こくた恵二
こくたが駆く

建築基準法改正案審議にあたって、日本共産党の提案(上)

 政府は、建築基準法の改正案を発表した。今後、国土交通委員会で審議が行なわれる。
 耐震強度偽装問題の再発防止は国民的な課題である。日本共産党の耐震強度偽装問題プロジェクトチーム(責任者は私)として提案を発表した。以下二回に分けて紹介します。


 耐震強度偽装事件の再発防止にいま何が必要か 
     ――建築基準法等改正案の審議にあたっての提案――
 日本共産党国会議員団 耐震強度偽装問題プロジェクトチーム
                                           2006年4月11日

 耐震強度偽装事件が明らかになってから四ヶ月余たちました。この間、新たな構造計算書の偽装・改ざんや耐震強度不足の建築物の存在も明らかになるなど「わが家は大丈夫か」という国民の不安は、ますます強まるばかりです。建築物の安全性を確保するための建築行政に対する信頼は失墜しているといっても過言ではありません。
 政府は、3月31日、「耐震偽装事件の再発を防止し、建築物の安全性に対する国民の信頼を回復する」として、建築基準法等の改正案を国会に提出しました。その中にある確認審査におけるピアチェックの導入や違法行為に対する罰則の強化などは当然ですが、肝心の建築確認・検査制度の枠組みはそのままにしています。これでは再発防止策とはとてもいえません。
 問題の核心は、規制緩和によって、1998年に建築基準法を改悪して、建築確認・検査を民間まかせにし、チェック体制も整えないままコスト最優先の「経済設計」を可能にしたことなど、建築行政を「安全よりも効率優先」に変質させたことにあります。  
 このことに対する反省がなければ、再発防止はもちろん、建築行政に対する国民の信頼回復はできません。
 日本共産党は、98年建築基準法改悪に反対しました。被害者の迅速な救済ととともに今回のような事件の再発を防ぎ、建築物の安全確保をはかるため全力をつくします。  
 その立場から、建築基準法等の改正にあたって、当面、以下のとおり提案します。

1、建築確認・検査制度を抜本的に改善する。
(1)民間検査機関を非営利の法人とし、検査業務は地方自治体(特定行政庁)からの委託によって行う
@ 現行の民間検査機関が、構造計算書の偽装を見抜けなかった要因に、顧客(建築主など事業者)獲得のために検査を甘くする競争(安かろう、悪かろう検査競争)があった。建築確認検査は、建築物の安全性等の法令適合を審査することを目的としており、本来、公の責任で行うべきものであって、営利目的の競争とは相容れないものである。したがって、民間検査機関は非営利の法人に限るものとする。
A 建築確認・検査は、昨年6月の最高裁判決でも、民間の指定確認検査機関がおこなったものも含めて、地方公共団体の事務とされていることから、地方自治体がすべて責任をもつことを明確にする。
 そのため、民間検査機関は、地方自治体からの委託にもとづいて検査業務を行なうことにする。確認申請は、地方自治体が受け付け、必要に応じて審査を民間検査機関に委託する。確認済み証などは、地方自治体が責任をもって発行する。
B 非営利の民間検査機関の公正・中立性を確保するため、デベロッパーや施工会社・建設会社などの利害関係企業からの出資や出向等を禁止するなど、事業者との癒着を排除する。
(2)地方自治体の人材の育成と確保、技術向上をはかり検査体制を強化する
 98年法改悪による確認検査の民間開放以降、体制の弱体化が深刻になっている建築主事とその補助者を増員するとともに、年々高度化している構造計算技術の向上に対応できるよう専門家を育成する。そのため必要な研修・教育体制の整備などをおこなう。
(3)中高層建築物についてピアチェックを義務づけるなど確認検査を厳格にする。
 一定の高さ以上(鉄筋コンクリート造:高さ20m以上など)の建築物の構造設計の審査は、非営利の第三者機関によるピアチェック(専門家同士による審査)を義務付ける。審査を厳正に行うため、建築確認の審査期間を延長する。また、中間検査の義務化をはじめ、施工時のミスや手抜きを防ぐための仕組みを充実させる。特定行政庁に構造計算書など図書の保存を義務付け、期間も延長する。

2、耐震基準の引き上げなど建築物の安全を最優先にした構造設計に改善する。
(1)建築基準法の耐震基準を引き上げる。
現行の建築基準法が定める最低限の耐震基準(保有水平耐力比1・0以上)は、「震度5強程度の中規模地震で建物が損傷せず、震度6強程度の大規模地震で倒壊しないこと」としている。これは、大規模地震では、倒壊せず人命は保護するが、余震による倒壊の危険性や居住困難なほどの構造体に大きな損傷を受けるという基準であり、不十分である。
 東京都はじめ多くの自治体が1・25倍の基準を満たすよう行政指導している現状もふまえ、建築基準法の耐震基準そのものを引き上げる。また耐震強度が地域ごとに異なる「地震地域係数」を見直す。
(2)構造計算プログラムの大臣認定を見直す。
 2000年6月以降、大臣認定の構造計算プログラムを使って計算した場合、建築確認の審査の際に、複数の専門家によるチェックが行われなくなった。大臣認定された計算書ということで、審査が簡素化されたからである。この大臣認定の仕組みは、コンピュータープログラムへの過度な依存を助長し、ずさんな構造設計を増幅させている。認定プログラムの計算結果の改ざんが可能であるだけでなく、プログラムそのものが「ブラックボックス」化しているとの指摘もあることから、計算プログラムの大臣認定を見直す。     

(Update : 2006/04/12)