■絞りって何?
「絞り」とは、糸などで生地をくくったりしめたりして、染めたくない部分に染料が入らない(防染)ようにして、70℃から90℃以上の染料でたき染めするのが特徴です。代表的な技法で「鹿の子絞り」と呼ばれる技法がありますが、小鹿の斑点に似ているのが名前の由来になっています。 ■簡単ゆえに奥が深い
簡単な技法であるだけに、奥が深い。そして、絞った布をほどくまで、どんな仕上がりになるかわからない。これが「絞り」の最高の魅力だと思います。 ■17回続いた『絞りフェア』
わたしがこの会社の社長を引き受けたのが1987年、実は受けるとき大変なやみました。『この仕事に未来があるのだろうか?』と。「おなじみのお客に買ってもらうだけでは、市場は痩せ細るばかりじゃないか?」「職人さんも後継者が確保できるのか?」など将来への不安があった、だいたいその当時の「絞り」といえば、一着何百万もするような着物を売っているのに、広告宣伝費はゼロなわけです、同じ何百万の商品を売っている自動車だって、コマーシャルをものすごくするでしょう?そこで、「絞り」そのものを世間にアピールしようということで始めたのが「京都絞りフェア」でした。第1回では、ギネスに挑戦ということで、畳20枚分の絞りの着物を作ったわけです、そうしたらこれがマスコミに大きく取り上げられて注目を集める。それから毎年やるようになり、昨年で17回を数えました。 ■『美術館』まで作って
別に売るつもりのないものをつくるわけですから、完全に赤字です、それも何百万円何千万円の。でも良いんです、「絞り」そのものを世間にアピールすることで、関心をもってもらえる、いずれお客さんがふえるという形で還ってくれば。それから、売り物ではないから冒険もしやすい、新しい技術開発の場にもなっています。また、どんどん少なくなっていっている職人さんを励ます意味もある。後継者をつくろうと思っても、職業そのものの未来に夢や誇りがもてなければいけません。東京の銀座で絞りフェアを始めたのも、この「絞り」を体験できる美術館『京都絞り工芸館』を作ったのも、同じくそういう思いです。 ■失われた『技』は元にもどらない
『伝統産業を守る』というのはどういうことだろう?ということについてよく考えるのですが、私は昔からの技の伝承を子孫や弟子だけにというのでは『守る』意味がないと考えています。機械では絶対に真似のできない『手仕事』の技、そのよさは、世間からちゃんと見てもらえれば、もっと一般の方に知っていただく=体験していただく、ことで、必ず評価されて生き残っていけるはずです。またその『技』を引き継ぎたいと思う人=後継者も出てくると。 ■「着物を愛する」の穀田さんに期待
穀田(こくた)さんとの出会いは、私らの業界団体の講演に招待したときです。総会のあとでした。共産党の議員といったらどんな人かいなと思っていたら。和服で来るではありませんか私ら和服業界の者が年一回の総会で、全員が洋服。共産党の議員が和服。
[2005年2月]
|
|