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【第159通常国会】 衆議院・国土交通委員会
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国土利用計画法及び都市再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号) ――――◇――――― ○赤羽委員長 穀田恵二君。 ○穀田委員 私、日本共産党の穀田恵二です。 お三方、貴重な御意見を本当にありがとうございました。 私は、お三方にそれぞれお聞きしたいと思います。 私は京都に住んでいまして、特に九〇年代、民間活力の導入ということと規制緩和が叫ばれて、京都が大きく変貌しました。特に高層マンション、さらにビルの乱立など、乱開発が進行しましたし、その結果、京都のすぐれた自然と景観が台なしになって、町壊し、それから住民追い出しの結果がもたらされたわけです。 後藤参考人もお話あったように、私に言わせれば京都らしさが随分失われたと思っているんですが、それがバブルの時代でした。ところが、今また、九九年からこの三、四年ほど、高層マンションのラッシュが大規模に行われていまして、住民の側は、まちづくりのために、地区協定やまちづくり憲章などをつくって対抗をしています。しかし、そこには金もうけの論理が、ある意味じゃ優先し、住民の暮らしの視点が欠けているという事態が進行しているのもまた紛れもない事実であります。 したがって、私は、民間の活力の活用とまちづくりの主体者たる住民の意思の尊重という関連をどういうふうにして調整していくのかということは、ある意味で必要だと思うんですね。その辺の御意見を、大きな角度からお三方にお話しいただければと思っておるところです。 ○伊藤参考人(早稲田大学教授) 少し長目にしゃべることをお許しいただければと思います。 京都は、世界の京都でございます。これは極めて重要でございまして、政治自体がどうであろうと、京都は世界の中の京都であって、この価値を絶対に損ねちゃいけないのに損ねてきたわけです。ですから、私は、率直に、京都法という法律をつくってでも、京都の町中と西陣ぐらいは守らなきゃいけないと思っているんです。 これは、先進諸国の礼儀として常識でございます。戦災に遭ったドイツでも、町の中をきちっと昔のように直して、高い建物を建てないという都市が大部分です、フランクフルトは別として。フランクフルトは、アメリカに占領されたから、ちょっと東京型になったんですが。南フランスもイタリアも全部、町中は高さ規制をし、必ず文化財をチェックし、日本でいうと、文化庁の指示があったものについては都市計画事業はできないというぐらいになっているんですね。 もし日本が観光で立国をするということであるならば、率直に言って、普通の外国の観光客にとって一番行きたいところは京都なんです。その次が東京なんです。はっきりしているんですね。ところが、どうして京都がそうなったかということは、基本的に国政に係る問題がございまして、京都の町家さんの呉服屋なら呉服屋のお父さんが死にます、すると相続税がかかります。相続税がかかると、これは正田邸のように、建物を壊した更地の方が高い値段で売れるわけですね。相続税はかなり高いですから、現状の古い建物を維持していた形では相続税を払えないという例が多いようでございます。 ですから、これはまさに、相続税をどうするかという問題が京都の町家をどう残すかということにかかわってくるわけでして、呉服屋さんなら呉服屋さんを経営されている方も、お父さんが死んで子供が相続するとなったときには、どうしても相続税支払いのために更地にすると、そこにマンション屋が入ってくるということなんですね。この循環が今京都市の町中をむしばんでいるわけなんです。 私は、したがって、景観三法だけではなくて、景観三法は、金沢とか会津若松とか、あるいは臼杵とか、こういう美しい中規模の都市を守るためには極めて重要なんですけれども、京都問題だけは、全く別の体系で、まさに京都を守ろうと。絶対にあそこの、例えば、三条から五条で、烏丸大通りからこっちの鴨川の中はもう五階以上はつくらせない、それで全部木造だ。木造でも、このごろ、不燃化、防火性能が高くなっていますから、防火性能の高い木造でいいわけです。それぐらいの決断をやはり京都市民にやってもらいたいんです。これは幾ら東京の連中が言ってもだめなんですね。だから、ぜひお願いしたい。 これは、私が都市再生本部で真っ向から京都問題を、特別の法律としてあの都心部を守ると。そのためには、相続税の問題にまで言及して、相続税の繰り延べをやればいいわけですから。それで、なおかつ交付金を、あの町家を守るために町家の改修に徹底して使う。それぐらいのことをしませんと、日本は本当に、誇るべき都市がなくなります。 以上が私の返事です。 ○原参考人(千葉大学客員教授) 京都の問題、これは先般の市長選挙でもこれが争点の一つになって、京都の将来の環境をどうするかということが問われたと聞いておりますが、事ほどさように、これは難しい大事な問題であろうと思います。 まちづくり技術者として考えることがあるとすれば、一つは、京都というのはもともと一条、二条という、ああいう条立てで道をつくり、枠組みをしっかりつくってきた。その中に戸建ての魅力的な町並みを隣接させてつくってきた。そういう街区単位で町並みができてきたというのが、戦後、特に建築基準法で、敷地単位で物は勝手に建てられるということになって、街区を支えていたルールがとれちゃったということがとても大きかったと思います。 いま一度、大きな枠組みが京都は将来も変わらない、維持するとするならば、街区単位で、住宅を中心とした形態をどうしていこうかという独自のルールをやはりしっかりつくる必要があると思います。それは建築基準法でも改正がされて、四十条でしたか、自治体で条例をつくれるということになってきているので、そういう動きをしっかりとらまえて、市が中心となって、ボリューム、高さだとか間口だとか、そういうこと。それから、素材を決める。素材の中に色だとかそういうことも少しコントロールをしっかりして、都市計画法でいうならば地区計画をしっかりかけて、街区全体でボリューム、形態、そういうものがコントロールできるようなことを考えていかないと、個別の、マンション反対ということでは、モグラたたきのように、解決にはならないと思います。 そういうルールができても、やはり職能としての建築家というのがしっかりやっていかない今の日本では、とにかくやれる限りボリューム、容積率を使い切るということがオーナーの命令であり、建築家の職能としてはそれをやるというような、そんな職業に残念ながらなってきてしまっていますが、もう一度、建築家というのも、街区で考えるということをしっかりルールとしてわきまえて、街区単位でのコード、ルールをつくりながら、自分がもし設計するのであればそれに従ってやっていくという、地区計画と、それから、そのルールを守る仕組みをしっかりつくるということが大事なのではないかと思います。 以上です。 ○後藤参考人(大分県臼杵市長) 民間活力に任せてなかなかうまくいかないというのは、それはそのとおりだろうと思います。先ほど伊藤先生がおっしゃったように、もうちょっとほかのことを考えなきゃいけないということが随分あるんだろうと思います。 人はパンのみにて生きるにあらずという言葉がございますが、人はお金のみにて生きるにあらずということではないだろうかと思うんです。ともするとお金万能ということになりまして、すべてお金で考えるという嫌いがあります。建築等につきましても、とにかく入札、一番安いところに落とさなきゃおかしい、こう信じて疑っていません。そしてそれは、工事もさることながら、設計も同じことなんです。設計も、できるだけたくさんの方々に入札参加させて、そして入札して、一番最低価格を入れた人のところにさせろというんです。こんなばかなこと、実際はあり得ないと思います。それが入札の公正だというふうに信じて疑われておりませんが、そのあたりのところを、一体何のためにやっているんだ、ただお金さえ残せばいいのかということをしっかりお考えいただきたいというふうに思います。 それと、京都の場合は相続税が問題だというようなことでございましたけれども、小さな地方都市に住んでいる者の立場から考えますと、相続税ではなくて相続です。相続がありまして、長男が家を守っています、そうすると、家を離れて何も守っていなかった兄弟が、相続、私にも権利があるはずだ、あれを売ってくれと。これは、みんなそれで困っています。それで、町にあった古い建物、それからいろいろな田畑、それが分割されたり、何も広いままがいいわけじゃありませんけれども、ほんの猫の額ほどのものまでみんなで分けよう、だから売ろう、分けるためにはお金にしなきゃいけないみたいな、そんなことになってしまって、税金だけじゃなくて相続ということ自体がいかに災いをなしているかということも含めてお考えいただけるとありがたいと思います。 以上です。 ○穀田委員 逆に京都をどうするかというのを賜れた気がしまして、本当にありがとうございます。それから、哲学もお話しいただけたし、そしてまちづくりの今後の方向性についても、街区の問題あるいはルールの問題も提起していただきまして、ありがとうございました。 それで、私としては、まちづくりの主体者というのは、やはり住んで何ぼのものだ、住んでいる人たちが主体だということを言いたかったわけです。 そこで二つ目の問題は、今度の法案は、実は、先ほど伊藤参考人もお話ありましたように、今までの箱物一辺倒のやり方というのはいかがなものかという、いわば公共事業のやり方に対する反省というのがずっとあると思うんですね。ただ、都市再生基本方針というのを書いていまして、この都市再生基本方針は、御承知のとおり、読みますと、特措法に基づいて、都市の再生に関する施策の重点的かつ計画的な推進を図るために云々と書いているんです。それで、その基本的な方針等については内閣総理大臣が作成し、閣議決定を経て定めるものである、こう書いているわけなんですね。やはりここに実は回路がきついものがあるというのが第一点なんですね。だから、ここがいいのかということが一つある。 二つ目に、第四十六条第一項関係で、公共公益施設の整備に関する事業等を内容とする都市再生整備計画を作成できる、こうしているんです。これは皆さん御専門の方に釈迦に説法ですが、公益公共施設というのは、やはり道路や水道、公園などを前提とした計画づくりという面が否めないんですね、残念ながら、その辺ではこの体系全体が。私は、それをどう突破するかが大事だろうと思っているんです。 したがって、二つ目に言いたいのは、市町村や住民主体のまちづくりを、例えば原参考人もおっしゃいましたように、まちづくり協議会の支援などというのが、ある意味で大事じゃないか。そういう点からしまして、もう少し発想を地につけるといいますか、皆さんのお話でいえば、住民なり生活者、そういうところに視点を当ててというのを今後の基本に据えるんだということを私は皆さんからどうしても御意見をお聞きして、私はそうだと思っているものですから、お三方にもお聞きしたいと思っています。 ○伊藤参考人 実は、都市再生本部に何らかの形でかかわっておりまして、本部ができてよかったと思っています。それは、省庁連携を可能にできるのは都市再生本部決定しかないんです。 都市犯罪というのを都市再生本部で取り上げました。これは大阪の津田委員の意見を受けて、都市再生本部が都市犯罪を取り上げた、防犯問題を。これがもし国交省だったら、絶対そんなのは重点には置かなかったんですよ。都市防犯、都市犯罪を都市再生本部が取り上げたから、国交省と警察と文科省が協働して、都市の中の犯罪をどうするか。これは青少年非行の問題もあるし、外国人犯罪の問題もあるしということで、建物の設計の仕方から教育の仕方から、全部にかかわってきたわけです。 ですから、私は、本部というのは横軸に、皆様がずっと発言している縦割り法律ではなく、横軸に新しい行政の方向性を見出すという点では非常に有効な組織ではないかと思っているんです。常に私は、学校の教師として都市再生本部の行政の専門家に、省庁連携の強烈な仕組みが組み立てられない限りは都市再生本部の方針というのは信用しないと言っております。 ですから、ちょっと時間をとっちゃいますけれども、私は、新しい、都市再生本部は総理大臣が決めますから、むしろ大統領型、ロシアとか中国とかアメリカとか、大統領型の新しい行政のスタイルが少し見えてきているのかなという気もします。しかし、縦割りの省の中で法律を抱えている国交省と例えば文科省が協議をするよりは、ずっと都市再生本部の決定という方が省庁連携の効率はよくなっていると思っているんです。これが一点でございます。 それから、第二点の御質問をもう一回端的にお伺いしたいんですが。 ○穀田委員 まちづくり協議会の支援など、そういう住民主体のまちづくりが大事じゃないかと。 ○伊藤参考人 それは当然です。 例えば雇用を守るためにNPOをつくるというのは、これはまさに、役所と住民が、ある一つの仕事を協働してやろうというときの当然の結果なんですね。ですから、そういう点では、この法律にも書いていますけれども、NPOをつくるということですが、悪いNPOも出ていますけれども、これはもっと積極的にNPOを支えていくという方針をつくっていかなきゃいけないと思います。 私もNPOをやっていますけれども、お金がなくてぴいぴいしています。本当にお金がないんです。ですから、そういう点もうまく市長さんなんかが選択的にいいNPOをサポートしていただくということが必要です。 それから、公共公益の問題です。公益という意味のところに、例えばこの法律に、高齢者を優遇する住宅とありましたね。賃貸住宅あるいは住宅地区改良事業、こういう問題はまさに公益的施設なんですね。ですから、例えば高齢者のグループホームを町中でやろう、これも公益的施設なんですよ。そうすると何が起きるかというと、国交省と厚生労働省との間の省庁連携によって、中心市街地の空き店舗があるようなところに、例えばHOPE計画に基づいて三階建て、四階建ての木造の建物をつくって、その一部に、厚生労働省が所管している高齢者とか身障者ケア用のデイケアセンターをつくるとか、こういうのはまさに現代的公益施設なんです。 それから、防犯体制もそうなんですよ。例えば、専門の警察官ではなくて、嘱託警察官と私は言っているんですが、そういう嘱託警察官を雇って町中を歩くというのも、まさにこれはソフトな公益的施設なんです。 こういうものを入れていかないと町はよくならないんですよ。だから、今までの通常の公園とか上下水ではない、まさにそれが新しい都市づくりという項目で私のメモの中へ入れたところなんです。 ○原参考人 市町村の住民主体のまちづくりの方向がどうかというお尋ねでありました。 先ほど何回か申し上げていますが、今度の仕事のあらゆるプロセスにできるだけ参画のプログラムを入れていく、住民の方々がかかわらざるを得ないようにしていくということが大事だろうと思います。 確かに、市民参加というのはとても面倒だし、先ほどの、意見調整、合意形成というのでくたびれることもありますが、やはり我々が都市に手入れをしないでほったらかしてきちゃったのが今我々の目の前にある都市の姿なわけで、それを住民の方々が自分たちでしっかりかかわるというチャンスをしっかりつくるのが大事だろう。 私たちは、マイカーを毎日曜日洗ったり、それから家のリフォームというのは一生懸命やりますが、その一つの外側は全くただ使うだけ、手入れをしない、そういうことが続いてしまったので、そこで、それに目を向けるために参画のプログラムをつくるのと、それから、できれば恒常的なまちづくり協議会なりコミュニティーリーグというようなものをつくって、そういう仕組みをつくって対応するというのが大事だろうと思います。 それから、進め方としては、今度の趣旨の一つでありますが、環境を総体で、一体で考えていく。例えば、区画整理事業というのを私も担当したことがありますが、道路をつくって換地というのをやるともう息切れしてそれでおしまいで、建つ建物については町並み形成というようなことがほとんど考えられない。あとは地主の方が資力とプログラムに応じて建ててくださいということで、せっかく一斉に建つ基盤をつくりながら、できた環境というのが大変ばらばらになっちゃうということがある。だから、区画整理事業と景観形成事業と生け垣づくり事業等というようなさまざまなものをそこにかぶせて、よい町並みをつくっていくというようなことは、今までだってできたはずです。 あるいは、都市計画道路を抜いたときに、道路事業としてだけやるから、道路はつくったけれども周りに建つ商店や住宅がばらばらというようなことがある。都市計画道路をつくるならば、必ず沿道にルール、デザインコードを入れていって、それに従ってセットバックをしたりしてつくっていく、そういうことが一緒にやられる必要があると思います。 ぜひ、今度のこの法律は、少し総合化をしっかりしていく、それから市民の参加をしっかり促す仕組みをつくる、それをぜひ入れていっていただきたいと思います。 以上です。 ○後藤参考人 住民主体ということはまさにそのとおりだろうと思います。 住民の皆さんのお考えになる部分で、私心といいますか、私的ないろいろな要望という部分と、公共的ないろいろな願いというようなものがあろうと思います。ただ一人の利害だけじゃなくて、たくさんの方々の共通する利害ということで、それが公益につながると思われますので、公益という言葉は大変重いというように思います。 ○穀田委員 ありがとうございました。 ○赤羽委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。 |
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