衣笠・金閣民報「左大文字」12月号
憲法改正を狙う人々がここまで退廃し、これほどまで無頓着とは、いやそれが本質なのだと納得した。 中谷元防衛庁長官が陸上自衛隊幹部、れっきとした“制服組”に改憲案を“頼んで”提出させた一件である。 政府は「あくまでも個人間の依頼」などと強弁し、擁護している。こんなことは成り立たない。中谷氏は元防衛庁長官であり、自民党の憲法改正案起草委員長である。たんに個人間の問題であるはずがない。 陸自幹部の行為は、自衛隊法が定めている自衛官の「政治的中立義務」に違反し、憲法99条が定めている公務員の「憲法尊重擁護義務』違反」している。 憲法擁護義務を負う大臣経験者かつ陸自勤務経験者の中谷氏が、そんなことも知らずに「やらせた」としたら、恐れ入ったものだ。 与党の改憲案づくりに現職自衛官を巻き込もうとしていること自体、自民党がどのような改憲を狙っているか、“語るに落ちた”と言える。 内容は物騒なこと極まりない。どんなことが書いているか? 「国の防衛のため軍隊を設置する」「軍隊は集団的自衛権を行使することができる」「国家緊急事態の布告」「特別裁判所(軍事法廷)」「すべての国民は国防の義務を負う」等だ。 憲法9条を真っ向から否定し、「戦争する国」へまっしぐらである。 見逃すことができないのは、自民党憲法調査会に資料として提出されていたこと、自民党憲法調査会発表の「憲法改正大綱」と内容が重なることだ。 この紙上で、何度も強調してきたが、憲法守れという「九条の会」の講演会はどこでも満員盛況だ。まさに“うねり”となっている。国民の側からの大反撃が始まっている。その新たな特徴は、「皆が、自分の言葉で語り始めた」ことである。誰に“頼まれた”のでもない、自分の意思で訴えているのだ。 今年の悼尾を“改憲勢力への怒り”と“憲法を守りぬく決意”で締めくくりたい。 1947年日本国憲法と同時に誕生した憲法世代の代表として。
(Update : 2005/01/01)
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