こくたが駆く

尾形光琳「紅白梅図屏風」論争について

070520野口康  江戸時代の画家、尾形光琳といえば、国宝の金屏風、 「紅白梅図屏風」「燕子花図 (かきつばたず)」等が有名だが、この屏風の金地部分について「金箔ではなく、金箔を擬装して描かれたものだ」という、 日本美術史の「常識」を揺さぶった発表があったのが2004年。東京文化財研究所が03~04年にかけて、 技法や顔料を光学的に調べ、金属元素の種類と存在量を測定できる「蛍光X線分析」で「金箔だとしたら金の存在量が少なすぎる」 と発表したのだ。
 わたしもNHKスペシャル(04年8月)でも取り上げられたのを偶然見ていたのでよくおぼえている。「金箔を使わずに、 あれだけ鮮やかな金地を描けるものなのか」という、尾形光琳という画家への興味と、美術品を非破壊で検査できる 「ポータブル蛍光X線分析装置」に「すごい装置があるもんだ」と、感心したものだ。ところが、「金箔を使っていた」と、市井の箔師・ 野口康さんが反論。

070520野口康2  一昨日、上京区の後援会事務所びらきのあと、成宮まり子候補、さこ祐仁・府会議員、 くらた共子市会議員とともに、京都・西陣にある「箔屋・野口」の4代目当主・野口康さんを訪ねた。
 野口さんは箔を張る専門家の立場から、この「金箔を擬装した」という説に異論を唱えておられて、反論の論文を発表、 なんと2年間かけて光琳の技法を再現して見せることまでやってまで、金箔説を実証するために執念を燃やしておられるとのこと。

 わたしが科学的・学問的にどちらが正しいかを判定する立場にあるわけではないわけだが、、、
 かたや、「東文研」という、日本美術史の基礎研究をほとんど一手に引き受けているような権威ある研究所が、 NHKスペシャルという人気TV番組で発表した「金箔ではなかった」説に対して、箔を張る専門家とはいえ、一人の職人による独学 「いわば徒手空拳」で立ち向かっておられる野口康さん「その心意気、実にすばらしい!」と、すっかり意気投合してしまった。
 野口さんからの「何とかこの論争を再び盛り上げることはできないかと知恵を借りたい」との申し出に、 何人か力になってくれそうな私の知人に働きかける約束をした。
 どちらかというと、わたし自身もこの「京の一職人 VS NHK+東文研の学術論争」の行方を見届けたいとの思いから引き受けたのだが (笑)、はてさてどうなることやら。

 

| コメント (2) | トラックバック (0) | Update: 2007/05/21

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コメント

 初めまして。私は、京都の嵯峨芸術大学に通っている3年の小山といいます。
 今、私は授業で、渡辺始興筆と言われる腰板絵の復元模写をしています。
 その際、科学分析で絵の具の特定を調査したところ、やはり銀箔がはられていただろうと言われていた板絵に、銀の反応がまったくでず、矛盾した結果に困っていました。
 その時、こくたさんのHPで、この記事を拝見して大変興味深く、是非、野口さんにお話をお聞きしたいと思っています。
 しかし、私は野口さんの連絡先を知りません。もし、差し支えなければ、連絡先を教えて頂く事はできないでしょうか?
 よろしくお願いします。

小山様

 ご本人にも了解を取りました。
 野口さん自身も、大変興味を持たれたようで、是非お話を聞きたいとのことでした。

 コメント欄のメールアドレスに、連絡先を書いて送信しましたが、どうもそのアドレスが間違っているようでした。
 コメント欄ではなく、このホームページに記載の私宛のメールにお返事いただければ幸いです。

追伸
 ちなみに、5代目の野口琢郎さんは息子さんで、連絡先は同じです
http://www.takuro-noguchi.com/contact.html

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