国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・予算委員会
(2004年3月3日)

本日の会議に付した案件
 平成十六年度一般会計予算
 平成十六年度特別会計予算
 平成十六年度政府関係機関予算
 主査からの報告聴取

     ――――◇―――――

○笹川委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 私は、今度の北朝鮮問題の六カ国協議がどう進展するかについて注目してきました。それは、この協議に北朝鮮と韓国、アメリカと中国、ロシア、日本という北東アジアの平和と安定にかかわるすべての国が参加していて、核問題の解決という点、さらに拉致問題の解決という点でも、そしてあるいは将来の北東アジアにおける平和の枠組みという点でも重要な協議の場であったからです。
 私どもは、朝鮮半島の軍事的な衝突を絶対に起こしてはならない、あくまで外交的、平和的手段によって解決を図らなければならない、この問題での解決が東アジアの平和と安定に不可欠であると考えてきました。
 昨年の六カ国協議は、各国の主張に隔たりはありましたが、対話を通じて平和的に問題を解決する努力を続けること、このことで共通の認識に達するという重要な一歩を踏み出しました。長い中断はありましたけれども、今回の第二回六カ国協議が再開されたことは歓迎すべきことです。六カ国協議という枠組みを維持し、今回の話し合いでどのようなステップに進めるのか、極めて重大な問題だと私は考えていました。
 そこで、総理に、この重大な六カ国協議を、北朝鮮問題の解決、そして北東アジアの平和と安定についてどのように位置づけておられるか、まず基本的な認識をお聞きしたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 私は、拉致の問題につきましては、日本と北朝鮮における二国間の問題である、基本的にはそう認識しておりますが、六者間の会合の枠組み、これは、全体の、核の問題を含めて、朝鮮半島の非核化、平和と安定ということを考えますと、この六者協議の枠組みは重要だと認識しております。
 今後も、この枠組みの中で各国が協力して、北朝鮮が国際社会の責任ある一員になるように努力をしていきたいと思っております。

○穀田委員 今お話ありましたように、六カ国の枠組み、これはとても大切だと私は考えています。
 特に、今度の六カ国協議を通じての議長声明では、これも取りまとめましたが、今度の議長声明は、特に各国が同意をしたという点が重要だと思います。
 今総理からもお話あったように、今度の議長声明では、朝鮮半島の非核化が共通の目的であること、そして、対話を通じて平和的に核問題を解決するという点について北朝鮮も含めて確認をしたという点が、私は大事だと。しかも、次回の六カ国協議を六月末までに開催すること、さらに作業部会を設置すること、これを確認しました。その点で、私は、今回の六カ国協議の枠組みを強化する方向で進展したことについて評価したいと考えています。
 総理は、今回の第二回の六カ国協議の結果について、どういうふうに評価されているかについてもお聞きしたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 共産党から評価をいただきまして、ありがたいと思っております。
 また、今回の成果につきましては、一定の前進が見られましたが、私どもが期待していたような成果は見られなかったという点については、残念な面もございます。
 しかしながら、これから次の会合に向けての作業を進めて、六月末までに再び六者会合が行われて、総合的な解決を目指そうということを、六者間で共通の認識を持てたということでありますので、これからも粘り強く、北朝鮮側との正常化を目指して日本としても努力をしていきたい。そういう面において、六者協議の枠組みというのは重要なものだと日本政府も認識しております。

○穀田委員 何も、私どもは、道理があるものは道理があると評価しているわけで、しかも、この問題について言えば、各国も、さまざまな立場の違いはありますけれども、一様に評価しているんですね。アメリカだって、この問題については重要な足がかりをつくったと。ロシアでもそういう立場を表明していますし、そして、韓国でも、実質的な議論ができて、しかも、非核化という共通目標という点では、朝鮮半島にそういうもので紛争を起こしてはならない、平和的に対話を通じて解決しなくてはならぬ、こういう点では大体一致しているんですよ。
 もちろん、今お話あったように、国民が期待しているさまざまな前進という問題では不十分な点はあります。しかし、私が今言っているのは、枠組みを強化する、そういう方向で動いた、各国がそういう継続そのものについての今後の発展方向を定めたという点で評価しているということを私は改めて申しておきたいと思います。
 そこで、進まなかった問題の一つに、核の問題があると思うんです。
 六カ国協議の議長声明は、核兵器のない朝鮮半島を実現すること、こういうことをわざわざ触れまして、その意味では足がかりはできたと思うんですね。総理、ここが大切だと私は思うんです。
 先ほども、質疑の中で、ようやくこういう問題について軌道に乗り始めたと総理はお話ししていましたよね。だからこそ、私は、文言にある六項目ですか、作業部会の設置に合意をした、こう書いています、その作業部会で、非核化の内容、さらには検証方法、また北朝鮮が言う安全の保証などについて、国際的なルールと監視といいますか、そういうもとで進むような、そういう外交努力が今、日本政府に、特に唯一の被爆国として、またそのことを、核廃絶を何とかみんなでやろうじゃないかという国民の多くの期待を背景に努力すべきじゃないか、こう考えているんですが、その見解をお聞きしたいと思います。

○川口国務大臣(外務大臣) 作業部会の場それから六者会合の場、両方を通じまして、その完全で検証可能な非可逆的な核の廃棄という目標を達成するように議論をしていくということが大事であるというふうに考えております。

○穀田委員 いや、議論していくのは当たり前なんですよ。問題は、どういう立場で接近していくかということを私は言っているんですよ。
 先ほど言ったように、政府は必ずこう言うんですよね。すべての核兵器の完全、検証可能かつ不可逆的な廃棄、いわゆるCVIDと言うそうですが、それはわかっているんです。その問題は重大な意見の対立が依然としてあるわけですよね。そこが問題なんですね。
 そのときに、私が言っているのは、やはり北朝鮮に対して、北朝鮮の考え方自身に対する、理詰めといいますか、道理ある批判が大事じゃないかということを私は言っているんです。それは、彼らは軍事優先で来ますし、そして核抑止力論の立場に立っている、こういう問題がありますから、そこをきっちりとした批判をすることが大事だということを私は言っておきたいと思うんです。
 そこで、拉致問題の解決についても、私は一点だけ質問したいと思うんです。
 拉致問題の解決というのは、日本の国民の人権と安全を脅かした国際的な犯罪行為として絶対に許すことができないものであることは明らかです。私は、まず何よりも、帰国した五名の家族の帰国について、その実現のために北朝鮮が誠意を持って対処することを求めてきました。さらに、被害者の真相の全面的な解明、拉致の責任者の厳重な処罰、さらには被害者への謝罪と補償を要求してきたことは、総理も御承知のとおりだと思うんです。問題は、今回の会合で具体的な進展がその意味で得られなかった、その期待が十分できなかったという点では残念なことだと思うんです。
 そこで、私どもは、各国が合意した議長声明の第五項、関連する懸案に対処することに合意した、この文言は、その意味で拉致問題を一つ触れているということだと思うんです。問題は、やはりこの点でも、国際的な枠組みできちんと処理をしていく、解決をしていく、そういう場での努力が求められていると思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○小泉内閣総理大臣 私は、拉致の問題と核の問題という話をいたしますと、日本以外の国々は核の問題について大きな関心を持っている、どちらかといえば、日本の拉致の問題よりも核の問題を主として議論の対象にしようという姿勢はうかがえます。しかし、日本は、拉致の問題も核の問題も同じように重要なんですということを、個別の首脳会談におきましても、二国間の首脳会談におきましても、あるいは国際会議の場においても、何度も日本の立場を説明し、各国の理解と協力を求めているわけであります。
 今回も、六者協議の場におきましては、核の問題に大きな比重が当てられたと思います。しかし、この核の問題につきましては、六者、北を除いて五者、五者の間においても、核の完全廃棄、検証可能、後戻りできないということの問題については、北朝鮮側の態度に対して、アメリカと日本の態度と韓国、中国、ロシアの態度は若干違っております。しかしながら、今御指摘のとおり、この問題については各国の理解を得ながら進めていきますし、日本は、日本の立場というものを各国から理解が得られるように、協力関係をこれからも求めていきたいと思っております。

○穀田委員 今お話ありましたけれども、私は、核問題とこの拉致問題というのは非常に密接不可分の問題だ、国際的に言って。といいますのは、核を放棄するということは、国際社会の仲間入りをするということなんですね。問題は、核が自分のところの抑止力だと考えている考え方の誤りを正すということと同時に、一つ大きな柱となるのは、あの国がみずからの無法を国際的に反省をして謝罪をする、そういう中で国際社会の仲間入りをするということに関連があるわけですね。そこが国際的な道理を説く必要があるという立場を私どもは申しているわけです。

 特に、私たちは一貫して批判してまいりましたけれども、北朝鮮が起こした数々の国際的な無法行為、例えばビルマのラングーンでの爆破事件、大韓航空事件などの無法行為、これを批判してきましたが、拉致問題はそういう無法行為の一つであります。だから、北朝鮮が国際社会の仲間入りをしようとすれば、こうした無法行為の清算は不可避の課題なわけですね。
 だから、私は、一昨年の日朝首脳会談で北朝鮮が初めて拉致の事実を認め、謝罪の意思を表明したということは大事だと思うんです。それだけに、拉致問題は、日朝二カ国間の粘り強い話し合いを継続していくことはもちろんだけれども、無法行為の突破口として、国際的な共通認識としていくことが大事だということを改めて言っておきたいと思うんです。
 最後に、時間が来ましたので一言言っておきますと、私は、この日本と北朝鮮における懸案の諸問題を解決するために、日朝平壌宣言、そして第一回の六カ国協議、第二回の六カ国協議と進んできたこういう前進をしっかり見てとる必要があると思います。一致点を大切にしていきたいと。
 その点で、外為法の改正や特定船舶の入港禁止の法案をつくることは、外務省も認めた第一回六カ国協議の合意事項の第四項、六者会合の参加者は平和的な解決のプロセスの中で状況を悪化させる行動はとらない、この合意に反するものであり、両立しないと考え、私ども反対の立場である、このことを改めて表明して、質問を終わります。

○笹川委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。


【「しんぶん赤旗」2004年3月4日】
6カ国協議
国際的枠組み強化進展
穀田氏指摘 首相も「重要だ」
衆院予算委集中審議

画像  日本共産党の穀田恵二国対委員長は北朝鮮問題を集中審議した三日の衆院予算委員会で、再開された北朝鮮問題の六カ国協議が「その枠組みを強化する方向で進展したことを評価したい」とのべ、拉致問題も「国際的な枠組みで解決する努力が求められる」と強調しました。小泉純一郎首相は「六カ国協議の枠組みというのは重要だと認識している」と答えました。
 穀田氏は、今回の六カ国協議で「朝鮮半島の非核化が共通の目標」であり、「対話を通じて平和的に核問題を解決する」こと、次回の協議を六月末までに開催し、作業部会を設置することが確認された点を評価。小泉首相は「これからも粘り強く、北朝鮮側との正常化をめざして努力したい」とのべました。
 穀田氏は核問題について、軍事優先で核抑止力論に立つ北朝鮮に対する「道理ある批判」が大事だとのべました。拉致問題について、議長声明の「関連する懸案に対処することに合意した」との文言は拉致問題に触れたもので、「拉致問題の解決を、北朝鮮による一連の国際的無法行為を清算する突破口として国際的な共通認識にすることが大事だ」と強調しました。
 さらに日朝間の諸懸案解決のために「日朝平壌宣言、第一回六カ国協議、第二回六カ国協議とすすんできた一致点を大切にし、前進させていくことが大事だ」と指摘。「改正」外為法や特定船舶入港禁止法案について、第一回六カ国協議の議長総括の合意に反するとして反対を表明しました。

写真=質問する穀田国対委員長=3日、衆院予算委