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【第159通常国会】 衆議院・国土交通委員会
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件 景観法案(内閣提出第三八号) 景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第三九号) 都市緑地保全法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号) ――――◇――――― ○赤羽委員長 穀田恵二君。 ○穀田委員 私は、日本共産党の穀田です。 三方の参考人、本当にありがとうございます。きょうは貴重な御意見をお聞かせいただきまして、参考にさせていただきたいと思います。 きょう、私は、景観法というのは今の日本の景観を守る上で一歩前進の法であると考えています。しかし、私が考えていますのは、景観や町が壊れていった要因を見定めないと、仮にそういう法律をつくったとしてもいろいろなことが起きるんじゃないかという危惧を抱いているものですから、各地の個性豊かな都市景観が失われ、画一した町をつくってきた大きな要因は何かという問題について私はお聞きしたいと思っています。 私自身は、今、政府や行政が、行政といっても、もちろん金沢の市長も行政を担当されていますから、一概には言っていないわけですけれども、現実は経済効率優先を志向してきたために、身勝手な開発や建設というのが容認されてきたのではないかと私は考えています。 私の住む京都でも、先ほど随分京都が問題になりましたけれども、大型店出店や大規模開発を容認してきましたし、一方で、建築指導要綱などを初めとして景観に携わるさまざまな条例などもつくってはきましたけれども、中林参考人が紹介されていますように、事業者は、景観は個人個人の主観にすぎないとか、建築基準法、都市計画法は守っていると言って、現実は町並みが破壊され続けてきたのがこの数十年間ではなかったかと思います。 西村参考人も、規制緩和型の他の都市計画法制度の整合性とおっしゃっておられました。また、山出参考人も、高さの問題については他の法律にゆだねられている、そういう意味では景観法での授権をして規制こそとおっしゃっていましたし、私は、この辺は本当に同感するものであります。 そこで、先ほど言ったように、今、都市景観やまちづくり、町の景観というのが壊されてきたという現実についてどうお考えか、その要因も含めて、お三方にまずお答えいただければと思っています。 ○西村参考人(東京大学大学院工学系研究科教授) 基本的には、今の都市計画の規制値が緩いんだと思うんですね。やはり現状からかけ離れている部分がある。 それは、土地所有者にとっては、自分の土地の地価にはね返るわけですから、資産価値の問題からしてなるべく緩い規制値、建ぺい率や容積率が欲しいということがあるわけですね。ところが、隣に何か建物が建つとなると、それでは自分たちの環境が悪くなって景観が悪くなるということで困るという、居住者としての側面と土地所有者としての側面がやはりあって、土地所有者としては緩い規制を望むし、周りのことから影響を受ける居住者としては周りには厳しい規制を望むという、非常に二律背反的な状況があるんじゃないかと思うんです。 ですから、その意味でいうと、緩い規制、そしてまた景観の問題が、景観地区ができて、景観地区だけの問題として矮小化されてしまうと、ほかのところはもう変わってしまうということになると、せっかくの高邁なねらいが非常に小さな地区だけにとどまってしまうというおそれもやや心配するわけです。その意味で、全体として緩い都市計画の規制というのが一つは問題としてあるんじゃないかと思います。 ○山出参考人(金沢市長) 私は何度も申し上げてきましたけれども、自然と歴史を軽視してきた、そのことに尽きるというふうに思っています。 ○中林参考人(平安女学院大学生活環境学部生活環境学科教授) 要因ということでありますが、より本質的には、やはり、他の先進国にも見られないような土地の商品化といいますか、投機的な扱い方をされてきたことによると思います。 今委員は経済効率優先と言われましたし、それから、政府の出す文書にも経済効率優先というような言葉はありますけれども、これはもう少し限定する必要があって、一定の狭い敷地の短期的な経済効率の優先であって、私がちょっと書いていますように、長期的に見ると個別の敷地ではマンションを建てると経済効率はいいかもしれませんが、ずっと並べてマンションを建てるわけにはいきません。そうはならないので、そういうところはマンションの価値も下がりますし、そういうことを考えますと、言葉の問題でありますが、長期的な経済というものも景観の破壊とともに起こってきたというふうに思っております。 もう少し直接的には、最初に西村先生がおっしゃいましたように、容積率とか建ぺい率が非常に過大だった、町にとって必要だった床面積を超えて指定されてきているということは非常に都市計画法上は大きいかなと思います。 京都の都心部でいえば、幹線道路沿いが七〇〇%、それからその中が四〇〇%、これが非常に景観を壊す要因になったのではないかと思います。周りの二〇〇%のところを見ますと、かなりいい状態が残されていますし、三〇〇%でも効果がある。これは現象論的ですけれども、容積率についてはそういうことが言えるかと思います。 ○穀田委員 私も住んでいまして、やはり、先ほど西村先生からもお話がありましたけれども、二律背反、確かにあるんです。でも、七〇〇%というふうな感じほど望んではいないんですね、住民の方々というのは、結構。ですから、景観破壊というのは実は住む人も含めて追い出されちゃうという結果になりまして、私自身の哲学としては、景観というのは、すぐれたものであるという意味での価値と同時に、住まいする者にとっても価値があるんだという意味合いもしっかり見たいなということを思っています。 結局、バブルの時代に住専などが京都をばっこしまして、実際上、乱開発で、住む人々が追い出されるという結果になったことを私は忘れることができませんし、その底流に、高さ制限の緩和と、そして民間活力という形が呼号されたということが一つ大きかったことを私は思い出しているところです。 今、まちづくりとの関係で、逆説的に実は景観という問題について取り上げて言わなければならない時代になっているのかとも思ったりしているぐらいに感じているわけです。 そこで、先ほども市長からもありましたように、自然と歴史の軽視だと。さらに文化も私は軽視しているんじゃないかと思うんですね。したがって、この法案によるところの良好な景観というものを判断する主体はだれなのかという問題が私は問われていると思うんです。私自身は、その地域で生活している住民であるべきではないかと考えるわけです。 そこで、まず西村教授、中林教授にお聞きしたいのは、良好な景観というものの判断の主体をどう考えるかということが一つ。二つ目に、西村教授は、意思決定に市民やNPOが参加する仕組み、また中林教授も、今度の法案が住民参加が限定的だということで、いずれも住民参加の問題についておっしゃられています。したがって、住民参加のあり方についてどういうふうに前進させるべきかということをお聞きしたい。 山出市長には、先ほど、議論すれば落ちつくと。そうなんですね。私もそうだと思うんです。行政がそういう立場に立ってくれると本当に助かるなと率直に思うんです。私などは、京都に住んで、自分の経験を言うのもなんですが、せっかく条例をつくっても、それで町がやられるときに話し合いをせずにもうぱっぱぱっぱやっていくというのを何度も見てきたもので、そういうふうにおっしゃっていただくと落ちつくといいますか、したがって、景観条例づくりや運用の面での住民参加の実情について行政の長からの立場でお答えいただければということで、三方にお聞きしたいと思います。 ○赤羽委員長 残り時間五分でございます。済みません、端的に御答弁をお願いしたいと思います。 ○西村参考人 良好な景観をだれが判断するのかということですけれども、一つは、先ほどから言っていますように、景観計画をつくるわけで、景観計画の中で市民参加をしながら、その地域の景観はどうあるべきかということをきちんと議論する中で、ある程度の指針というのは決まっていくんじゃないかというふうに思います。 それから、住民参加のあり方は、そこも一点なんですけれども、もう一点挙げるとすると、今、建物が建てられるときに建築確認申請のための書類が出てきますけれども、この書類が普通の形では市民は一般的に閲覧できないわけです。しかし、そこに建ってしまうとそれが非常に大きな影響を及ぼすわけなので、少なくともある種の地域の中に関しては、やはり一つのそこの地域の判断材料として公開されるようなプロセスがないと議論が進まないんじゃないかと思うんですね。ですから、そこが一つ改善点としてあるんじゃないかというふうに思います。 ○中林参考人 西村参考人が言われたとおり、やはり住民の参加するプロセス、そして、今までいろいろ試みをされてきていますから、そういう手がかりを大切にして住民が意見をまとめるやり方、これもやはりいろいろな努力を積み重ねないとできませんので、一概に住民が参加するのはいいというふうに言っても、いろいろな技術もありますから、そういうことを積み重ねることが重要だと思います。 ○山出参考人 私は、まちづくり協定、そして都市計画法による地区計画、これをベースにして景観についての住民参加を進めていきたい、こう思っています。 ○穀田委員 まだ三分ありますのでお聞きしたいと思いますけれども、私は、中林参考人からお話がありました、では、荒廃した景観をどう再生するかということが一方では問われていると思うんですね。つまり、今後そういうものについて、破壊されつつある景観を守ると同時に、破壊されてきたものの荒廃した景観をどう再生するか。 皆さん、外から見て京都はという話をされるんですが、実際は、この間委員派遣で行ってこられて、多分すてきなところを見てきたでしょうけれども、まさに、私、何回も言いましたように、あの西本願寺の前のところに高速道路が来るんですよ、これが破壊にならぬかということを何度もここでやってきたわけです。ですから、守ると同時に、荒廃を再生するというところも含めてやらなくてはならない事態に来ている。そういう点を特におっしゃっておられる中林先生に最後にお聞きしたい。 ○中林参考人 建物の高さ規制というのは一つは重要で、先ほどから議論になっているとおりで、今ある高い建物を壊せというわけではありませんけれども、やはり町を守ろうとする人々を力づけるような形で町のルールを決めていく。 今お話にありました高速道路は、京都もそれなりにいろいろな景観施策も積み重ねているんですけれども、高速道路だけはどうしても計画が白紙にならない。実際、京都の高速道路は、郊外、南の方では高架で立ち上がりつつありますし、あと、都心部に入る高速道路も、地下を通って入ってきて地下を通って出ていく。いわば京都の都心部をインターチェンジの一部にするかのような高速道路計画がある。この自動車の制御というものもきちんとしないと、これは景観法の中でやるということではありませんけれども、このことと連動して景観が守られていくような議論、仕組み、討論、こういうものができていくということが望ましいというふうに考えております。 ○穀田委員 この間、道路公団の民営化の最後の議論のときに、小泉首相も、京都には高速道路は似合わないと言っていまして、我が意を得たりと思ったのですが、そういう意味でいいますと、今、中林先生からお話がありました問題については、我々も含めて努力して解決を図っていく、景観を守るための努力としたいと思っています。 本当にどうもありがとうございました。 ○赤羽委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。 この際、参考人の皆様方に対し、本委員会を代表いたしまして、一言御礼のごあいさつを申し上げさせていただきます。 まず、本日は、大変御多忙中の中、三名の参考人の皆様方におかれましては、わざわざ本委員会に御足労を賜り、そして、夕刻のこの遅い時間まで御出席をいただきましたこと、本当にありがとうございました。また、意見陳述の時間、大変限られた時間でございましたが、それぞれのお立場から大変貴重な御意見を賜りましたことを心から感謝申し上げる次第でございます。本日皆様方からちょうだいいたしました貴重な御意見を今後の議論の参考として、より一層深まった議論を展開してまいる所存でございます。どうか、今後ともよろしくお願いいたします。 本日は、本当にありがとうございました。 次回は、明十二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 |
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