルールをつくり、映像スタッフやアニメーターが安心して働ける制作費を確保させるよう求める。
②多くの実演家・スタッフは、労働者と同じように一定期間拘束されて働いており、諸外国では労災など労働者と同様の保護が受けられるよう制度を改善してきた。日本では実演家の労働者性を認めてこなかったため、多くの実演家が社会保険は何もないに等しいのが実態である。労働者性の認定を積極的にすすめ、社会保障を実現していくこと。映像スタッフの雇用保険加入を求める。芸術団体の努力で社会保険を実施しているところでも、その負担が困難になっており、社会保険料を猶予・軽減するような制度をつくることを求める。
文部科学大臣 川端達夫殿
新卒者の就職難打開、とりわけ就職活動のルールづくりに関わる要請書
2010年6月2日
日本共産党中央委員会
貴職の日ごろの活動に敬意を表します。
日本共産党は去る4月21日、「新卒者の就職難打開へ―社会への第一歩を応援する政治に」と題する政策を発表しました(※全文を添付します)。
学び、卒業して、社会人としての第一歩が失業者というのは、特別に深刻な事態です。“就職氷河期”が繰り返されることは、企業や産業、日本の経済と社会の全体にとっても大きな打撃です。
就職活動の早期化、長期化は学生の大きな負担となり、大学教育にも支障をきたしています。多くの大学・教育関係者から、就職活動の開始時期を定めるなどのルールを求める声が上がっています。
日本共産党は、深刻な実態の打開に向け、上記政策の実現を目指す立場から、以下の諸点につき、貴職において取り組みを強化されることを要請します。
- 学業と両立でき、学生の負担を軽減する就職活動のルールをつくる
会社説明会やエントリーシートの受付、面接の開始日などで社会的なルールを確立することを求めます。違反企業には企業名の公表などのペナルティを科すことが必要です。経営者団体、大学当局、学生・教職員代表など関係者で構成する機関を設置し、運用状況を監視することを求めます。
卒業後、少なくとも3年間は「新卒扱い」として就職あっせんの対象とし、就職活動でも差別しないよう、政府が企業や大学を指導することを求めます。
- 奨学金の返済猶予の拡充はじめ、就活する学生への経済支援を行う
「いつ面接が入るか分からないのでバイトができない」など、激しくなる就職活動は学生の経済的負担も重くしています。地方大学では、面接のたびに上京する学生のために大学でバスを手配している例もあります。こうした各大学の学生への経済的支援をする取り組みを拡充することを求めます。就職活動中の生活費や交通費への臨時の貸付制度の創設なども必要です。
奨学金返済への不安も大きなものがあります。奨学金の返済猶予期間の延長や所得制限の緩和、相談体制の強化、滞納者のブラックリスト化の中止、卒業後にも有利子から無利子に転換できる制度などの創設を求めます。給付制奨学金の創設と有利子奨学金の無利子化を進めることを求めます。
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