冷泉貴実子さん「冷泉家 800年 『守る力』」について(書評)
京都民報の依頼にこたえ、冷泉貴実子さんが著した「冷泉家 800年 『守る力』」の書評を無謀にも挑戦し書きました。10月27日付京都民報に掲載です。
25代目当主夫人の貴実子さんが、「(藤原)俊成・定家の二人のビッグスター」を祖とする冷泉家が、なぜ800年連綿と途絶えずに続いたのかという謎を解き明かした。
それは、定家の「紅旗(こうき)征(せい)戎(じゅう)は吾(わ)が事(こと)に非(あら)ず」という言葉。「時流にはかかわらない、流行に乗らない」を家訓として守ってきたことである。時代に流されない生き方を貴ぶのは同感である。
さて、貴実子さんは「そこそこで相変わらず」ということを家訓のようにしてきたからこそ冷泉家の文化は守られて来たと語り、文化を守る力と説く。
代々の当主は、「(歌聖の)二人と比べれば凡才かもしれない」とこともなげに言う。
しかし、明月記を後世に伝え、つなぐ「和歌の家元」としての、群を抜く知性と時代を生き抜く勇気、並々ならぬ努力があったことを実は教えている。
800年の歴史のスケッチは、初めて知った驚きと愉しみを与えてくれる。公家の暮らしと営む儀式、行事を続けることで、史実を学ぶことが出来る。伝統とは、文化とは、人間の生き方とは?に言及している。
「十六夜日記」を記した阿仏尼を権利に目覚めた女性として誇り、国宝文化財を守る出発を築いた彼女を筆頭に、女性陣の強さを語っているのも、貴実子さんならではのことだ。
明月記が証明した現代天文学理論、節分の豆はどこへ捨てるか?など「へー!」となる。
終章に、百人一首を柄にした着物友禅作家袴田浩園氏に触れている。氏は戦前からの民主的運動家で、後年日本共産党に再入党し、私の選挙の度毎に「憲法」にちなむ絵で事務所を飾ってくれた。世の中は狭いものである。
冷泉家や伝統的建造物になくてはならぬ、檜皮葺(ひわだぶき)の材料である檜の国有林からの活用問題で道を開いた寺前巌元衆院議員、後を継ぐ私もいささかではあるが、伝統文化の継承に微力を尽くしてきた。日本の伝統文化の魅力とそれを守る重要さを十分に感じた。「大事にしなければバチが当たる」と、叱咤激励を受けた書である。
| コメント (0) | トラックバック (0) | Update: 2013/10/23