【第159通常国会】
衆議院・国土交通委員会(午前) (2004年3月31日)
本日の会議に付した案件
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)
油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)
国土交通行政の基本施策に関する件
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○赤羽委員長 穀田恵二君。
○穀田委員 私は、初めに六本木ヒルズの事故についてお聞きしたいと思います。
御遺族の皆さんには心から哀悼の意を表したいと思います。
先ほども答弁でありましたように、ガイドラインの作成、そして検討する、また、必要とあらば建築基準法の改正、それは至急にやるべきだと私も思っています。
ただ、問題の所在は、一連の報道にもありますように、効率化を最優先にして安全を軽視したこと、これがあったんじゃないか。だから、きょうの報道でもありますように、ある被害者は、人命より営業優先ではなかったのかということを怒りを込めて述べておられます。しかも、事故が起こってから、安全対策をとらないどころか、事もあろうにセンサーの死角を広げる、もし対策をとっていたら事故は防げたのではないかという思いはだれでも私は共通だと思うんですね。
そこで、ここに実は企業のあり方が問われている。つまり、企業が安全を最優先するという点でも社会的責任があるんじゃないかと私は痛切に思っています。そして、これを守らせるのが行政の責務ではないか。
そして、なぜこれを私が言うかといいますと、この間この委員会で議論した、また参議院でも議論になっているわけですが、都市再生という名前で成功した事例としてわざわざ大臣も挙げた場所でもありますから、そこで、基準をつくるということは当然だけれども、私は、こういう建造物にかかわる事故については報告させる、最低限そういう仕組みをつくるということは、また情報公開させるということは必要じゃないかと思うんですが、そこをまず聞きたいと思います。
○松野政府参考人(国土交通省住宅局長) お答えいたします。
建築物内での事故について、事故が起こったときは一般的には消防部局あるいは警察部局が対応を行うというのが通常だと思います。それが直ちに公共団体の建築行政部局に行くということにはなっていないということでございます。本来、事故原因について建築物の構造あるいは設備の状況といった観点から分析を行う体制を整備するということが御指摘のとおり大変重要なことだと思います。
ただ、法律上、事故があったときに報告義務というようなことになりますと、どういう場合に報告する義務があるのか、だれが報告する義務があるのか、当然、処罰の対象になるということもございますし、かなりきつい規制の強化ということにもなりかねませんので、これ自体はなかなか難しい問題だと思います。したがって、むしろ実質的にそういった情報がとれるような体制が構築できないのかということを考えていきたいと思います。
例えば、今回の事故を見ますと、あそこの六本木のビルで三十三件の事故があった。その中には、少なからず、例えば救急車で運ばれた事例があったというふうに聞いております。そうしますと、個々のケースで消防の方に一々その場から報告していただくのは大変な負担になりますので、どうもあそこのビルでは最近事故が多いよとか、そういったことを定期的に受けとめられるような体制をつくっていくということが必要なのではないか、そういった観点から今後ちょっと検討をさせていただきたいというふうに思います。
○穀田委員 今お話がありましたように、東京消防庁というのは、たび重なる救急車の搬送があったために、幾つかの事故については把握していたはずなのですね。最初の一件や最初の二件はそれはどうかしれませんが、これだけ七件も八件もあるとなると、これは問題だぜという問題提起自身をしてもらわなくちゃならぬと私は思ったんですね。
ですから、今の発言で言うと、やはりとても大事な関係だと思って、ある識者は、小さい事故というのは大きな事故の予兆でもある、こう言っていますから、そういうところに、どう防いでいくのかということなしに何か大きな事故が防げるというわけじゃない、そういう角度から物を処していきたいな、そうしてほしいなと私は思っています。
そこで、森ビルも、きょう午前中お話があったように、気密性の問題、気圧の問題と大体言っていますよ。あそこが言っているから信用しないというんじゃなくて、それはそれであるんでしょう。だけれども、今新しい問題というのは、今までになかった超高層ビルができる、それがさまざまな施設を持っているということからしますと、自動回転ドアだけじゃなくて思いも寄らぬ事故が発生する危険性をはらんでいる。
そういう角度から、実は、新しい構造物、新しい建造物というものについて、今、そういう目で超高層ビルの安全性問題について、一から安全総点検を行う、そういうぐらいの構えが、私は、これを契機に、今言いましたように小さい事故は大きなということからしまして、ここを一つの起点として、そういう角度で物を見るべきじゃないかなと思うんですが、その辺の見解はいかがでしょうか。
○松野政府参考人 今回、専門家の方々に御参加いただいて検討をする会議を設けるつもりでございますが、その中で、自動式回転ドア以外のドアについても何か危険性があるのかどうかというようなことも、もしあれば検討してまいりたいと思いますが、その他のものについて、ドア以外のものについてどうなのかということになると、一般的に、ありませんかというようなことで聞いてみてもなかなか難しい問題だと思います。
したがって、やはり先ほど申し上げましたような、顕著にあらわれてくる事例を、例えば救急車によって搬送される事例がどうも多いとか、そういった情報をむしろ鋭敏に取り込めるような体制を構築していくということをまず検討していきたいというふうに考えております。
○穀田委員 わかりました。
次に、法案の問題について、一、二点質問します。
海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律について、先ほど来も議論になりましたが、私は、本改正案とPSCとの関係についてお聞きしたいと思います。
ポートステートコントロールというのは、この配られている資料の中にもありますように、海事関係の国際条約で定められている基準が守られているかどうかということで、各国が、そういう寄港国によって外国船舶への監督ができるわけですけれども、今度の法案に係るところで、PSCの検査内容は広がるのか、そして、PSCは今後その意味でどんな役割が果たせるのか、そういう基本についてお聞きしたい。
○鷲頭政府参考人(国土交通省海事局長) ただいま先生おっしゃいましたとおり、船舶の安全あるいは海洋環境の保護に関する国際条約、条約要件につきまして、入港時に寄港国として船舶の基準適合性を検査するというものがポートステートコントロールでございまして、今回の海洋汚染防止法の改正で、大気汚染防止設備というものが新しく追加されますので、それの基準適合性につきましても検査対象になることから、ポートステートコントロール業務の検査対象というものは広がります。ただ、ポートステートコントロールというのは一つずつ見るわけではなくて、安全も環境も一緒に見ますので、一回入ったときに追加の大気汚染防止設備も見る、そういう意味で、追加はされますけれども、手間はそんなにはふえない、こういうことだと思います。
○穀田委員 今、手間はふえない、こうなっているんですが、ただ、先ほど来問題になっていますように、例えば北朝鮮の船の問題でも、見る角度がふえると、逆に、大気汚染の問題からしますと、先ほどあったように、今まででも二百九隻を調べて百二十八欠陥がある、こういう事態が発見されている。これによって、例えば、さらにこういう不適格な船がふえるというふうに見ていますか、それはどうですか。
○鷲頭政府参考人 おかげさまで、ポートステートコントロールというのは大変日本では有名になってまいりまして、日本に入る船、別に北朝鮮に限らず、そういう形で厳しくチェックされるという意識を持っておりまして、そういう意味では、我々も体制整備をしてやっておりますけれども、そういう予告効果もあって、これからどんどんふえていくというふうには余り考えておりません。
○穀田委員 わかりました。
では、次に、船舶からの大気汚染防止に関しては、今まで何の基準もなかったという点では前進なんですが、国際条約批准に伴い、今回の改正でやっと外国船も含めて規制しようというわけですが、規制をいかに守らせるかという点で課題が残されていると思うんですが、四百トン未満のものは検査対象という点ではどうなるんですか。その辺、ちょっとお聞きしたいと思います。
○澤井政府参考人(国土交通省総合政策局長) 例えばNOx規制で申しますと、エンジンにつきましては百三十キロワット以上、全部、工場でつくる段階で検査をします。これは船の大きさという意味でいうと相当小さいところまでいきます。
検査にはそういう個別の設備の検査と、それから船舶をまとめてやる船舶検査と両方ございまして、特に外航船につきましては、四百トン以上ということが条約で決まっておりまして、これは、海事関係の条約、いろいろな場面でそういうすそ切りがございます。そのすそ切りのあり方というのは、いろいろな加盟予定国との間の議論で決まってくるものですから、その条約によっていろいろでございますが、このMARPOL条約では大体四百トンというラインで切っておりまして、船舶検査、全体をやるのは四百トン以上ということになっております。
○穀田委員 だから、それは大体はなからわかっているんですけれども、四百トン未満のものは、では、実際は、今後そういう規制との関係でいったら、どういう方向で努力しようと思っておられますか。
○澤井政府参考人 繰り返しですが、窒素酸化物につきましては、エンジンをきちんとそうやって各国が全部やります。日本もやりますし、日本に来る外国船についてはその外国船の旗国、母国でやります。それでエンジンは押さえられます。それから、例えば油でいいますと、重油の販売の段階ですべて押さえます。これはどの国もそうやります、加盟国につきましては。それで、ほぼ一〇〇%規制ができるだろうというふうに思っております。
繰り返しですが、四百トンというのは、そういうことをある意味ではまとめて、パスポートとして、外国に行くときに持たせる証書について四百トン以上というふうに御理解をいただきたいと思います。
○穀田委員 わかりました。
では、次に、油濁の方について少し聞きますが、私も実は、九七年一月に、予算委員会でナホトカ号の事故に関連して、当時、橋本総理や古賀大臣でしたが、議論しました。私は、流出事故の際に早期に対応する必要性の問題について問うて、とりわけ日本海側にも油回収船の配備などを検討すべきだと当時提起したのを今でも覚えています。
ナホトカ号などの事故を教訓として、その取り組みがどうなったか、大枠だけでいいですからお話しください。
○鬼頭政府参考人(国土交通省港湾局長) お答えを申し上げます。
平成九年一月に発生をいたしましたロシア・タンカーのナホトカ号による大量油流出事故では、日本海沿岸に大変重大な被害をもたらしましたことは、委員今御指摘のとおりでございます。
このナホトカ号事故では、当時名古屋港に配備をされていました清龍丸、これは通常は航路のしゅんせつ事業に従事をしておりますが、油流出事故等が起きますとその回収に向かうといういわゆる兼用船でございますが、その清龍丸を派遣いたしまして、油回収作業に当たらせたわけでございます。
この清龍丸による油回収でございますが、一定程度効果はございましたが、現地に到達するまでに、名古屋から関門海峡を越えて日本海に向かう、そういう意味では若干日数を要することになりました。このため、当時の運輸技術審議会におきまして、流出油の防除体制の強化策の検討が行われまして、現地に到達するまでの日数を極力短縮するために、油回収機能を有する、今言いました清龍丸のような兼用船の拡充整備が必要であるという御答申をいただいたわけでございます。
この答申を踏まえまして、平成十二年度には西日本の海域をカバーする海翔丸を北九州港に配備いたしましたし、また、平成十四年度には日本海の海域をカバーする白山を新潟港に配備したところでございます。
この三隻によりまして、現在では、油流出事故発生時において、出動からおおむね四十八時間で全国をカバーする体制ができたところでございます。
○穀田委員 では、先ほど来問題になっているこの保険との関係で、北朝鮮籍船の問題について最後に少し質問したいと思うんです。
入っている船の割合は多いのだが、保険の加入の状況は、北朝鮮の場合二・八%と先ほどありました。それで、この法改正によって、例えば報告によりますと年間千三百四十四回入港する北朝鮮の船というのは、加入していなければ当然拒否できる。そうしますと、入港できないということになれば、保険の加入率というのは上がると思いますか、率直に。
○鷲頭政府参考人 今回の改正によりまして、保険の義務づけが課されることになりますので、我が国の港へ入港しようと考えるのであれば、保険に加入するものというふうに考えております。
それで、ちなみに金額をちょっと申し上げますと、百トンぐらいの船、我が国の漁船向けのPI保険によりますと、百トンクラスで年間大体四十万円保険料を払う、こういうようなことになっております。その四十万円というのは高いのか安いのかわかりませんけれども、それぐらいのお金を払えば保険に入れますので、ビジネスとして、日本に来る方が得である、こういうことになれば入ることもありますし、そこはもう経営判断だと思います。
○穀田委員 今お話があったように、保険料というのは、あそこの船でいうと大体四十万から百万ぐらいの範囲で推移しているんだと言われています。
そこで、ただ、問題は、加入するということはあるんでしょうけれども、北朝鮮に限りませんけれども、それぞれ、日本の物価やその他の経済力が違いますから、問題は、保険に入ったといっても、実際起きたときに保険会社に支払い能力があるかどうかというのはまた別なんですよね。ここが問われると思うんですね。ここがいつもややこしい話になってくる。
私は、今、参考人からるる前段でお話があったように、実際上は入っているのが二・八%ですから、今の段階でいけば、客観的には九七・二%が入れないということになるんですよね。だから、全部加入するとはとても思えない。しかも、四十万という話があって、経済的効果がどうのこうのとある。しかも、それが本質的に、では事故があった場合、払えるかという問題もある。
ですから、結構、私、これは厳しくやれば、それ自身は入れないという事態になると思うんですけれども、問題は入れるか入れないかだけじゃなくて、肝心な問題は、事故が起きたときに、そういう支払い能力との関係で、保険会社含めて大丈夫かという問題が問われると思うんですね。そこの点についてはいかがでしょうか。
○鷲頭政府参考人 御指摘の点につきましては、法律上、保険の内容につきましても、支払い対象とか保険金額についての要件を課しておりまして、それを満たすものだけを保険として認めてあげる、こういう仕組みになっています。
ちなみに、保険証書によりまして、ちゃんと座礁事故や燃料油の油濁事故について保険金が支払われるような契約になっているかとか、あるいは保険金額がちゃんと法律上船主が負うべき責任を果たす金額になっているかということをチェックいたしますし、おっしゃいました保険会社そのものにつきましても、保険の付保実績、過去、ほかのタンカーとか何かにもちゃんと保険を掛けて、油の世界ではそういうのは各国で認められているのがありますので、そういう会社がどうかとか、あるいは過去支払われなかったというような問題がないかどうか、そういうようなことをチェックして証明を出そう、こういうふうに考えております。
○穀田委員 今の話、いろいろ聞きましたけれども、いずれにしても、海の環境を守るという点では、私どもは、極めて重要な二つの法案、前進的な側面があるということで賛成をしたいということを表明して、質問を終わります。
【「しんぶん赤旗」2004年4月1日】
回転ドア事故“報告の体制つくる” 衆院委 穀田議員質問に住宅局長
国土交通省の松野仁住宅局長は三十一日の衆院国土交通委員会で、ビルなどの自動回転ドアの事故について報告させる体制をとっていくことを初めて明らかにしました。
これは、日本共産党の穀田恵二議員が、東京・港区の「六本木ヒルズ森タワー」で男児が自動回転ドアに挟まれ死亡した事故について、「ガイドラインの作成、建築基準法の改正などを早急にやることは当然なことだが、こういう建造物にかかわる事故については報告させる、最低限そういうしくみを作るべきだ」との追及に答えたものです。
松野局長は「事故原因について建築物の構造あるいは設備の状況という観点から分析を行う体制を整備することは、ご指摘の通り重要なこと」と述べ、事故情報をとれる体制をつくっていく考えをのべました。
穀田氏は、「問題は効率化を最優先にし、安全を軽視したことにある。企業にも安全を最優先するという社会的責任があるし、これを守らせることが行政の責務だ」と指摘。「こういう超高層ビルには回転ドアだけでなく、思いもよらぬ事故が発生する危険がはらんでいる。そういう角度から安全問題について一から見直す必要がある」と強調しました。
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