【第159通常国会】
衆議院・国土交通委員会 (2004年4月13日)
本日の会議に付した案件
高速道路株式会社法案(内閣提出第一一二号)
独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案(内閣提出第一一三号)
日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第一一四号)
日本道路公団等民営化関係法施行法案(内閣提出第一一五号)
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○赤羽委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、高速道路株式会社法案、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法案、日本道路公団等の民営化に伴う道路関係法律の整備等に関する法律案及び日本道路公団等民営化関係法施行法案の各案を一括して議題といたします。
本日は、各案審査のため、午前の参考人として、筑波大学社会工学系教授石田東生君、構想日本代表加藤秀樹君、社団法人九州・山口経済連合会副会長飛松建二君及び社団法人京都経済同友会常任幹事上村多恵子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の皆様方に、本委員会を代表し、一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。
本日は、御多用中のところわざわざ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。各案につきまして、それぞれのお立場から、ぜひとも忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。大変限られた時間ではございますが、最後までどうかよろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、石田参考人、加藤参考人、飛松参考人、上村参考人の順で、それぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
なお、参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は着席のままで結構でございます。
それでは、まず石田参考人にお願いいたします。
○石田参考人(筑波大学社会工学系教授) 筑波大学の石田でございます。
道路関係四公団の民営化関係の法案についての意見を述べさせていただきます。
まず、結論を先取りして申し上げますと、四法案に私は賛成でございますし、支持をいたしております。
その理由でございますけれども、今回の四法案については、私が見ます限り、五つの非常にすぐれた点があろうかと思います。
まず第一点でございますけれども、債務の償還期間を四十五年以内と明確に、絶対的に決めたことでございます。
従来の有料道路方式では、新しい区間が開通するたびに換算起工日というのを算定いたしまして、実質的に償還期間が延長される、そういうことがございまして、これが国民の批判を招いておったという事実がございます。
今回の法案では、四十五年後までに債務を完済し、機構は解散するとともに高速道路を無料開放するということを絶対的に定めております。このことを担保するために、コスト縮減策、あるいは、高速道路に係る債務については民営化移行時点の総額を上回らないなどの歯どめがなされている点も評価できようかと思います。
このように料金徴収期間が四十五年というふうに絶対的に定められたために、やはり徴収期間を長くするために早期完成を目指そうとか、あるいは、債務を積み残さないための徹底した採算重視なんかの機能も期待できますという点が第一点でございます。
第二点でございますが、高速道路は国民共有の資産であるということをこの法案では明確にうたっておりまして、それも非常に高く評価してございます。
高速道路というのは、国の最も基幹的なインフラでございまして、国土計画の観点からも国が責任を持つべきであろうというふうに思います。
欧米の例で申し上げますと、イタリアとかフランスにおきましても、高速道路は最終的には国に移管されるということで、決して高速道路の民有化はなされておりません。民営化はなされておりますけれども、民有化はなされておらない。
特に最近では、フランスの高速道路の民営化会社、これは混合経済会社という形をとっておりますけれども、それの北部高速道路会社というものの株を民間に放出しよう、そういう動きもありましたけれども、それはやはりまずいんじゃないのということで、混合経済会社という形を続けるということなんかの動きも、新しいものとして出てきております。
三番目は、高速道路会社の経営自主性と、そのための協議とか契約が非常に透明性のある形でなされるようになったという点でございます。
各会社が、この法案にもありますように、原則として事業範囲とする高速道路を設定できることが大きい。新規区間については、御存じのように申請方式を採用しておりますし、事業、調査中区間につきましても、協議を踏まえる、実質的な拒否権もある意味では与えられているという点が大きいと思います。
また、建設に関する資金についての市場調達につきましても、一部については政府の債務保証もついておりますけれども、市場調達が原則であります。これを、完成後には債務と高速道路そのものを機構に引き渡すという形になっております。これは、PFIでいうところのBTLO方式、建設をして、国にトランスファー、移転をして、リースを受けて、オペレートをする、そういうことでございまして、PFIの中では自主性が働くというふうに言われている方式でございますので、このことも評価できると思います。
評価すべき四点目でありますけれども、料金設定についても、利潤を含まないということも非常に大きな点かと思います。
四十兆円にも上る債務の確実な返済、あるいは、非常に残念なことでありますけれども、世界で一番高いと言われている高速の料金の引き下げということを考えた場合にでも、いろいろ議論がありますでしょうけれども、やはり料金の引き下げというのが最優先に考えられるべきでございまして、この意味から、経営インセンティブに関しては別の形が考えられるべきではないかな。そういう意味では、利潤を含めないという選択が賢明であろうというふうに考えます。
五番目でございますけれども、今まで全国プールをとっておったわけでありますけれども、これは、ある意味では、地域に分解をした。高速道路は、当然のことながらネットワークとして機能を発揮するものでありますから、内部補助というのは必要なものだろうというふうに思います。ただし、その内部補助をどういう歯どめをかけるかということも非常に大きな問題であり、同時に考えるべき問題でございます。
このようなことから、ネットワークごとに協定を結んで、その中で会社間の内部補助はしない、ただし、いろいろな経済変化等に関しましてリスクが存在をするので、機構が債務については一元管理をするという形もよろしいのではないのかなというふうに思います。
ただし、法案自体はこのようにすぐれた点をいろいろ持っていると思うんですけれども、世の中には、そうはいっても本当にできるの、そういう批判も多いように思います。そういう観点からいたしますと、もう既に改革の歩みは始まっているのではないのかなというふうに考えております。
その第一番目といたしましては、今回の整備スキームの見直しを明確かつ明快に公開ベースで行ったこと。これは、需要予測の徹底的な公開もそうでございますし、新直轄あるいは有料道路の整備の振り分けにつきましても、評価方法を明確にした上でデータを公開されてお決めになったということ、このことにやはり改革の息吹を感じるものでありまして、信用できるんじゃないのかなというふうに思います。
二番目が、料金の先行的引き下げの努力についてもされている。ETCを用いた長距離割引、夜間割引等がございまして、社会実験なんかで非常にいい効果をもたらしている実例もございますし、存続を求める声が大きい。このことについては、ぜひ、前倒し的、先行的に実施していただきたいというふうに思います。
三番目でございます。コスト縮減につきましてでありますけれども、これにつきましても、非常に精力的な検討をされて、数字が積み上がっております。
でも、実際どうなのということでございますけれども、私が調べました範囲では、工費見直し、工法の見直し等によりまして一五%から三〇%程度のコスト削減の実現がもう既にされておりますし、規格の見直しによってさらに上積みができますでしょうから、実現性があるんじゃなかろうかというふうに思います。
このようなもう既に始まった改革とこの四法案のいい点が結びつきまして、いい、本当に必要性の高い道路を早期にかつ効率的に整備できるという形が可能になるんじゃないのかなというふうに思います。
ただし、今後の進め方についても何点か要望がございまして、順に時間内で申し上げます。
まず第一番目は、経営インセンティブの具体的あり方についての速やかな検討でございます。
どういう形で本当に経営インセンティブが働くのかということについて、まだ不明確な点もございますので、そのことについては、今後できるだけ早く国民の目にわかる形で議論を進めていただきたいということ。
二番目は、大きな社会経済状況の変化に対する柔軟かつ迅速な対応も必要でしょう。
需要予測の結果では、GDPとか人口が交通需要に大きな影響を与えるというふうに言われておりますけれども、これからの東アジアとの関係とか国土の新しいあり方ということを考えた場合に、非常に大きなうねりが来るでしょうというふうにも思えます。そのことについて、機構の中期目標、中期計画あるいは協定を、国民の目に明らかな形で、情報公開の上でどうローリングをしていくかということが重要だろうというふうに思います。
あと、三番目が維持管理が重要でしょうということと、コスト縮減についてもさらなる具体化を図っていくべきであろうというふうに思います。
一番最後に、強調させていただきたいのは、やはりこれからにつきましては、意思決定を透明なものにするということが非常に大事だろうと思います。
そのためには、徹底した積極的な情報公開と、参画型、国民が本当に参画できるような議論、意思決定が必要なのではないのかなというふうに思いまして、意見を終了させていただきます。(拍手)
○赤羽委員長 ありがとうございました。
次に、加藤参考人にお願いいたします。
○加藤参考人(構想日本代表) 構想日本の加藤でございます。
横とじの「道路関係四公団の改革について」という六ページのレジュメに基づいてお話をしたいと思います。
まず、表紙のところに「「民営化」の目的は、道路行政の改革」である、大きい字でそういうふうに書いておきました。
私が今からお話しすることはすべて、何が最終基準かといいますと、国益、すなわち国民全体の利益、そういう観点からお話をいたします。
そういう観点から考えますと、民営化というのは、もともと目的ではないわけですね。では、何が目的かといいますと、四十兆円まで、これはもう今の歳入総額に匹敵する金額です、この四十兆円の債務をいかに国民負担を少なくして処理するかということ。もう一つは、ここは難しいところですけれども、野方図な建設、むだな道路の建設をどうやってとめるかという、この二点に尽きると思います。
そういう意味では、最初のページの下にちょっと小さい字で書いておりますけれども、公物という名のもとで、現在はどうも私益優先で建設が決められている。公物であるとか公共的なサービスであるとかというのは、道路は公物だ、道路をつくることは絶対的に公共的なサービスだ、まずそこを決まったものということでは考えられないわけですね。どこまでが本当に公共の利益に資するものであるかという、ここのところが難しい。
ですから、だれが保有するのか、あるいはだれが経営するのかということは、その時代、状況で考えていく、また、考えていって、柔軟に対応できる仕組みにする。私は、民営化の意味はそこにあるんだと思います。
そういう意味では、民営化というのは、やや逆説な言い方にはなるわけですけれども、投資家ですとかあるいは金融機関ですとか、勝手に政治的な利害で決められない、政治的な利害から手の届くところから、マーケットの力というものを利用することによって離していく、それが逆に公益に資することになる、そういうことであると思います。
そうやって見ますと、今回の法案は、残念ながら、公益により資するようにするという意味での道路行政の改革にはなっていないのではないか、さらに言えば、近い将来もう一度見直さざるを得なくなるのではないかという危惧を持っております。
一枚めくっていただきまして、一ページ目からさっと、委員の皆様方、もう今さら御説明の必要もないことでありますけれども、さっとおさらいをしたいと思います。
まず、道路関係四公団、この仕組みとしての何が問題かということを見ていきますと、一ページ目です、非常に理由は簡単なんですね。赤字事業というのは、これは、どこの会社もこうなれば赤字、当然ですし、あるいはここで挙げております赤字事業の理由というのはすべての特殊法人に共通することですけれども、二つに尽きると思います。一つは、常に需要見通しが過大であったということ、もう一つは、コストの過小な見通し、この二点に尽きるわけです。
普通であればこの二つの点というのは、企業であれば続かないわけですね。ところが、何でそんなに長期間にわたって続いていって、しかも、その結果として債務がこんなに大きく膨らんだかということの理由が下に書いてあります一から四までです。
まず、情報開示が不十分であること。
少し具体的に見ますと、結果としては粉飾決算と言っていいような決算、これが可能になる財務諸表の仕組みです。これは、民営化委員会の過程の中で、国会の中でも随分話題になりましたから、御説明の必要もないと思います。
もう一つは、需要見通しというものが、どんどん伸びるんだという数字はしょっちゅう出されているわけですけれども、根拠がよくわからない。
それから、二番目、ここは一番大事なところですけれども、償還主義、プール制というこの二つのどんぶり勘定があるものですから、個々の事業あるいは毎期毎期の事業がどうなっているかというのがよくわからない。償還主義というのは、四十年あるいは五十年先にとんとんになって、お金は返せるよという仕組みですし、プール制というのは、全国一本の道路全部が完成すれば、そのときにはちゃんとうまくいくよという仕組みですから、これは、企業ではなかなかあり得ない仕組みです。
それから、三番目は、責任の所在が明確でないこと。
これが仮に、道路であっても、国が直接、いわゆる直轄で行う工事ですと、いろいろ批判はあるとしても、国会で御審議いただいて決まるわけですけれども、そういう意味では、特殊法人という仕組みというのは、市場のチェックも国会のチェックもない。本来いいとこ取りのつもりでつくったわけですし、当初はそうであったわけですけれども、今やそれが悪いとこ取りになっているということだと思います。
それから、最後に、株主とか金融のチェックが不在ということです。
金融機関であれば、昨今話題になっております貸し渋りというのがありますけれども、そんな、貸し渋りどころじゃなくても、そんなことはしなくても、四十年先こうなるんだということで、もうそれは、普通の金融機関であれば、まず絶対貸さないわけですね。では、なぜ貸すかというと、結局、これは、今までは財投資金で賄われてきていたわけですし、今後もこの政府案では政府保証がついているということだと思います。それから、いわゆる財投にとっては、道路公団というのは今までとてもいいお客さんであったわけですね。それからもう一つは、ここで財投のお金を出さなくなると、多くの特殊法人が抱えている不良債権の問題、あるいは過大債務の問題が顕在化してしまう。ですから、貸し手側の論理としても、これはどんどん貸し続けるしかないということだと思います。
次の二ページ、三ページ、四ページは、過大な需要見通し、コストの過小見通しの、ちょっとした御参考までです。
二ページ目の絵は、これはパソコンから出したものですから、大変見にくくて申しわけありません。アクアラインの収入計画の例であります。
平成九年度につくった当初の計画が上の太い線です。平成九年の時点で、これは横の目盛りが、一番上が五万五千、五千台刻みで、一日当たりに通る台数ですね。五万五千、五万、四万五千、四万と五千台刻みなんですが、当初の予定がスタート時で二万五千台、それが五年後には四万台余りになり、その十年後には四万六千台になり、平成三十二年には五万四、五千台になるという予定で来たわけですけれども、ふたを開けてみますと、一万台前後で横ばいである。
そこで、平成十二年度に見直しをいたしました。十二年度に見直しをしたのがその下の線でして、これでもやはり、十二年度に一万台からスタートをし直して、平成二十一年度には三万五千台、それから平成三十二年には四万一千台、そうなっているわけですけれども、多分そうはならない。常にこういう、これはほんの一例であります。
それから、三ページですが、これも、コストの過小見通しの幾つかの例にすぎません。
平成六年時点での計画で見ますと、平成六年時点で建設費が十一兆五千四百八十億円、その時点の計画で平成十一年が十五兆八千五百億円です。この差額を見てみますと、過小積算ということで三割ほど安くなっております。同じような例で、第二東名でも現時点と平成八年でやはり三割、それから東京湾のアクアライン、これは全部終わっているわけですけれども、実績と計画で二割の積算になっています。
四ページ目もやはり同じです。一から六まであります。平成六年の料金値上げ時の経費削減が、これは一〇%減。この建設費一〇%という数字も、内容はよく開示されておりません、一〇%減ということになっております。同じように、平成八年、あるいは平成九年から十一年度の公共工事コスト縮減行動計画、以下、十二年から二十年、十五年から二十年、それぞれすべて一〇%減ということですが、こんなにどんどんコストが本当に削減されていましたら今やすごく安くなっているはずなんですが、それがどうなったかという検証は全くありません。
結局は、過小積算ということは、こんなにコストが安くできるんだから、もっとたくさん道路ができるということの論拠になっているにすぎないということだと思います。
五ページ目ですけれども、では、なぜ民営化するのか。
最初に申し上げたとおりでありますけれども、もう一度これを整理いたしますと、公物あるいは公益の名のもとに道路事業が私益化しているのではないか、建設自体が目的化している。その結果、野方図な道路建設と債務返済の先送りがどんどん進んで、最終的には四十兆円の債務が積み重なって、最終的には経営破綻、そのツケは国民に来るおそれが大いにあるということです。
民営化委員会のプロセスの中でも、国民負担なしということですけれども、結局それは、今キャッシュを投入しなくても、先にあるのは、税金等による、単に先送りできる、するのみということになるおそれが非常に高いんだと思います。
これを可能にしてきたのが、今申し上げました公団、あるいはプール制、償還主義という仕組みで、今、外から見えない仕組みによって、これがどんどんつながっているということだと思います。
では、民営化すればどういうメカニズムが働いてそれが正されるかというのが、下にかいた絵であります。
償還主義、プール制を廃止すること、あるいは市場によるチェックをきかせること、事業会社としての自主的な判断による経営が行われるようにすること。そのことによって、需要見通し、コスト計算が厳格化され、財務諸表が開示されるようになり、責任の所在が明確化する。その結果、野方図な道路建設に歯どめがきき、極力自力で債務返済ができるようになり、国民負担が最小化される。そういうプロセスだと思っております。
最後に、六ページ目ですけれども、では、今の政府案がそのとおりになっているかどうかということですが、残念ながら、それとはほど遠い内容になっていると言わざるを得ないと思います。
まず、いわゆる上下分離方式ですから、資産と負債を管理する保有・債務返済機構と、その道路を借りて管理業務を行う会社に分かれているわけですから、この間の主従関係はこれまでと全く変わらない、むしろ強化されると言ってもいいぐらいです。
そこの下に、いわば会社の方はかいらい会社にしかすぎないと書いてあります。したがって、道路公団の総裁なり、あるいは一部の委員も含めて、経営の自主性を確保するんだということをしきりにおっしゃいますけれども、幾ら自主性があると力んでみても、実際にそれは、自主性がある仕組みをつくらないと、自主性を持つんだ、持つんだというスローガンを叫んでみても何の意味もないと考えております。この仕組みがそもそも対等でないわけですから、その範囲の中で自主性と言っても、ほとんど実質的な意味はないと思います。
それから、二番目に、償還主義と料金プール制が温存されております。
これは、償還主義で四十五年になっているわけですけれども、四十五年というのは、恐らく、今この決定にかかわっている方はほとんど、まあ、残念ながらもう生きていないんじゃないかというようなことを言うと不謹慎かもわかりませんが、しかし、私も含めてそう考えざるを得ないですし、少なくとも現役で、この中でまだまだこの行政に携わっているということにはならないと思います。
それから、料金のプール制はやはり温存されているわけですし、今後、会社が新しくつくった道路、そこにかかった建設コストというのは、すべて保有・債務返済機構につけていくわけですね。そうなりますと、幾ら区分経理をするとはいっても、それはそれだけの話でありまして、資産も債務も機構が一元管理するという仕組みの中では、従来のプール制は全く変わらない。したがって、個々の事業収支もわからないということになるんだと思います。
それから、コスト削減ですけれども、これも先ほどの参考三のところで申し上げましたように、削減するという数字を幾ら出してみても、後でそれは削減されていないということですから、民営化の意味というのは、コストをぎりぎり切らざるを得ない、そういう経営努力を迫られて、せざるを得ない状況に押し込めていくのが民営化でありまして、経営陣が削減する、あるいはあらかじめ国が削減数字を示すということとは全く違う。そういう意味では、これは何の担保も行われていないと言わざるを得ないと思います。
以上、おさらいのようになりましたけれども、最初に申し上げました、したがって、残念ながら、国民全体の利益を反映する案にはなっていないのではないか。ぜひ、これが国会の御審議の中で少しでも国益をあらわすものになっていくような、有効な、有益な御審議をお願いしたいと思います。
以上でございます。(拍手)
○赤羽委員長 ありがとうございました。
本日の委員会の日程が大変タイトとなっておりますので、ぜひ、時間厳守の御協力のほどよろしくお願いを申し上げます。
次に、飛松参考人にお願いいたします。
○飛松参考人(社団法人九州・山口経済連合会副会長) 九州・山口経済連合会の副会長飛松でございます。
貴重なお時間をちょうだいいたしましたので、地方の経済界の立場から意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
参考人前お二人の御意見と大分トーンが違うわけでございますけれども、お許しいただきたいと存じます。
高速道路は、地域計画のまさに骨格であると申し上げても過言ではございません。私ども地域経済人といたしましては、地域の自立的な発展と産業競争力の根源といたしまして、最も優先的に整備されるべき基礎的なインフラである、かつ、日常生活を初め経済活動、観光などあらゆる面において道路への依存度が高い九州におきましては、緊急かつ計画的な整備促進が必要不可欠であると認識しております。
道路への依存度を具体的に申し上げますと、お手元にお配りしてございます参考資料でございますが、その一ページ目の資料一をごらんいただきますと、陸上輸送のうち自動車に依存する割合でございますが、九州では、旅客で九二%、貨物で九九%となっておりまして、ほとんど一〇〇%と言ってもよいほどの自動車交通依存でございます。
これを鉄道で見ましたのがその次の資料の二でございますが、これは鉄道の線路の密度でございますけれども、首都圏の充実度に比べまして、九州ではざっとその四分の一程度にすぎません。また、東九州、JR日豊本線があるわけでございますが、本線とはいえども単線でございますし、便数も少なく、速度も極めて遅い、利便性が格段に低いと言わざるを得ないわけでございまして、九州・宮崎におきましては、結果として高速道路に依存せざるを得ない状況でございます。
特に、産業面におきましては、経済のグローバル化が進んでおりますが、それに対応して、地域産業の競争力の強化が喫緊の課題と認識しております。とりわけ、アジアに近い九州におきましては、韓国、中国を初めアジア諸国との競争、共存が差し迫った課題でございまして、私ども九州では、環黄海経済圏構想を推進しているところでございます。
これら近隣諸国におきまして社会資本の整備が急速に進んでおりますが、伝え聞くところによりますと、中国では既に高速道が約三万キロメートルになっている由でございますし、これらを背景といたしまして、安価な製品などが流入しておりまして、製造業に限らず農産物関連におきましても、景気回復がいま一つの現状のもと、大変な脅威となっております。このような状況からも、空港、港湾などの交流拠点の活用とあわせ、これらを一体的、効率的に連結する高速道路の整備は重要でございます。
さらには、地域の自立的発展を目指す地方分権を実現するためにも、市町村合併の受け皿をつくるに当たりまして、基礎的なインフラの整備は不可欠でございます。特に、高速交通ネットワークの着実、計画的な構築を急がなければならないと考えております。
お手元の九州の地図があると思います。ちょっとパネルが小そうございますけれども、このような状況にあるにかかわりませず、九州における高速道路ネットワークの現状は、計画総延長約千五百キロメートルに対して、六割程度の供用でとどまっております。中でも、宮崎県では、整備率が三七%という状況でございます。
また、このパネルでおわかりいただけますように、九州を循環する高速道路ネットワークに不可欠でございます東九州道路、ごらんいただけますように、全く東の方は空欄でございまして、東九州自動車道は、全長四百三十六キロのうち供用区間はわずか百二十九キロ、三割程度しか整備されていない状況でございまして、九州の中でも大変おくれております。
おわかりいただきやすいように時間距離で申し上げますと、大分市と宮崎市との間は国道十号で約二百キロでございます。これは東京から静岡市までの距離とほぼ匹敵するわけでございますが、東京―静岡間は東名を利用いたしますと約二時間ぐらいで結ばれておりますのに比べまして、大分―宮崎間は約五時間を要します。その差は約三時間にも及んでおります。
冗談を申し上げますと、宮崎の隣は大分ではなくて、海の向こうのカリフォルニアであるといったような冗談も言われておる状況でございます。
また、宮崎県内の二大拠点都市でございます延岡と宮崎市の間、国道十号が唯一の幹線道路でございますが、この間九十キロのうち約六割が二車線区間でございます。追い越しもできないところが多うございまして、約二時間半かかります。このことは、宮崎にとりまして大きなハンディキャップと言わざるを得ないところでございます。
このように、東九州地域におきましては、鉄道が貧弱でございますし、道路の整備も格段におくれている現状にございます。
一方、多少ひがんで申し上げますと、西九州地域では、既に全線開通しております九州縦貫自動車道に加えまして、先月には九州新幹線が先行開業いたしまして、東九州軸と西九州軸の時間格差あるいは地域格差は、今後ますます拡大していく要素をはらんでおります。ある意味ではがっくりしているというのが東九州側の偽らざる感触でございます。
東九州地域には、お手元の地図でごらんいただけますように、数多くの空港なり重要港湾がございまして、その周辺には結構大きな工業集積がございます。自動車工場の立地やハイテク関係企業の拡充といった動きも出てきております。また、申すまでもなく、多くの歴史的、文化的遺産や、豊富な食材あるいは伝統工業、さらには、申すまでもなく、魅力的な自然環境やリゾートなど、その産業資源は枚挙にいとまがございません。
こうしたすばらしいポテンシャルを有する東九州地域でございますが、高速道路がないことに伴う時間的制約といったものが必ずと言っていいほど話の中でネックとなっておりまして、それぞれの点が、まさに点でございまして、面になっていない、線にもなっていない、そのポテンシャルが死んでいるということを申し上げたいと存じます。
お配りしております資料の地図の一番後ろ側に、九州の産業集積図というのがあろうかと思います。
ごらんいただきますと、東九州、特に大分県の南部から宮崎、鹿児島へかけての東側の出荷額が、この赤い丸が小さくなっていることがお見とりいただけるかと存じます。
高速道路は、申すまでもなく、全線が開通して、ネットワークが完成して初めてその機能が十分に発揮されるわけでございまして、企業活動にとどまらず、災害時の代替道路あるいは救命救急活動等々波及効果も大きなものがございます。
お手元の参考資料の二ページの資料四をごらんいただきたいと存じます。
これは、九州経済産業局が十五年度にお調べになったものでございますが、部品の調達や商談を考えると取引相手は二時間以内に行ける地域が限度であるという意見が、九州地域の中堅中小企業、メーカーでございますが、寄せられております。また、七割の企業が高速道路が整備されることにより取引の範囲が広がるというように答えておられます。
例えば、東九州自動車道、九州横断道路延岡線が完成いたしますと、九州の高速道路は大きな円に横軸がまた入りまして、延岡市から宮崎市、大分市、熊本市まですべて、おおむね二時間以内に入ります。そういたしますと、交流可能人口が現在の六十万から六倍、三百五十万人にも上ることと相なります。
地方の高速道路につきましては、採算重視の立場から、不要ではないかという御意見も一部聞かれたところでございます。しかしながら、生活の利便性の向上や交流機会の拡大といった市民生活の観点あるいは地域経済の観点からも必要性を議論していただきたいと存じております。情報化の時代であるからこそ、人、物の流れが情報も運ぶわけでございまして、この点を見逃すわけにはまいらないところでございます。
また、既に基本的な骨格はでき上がっているではないかといった認識もあるようでございますが、これは地方に住む者から見ますると、地方を切り捨てておられるにほかならず、また最近、経済構造の二極化現象が言われておりますが、それを助長してしまうというように考えております。高速道路の必要性はその進捗率とか採算性によってのみ判断されるのではなく、我々の子孫の代まで見据えた国土のグランドデザイン、例えばアジアとの関係、位置づけなども考えた上で判断されるべきものであると考えております。
私どもといたしましては、御審議いただいております道路関係法案は、九州の自立的発展と産業競争力の根源となる高速道路の整備を着実かつ速やかに進めることができる仕組みであるというように受けとめております。
高速道路の議論の中のポイントの一つでありましたコストの縮減といった点につきましては、今後の道路整備を考える上で必要であると私どもも考えております。民間経営の手法あるいはコスト縮減の工夫など、限られた財源を有効に生かしながら、どのように高速道路を整備していくかということは、私ども地方経済人にとりましても非常に重要なテーマであると認識しております。
私ども九州・山口経済連合会では、昨年、九州地方知事会と共同で九州地域戦略会議を設立いたしまして、九州は一つの観点から諸活動を展開しております。その会議の中で、九州の一体的発展に資するためにも九州の循環型高速交通ネットワークの構築が必要だといった認識のもと、戦略を進めているところでございます。
本日御列席の先生方には、こういった諸事情も十分御勘案いただきまして、地方における高速道路の整備を着実にお進めいただける道筋をつけていただきたいと切にお願い申し上げまして、私からの意見陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○赤羽委員長 ありがとうございました。
次に、上村参考人にお願いいたします。
○上村参考人(社団法人京都経済同友会常任幹事) 京都経済同友会の常任幹事を務めております上村多恵子でございます。よろしくお願いいたします。
私は、経済産業、特に倉庫物流業を私自身が経営をいたしておりますので、物流、ロジスティックスという観点から、また京都、関西地域という観点から述べさせていただきたいと思います。
お手元にごく簡単なレジュメがございますので、御参照いただきましたら何よりだと思います。
まず、タイトルを「国民生活とこれからの社会資本整備のあり方」というふうに、あえて社会資本整備といたしました。
と申しますのは、今回の道路公団民営化の議論をずっと見ておりますと、道路、道路というふうに道路のみに特化して、議論がだんだん中へ中へと狭くなっていくわけですけれども、やはり今大きく時代が変化していくときに、それにふさわしい社会資本整備のあり方、特に空港、港湾、道路、これは三位一体でございます。この国のこれからのグランドデザインの上に立って、そして道路がどうあるべきか、そういった観点をやはりもっと強く持っていただきたい。
せっかく国土交通省が、前の建設省と運輸省が一緒になったわけでございますから、前に決まった九千三百四十二キロとか一万一千五百二十キロとか、そういうものにこだわらず、もう一度、新しい時代にふさわしい日本地図に絵をかいていく、そういうグランドデザインが必要ではないかと思います。
まず、物流を取り巻く大きな変化、その前に産業構造の大きな変化がございますが、それは商流、金融、物流のすべてがグローバル化の波の中で、移行期の中で、今非常に大混乱をいたしておるわけですけれども、戦後日本をつくってまいりましたオールドエコノミー体制といいますか、工業を中心とした終身雇用、含み会計、土地担保主義、多重構造チャンネルという一つの旧モデルパッケージから、新しい、ニューエコノミーといいますか、消費を中心として、株主の利益を中心とする、そして労働の流動性を持たせながら、国際会計基準、時価会計とか減損会計とか、そういうものも取り入れながらダイレクトにチャンネルしていく、中抜きと呼ばれるわけですね、そういう新しい一つのパッケージに移行していく真っ最中だと思うんです。
その移行の中で、制度と新しいルールとの整合性がまだ十分とれていなくて、大きな混乱が社会の中にあると思います。頭でわかっておりましても、なかなか新しい体制に心と体が、企業経営者も含めて、みんながついていけないところがあるのではないかと思います。
オールドエコノミー体制というのは、長期的でじっくりと取り組めて、安定はしておりますけれども、活力がないということがあると思います。また、新しい、ニューエコノミー体制というのは、おもしろいけれども、せわしなくて、目まぐるしく、ころころ変わっていくものに対して迅速に対応していかなければならないんだろうと思います。
物流の変化で申しますと、やはり一番大きいのは国際化でございます。製造業が海外進出、特に中国との輸出入がどんどん増加してまいります。特に輸入が増加しております。食糧それから日用品、本当に輸入が多うございまして、恐らく、これからFTAの進展でますます食糧の輸入などはふえていくのではないかと思います。
ゆえに、やはり港湾、空港を窓口として、全国にいかに効率を上げて運ぶかということが大きな課題でございます。先ほど、取引先との相手は二時間以内が一つの限度という意見が出ておりましたが、本当に、いかに迅速に早く運べるかがキーになってまいります。かつ、調達、生産、販売、消費、リサイクルというものが一気通貫で、一元的に、国際的にやらなければならない、そういったことも求められております。
それから情報化の進展で、インターネットショッピングや通販が広がっておりまして、ますます物の流れは小口化と多頻度の配送が要求されております。インターネットでは一秒で行きますが、物はなかなか、パソコンの画面からばんと出てくるわけにはまいりませんので、やはり道路のネットワークが必要でございます。
我々の物流業界では、部分の最適化ではなく全体の最適化ということをロジスティックスということで今大きな課題にしておりますが、ロジスティックスという言葉自体がもともと軍隊用語、戦争の言葉でございまして、兵たんということで、武器とか弾薬、食糧、そういったものの補給線をどう確保するか、そういうところのアイデアから来ておりまして、サプライ・チェーン・マネジメントですとかサードパートロジスティックス、そういう手法を使って、今、もう一度機能と役割を見直す作業を我々は一生懸命やっております。
そういった時代に、ぜひ、新しい時代にふさわしい、工業を中心としたインフラの時代から、消費を中心とした新しい社会資本整備、インフラのあり方というものをまず大きく描いていただきたい、その上で道路の必要性、むだかどうかも含めて、もう一度検討をいただきたいと思います。
その次に、高速道路のあるべき姿ということなんですが、いろいろな観点があるのですけれども、幾つか挙げております。
その中でも一番、丸の四つ目のところですが、今なお高速道路のインターチェンジから随分時間のかかる地域がございますので、まだまだ必要でございます。
それから、高速道路であるのに、いつも停滞している地域がございます。ゆえに、一般道路の混雑に拍車をかける区域がありまして、近畿、関西でいいますと、名神高速道路から中国縦貫自動車道路にかけての区間が本当に込んでおります。ですから、第二名神の整備というのは、これは今抜本的見直し区間に入っているんですけれども、私はもう絶対に必要であるというふうに認識しております。
これから、関西、近畿は、情報家電とかバイオ、また、アジアとの連携とか観光、そういったものに力を入れていくわけですが、その足腰としてのインフラ整備、関西空港、道路との広域的な考え方、それから、同等機能を持つ道路があるということですけれども、しかし、現実的には、結節点がばらばらでございまして、時間が随分かかっております。基幹ネットワークになっておりません。あわせて、国道だとか府道だとか県道だとか高速道路の連結がとても悪い、そういうことで時間がかかります。
時間が大分迫っていますので、後のところ、たくさんあるんですが、ちょっとはしょらせていただきまして、次の日本道路公団民営化のあり方への要請というところのお話をしたいと思うんです。
私は、民営化推進委員会の、ショック療法という言い方はおかしいんですが、かなり最先端の金融の手法による議論のおかげで、今回の政府案というのはかなりいいものが出てきたと思います。恐らく、民営化推進委員会の議論なしにみずからこの案を出すのは無理であったのだろうと思います。旧体制をぶち破る役目を大きく果たされたという意味においては、第二ステップの実施化段階に入ったということだと思います。
ただ、真っ白なキャンバスに絵をかくことができませんので、現実、実行可能な方法で、今の政府の案にもう少し工夫をしてみてはどうか。
例えば、リース代をもう少しアップさせて繰り上げ返済をするためには、インセンティブを導入する。そのことによってやる気とか規律とかを出させる方法というのはあるのだと思います。
それからまた、四十五年の償還でございますが、余りにも長いというか、先のことがなかなかわかりにくい時代でございますので、これで一たん決めたらこの枠組みを絶対何が何でも変えないというのではなくて、ある程度フレキシブルにまた見直すというような制度をぜひ盛り込んでいただきたい。この先、またどんなインフレーションが来たりデフレーションが来たりするかわかりませんので、そういった経済の変化に対応ができるということが大切だと思います。
それから、二番目に、本来の使命、道路の公共性というふうなことと、それから経済的な合理性、経営というふうなものとのバランス、絶妙なバランスの上に立ってぜひやっていただきたい。
絶えずこの両者がやはり緊張関係が必要でございますし、どちらかが強くなってもいけません。しかし、私は、願わくは、五一%の公共性とか、本来道路の持つ使命感を大切にして、しかし四九%経済的合理性という、一%はやはりそちらの方にこういったものの場合には少し配慮があるべきなんだろうと思いますし、これを実効あらしめるためには、やはり民営化を進めていかれる方のリーダーにまず私心がないことが大事ですし、それから、本来の使命、公共性と経済的合理性の両方がわかる、そういう方が当たらないと、なかなかいいものにならないんだろうというふうに思います。
それから、民営化という方針が決まった今となっては、早く枠組みを決定してやりませんと、いたずらに延ばすと、かえって国民的利益が失われると思いますので、民営化という方針が決まった以上は、早くやるということが大切だと思います。
それから最後に、これは道路の問題だけではないのですけれども、せっかくきょう政治家の先生方がたくさんいらっしゃるので、ぜひお願いをしたいなと思いますのは、大きな時代が変わっていきますときには、玉も石も、玉石両方とも砕くことがあるというような、そういう乱暴なことを政府筋の方で時々おっしゃる方がいらっしゃるんですけれども、私はやはり、玉は玉、石は石として、玉というのは、経済的合理性に合わなくても、時代に合わなくても、やはり残すべきもの、大切にするべきものというのはあると思います。それから、石として、公共性の美名のもとに肥大化したり、あるいは、もう耐用年数を過ぎて用をなさないもの、時代に合わないものもあるかと思いますけれども、これは石だから砕いてしまえというのではなくて、石も何とか磨きながら、玉石一緒に砕くのではなくて、玉と石とをぜひより分けてそういった運営をしていただきたいということを最後にお願いしたいと思います。
以上でございます。(拍手)
○赤羽委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○赤羽委員長 穀田恵二君。
○穀田委員 参考人の皆さん、本当にきょうはありがとうございます。貴重な御意見をお聞かせいただいて、感謝を申し上げます。
お一人ずつ質問させていただきます。
まず、石田参考人に。
二十一世紀は環境の時代ということは、これは異論ないと思います。参考人は、「これからの道路整備を考える」という論文の中で、今の都市高速道路は、環境的にも景観的にも満足できる状態ではないので、大気汚染、騒音、振動、路線の地域分析などに配慮したい、いいイメージの道路をつくらないといけません、こう述べておられます。こういう点で、具体的にはどのような措置をすべきなのか、お考えを一つお聞きしたい。
二つ目に、また同じく論文では、コストの問題を述べておられます。私は、今の道路のコストというのが、とりわけ談合などで工事費が高騰しているという実態を目にしている、多くの方々もそう思っておられます。きょうの陳述でも、意思決定と経営の透明性が重要だと述べておられます。
私、そのとおりだと思うんです。今度民営化することによってそういうことが不透明になりはしないか。特に落札率などでいいますと、今まで未供用区間で九八%以上などというとんでもない実態があり、そして、なおかつ、献金がバックしてくるような事態が起こっている。こういう問題などからしても、私は、今のこれを防ぐためにはどうすればいいか、この二つについてまずお聞きしたいと思います。
○石田参考人 都市内の高速道路のあり方でございます。
私は、環状道路もそうでありますけれども、都市内の高速道路というのはまだまだ整備の必要があろうということを先生が言及されました原稿の中でも述べております。
と申しますのは、高速道路は非常に空間の効率性がいい、非常に限られた空間をたくさんの自動車を通すことができる、安全に迅速に通すことができる、そういう効果を持っておりますし、環境への配慮、これは多少お金がかかりますけれども、東京の外郭環状線のように緩衝緑地帯も整備をする、防音壁もきちんとしたいいものをつくると、相当程度沿線への悪影響を軽減することができる。そういうことをして高速道路のサービスレベルを上げて、都市内の細街路等に進入をしている自動車を集中させて、一元的に、環境問題等も解決できる可能性があるだろうというふうに思っているのがそこで書いた趣旨でございます。
そのような、やはり先端的な都市内道路、特に環状道路というものの整備のあり方を、いろいろな制約はありましょうけれども、真剣に考えていかなくちゃならないというふうに考えております。
二番目のコストの問題でございますけれども、民営化によって本当に系列化とかファミリー企業の問題が解決できるかと申しますと、私は、必ずしもそういうことが保証されているわけではないと思います。これは、民間会社でも系列会社、子会社をお持ちですし、民営化のモデルとしていろいろ参考にすべきJR等も子会社を多数抱えられておりますし、系列化なんかも進んでいるように思います。
そういう中で調達をどううまくするか、どう安く、効率的にしていくかというのは非常に大きな課題でございます。そういう観点からも、やはり公開性、透明性というのは重要でありまして、その意味からも、国のある程度の関与というのは必要ではないかなというふうに思います。
非常にくだらぬ例で申し上げますと、国鉄時代には路線ごとの収支が報告されておりました。まさに今、高速道路も路線ごとの収支が報告されておるとおりでございましたけれども、JRになってから、民営化されてからはそういう収支の報告がなくなりまして、どこでどういうお金の回り方をしているのかというのは、一般の企業会計以上にはわからなくなりました。
そういう面もあろうかと思いますけれども、ぜひ、今回の民営化には、その辺の経営データあるいはどういうことが行われているのか、どういう需要があるのかというデータの公開がまず大前提になるだろうというふうに思います。
○穀田委員 ありがとうございました。
それでは、加藤参考人にお聞きします。
参考人のいろいろな著作を見てみますと、持論の一つに、民営化問題については国民的なレベルで議論しなくちゃならぬということの必要性を説いておられます。
私は、道路公団の民営化というのは、最初は、借金をどうなくすか、むだな道路をどうつくらないか、そして政官財の癒着をどうなくすか、こういう国民的な関心があったと思うんです。しかし、どうもそれにこたえていないというのが現状で、それでまた国民的議論が起こっていないんじゃないかと思うんですが、その辺はどうお考えかということが一つ。
二つ目には、先ほども東京アクアラインの問題にお触れになりました。私どもも、一九八六年、こういう需要予測自身が必ず破綻を来すということを当時警告をしまして、そしてまた工事費も上がるだろうということを言いましたけれども、まさにそのとおりになったわけですが、今度の民営化というのは、道路をつくり続けるということだと思うんですよね、結局。
そこで、きょうお話がありましたように、最後のレジュメのところにありますが、四十兆円のツケがさらに拡大するだろうという話をされています。ですから、私もそうだと思うんです。その辺の詳論をできれば二つ目にお願いしたいと思います。
○加藤参考人 まず第一の点ですが、これは抽象的なことになってしまうと思います。
私は、民営化推進委員会、これはいろいろ問題はあると思いますけれども、しかし、こういう委員会をつくって、そこでなるべくオープンな議論をしていくという意味では、かなり国民的な関心を呼んだ、ちょっと本来の筋じゃないところで呼んだ部分もありますけれども、それなりの役割は果たしたんだと思います。
先ほども申し上げましたように、そこでの結論というものが、私は、これ自体は満点からほど遠いものだとは思いますけれども、それでも一応の民営化の範囲におさまるものは出てきたのかな。しかし、そこから先が、一応オープンな議論を経たものと全く似ても似つかぬ案が出てきたところが問題なのではないか。国民的議論ということでいうと、そこにプロセス上の問題が大いにあったのではないかと思います。
それから、少しそれるかと思いますけれども、私は、これも再三申し上げますように、道路をつくるかつくらないかということと、それから今まで道路をつくる主体であった道路公団をどうするか、その結果として、むだな高速道路が今の仕組みの上でできないようにするには、あるいはその債務をどうやって、なるべく国民の負担を少なくして返すにはどうするかということとは別の話なんですね。ここがどうもずっと混同されて、このことがまさにオープンな、あるいは国民的議論というものの中で正確に把握されていなかったことの理由になっているのではないかと私は思います。
それから、第二点目、済みません、第二点目というのは何でしたか。
○穀田委員 ツケがさらに拡大するんじゃないかというあたりを少し詳論していただけますか。
○加藤参考人 これについては、これも先ほどの繰り返しになりますが、企業というのは、恐らく、飛松参考人はまさにその御専門ですけれども、四十五年という単位でお金を貸したり、事業をしたりはしないわけですね。ですから、その中で一つの見通しをつくるということは、これは政府としては当然ですけれども、その見通しのつくり方、それから、それをつくるに当たって、やはり今までどおりのやり方、ほとんど今までどおりのやり方が踏襲された形で今後も建設が進むわけですから、そういう状況の中で、四十五年でちゃんと返せるという見通しというのは極めて小さいのではないか。
これも先ほどの繰り返しになりますけれども、コスト削減というのは当然やる話ですけれども、コストを何割削減するということは、これは、普通の会社では、あらかじめ周りの人間が決めることではなくて、経営当事者が努力の中で示していくことなんですね。ですから、あらかじめ政府が、役所が何割削減ということを決めて、それでそれならやれますということは、これはやはり本来の筋ではないのではないか。
それから、これも繰り返しになりますけれども、金利動向で大きく違うわけです。四%という先ほど申し上げました前提自体が決して辛い前提ではないですから、それ以上に悪くなるとどんどんどんどん膨らむというおそれはやはり大いにある、残念ながらそう考えております。
○穀田委員 飛松参考人にお聞きします。
先ほど、レジュメの中にも、子孫代々まで見据えた国土のグランドデザインに基づいての判断が必要だ、こうお述べになっていました。
そこで、九州・山口経済連合会の交通基盤に関する要望を見ていますと、例えば、関門海峡道路、それから島原、豊予、いわゆる五全総に基づく六大海峡横断道路の点について触れています。これが一つの今お話があった国土のグランドデザインといいますか、そういうふうなことと関連して参考人はお考えでしょうか。その辺いかがでしょうか。
○飛松参考人 一応切り離してお考えいただきたいと思っております。
私ども、地域戦略会議をつくりましたのは昨年でございまして、その裏には、これまでの経済人あるいは政策当局が考えておりました日本の経済の将来像につきまして、この民営化の議論もそうでございましたけれども、それなりのやはり構造改革的な発想が出てきたわけでございまして、それを受けて、地域戦略会議で九州は一つであることを確認しよう。
そのためには、私ども、機能主義と言っておりますが、何でもかんでも、ないから欲しいというだだっ子ではなくて、ここをやった方がより効果が高いとか、あるいはここは、救急あるいは災害等を含めて、そろばん以外の必要性があるからつくらなきゃいけないとか、要するに、白地に勝手に絵をかくんじゃなくて、それなりの相互に議論をして必要性を吟味した上で色づけをしていこうというのが私どもの戦略会議の発想でございまして、その中で、やはり循環型高速交通体系は絶対必要だ、これなくしてはアジアの中でやられっ放しだというような考えが浮かんでいるわけでございます。
したがいまして、全部についてという議論よりも、私どもとしては、まず循環高速体系である東九州をぜひ真っ先にお願いしたいというのが本音でございます。
以上でございます。
○穀田委員 では、上村参考人にお聞きします。
私も京都に住んでおりまして、参考人が時々産経新聞に書いてはりまして、その中では、特に京都の庭園などを一つ出して、経済的合理性に合わない日本の伝統的美しきものをいかに残していけるだろうか、こういう発言をなさっています。
さらに、第三回世界水フォーラムの京都と水の語らいという中で、「日本の人は「京都はもっともっと京都らしくあってほしいな」という気持ちがあるのに、なぜかできない。」「もっと日本人全体で京都を守り育ててゆくような費用というか、そういうものが捻出されていきませんとムリです。」こういうふうに語ってはります。
私も同感でして、その結論でこういうふうに言ってはります。「京都、この歴史都市のなかで、生活や働く場もあるわけなんですが、そういう歴史都市を大切にしてゆくことが、日本のなかでもいちばん大切なことではないのかな」、こうおっしゃっています。
一番最初に石田参考人がおっしゃった、環境を守るために一点集中している、こういう議論に私は立っていないんです、つまり、それを入れなければもっとできるという立場に立っているものですから。
とりわけ京都だとか奈良だとかというのは、歴史的風土として世界遺産にも登録されているにもかかわらず、ど真ん中に高速道路を入れる。例えば、御存じかどうか、私と上村さんは知っているんですけれども、堀川通りといいますか、それから西大路通りという、ど真ん中に入れて、しかもそれを地下に潜らせる。しかし、そうなりますと、三十五メートル以上の換気塔を外へ出す。京都は盆地ですから、それでなくても大変だということと、そんな不細工なと言うとしかられちゃいますが、そんなものを出してええかいなと思うのが普通の感覚ではないかなと私は思うんです。
したがって、こういう角度から見た場合どんなふうにお考えかということをお聞きしておきたいと思います。
○上村参考人 歴史的な都市として、やはり京都というのは、高速道路も国民的共有財産ではありますけれども、この京都という都市自体が国民的な共有財産として、これはだれしもの心の中にある日本の風情とか景観というふうなものを、やはりこのグローバル化の中でこそ守り育てていかなければならないと私は思っておりますので、きょうそのお話が出ましたことを本当にうれしく思っております。
今、穀田先生の御質問は、そういう景観の中に高速道路が似合うのか、そういうことですね。
これは、えらいローカルな話になるんですが、今高速道路が逆にないために、五条通りというのが一号線につながるんですけれども、どうしても大きなトラックがあそこを通らざるを得ないわけなんですね。
それで、イメージとしましては何か歴史都市の中で高速道路が似合わない、こう頭の中ではお考えになるかもしれませんけれども、例えば一号線という大きな、いわゆる京都のど真ん中を今トラックが走らなければならないという状況があるがために、かえって、御所の近くだとかあるいは東寺だとか西本願寺だとかというところを、十トントラックとかトレーラーとか生コン車が通らざるを得ないわけです。
ですから、高速道路が似合わないから、そうしたら何か隣にトラック野郎みたいな車がのこのこと行きながら、観光の方々がそういうものと一緒に走りながら、では本当に京都のそれが風情かというと、イメージと実態との乖離というふうなものがすごくあると私は思うんです。高速道路があった方が、むしろすっきりとバイパスは通せる、そして産業用のトラックはむしろこちらの方から通せるというふうに、かえって景観が守れるのではないか。今、高速道路がないことがかえって何か、市街地の中にまでトラックを通さなければならない、そういう非常に矛盾が起きてしまうということがあります。
いわゆる景観というのは難しくて、だれがどこから見た景観かというのが大きいんですけれども、私自身は、どちらかというと、トラックと一緒に走らない方が何か京都の風情が守れるような、そんな気がいたしております。
○穀田委員 どうもありがとうございました。
――――◇―――――
○藤井参考人(帝京大学経済学部教授) 藤井でございます。
それでは、これらの法案につきまして意見を述べさせていただきます。
公団の民営化をめぐりましては、特殊法人改革の観点からのアプローチと道路整備の観点からのアプローチがなされておりますが、ここで、私は道路整備からのアプローチをとりまして、その後で制度の問題に至りたいというふうに考えます。というのは、民営化あるいはどのような民営化が適切かということは、どのような道路整備と経営が必要かが先決の問題だからでございます。
社会が必要とする道路ネットワークを策定することは、社会を代表する政府の責務であろうというふうに考えます。その中には、特にこのような社会インフラは将来世代の福祉に影響いたしますけれども、企業や市場というのはそういう将来世代の福祉という観点をとる立場にはございません。
そこで、道路ネットワークを策定することは政府の責任でありますが、同時に、政府による必要な費用負担もその責任であろうと思います。
今後どのような整備が求められるかにつきましては、不必要な道路は建設しないとされておりまして、換言しますと必要な道路は整備するということで、それ自体は自明でございますが、不必要なとは何か、あるいは必要なということは何かということの内容を明確にせねばならないというふうに存じます。
従来の考え方としましては、昭和四十二年に七千六百キロ計画が定められたときの路線設定基準があるわけでございます。後、昭和六十二年に一万四千キロ整備に改定されたとき以来、現在まで、路線採択基準として六つの基準が公にされております。
第一に地方都市を連絡する路線。第二に重要空港、港湾を連絡する路線。第三に大都市圏の環状路線。第四に重要区間の混雑を緩和する路線。第五に災害時の冗長性を確保する路線。そして第六に全国の都市、農村からアクセス一時間で到達できるネットワーク。そういう基準がございます。
この多くは、ごらんのように効率性の基準でございますけれども、ミニマムアクセスの基準だけが、高速道路によって広域の社会や市場に参加する機会の均等ということが意図されております。したがって、効率性とは異なる性格の基準になっております。
最近、西欧でいわゆるソーシャルエクスクルージョン、社会的阻害の問題というのが大変に言われておりまして、この基準はそれに対応するものになっているわけです。効率性と機会均等の基準を調和させた結果が一時間という線引きになっていると思います。
問題は、社会的に必要とされる路線の費用負担でございまして、これをプール制に依存するならば、社会的な要請の費用を、たまたま他の路線の利用者であるにすぎない者だけが負担するということになって、不公平、不効率だということに、結果、されます。
そこで、歯どめのないプール制となることを避けるために、昭和六十年の道路審議会の答申で、赤字路線を採択する場合には他の路線からの内部補助をコストの二分の一までとする、その不足分は公共補てんとするといういわゆる二分の一ルールというものが提案されて、最近まで十三道においてそれが適用されてきたわけです。これに加えて、平成十年だったかと思いますが、景気対策として、高速道路投資が前倒しされました。
そのような措置を含めて国費支出が行われたわけですが、御案内のように、平成十三年にすべての国費支出が打ち切られました。これは、その分、利用者負担に転嫁するということを意味しておりまして、これが、現在の料金値下げを妨げる一因になっております。
もちろん、必要性の基準は状況の変化に対応しなければなりませんので、民営化推進委員会の提案されたいわゆる中村基準と、それを受けました国交省の森地委員会の提案では、費用便益比率と採算性と外部効果が必要性の項目として挙げられているわけです。提案されました費用便益比率の内容は利用者の便益、採算性が事業者の便益、外部効果が地域社会の便益でありますから、この三項目で道路整備に発生する便益と費用を網羅的にあらわせると企てたものと考えられるわけです。
そこで問題は、これら三項目を総合するウエートでございます。
示されておりますが、一つには、民営化推進委員会のアンケートが行われまして、それによってつけられたウエート、それから自治体のおつけになったウエート、それから森地委員会がつけられたウエートでございます。添付いたしましたレジュメの表がそうでございますが、私が意外でございましたのは、アンケートで採算性に与えられたウエートが〇・三六という、私が予想したものよりもかなり低かったということでございます。
私の推論では、高速道路はもう既に半分以上できておりますので、高速道路を既に確保した沿線人口というのは総人口の半分以上になるはずであります。そうしますと、高速道路について既得権を持っているこれらの人々にとっては、残る路線は不採算のむだな路線だといって切り捨てることが、そういう主張をすることが合理的であります。それにもかかわらず、このアンケートで採算性に対して与えられたウエートが三六%にとどまったということ、つまり、大半の人は、採算性あるいは債務だけをもってむだなとは定義していないということを示されたのではないかというふうに考えます。
御案内のように、この評価基準を用いて新直轄の区間が選択されました。その一方で、法案では、新会社は、建設について、従来のような政府の命令によってではなくて、協定により自主性を確保するという規定が定められております。
民営化の最大の利点は、政策の責任と経営の責任を明確に分離するということであります。その点からいいますと、法案の一つの論点である建設あるいは債務について、責任の分離と社会による負担の方式を定めた協定という方式プラス新直轄のセットに私は基本的に賛成でございます。
次に、法案に賛同するもう一つの点は、償還後のインフラの道路管理者、つまり社会への帰属でございます。
高速道路は重要な社会インフラでありますので、私企業でなく社会に帰属させるべきであるという議論は、海外を見てもむしろ普遍的だろうと思います。
交通サービスでは鉄道が民営化されているわけですが、高速道路には幾つかの独自の点がございます。
第一に、現在の段階では、高速道路は基幹的な交通インフラであります。鉄道は既に、都市間か、あるいは都市圏の旅客輸送に特化しておりまして、特に物流については機能を持っておりません。我が国ではJR旅客会社が鉄道インフラを所有しておりますので、市場構造からいきましても、鉄道が物流で果たせる役割というのは制約されております。そういう意味で、経済を担う高速交通の基幹というのは、物流を含めて、道路にならざるを得ない。
第二に、鉄道は、インフラとその利用という本来の意味で上下一体のシステムであります。鉄道は、レールを所有すると同時に列車も運行させるという意味で上下一体のシステムであります。それに対して、道路は、あるいは空港や港湾は、もともと、インフラの所有と、例えば乗用車、トラック、バスの所有者とは違うわけです。あるいは、空港の所有者とエアラインも違うわけです。そういう意味で、これらは元来、上下分離のシステムです。
したがって、上下分離である以上、上物の利用者から利用の公平性を確保するということが強く求められるだろうと思います。あるいはまた、列車運行や航空機については競争や技術革新ということが考えられますけれども、インフラについては余りそういうような革新が期待できないというふうに考えます。
それから第三に、高速道路と一般道路の間の強い競合関係、または補完関係でございます。
アメリカの例ですけれども、高速道路の民営化が行われて、その際に、一般道路の整備はしないという契約をしたことがありました。しかしながら、結局、一般道路は整備せざるを得なくて、したがって、民営化された高速道路が再公有化されたというケースがございました。
そういうように、高速道路と一般道路の整備と経営は、整合がとれるシステムであることが望ましいというふうに考えます。
さらに、これは私の考え過ぎかもしれませんが、セキュリティーの問題がございます。
現在、震災のおそれがありますけれども、災害時には即座の対応が要求されるわけで、その意味で、高速道路のネットワークが私有のもとにあれば対応に手間取るおそれがございます。
これらの理由から、私は、償還後の社会への帰属ということに賛成でございます。
最後に、新しいシステムが適切に働くように、二つの点を御要望したいと思います。
一つは、新会社の運営にできるだけ自由を確保すること。
例えば、推進委員会の御意見にもありましたように、料金体系について上限制を取り入れるというようなこと、あるいは業務範囲につきましても、各公団には建設その他の技術の高度な蓄積がございますので、これを用いて海外進出ができるのではないか、そういうような夢が可能であることを望みたいと思います。
それから第二に、貸付料から用地費を除外することの御検討をいただきたいと思います。
用地費の除外につきましては道路審議会が答申に繰り返してきたことでありますし、昨年の暮れのJHの改革本部の答申でも述べられているところであります。用地費はもともと、御案内のように、減価償却の対象となりませんし、用地費のための債務を償還対象としてすべて償還期間内の利用者に負担させるということは、世代間の不公平でもありますし、料金の低下を妨げることにもなります。
この用地費の除外は償還主義の部分的な修正になりますけれども、資産を道路管理者に移管する時点で、適当な一部債務を伴った移管というものもあってもよいのではないかと考えるものでございます。
雑駁でございましたが、私の意見とさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)
○赤羽委員長 ありがとうございました。
次に、猪瀬参考人にお願いいたします。
○猪瀬参考人(作家)(道路関係四公団民営化推進委員会委員) では、発言させていただきます。
お手元にお配りしてある「国土交通委員会説明資料 参考人猪瀬直樹」というのをちょっと開いておいていただいて話を進めさせていただきます。
少しこの間のプロセスからお話しさせていただきたいと思います。
道路公団民営化の議論が政治課題にされたのは、たかだか二年半前です。それまで、高速道路料金は定期的に値上げされ、国民はいや応なく認めさせられてきた。借金返済も、三十年が四十年になり、四十年が五十年になり、このままだったら六十年になるかもしれませんでした。
なぜそうなってしまったのか。このままでは大変なことになると思って、僕が特殊法人の実態調査を始めたのが、八年前の九六年です。そして、道路公団を初めとする特殊法人の実態を「日本国の研究」という本で問題提起しました。
調べてわかったのは、だれも責任をとらないシステムの存在です。この一枚目を見ていただくとわかるんですが、公団の高コスト体質、七百八社に二千五百十九人の日本道路公団からの天下りがあったり、あるいは、ファミリー企業から六百六十人ものお抱え運転手が派遣され、それだけで五十五億円の委託費が払われているとか、職員の仕事であるにもかかわらず、料金徴収手当が出ていたり用地交渉手当が出ていたり、こういうふうな特殊法人の実態があるということであります。
戻りますが、公団の総裁は天下りで適当に入れかわるだけだし、職員も、年功序列で何のリスクもとらずに給料をもらい、ファミリー企業に天下りできる。これではいけないというのが民営化です。
民間会社は利益を出さないと倒産です。赤字が続いたら、経営者は退陣し、社員はリストラされる。収益が出たら、株価は上昇し、社員の給料もふえる。そういう当たり前のことを実現するのが民営化なのです。
二〇〇一年の四月に小泉内閣が誕生して、僕は、石原行革担当大臣のもとにつくられた行革断行評議会のメンバーに入りました。そして、小泉首相に道路公団の民営化プランを提出したのが二〇〇一年の夏です。ちょっとめくってください。左から見ます。二〇〇一年の八月に道路公団分割・民営化案を提示しました。すぐ横に、その当時、扇前国交相が、民営化には二十年かかると発言なさっています。
そして、当時小泉さんに見せた民営化プランは、次のページをめくっていただきますとわかりますが、現在審議中の民営化案の原型になっていると言って間違いないでしょう。
借金を返済するために保有機構を発案したのは、民営化会社に高いリース料を支払わせるためでした。利益を出すとしたら管理費を削減するしかないという形にして追い詰めないと改革にならないからです。ゆるゆるの管理費こそファミリー企業が生息している場所であり、親方日の丸の世界をつくり上げている元凶だと、これまでの調査で実感していました。借金を返すために汗水流して働いてもらうのです。
これからは、今政府から提出されている審議中の民営化法案の中身についての意見を申し述べたいと思います。
僕は、まず、四十兆円の借金の返済、料金値下げ、地域分割の三つが民営化の要諦だと思っていました。三年前の夏に小泉首相に示したプランも、この三点が柱です。
冒頭述べたように、これまでの道路公団方式では、三十年たったら無料が、四十年、五十年、このままだったら六十年になるかもしれなかった。それが、今回の民営化法案では、四十五年以内での債務返済が初めて法律に明文化されました。今までは三十年とか五十年など法律には書いてなく、運用で適当に変えて、都合よく先延ばししていたのですから、四十五年返済を法律に明記したということは大きな前進です。
民営化委員会の意見書では四十年返済としましたが、「五十年を上限とし、その短縮を目指して設定」とも書いています。そして、委員会では、四十年返済と四十六年返済の両方の試算も公表しています。四十五年返済は、意見書で示した返済期限の幅の中におさまりますから、まあ四十年がより好ましいのですが、そういう意味では意見書に沿ったものと僕は理解しています。
それから次に、料金値下げ。
料金値下げは、国民が一番望む民営化の対価です。平均一割と料金別納割引制度の廃止に伴うさらなる値下げを実施し、合計二割の値下げという政府の方針が現段階で決まっていますから、これは改革の成果です。これがいかに前例のないことか、皆さんに知っておいていただきたい。
例えば、この四月一日に民営化した東京メトロは、民営化時に値下げなどしませんでした。抱えている借金が一兆円弱しかないのにです。国鉄だって、民営化以降、料金値上げこそありませんが、値下げはしていません。
民営化委員会の意見書では、引用しますが、
夜間料金の半額割引や通行台数一万台以下の道路の通行料金の三割引き下げ、ターミナルチャージの撤廃など、実情に応じた弾力的な引き下げ策を講じて、平均で一割の通行料金引き下げを民営化と同時に実現する。
通行料金は新会社発足時の水準より引き上げない。なお、本州四国連絡道路の通行料金は、債務の処理と同時に大幅な引き下げ(二分の一程度)を進める。また、東京湾アクアラインの通行料金については大幅な引き下げを検討する。
と、かなり具体的に提案しました。これはぜひそのとおりにやっていただきたい。
三つ目のポイントは、地域分割です。
これについては新聞もちょっと誤解しているところがあって、機構において債務を一体として管理するから全国料金プール制は温存されたと言われています。つまり、東名のお金で北海道の高速道路をつくる仕組みは残ったというわけですね。
でも、これは、昨年十二月二十二日に民営化の基本的枠組みが公表される直前の十二月十八日木曜日の時点で、小泉首相に地域分割の必要性を確認しています。小泉首相は、当然、分割の意義を理解されていて、やるというふうに宣言しました。
ここは本当に大事なところですから、年明け以降も、委員懇談会において、道路局長らをお呼びし、何度も確認しました。その結果、会社間の競争原理を確保するため、高速道路の今後の建設に係る債務は、会社ごとに料金収入による貸付料で返済することを基本とする、会社はこの貸付料を支払う経営責任を負うとの政府の法令解釈が示され、分割会社の自己責任が明確になりました。
分割で経営単位を小さくし、効率化し、値下げすることで利用者に還元しながら、四十五年で借金を返済する、完済する。その意味で、当初のプランの基本は少なくとも実現したと思っています。
国鉄の民営化と比べてみるとわかりやすいでしょう。国鉄は三十七兆円の債務を抱えていました。三年前に僕が民営化プランを提出した際には、道路四公団の累積債務は三十八兆円ですから、ほぼ同じです。国鉄と道路四公団の債務総額は同じですが、国鉄の民営化では、三十七兆円のうち、実に三分の二、二十四兆円が国民負担となりました。国鉄は瀕死の重病人だったからです。
逆に、道路公団の民営化は、本四公団の債務処理に新たに一兆三千億円を注ぎ込むぐらいで、基本的には新会社の自力返済を可能とするスキームにしました。国鉄は瀕死の重病人ですが、道路公団は糖尿病のようなもので、民営化という形できちんと節制のメニューをつくれば間に合う、そういう段階で民営化を提案したのです。
道路の民営化会社は借金返済に充てられるリース料が毎年約二兆円と予想され、そういう厳しい支払いを課すことで国民負担の最小化原則を貫こうとしました。
次に、建設の問題に移ります。
当初、小泉首相に民営化プランを提出したとき、まず、日本道路公団に投入されている三千億円をゼロにするところから始めてほしいとお願いしました。税金は、利子補給金の名目で、いわば金利を水割りする形で使われており、郵便貯金等からの借金で建設する部分に税金が流し込まれるというどんぶり勘定になっていました。その結果、二〇〇一年十一月に、税金三千億円投入がゼロになりました。このゼロになったところが出発点です。
民営化委員会では、採算性など、建設の優先順位の基準を示しました。そして、昨年十二月二十二日の政府・与党枠組みで、新会社はみずから借金しても最大値で七兆五千億円以内、新会社でやらないものは税金で建設する、これが約三兆円、こういうふうに分けられました。料金収入で管理費すら賄えないものが税金でやるというふうになったわけですが、この分けたということは非常に重要だというふうに理解してほしいと思います。
日本道路公団に投入されていた三千億円の税金をどんぶりの外側にとりあえず移して透明化して、だれがどれだけ負担するか明確にしたのです。税金でつくる新直轄道路は七百キロで、年額約二千億円ぐらいですが、これは単年度の予算で決めることです。当たり前ですが、予算は国会で毎年毎年審議して決めます。国民が選んだ国会議員のうち、もう要らないと判断した者の数が上回れば、管理費すら払えないような高速道路は建設できない仕組みになっているわけです。
民営化会社は、残された千三百キロの部分についてどこまでやるかやらないかというのは、コストをどこまで下げられるかなど、機構と協議します。公団で二十兆円かかることになっていた投資額は、新会社では最大で七・五兆円です。新会社には事実上の拒否権が与えられているので、協議の結果次第では、すべて建設するとは限りません。協議が実らなければ社会資本整備審議会にかけられるということを前提に条件闘争するということになります。
社会資本整備審議会が国土交通省の諮問機関だから国交省寄りの結論を出すというふうに批判する人がいますが、審議は公開で行われます。不合理で恣意的な議論になるか否かは、メディアや国民が監視できる仕組みが用意されたのだから、これは皆さんの関心にかかっているというふうに思います。
また、新会社と機構が対等に協議する条件として、国交省からは保有機構の理事長へは天下りできないと、二月二十六日木曜日に小泉首相と確認しました。
道路公団の民営化では、何とか国民負担の最小化原則が貫徹できました。国鉄の例と比べれば、かなりよい改革だと思います。電電公社がNTTになるとき、当初の分割に失敗しています。こうしたことを振り返れば、料金値下げ、日本道路公団を東、中、西の三社に分割、四十五年以内の債務の返済を獲得できた今回の民営化案は、どうにかよくここまで来たなというのが実感です。及第点はとれていると思いますから、何とか今国会で成立させていただきたい。
僕としては、民営化委員会の仕事は続きます。これから、政省令レベルで骨抜きがないように監視するのが自分の責務だと思っております。
以上です。ありがとうございました。(拍手)
○赤羽委員長 ありがとうございました。
次に、田中参考人にお願いいたします。
○田中参考人(拓殖大学教授) 本委員会で発言する機会をちょうだいし、光栄に思っております。
法案の問題点について申し上げたいことはたくさんございますが、そのポイントは提出した資料をごらんいただくこととし、ここでは大きく二点について申し上げたい。
まず第一点は、法案は民営化法案とは言えないということであります。
去る四月二日の当委員会において、国土交通省の佐藤信秋道路局長は、二〇〇二年末の民営化推進委員会の意見書のうち、民営化会社が道路資産を保有するという点と、高速道路の料金に利潤を含めるという点、この二点は国民の理解は得られないなどの理由で法案に採用しなかったと説明されました。実は、この二点こそが民営化のコアであります。にもかかわらず国民の理解は得られないとは、民営化は国民の理解を得られないということに等しい。
国土交通省は、各県の知事に意見を求め、この二点については知事全員が反対したことをもって国民の理解は得られないと判断されているようですが、多くの知事は、同時に、九千三百四十二キロはいかなることがあっても整備すべきだという御意見の持ち主でもあります。
多くの国民が、借金をしてまで高速道路は要らないという中で、知事の意見が果たして国民の理解と同じであると言えるのでありましょうか。このことは、逆に、経済合理性を無視してでも今後とも高速道路をつくりたいとする人たちにとって、この二点がいかに大きな障害となっているかを示しているとも言えます。
政府案に盛り込まれなかった最初の点からお話ししたいと思います。
民営化会社が資産を保有するということは、同時に負債をも抱えるということであります。このことは二重の意味を持ちます。
第一は、これで民営化会社は自立的経営を余儀なくされるということであります。
国の命令のもと、経営責任のないまま野方図に赤字道路をつくり続けてきたことが今日の道路公団問題の根幹であります。民営化とは、その反省から出てきた考えにほかなりません。そして、政府自体が民営化を決定したのです。すなわち、経営責任を持った自立的組織に高速道路の経営を行わせる、これが民営化のスキームを考えるに当たっての基本であります。
しかし、政府案では、資産も負債も国の機関である保有・債務返済機構が持ちます。民営化会社は建設、管理の業務を受託した会社にすぎません。いわば機構のファミリー企業であります。債務の返済責任は機構に一元化され、民営化会社は、協議に基づき、料金収入の大半をリース代として機構に納付するだけなのでありますから。
石原国土交通大臣など、民営化会社の自主性は尊重されると言われる向きもありますが、経営責任のない会社に自主性を与えることに一体何の意味があるのでありましょうか。この点については後でもう一度触れます。
第二は、資産と負債をあわせて持つことによって、民営化会社は政治の関与から相対的に自立することになります。
高速道路は基幹的インフラであり、その整備は社会経済的要請を無視することはできませんが、投資効率を無視した野方図な建設は、もはや我が国の現状からは回避すべきものと考えます。しかし、道路公団という経営責任のない組織は、こうした道路の建設を続けてまいりました。その背後に政治的要求があったことは否定できないと考えます。
負債の返済も自己責任となり、それに失敗したら経営責任が問われるとしたら、会社の経営者の顔は政治家の方を向くことはできなくなります。政治家は会社の経営者の責任を負ってはくれないからであります。
経営者は、まず、利益を確保できるか、債務を返済できるかを考えます。それによって、会社は政治の関与から相対的に自立することになります。そして、実はこのこと、政治の関与から自立する、これこそが民営化の大きな目的であったはずであります。
政府案ではそれは実現できません。資産も債務も保有・債務返済機構が負うということは、現在の道路公団と同じような政府機関が残るということでありますから、相変わらず、この組織に対する政治の関与が続き、赤字路線が野方図につくり続けられるということを意味します。
このことを考えれば、何としても高速道路が欲しいとされる各県の知事たちが会社に資産と債務を持たせることに反対されたのは、至極当然のことであります。しかし、それは、これまでの反省に立っての道路公団の民営化の方向とは全く相入れないものであります。
次に、佐藤道路局長が、国民の理解は得られないとして法案に取り入れなかった第二の点に移ります。
料金収入に利潤を含めないということは、会社が単なる業務受託組織にすぎないということを意味します。このことは、経済活動に対する国土交通省の基本姿勢を疑わしめるものであります。民間会社に利益を認めないで、なおかつ、半世紀近くの間の経営の存続を保証するということは、計画経済的発想そのものであります。自分の言うとおりにしろ、利益は出ないかもしれないが、つぶすことはしないということであります。これは、利益が出ないを利益が少ないと置きかえれば、現在の道路公団がファミリー企業に対して言っていることと全く同じであります。
政治評論家の屋山太郎氏は、特殊法人のばっこする現状を官僚制社会主義と称されましたが、料金に利潤を含めないということは、会社を思うがままにコントロールしたいという官僚制社会主義が、はしなくもにじみ出たものと言えます。法案による民営化会社は、どう取り繕っても民営会社とは言えず、せいぜい政府の規制の強い独立行政法人であります。
日本では既に多くの民間企業が公益事業を展開しております。そうした企業の本体業務に利潤が認められないという事例は、残念ながら、私は知りません。民間企業とは、利益を追求するものです。そこに経営責任と経営の規律が生まれるのであります。利益を追求できないということは、責任も負わないということであります。仮に責任だけを負わせるというのであれば、これは単なる奴隷的労働です。まさか政府はそのような組織をつくるつもりではないでしょう。
したがって、この二点を欠落させた法案は民営化法案とは認められないと言わざるを得ません。佐藤道路局長の発言は、国土交通省みずからが、この法案は名ばかりの民営化であり、真の民営化は行わないと宣言したと同じことであります。
申し上げたい第二点目は、政府案で言う会社の自主性を尊重するということは全く意味がないということであります。
昨年末の政府・与党申し合わせは民営化会社の自主性を尊重することになったと伝えられますが、事実上、経営責任を負わないことになる民営化会社に自主性を認めることに何の意味があるのか、私には理解できません。会社の自主性が尊重されたかどうかを評価するためには、自主性がない場合と比べていかなる効果があるかを検証する必要があります。
政府案には、野方図な赤字道路の建設の中止、政治の関与からの離脱等、本来の民営化が目指すべき基本的課題に対する効果がどこにあるのでありましょうか。本法案は、民営化会社が道路資産を保有する、高速道路の料金に利潤を含めるというこの二点を採用しなかったために、会社は名ばかりの民営会社になっております。そして、これを取り繕うためにさまざまな装置が設けられております。
しかしながら、先ほども申し上げたように、この民営化会社は、しょせん保有・債務返済機構のファミリー企業にすぎません。佐藤局長は、三分割によって競争原理を導入すると御説明されたようですが、残念ながら、分割でさえそういった装置の一つにすぎません。
現在の道路公団がファミリー企業に会社の自主性を尊重すると言ったところで、あくまでファミリー企業としての自主性であります。そのような自主性のもとで競争が行われるものなら、既に、公団傘下に多数あるファミリー企業は激しい競争を繰り広げていなければなりません。しかし、言うまでもなく、そのような状況にはなっておりません。ファミリー企業は、経済合理性の外にあるからファミリー企業なんです。JRに競争が働いたのは、それぞれが自立した会社だからであります。競争は自立が前提であります。
国土交通省は、道路公団に対して、はしの上げ下げまで指示したと言われております。その道路公団は、ファミリー企業に対して、はしの上げ下げどころか、はしの置き方まで指示していたと考えられます。
今回の法案では、この道路公団が上下分離されて、保有・債務返済機構と民営化会社に分かれるだけであります。国土交通省は、依然として、保有・債務返済機構を介して、民営化会社に対して、はしの上げ下げを指示することになります。
よしんば、自主性を尊重して、はしの上げ下げは自由にしていいと言ったところで、ただし茶わんの持ち方はこれまでどおりの自分の指示に従えということでは何の意味もありません。ひとえに、民営化会社を自主的な組織としなかったことにその原因があります。
早い話が、いわゆる民営化後四カ月以内に、民営化会社は、国土交通大臣と協議して、域内の未整備の計画路線をつくるのかつくらないのか判断することとなっておりますが、そもそも、向こう四十五年間に、つくることはできないと会社は言えるのでありましょうか。しかも、機構が六カ月以内に作成し、大臣認可を得る債務返済計画は、民営化会社との対等な立場での協定と言いながら、結局、押しつけざるを得ない話ではないか、さように考えます。
かくして、会社の自主性の尊重なるものの実態的効果はほとんどありません。あるとすれば、名ばかりの民営化を糊塗する効果でありましょう。これは、前述した佐藤道路局長の発言と同様に、国民を愚弄するものであります。
以上であります。ありがとうございました。(拍手)
○赤羽委員長 ありがとうございました。
次に、中山参考人にお願いいたします。
○中山参考人(奈良女子大学大学院助教授) 奈良女子大学の中山です。
早速ですが、意見を述べさせていただきます。
まず、今回の高速道路など、こういった公共事業をめぐる論点というもの、私自身は、恐らく二つあるのではないかと思っています。
一つは、特別会計とか公団もしくは第三セクター等で実施されてきて、破綻に直面している、もしくは破綻した公共事業を今後どう見直していくのかという論点です。もう一つは、今後の高速道路計画、そういったものも含め、公共事業のあり方をどう考えるべきなのか、この二つの大きな論点があるかと思います。
まず一点目ですけれども、破綻した公共事業をどう見直していくのか。そもそも、なぜこういったことが大きな問題になっているかと申しますと、特別会計にしろ、公団にしろ、第三セクターにしろ、本来、独立採算で事業が進むはずだったんです。ところが、大半の国民にはそのように説明していたと思うんですが、それが困難となり、このまま放置すると国民、市民に多額の財政負担が発生する、そういう事業が少なからず存在してきたこと、これがこういった独立採算性の公共事業もしくは公的事業の見直しに関する大きな背景であったと思います。
この間、全国でそうした事業の見直しに取り組まれてきました。そういった中から、幾つかの破綻処理の原則、そういったものが浮かび上がってきているのではないかと思います。
まず一点目は、そのようにして取り組まれてきた事業にそもそも公共性があったのかどうか。事業に公共性があるかないかというのは、公共事業や公共的な事業を処理していく場合、非常に大きなポイントになると思います。残念ながら、この間、全国で破綻してきた第三セクターのかなりの部分はそういった公共性に欠けていた面が少なからずあったように思います。
また、その中で議論されてきたことは、できる限り国民、市民の負担をゼロもしくは最小にするということであったと思います。
それと同時に、こういった破綻処理については極力国民に開かれた形で議論をしていく、こういった三点が原則として考えられてきたのではないかと思います。
そういったことを踏まえてこの道路公団のことを考えますと、高速道路というのは極めて社会資本としての公共性の高い分野だと思います。もちろん、社会資本として疑問性のあるような高速道路もあるかもしれませんが、大半の高速道路というのは公共性の非常に高いものではないかと思います。
かつて、日にちは忘れましたが、道路公団の関係で国会で参考人として意見を述べましたが、そのときも、道路公団のように非常に社会資本として公共性の高い分野には民営化はなじまないのではないかという発言をいたしました。この考えは今も変わっておりません。大半の第三セクターなんかと比べると、高速道路というのはインフラとしては非常に社会資本としての公共性が高い、そういった分野は民営化には基本的になじまないのではないかと思っています。
ただし、従来どおりの道路建設を今後も進めていっていいのかというと、それは違うと思います。少なくとも今までのような形での道路建設はストップして、料金収入等についてはすべて借金返済に充てていく、そういった対応が要るのではないかと思います。
それと同時に、徹底したむだの排除を行っていく必要があると思うんですが、ただ、むだの排除という場合、それを民営化によって実現することも可能でしょうが、同時に、公的な分野のままで置いておいて、情報を公開する、国民に開かれた組織にしていく、そういった国民監視のもとでむだを排除していくという方法ももう一方であるのではないか、そのように考えております。
二点目ですが、高速道路建設などをそもそもどう考えたらいいのかということです。
特に高速道路建設については、地方経済との関係を抜きには議論できないと思います。今の日本の地方は非常に経済的に厳しい状況に置かれています。ただし、問題なのは、高速道路などの整備が不十分だから地方経済が衰退しているのかどうか、その点を考えることが重要だと思います。
とりわけ、この間、地方経済を支えてきた産業、第一次産業、製造業、商店街、そういったものが非常に厳しい状況に置かれています。九〇年代、こういった地方経済を支えてきた産業が厳しくなるにつれて、景気対策ということで公共事業費が拡大されました。地方は、本来であれば自立的な産業を育成していくのが望ましいのでしょうが、そういう中で公共事業に依存するような経済体制になってきたのではないかと思います。それが、この二、三年、公共事業費の削減とともに、公共事業にかわる新たな産業が見出せないというところで地方経済の深刻さが見られると思います。
問題は、そういった状況の中で、高速道路建設や、二〇〇四年度に新たにつくられますまちづくり交付金、もしくは、この間進められている市町村合併に伴う合併特例債、そういった主に公共事業に関するものを続けていくことが地方経済の自立的な再生につながるのかというと、私自身は、残念ながら、一時的な効果しか持ち得ないのではないかと思います。
その一方で、この間進められてきた構造改革をどう見るのか、これも非常に重要な問題だと思います。
御承知のように、構造改革の中で徹底した規制緩和が行われてきました。また、都市再生ということで、全体として公共事業費は削減しますけれども、二〇〇四年度予算を見ても明らかなように、都市再生関係の公共事業については、厳しい予算の中で重点的に予算配分が行われています。
ただ、そうした規制緩和、都市への重点化、そういうことをこの間行ってきた中でどういうことが社会的に生じているかといいますと、バブル経済のときに問題になった東京への一極集中、これが今再び起こってきています。
幾つかのデータを示しますと、例えば、二〇〇一年の十月から二〇〇二年の十月、この一年間で全国では十四万人の人口がふえています。十四万人の人口がふえていますけれども、そのうち八万人は東京都でふえています。
また、二〇〇二年の都道府県間の人口移動を見ます。転入超過の県が全国で九つあります。一位は東京都で七万三千二百七十五人。二位が神奈川県で二万九千七十六人。都道府県間の人口移動を見ても、東京への人口の集中は極めて顕著です。
また、人口だけに限りません。経済活動を見てもそのとおりです。二〇〇〇年から二〇〇二年で、全国で、資本金が百億円以上の株式会社が六十二社ふえています。二年間で六十二社ふえましたが、そのうち四十八社は東京都内でふえています。率にすると七七%です。
また、一九九九年から二〇〇一年にかけて、全国で、事業所、株式会社が一万二千九百八社ふえています。そのうち六千五百三十社は東京都内でふえています。ざっと、ふえた株式会社の五〇%は東京都内に立地しています。
また、この間、雇用問題が深刻になっています。同じ二年間に全国で百十万人の従業員がふえていますが、そのうち四十五万人は東京都内でふえています。
また、産業構造が変わってくる中で、IT産業等が非常に重視されています。この間、情報通信業に従事する人が全国で二十四万人、二年間でふえています。ところが、そのうち十二万人は東京でふえています。
バブル経済のときも東京への一極集中が非常に問題になりました。ところが、この間、東京への一極集中は、バブル経済のときと同様、もしくはそれ以上にすごい勢いで進んでいます。徹底した規制緩和や、税金を都市部に重点的に投入していく、そういうことを行えば、東京への一極集中が進むのは明らかです。一方で東京への一極集中が起こりながら、地方で高速道路を一生懸命つくっても、なかなか地方経済の自立的な再生というのは難しいと思います。
では、一体どうすればいいのかということですが、地方経済の再生を考える場合は、公共事業に依存しないような地域経済をどうつくっていくのか、ここが大きなポイントになると思います。もちろん、そのためには、今進められているような規制緩和や都市再生、市町村合併、三位一体の改革、こういったものについてはもう一度国土の均衡な発展という点から検討し直す、国土の均衡な発展を保障するような行財政制度の確立、この辺が非常に重要になるのではないかと思います。
もちろん、従来のように、地方経済を公共事業によって立ち直らせていく、そういう政策も望ましくないと思います。むしろ、公共事業には依存せずに地域経済の再生をどう立て直していくのか。
とりわけ重要なのは第一次産業だと思います。御承知のように、カロリーベースでの自給率はもう既に四割です。木材に至っては二割を切っています。日本は決して農業や林業に不適切な国ではありません。そういった、公共事業に依存しない地域経済の再生を図っていくということがまず重要ではないかと思います。
同時に、公共事業の内容も見直していく必要があると思います。
今、三位一体の改革等で一般財源化が議論されています。二〇〇四年度については公立保育所の運営費、今後は義務教育、そういったものが大きな争点になると思います。ただ、最も地域の自主性を発揮できるような分野というのは、むしろ社会資本整備だと思います。社会資本整備については、一般財源化を進めて地域の自主性を生かす、そういう中で社会資本整備の効率性がむしろ図られていくのではないかと思います。
同時に、高速道路のような広域的な公共事業の必要性というのも当然あります。ただし、一度決めたからそれを何が何でもやるというのではなく、もう一度、時代の変化とともに、財政再建との整合性、社会的な必要性を含めて、こういう国会の場できちっと議論し、広域的な公共事業については再度検討していく必要があるのではないかと思います。
それと同時に、高速道路との関係でいいますと、交通政策をやはり見直す必要があるのではないかと思っております。二十世紀は確かにモータリゼーションの時代でした。でも、二十一世紀、ヨーロッパでは既に、モータリゼーションの時代から公共交通優先の交通体系へと変わってきています。別にヨーロッパには限りません。隣のソウルでも、高速道路を撤去して河川を再生するという事業が町の中で進んでいます。二十一世紀の公共交通の優先、そういったことも含めて高速道路整備については考えていく必要があるのではないかと思います。
以上です。(拍手)
○赤羽委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○赤羽委員長 穀田恵二君。
○穀田委員 きょうは、本当に御苦労さまでございます。貴重な御意見を本当にありがとうございました。
まず最初に、中山参考人にお聞きしたいと思います。
実は、京都でも市内に高速道路が乗り入れられるという計画がずっとありまして、また、お聞きすると、中山参考人は奈良のようですし、奈良でも、平城京のあたりを高速道路が入るというようなことまであるそうです。
ですから、きょうはそういう点をひとつお聞きして、先ほどありましたように、国民に多額の財政負担をさせる、今の時点で発生させるというのは、存在しているもとでは、よくないと。
私は、社会資本整備のあり方として、このままつくり続けるというのは問題じゃないかという立場に立っています。特に都市部での高速道路建設については、午前中にもお話ししたんですが、大気汚染、さらに騒音、振動や環境、まして、京都や奈良の場合には景観への影響という問題を考慮して、抜本的見直しが必要じゃないか。したがって、都市のど真ん中に高速道路については私は反対だという立場です。その点の御所見をお聞きしたいんです。
特に、いつも論議の中心になるのは、京都でも奈良でもそうですが、中の渋滞が大変だからということになるんですが、私は、総合的な交通体系自身が必要じゃないかと。だから、高速道路をつくればいいというものじゃないという点も私の考えでございますが、その辺の御所見をまず最初に伺っておきたいと思います。
〔委員長退席、今村委員長代理着席〕
○中山参考人 この間、ヨーロッパ等でも二十世紀型のまちづくりの見直しがかなり進んでいると思います。とりわけヨーロッパなんかでも、歴史的に重要な町の真ん中に高速道路を通すというところは皆無じゃないかと思います。むしろ、この間、ヨーロッパで重点的に取り組まれていますのは、町の中に乗り入れる車をどうやって減らしていくのか、それをどういう形で公共交通に置きかえていくのか。二十一世紀はどこの国でも、とりわけ先進国では高齢化が進みますけれども、高齢者にとって優しい移動手段とは何なのか、そういったことが各国で議論されていると思います。
そういう中で、町の中に高速道路を乗り入れるというよりも、むしろ今支配的になってきているのは、かつての路面電車とは違いますけれども、新型の路面電車、LRTとか、もしくは、日本の各地で取り組まれてきていますけれども、コミュニティーバスとか、そういった公共交通を拡充していくことで動きやすい地域社会をつくることができないか、そういったことが特にヨーロッパなんかでは顕著に議論されていると思います。
また、これは、今議員がおっしゃったように、環境問題にとっても非常に重要ですし、地域経済という点から見ても非常に重要だと思います。高速道路をつくりますと、どうしても町の中から外部に消費が出ていってしまいます。反対に、高速道路ではなくて、そういった公共交通で町の中を移動しやすいような町に変えていった場合は、もう一度中心部の活性化が図られるということが起こっています。
そういった意味では、二十世紀は確かに、自動車交通というのは便利ですから、そういったことを重視したかもしれませんけれども、これから二十一世紀、高齢化が進んでいく、むしろ中心部の活性化をもう一度考えていく、そういう時代では、高速道路を通すよりも公共交通網を拡充して、町の中で人々が移動しやすいような、とりわけ高齢者でも移動しやすいような交通体系をつくっていくことが重要ではないかと思います。
○穀田委員 二つ目に、先ほど猪瀬参考人もおっしゃいましたけれども、京都の場合は近くに三つ高速道路を建てようというもので、おかしいという話がありました。同じように、実は淀川左岸線とありまして、えらい小さい話になりますけれども、それも今度は阪神高速の方でいいますと、公団は不採算路線と判断しているんですよね、私は当然だと思うんですけれども。
ところが、それをやりますと、もともと道路公団が今のやり方でつくる場合には大阪市は六十億円の負担でよかったんだけれども、今度、自力でやるとなると三百八十億円の負担になる、こういう事態になりかねないんですよ。だから、私は、先ほど中山参考人がおっしゃった、地方自治体としても、今の財政負担という問題からしてもそう簡単じゃないんじゃないか、だから、そういう角度も含めて物を見る必要があるんじゃないかと思うので、その辺をもう一度中山参考人にお願いしたい。
もう一つ中山参考人にお願いしたいのは、先ほど、最後の方で公共事業のあり方ということを言っていますよね。私は、参考人がいろいろな文書で書いておられますが、改めて、第三の道という形で求められているんじゃないかと思うんですね。
その辺の詳しい点を二つ、ちょっとお話しいただければ。要するに、地方自治体との関連、それから公共事業のあり方、第三の道ともいうべきもの、こういう点の参考人の御所見をお伺いしたいと思っています。
○中山参考人 まず阪神高速道路の件ですけれども、その大もとにあるのは都市再生の考え方だと思います。とりわけ、この都市再生、二〇〇四年度予算を見ましても、国際空港、拠点港湾、大都市の環状の高速道路網整備、そういったところは、財政が非常に厳しい中でもかなり優先的に予算が割かれていると思います。もちろん、すべて一〇〇%国が責任を持つわけじゃなくて、今おっしゃったように、自治体に対しても非常に大きな負担になってきます。財政状況が厳しい中で、こういった環状の高速道路網整備を優先させないとだめなのかというと、むしろ私自身は、もうちょっと慎重に考えるべきではないかと思っています。
これは国土交通省の今の予測がいいのかどうかは別としまして、少なくとも、もうあと二、三年で日本の人口はピークになります。またさらに、ややおくれますけれども、自動車交通量、自動車の所有が減っていくのも明らかです。そういった時代になることが明らかであるにもかかわらず、果たして、環状の高速道路網を大都市部にまだこれからつくっていかないとだめなのか。この辺はもうちょっと慎重に考えておく必要があるのではないかと思います。
それからもう一点、公共事業の基本的な考え方なんですが、まず、従来のように、どちらかというと公共事業予算を地方に、余り言葉は適切じゃないかもしれませんが、ばらまくような形での地域振興というのは決して望ましくないと思います。これがこの間の公共事業に依存する地域経済をつくってきましたし、膨大な財政赤字をつくってきた原因ですので、従来のように公共事業中心に地域経済を支えていくというのは望ましくないと思います。
さりとて、では、公共事業をこのまま一気に減らしてしまって、都市再生を重視することで、日本のかなりを占めている地方経済をこのままいくと破綻させてしまっていいのかというと、これもよくないと思います。
むしろ、そういった公共事業予算を大幅に見直して、先ほど申しましたように、第一次産業とか製造業とか社会保障とか、そういったところできちっと地域で雇用が確保できる。むしろ公共事業予算を地域で、そういったところで雇用が確保できるような予算に回して地域経済の自立を図っていくという、従来とも違うし、さりとて都市再生とも違うような、そういった路線を考えていくことが地方にとっては一番重要ではないかと思っています。
○穀田委員 次に、猪瀬参考人と田中参考人に少しお聞きしたいと思うんです。
先ほども、ファミリー企業の問題がいつも問題になっていますし、推進委員会でもそんな議論がされたことは承知しています。実は私も、この間、随分、ファミリー企業も問題だけれども、道路建設にかかわるゼネコンといいますか受注企業という問題もこれまた大変な問題だなということを実感しました。
公団発注の未供用七十区間の三百六十一件の工事での落札率が九八%を超えていたり、一件の工事以外は、すべての工事、受注企業、ジョイントベンチャーですが、公団のOBが天下っている。さらにつけ加えて言えば、これは国会の予算委員会で質問したことですから、受注企業から自民党に五年間で二十八億円もの政治献金がされている、こういうことがありました。
ファミリー企業の問題は随分問題になっているんですが、やはり今度の場合、その規模からいいましても、建設関係の受注企業とのいわば政治腐敗、これをなくすこともとても大切だと思うんですね。だから、民営化すればこういった問題がなくなるとお考えか、それとも、また新たなメスはメスとして入れるべきなのか、その辺はお二人からお聞きしたいと思います。
〔今村委員長代理退席、委員長着席〕
○猪瀬参考人 穀田委員のおっしゃったことは、今回提出されている資料で委員会の意見書がありますので、委員会の意見書の、二百三十五ページ以降、ファミリー企業の詳細なレポートを出しております。
もちろん、御存じのように、OBが天下りすると受注率が一〇〇%近くなるわけですね。そういうことが現実にあるんだということがこの間の、僕は八年前にそういうことを言ったんですけれども、民営化委員会ができたりする中で国民にそういう認識が共有されていったということ自体のプロセスが改革なんですね。
民営化すれば当然競争入札になりますし、それから、今、新規参入障壁というのがありまして、例えば高速道路で仕事をするときに、アスファルトを塗るときに、前に経験があるかどうかということが書いてあるわけですね。前に経験がないから新規なんですけれども、経験があることとか書いてあるわけです。そういうふうな新規参入障壁というのがあったり、いろいろなものがあるんです。これを、この民営化の流れの中で、当然、競争入札した方が民営化会社としては仕事を安いコストでできるわけですから、そういう形で競争入札させることによってコストを低く抑えていくとか、いろいろな形でやっていくことになると思います。
○穀田委員 質問をちょっとうまく言っていなかったかもしれません。
ファミリー企業の問題はおっしゃるとおりで、三千億円近い、そういう話があるというのは僕が全部言っているんですけれども、それでなくて、建設にかかわる受注企業のゼネコン、あっちの方も大変な話になっちゃうか、その辺はどうですかという話なんです。
○猪瀬参考人 大枠でまず言うと、二十兆円が十兆円になったというふうなことは、投資される総額が減ったということは、それは全体に建設関係の仕事が減ったということに連動してきます。そうすると、これは基本的にコストを安くやっていくという方向に流れてはいくでしょう。そういう大枠がある。あとは、それぞれのいろいろな問題は個別ケースであると思います。
そういう中で、国民の厳しい監視の目がこれから民営化の流れの中で出てきますよね、当然ですけれども。今までのような、ファミリー企業が各地域の建設会社とつながりながら仕事をやっているようなずぶずぶの体質は、どうしてもこれからは、民営化されていけばそんなことやっていられなくなりますよ。そういうことですね。
○田中参考人 今お尋ねの点は、何も高速道路の建設にかかわらない問題であります。公共事業一般の問題かもわかりません。
私は、実はほかの、今機構と名前は変わりましたけれども、独立行政法人になった旧公団の入札監視委員長をやっておりますが、そういうものを見ても、一番いい方法は、指名競争入札とかどうとかではなくて、一般競争入札をさせることです。
それからもう一つ言えば、予定価格をオープンにすることですよ。予定価格をオープンにするとみんな上に張りつくんじゃないかと言いますけれども、逆です。予定価格に近いところでやったら落札できませんから。これは実験的にやって、本当に落ちております。
ですから、後の話は別にして、一般競争入札を徹底するということが非常に重要であるというふうに思います。そのためにも、新しくできる会社が本当に完全な意味での民営化会社でないと、政治に左右される会社であればなかなかそれが難しいであろうということをコメントしておきます。
○穀田委員 藤井参考人にお聞きしたいと思います。
参考人のレジュメにもありますように、日本でいいますと、道路というのは、つくり続けるといいますか、いわばあの一万四千キロ、そして一一五二〇とか、そういういろいろな数字があります。この基本となっているのは、実は、政府の四全総なり五全総という計画になっています。
先ほども皆さんからむだという話が出たときに、例えば本四架の三つはどうかと猪瀬参考人もおっしゃっていました。また、田中参考人の文書などでは、東京のああいう橋の問題について触れられていました。実はこれは、五全総などではもっと大がかりな、いわば六大海峡プロジェクトみたいなものがあります。
私は、道路をつくり続けるというその未来のところに、実は全総の計画が下地にあって、そういう橋脚も含めてつくり続けるということになりはしないかと。それは今の段階で、今までの経過からしますと見直す時期が来ているんじゃないかというふうに率直に思うんですね。
参考人は、今までの、例えば従来の路線設定基準、そして今後の考え方という中に、いろいろお話ありましたけれども、そういう未来方向へ向けて今私どもはそれでいいのかということについてどうお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。
○藤井参考人 お話しの点の、四全総で今の一万四千キロができている、あるいは、そのうちの一万一千五百二十キロをプールでつくるという、その基本になっている六つの基準の中の一番の問題になるのが、ミニマムアクセス一時間という、そこの部分が効率性と全く反する基準です。ですから、むだという場合には、このミニマム一時間という公平性は、一体ぜいたくなのかどうか、それをまず問わなきゃならない。
フランスの場合には、先ほどちょっと御紹介したかもしれませんが、国土の開発の、日本語に訳しますと社会資本の基本整備法のような法律がありますが、それでは、全国土から高速道路なりあるいはTGVの駅まで自動車で四十五分以内にアクセスするようにネットワークをつくると書いてあるんですよ。
それから、現在、日本のJRの場合には、地方交通線区と幹線系線区があるわけですが、幹線系線区が約一万三千キロあるわけです。それからいいますと、一万一千五百二十キロというのはそう過大なネットワークではないと私は思うわけです。
それからいま一つは、新しい基準によりますと、費用便益分析をやる。費用便益分析の費用便益比率が一よりも下がったもの、あるいはマイナスになるもの、これについては、先ほど猪瀬参考人からもお話がありました京滋バイパスとか、あるいは北海道の幾つかの路線のように、完全に見直す路線が出ました。しかし、それは部分的な修正であって、基準全体の修正ではないわけであります。
私は、やはりBバイCが一を超えているというものが基本的には望ましい。しかも、その場合の便益には利用者の便益しか実は入っていないんですね。外部効果が全く計算されていない。これは計算しにくいからですけれども。したがって、費用便益分析の比率でいけばもっと実際には高くなるだろうというふうに解釈されますので、費用便益分析を基準にする限りは、現在の大部分の道路は必要だという結論になっている、そういうふうに私は思います。
○穀田委員 一言だけ。
時間が来ましたのでやめますけれども、いずれにしても、あの評価基準その他を見ますと、プラスの設定はあるんですけれども、自然や環境その他含めて、マイナス、マイナス、マイナスという効果が余り出ていない数字になるような形式になっているのは、ちょっと私自身はいかがかと思っています。そして、ああいう六大海峡プロジェクトなどというのは、それこそ東京アクアラインの過大な見積もりの結果を再び招くであろうということを私自身は思っていることを指摘して、終わらせていただきます。
ありがとうございました。
【「しんぶん赤旗」2004年4月14日】
道路公団民営化 参考人質疑で法案への批判次つぎ 新線中止し借金返済を
衆院国土交通委員会で十三日、道路公団民営化法案の参考人質疑が開かれ、参考人から法案の問題点を指摘する声が相次ぎました。
日本共産党の穀田恵二議員は、民営化で(情報公開法の対象外になり)いっそう不透明になると質問。筑波大の石田東生教授は「民営化でファミリー企業の問題が解決されるわけではない。公開性、透明性が重要」とのべました。
構想日本の加藤秀樹代表は、穀田氏の「建設を続けることで四十兆円の債務が膨らむのではないか」との質問に、「今まで通りのやり方で建設が進むので、返済の見通しは厳しい。金利動向によって債務が膨らむ危険性もある」とのべました。
奈良女子大大学院の中山徹助教授は「公共事業に依存しない地方経済の再生に力を入れるべき」とのべ、公共交通優先の視点から道路建設のあり方を見直すよう主張。「公共性が高い高速道路は民営化になじまない。新線建設を中止して収入を借金返済に充てるべきだ」とのべました。
作家で道路公団民営化推進委員会委員の猪瀬直樹氏は、政府案について「及第点。成立させてほしい」とのべたのにたいし、民営化委元委員長代理で拓殖大教授の田中一昭氏は「民営化とは名ばかり。民営化会社には経営責任も自主性もない」と批判しました。
民主党が出している高速道路無料化案について、中山氏は「債務返済を優先すべき。無料にすると都市への流出など地域経済への影響が大きい」と指摘しました。
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