伝統的工芸品の「生産用具」が枯渇の危機! 緊急に対策を要求・予算委員会第7分科会
昨日、二十八日の衆院予算委員会第七分科会(経済産業省関係)で、和装伝統産業など、苦境にあえぐ伝統的工芸品の産地で、 生産に欠かせない希少な道具類やその原材料が、枯渇の危機に瀕している問題を取り上げた。
伝統的工芸品の生産高は、1983年の3500億円をピークに、年々下がり続けて、2005年に1834億円と約3分の1、 従事者数は79年の29万人をピークに、05年が9万9千人と、こちらも約3分の1にまで落ち込んでいる。
伝統的工芸品は、甘利明・経済産業大臣の答弁を借りれば「地域の伝統・歴史・
文化が凝縮した」ものであり「雇用・経済の面からも重要」で、私もたびたび国会で取り上げてきた。
今回は、その伝統工芸品を縁の下で支えている「生産用具と、その原材料」の問題を取りあげたのだ。
今回は、具体的事例として「杼(ひ)」(写真左)と
「竹筬(たけおさ)」(写真左上)という道具について
「手織り物に欠かせないこの二つの道具は、作れる職人がいなくなって枯渇の危機にある」と、実物を示しながら紹介。
後継者の不足などが主な原因だが、作れる職人がたった一人という用具やその原材料・部品が「織物」
関係に限らず実に沢山あるのだ。
伝統的工芸品にとっての「用具」は、それと結びついた「技法」がある。用具の枯渇はそのまま「伝統の技」
が絶えてなくなることを意味する。ある西陣織業界の幹部の言葉を借りれば「このままでは、何百と言う道具とそれに結びついた『技』
が絶えてなくなる」という問題なのだ。
これには大臣も「厳しい状況にあると認識している」と答えた。
そこで、私は緊急に対策すべき問題として「産地組合が行っている技術伝承の取り組みを支援する」
「道具そのものや、道具の製造過程を映像資料として保存する」「(文化財保護の観点で事業を行っている)文化庁との連携」等の、
緊急対策を提案。
これには大臣も「映像データによる保存というのは良い(提案だ)と思う。
同時に原材料の確保や用具を作れる人材の育成は非常に大事な課題だと認識した」「おっしゃるように『業』として成立しないと、
保存にはならないので・・両々相まってしっかり取り組んでいきたい」と答えた。
実は、伝産法(伝統的工芸品産業の振興に関する法律)の中に、伝統的工芸品の生産用具という文言は出てこない。「工芸品」
そのものや「人材」という言葉はきちんと明記されているのに、それがなければ工芸品を作れなくなる「生産用具」
が位置づけられていないのは問題だ。後継者の育成と同じぐらい大事な位置づけで「明文化すべきではないか?」と要求。
大臣からは「(用具・原材料の問題は)伝産法の中では(産地組合が作る)『振興計画』
に位置づけられて、その計画を元に支援をしていくことになる」と、広い意味で伝産法の中で振興する対象になる旨の回答があった。
それぞれの産地組合が、自分たちが作る振興計画の中で、用具の問題を位置づけていれば、
それは経済産業省として支援をするという約束をしてくれたということだ。質問を通じて、
伝統的工芸品の生産用具の問題が伝産法のなかでどういう位置づけなのかがはっきりさせたのが今回の質問の成果だ。
「杼(ひ)」(写真下)
すべての手織物に欠かせない道具で、経糸(たていと)
の間に緯糸(よこいと)を通すのに使われる。ヨコ糸を巻いて収めた平らな舟型の形状で、英語でシャトルと呼ばれる。
現在、日本で「杼(ひ)」を製作・販売しているのはたった一人しかいない。
「竹筬(たけおさ)」(写真上)
櫛のような形状の歯の間にタテ糸を通し、タテ糸の位置を整え、ヨコ糸を打ち込むのに使う。タテ糸とヨコ糸の両方に直接触れる道具で、
手織りに欠かせないもう一つの道具。
ステンレス製のものもあるが、竹製の柔らかい織りあがりの質感に根強いファンも多い。
近年、櫛の歯状に並んだ「筬羽」を唯一製造していた岐阜県の会社が製造・販売を中止、製作技術の保存・継承が課題となっている。
| コメント (0) | トラックバック (0) | Update: 2008/02/29