こくた恵二
こくたが駆く

新日曜美術館 「彫刻家本郷新の世界」を見て

 日曜の夜に、NHK教育で「新日曜美術館再 彫刻家本郷新の世界」を見た。
 わが母校・立命館大学に建立された「わだつみ像」や「無辜の民」(いずれも立命館大学平和ミュージアム)の制作の過程が語られたものだ。
 彫刻家本郷新の平和への思いを表現したもので、私にとっては思い出深い作品だ。番組のタイトルは「平和の記念碑わだつみ像の悲劇」とあったが、「いつも平和の願いとともに」の方がぴったりだと、私は考える。
 1953年、像が立命館大学に移送された際、京都市民は歓迎のデモで応えたのである。53年12月8日にキャンパスに建立、69年に暴力集団に破壊されるまで、毎年12月8日は、「不戦の集い」として、市民参加の中で開催された。
 破壊された像の再建は、京都のみならず、全国各地の卒業生、平和を希う人々の熱い思いで可能になったのである。

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青春の時代、私は、立命館大学末川博総長の「像とともに未来を守れ、平和を守れ」の訴えにこたえ、「不戦の集い」を主催してきたし、像の再建にも取り組んだ。
 像の台座には、末川総長の次の言葉が刻まれている。
「未来を信じ 未来に生きる そこに青年の生命がある。
  その尊い未来と生命を聖戦の美名のもとに奪いさられた青年学徒のなげきと怒りともだえを象徴するのがこの像である」
 あの戦争が正しかったなどという、逆流が起きている今日、像は「悲劇」ではなく、平和のために立ち向かう「闘う」象徴としてあるのだ。
 そして私の政治の原点「わだつみの悲劇を繰り返すな」もまた、ここにある。

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(Update : 2005/06/06)