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【第159通常国会】 衆議院・国土交通委員会(午前)
本日の会議に付した案件
建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)(参議院送付) 不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)(参議院送付) ――――◇――――― ○赤羽委員長 穀田恵二君。 ○穀田委員 建築基準法の条文というのは、実際に暮らす者にとって余り関係ないところでつくられていることもあり、突然隣にマンションが建ったりすることによって、あれあれと思うことが結構多いんですね。だから、実際にも建築基準法というのは、一人一人の住民にとっての暮らしや、家をつくる場合、また住環境などに密接にかかわる問題、本来はそうなんですね。したがって、私は、こういう問題について、一番国民にわかりやすくというのが大事だなと常々思っているんです。 そこで、きょうは特例容積率適用地区について聞きたいと思うんです。 これは、二〇〇〇年の法改正で都市計画の商業地域に創設された特例容積率適用区域の対象範囲を拡大するということだけれども、もとになった特例容積率適用区域というのはどういう制度なのか、わかりやすく、簡潔にお答えいただきたいと思います。 ○松野政府参考人(国土交通省住宅局長) 平成十二年に創設されました特例容積率適用区域は、商業地域の中で、適正な配置及び規模の公共施設を備えていて、高度利用を図るべきと認められる区域を都市計画で定める。この区域において一定の要件を満たす場合に、建築行政を行っている地方公共団体である特定行政庁が指定するところによりまして、複数の敷地の間で容積の移転を行うことができる、こういう制度でございます。 ○穀田委員 これ、一回聞いてすぐわかるという人はなかなかいないと思うんだけれども、要するに、容積を目いっぱいに使わないで、余った部分を相手に分けることができる、こういうことですよね、簡単に言って。与えられた方は、容積率の上限を超えて少し高いものを建てることができる、一言で言えば、容積飛ばしと言われている制度なんですね。 そこで、基本的なことを少しお聞きしたい。 そもそも、容積率を定めて建築物の建築を制限しているのはなぜか、これが一つです。それから二つ目に、今回の特例容積率適用区域というのは、いわば容積率での制限を超えてもよいという特例を設けるものだと思うが、この制度を二〇〇〇年に導入した理由は何か。そして三つ目が、これを用途地域の商業地域にのみ限定した理屈は何か。この三つについて、まず、基本的な問題ですので、お聞きしたい。 ○松野政府参考人 まず、容積率規制のねらいということでございますけれども、これは、土地利用が適切に図られるように、用途地域の指定とあわせて建築物の床面積を制限するということですが、それは、一つは、建築物を利用する人あるいは車、これによる発生交通量と道路等の公共施設とのバランスをとるということ、それから、その土地柄に応じて、採光、通風等の市街地環境の確保を目的として行われるというものでございました。 こうした観点から、それぞれの地域ごとに適用される具体的な容積率の制限につきましては、その地域の状況を勘案しまして、建築基準法の中に定められたメニューの中から選択して、都市計画で決定されるということでございます。 二点目に、十二年の当時に導入した理由でございますけれども、道路、鉄道あるいは下水道が十分に整備されている都心におきましては、土地の一層の有効・高度利用を推進するという必要があるケースがございます。未利用の容積を他の敷地で有効に活用できる制度として、平成十二年に導入されたものでございます。 当時の趣旨としては、土地の有効・高度利用のニーズの高い商業地域において指定できるというふうにしたものでございます。 ○穀田委員 そのときの答弁を見ますと今お話しのとおりなんですね。ただ、ちょっと言っているのは、「基本的な、建築行為は自由であるという建築行為の自由度を生かしながら、」という実は文言があるんですね。それが基本的精神といいますか、今の建築のあり方に対する国土交通省の考え方を多少物語っていると思うんですが、それはそれでさておいて、今度の制度は、今お話があったように、土地の一層の有効・高度利用を推進するためにということです。 制度が導入されて三年以上たつわけですが、これまでの実績はどうか。実際の容積率を移転したところは何件か、それはどこか。そして、容積率移転はないが、全国でこの区域を指定したところ、つまり自治体はあるのか。この点についてお答えいただきたいと思います。 ○松野政府参考人 まず、この平成十二年の制度の指定実績でございますが、現在のところ、東京駅周辺の区域百十二・九ヘクタールでございますが、この区域において一件指定されております。この中で特例敷地の指定をされているものが、一つのケースというのは二つの敷地があるという意味ですが、あと何カ所かこの区域の中で指定の予定があるというふうには聞いております。 ○穀田委員 今聞いたように、三年たってわずか一件なんですね。他に、全国でも、私、いただきましたけれども、東京駅の八重洲と丸の内というところでそれを使っているというだけの一件にしかすぎない。要するに、いろいろあるけれども、この制度が、大企業やディベロッパーだけが、わずか一件だけが興味を示したにすぎないということが結果としてある。やはりこの制度は間違っているということの証明だと私は思うんです。 大体、先ほどありましたように、そもそも容積率によって用途規制をするという都市計画法や建築基準法の精神と相反する制度だと私は結論づけていいと考えています。なぜかというと、こんな特例制度をつくっていたら、容積率規制そのものが意味がなくなるということに発展しかねないと思います。 そこで、都市計画区域の用途地域のうち、第一種、第二種低層住居専用地域、工業専用地域を除くすべての地域に対象を広げるということが今度の改正です。東京二十三区では、都市計画地域に占める割合は七七%という。商業地域でわずか一カ所しかなかった、いわば一部大規模のディベロッパーしか活用しなかった問題のあるこの不要な制度を、災害対策の名前で対象地域を拡大して継続させるやり方そのものがおかしいのと違うか。いかがですか。 ○松野政府参考人 平成十二年の当時は、商業地域における一層高度利用を図るべき場所の土地利用を可能にするということが一つの目的でございましたが、今回は、この特例容積率の制度を使って、むしろ防災空地を確保する、緑地を確保する、あるいは伝統的な建築物をそのまま確保したいというケースに、逆にですが、利用可能な容積を他の敷地で活用していただいて、いわばそこの確保を可能にするというための制度ということでございます。 そうすると、そうした目的というのは商業地域に限らないわけでございまして、そういった意味でこの特例容積率のような容積移転が可能な制度を、一定の用途地域を除きますが、ほとんどの用途地域でその適用が可能だという制度に衣がえをするということでございます。 ○穀田委員 私は、防災活用をするということにこういうことで可能だということについて否定するつもりはありません。しかし、そのことが本当にそういうふうに誘導されるのかなということについては、今後また、もう少し事実を見て検討したいと思っています。つまり、当初の高度の活用という内容から少し内容が違ってきたということが結論づけられると思うんです。 そこで、今政府参考人は伝統的な景観の問題についても一言言われたので、では、その問題についても聞きましょう。 先日景観法の審議が行われまして、私は京都の問題を再三再四取り上げました。京都の景観や町並みが高層マンション乱立で壊されている実態について、資料もお示しして紹介しました。その際、高層マンションの業者というのは、都市計画法、建築基準法には違反しないと言って建設を強行してきたことも事例として私は紹介させていただきました。商業地域だということで容積率一律四〇〇%以上に規制緩和されたことが主な原因となってこの事態が進みました。こんな制度が住宅地にまで拡充され、指定されたら、身勝手なマンション開発業者は、法に違反しないなどと、一層やりたい放題するのは目に見えている。 景観法の審議の際に、参考人が一様に都市計画法や建築基準法での規制を訴えられたことは記憶に新しいところです。私は、景観保全などに取り組もうとしている一方で、容積率を緩和する制度を広げるという発想が理解できません。この制度は景観や町並み保全の取り組みに支障を来すのではないかと逆に指摘したいと思うんですが、いかがですか。 ○松野政府参考人 これは、先ほども言いましたように、かなりの用途地域に拡大する、単なる商業地域の一層の高度利用ということだけではなくて、防災空地あるいは緑地をそのまま保全したい、あるいは伝統的な建物をそのまま保存して、余った容積をほかの敷地で活用する、こういったことができるようにするということでございますが、その際に、一つは、例えば住居系の用途地域ですと、周辺に対する影響が出ないように、斜線制限とか日影規制は一切緩和しないで、そのまま適用されます。それから、どうしても高さ制限で町並みの高さを確保したいという場合には高さ制限ができる制度として衣がえをするということが今回の改正内容でございますし、また、本当に必要な場合は、先日審議していただきました景観計画あるいは景観地区を定めるといったことで色彩やデザインの規制をあわせて行うということも可能でございます。 決してこの制度が景観保全と矛盾するものではないというふうに考えております。 ○穀田委員 それは検証を待ちたいと思うんですが、当時の二〇〇〇年の建設委員会の答弁でも、こういうような制度もこの容積率適用区域制度とあわせて活用するということで、高さ制限とこの問題について言っているんですね。だけれども、そういう一連の容積率の緩和が何をもたらしたかという事実を前回私は指摘したんです。これは必ず、そういうものとして抜け穴もさまざま来る可能性もあり、そう簡単に政府参考人がおっしゃるような事態になるというふうにはどうかということについてだけは言っておきたいと思います。 そこで、災害対策の問題についてもあわせて触れておきたいと思うんです。 個人住宅などの耐震診断、補強をめぐる支援のあり方について聞きます。 阪神・淡路大震災では、犠牲者の圧倒的多数は住宅の倒壊による圧死や窒息死でした。したがって、住宅の耐震化が重要なことは言うまでもありません。住宅の耐震化を進める上で、工事費用の負担を軽減することがかぎです。 国交省の密集市街地整備促進事業による住宅耐震化工事に対する補助制度が二〇〇二年からできています。この補助制度の導入実績と住民からの申請実績はどうなっているか、お答えください。 ○松野政府参考人 特に戸建ての住宅につきましては、御指摘のとおり、十四年度に補助制度ができました。ただし、この十四年度の補助制度は対象地域が極めて限定されていたということがございまして、そういった意味で実績がまだ出ていなかったという状況がございました。 こういったことを踏まえまして、今年度の十六年度予算においては、補助対象地域を、おおむね一般的な市街地でも補助対象になり得るような拡大をいたしたところでございます。地方公共団体が必要とすれば、申請が出てくれば対応できるような金額も確保しているところでございまして、今後この制度の普及を図って耐震改修を推進してまいりたいと考えております。 ○穀田委員 だから、指摘しているように、私は申請の話もしたんですが、大阪市、横浜市で申請は一件、実際は実績がほとんどない、こういうことですね。だから、よく物を考えてやらなくちゃならぬというんですよ。せっかくいいものをつくったとしても、こういうものがどう実行されるのかということが、出てくるということの証明だと私は思っています。 なぜこんなに少ないかといいますと、今ありましたように、補助要件が限定過ぎるということだと思うんです。そこで、対象地域の話がありましたけれども、補助対象地域として認定されても、この地域の中で補助されるのは、耐震診断の結果、耐震性なしと診断された住宅のうち、倒壊することにより道路閉鎖のおそれがあるとして耐震改修の勧告を受けた住宅に限定されているというわけですね。つまり、都市計画道路に面した住宅しか対象にならなかった。 これは、最後にここだけ大臣にちょっとお聞きしたいと思うんです。つまり、大臣も一貫しておっしゃっていまして、こういう密集市街地の改善ということをお話しされています。自動車の入らない道路、人が歩くしかできない道路が入り組み、こういう住宅密集しているのが事実上対象にならないということなんです。だけれども、大臣も御存じだとは思うんですが、阪神大震災の教訓というのは、まさにそういうところで事態が起きているんですね。何も表の、道路に面しているところで起きているわけじゃないんです。それだけじゃないんです。道路のところも起きるし、中でも起きるんです。 また京都のことを出して失礼ですけれども、知らないという方がいらっしゃるかもしれませんけれども、路地がありまして、道路に面しているのはほんのちょっとなんですね。中はこうなっているんですね。だから、面しているところはここだけだが、中の方はコの字やロの字になっていて、そこがいわば密集地になったり、消防自動車も入らないし、そこが一番大変なんですよね。 だから、人の命は同じだ、そういう意味でいうと、道路閉鎖のおそれがあるなどという要件はこの際きっちりなくしてそういった問題について対応するということが求められているんじゃないでしょうか。そういうものを含めた改善方が必要だということについて御意見だけ大臣に、事実はいいですから、もう私はわかっていますから、お聞きして、終わりたいと思うんです。 ○石原国務大臣(国土交通大臣) 今回の改正でおおむね、委員も御指摘されましたような一般的な市街地にもこの補助が拡大していくということは政府参考人から御答弁させていただいたとおりでございまして、そういうものを広く広報し、こういう制度を利用していただいて、委員の御懸念の事態のようなことに至らないようにさせていただきたいと考えております。 ○穀田委員 終わります。 ○赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。 ――――――――――――― ○赤羽委員長 これより討論に入ります。 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。 ○穀田委員 私は、日本共産党を代表して、反対討論を行います。 本法案には、地下室マンションの規制や既存不適格建築物の増改築対策など、評価できるものも含まれています。しかし、二以上の敷地の間で容積率を移転することができるとした特定容積率適用地域の拡大や一団地認定制度には賛成できません。 反対の理由は、特定容積率適用地域の拡大や一団地認定制度は住居系の地域にも高層建築物の建築を可能とするもので、居住環境の破壊を進めることになるからです。 本法案では、従来の商業地域に限定していた特例容積率適用地域を、第一種、第二種低層住居専用地域、工業専用地域を除くすべての地域に広げます。一団地認定制度によって、一つの建物にも空地や低層住居の未利用容積を移転することができるようになります。 これらによって、住居系の地域にも二倍近い容積の建築物が建てられることになります。これでは、住居系の用途地域を指定する意味がなくなります。そればかりか、この制度によって、容積を売り買いの対象とする投機的な事態を招くことも否定できません。 最後に、健康的な住環境を守ることは建築基準法の基本的な目的であることを改めて強調して、反対討論とします。 ○赤羽委員長 これにて討論は終局いたしました。 ――――――――――――― ○赤羽委員長 これより採決に入ります。 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕 ○赤羽委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 ――――――――――――― ○赤羽委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、衛藤征士郎外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。松崎哲久君。 ○松崎(哲)委員 ただいま議題となりました建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。 案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれまして十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。 建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。 一 増改築等による建築物の安全性の向上を図るため、事業者等に対し既存不適格建築物に係る本法の措置について周知徹底を図るとともに、住宅所有者等のための総合的な相談体制の整備・充実に努めること。また、耐震診断・耐震改修等に係る補助・融資・税制上の支援措置の普及・充実及び既存建築物に係る耐震・免震技術等の研究開発に積極的に努めること。 二 著しく危険又は有害となるおそれがある既存不適格建築物に対する勧告及び是正命令制度については、適切な運用が行われるよう、勧告及び是正命令に係るガイドラインを策定するとともに、特定行政庁に対し必要な助言、援助等を行うこと。 三 不特定又は多数の者が利用する建築物に係る定期報告制度については、多くの建築物について報告がなされていない現状にかんがみ、報告率を上げるため、本制度の周知徹底を図るとともに、定期報告の対象建築物に係る台帳の整備、未報告物件に係る督促等の推進に努めること。 また、定期報告を怠っている悪質な所有者等に関する情報の公表制度等を早急に検討すること。 四 違反建築物については、既存建築物に係る違反是正作業マニュアルの活用、消防・警察部局やNPO等との連携強化、罰則の厳格な適用等によりその是正を強力に推進すること。 五 特例容積率適用地区制度及び一団地の総合的設計制度については、地域住民の意見の反映や良好な市街地環境の確保に配慮しつつ、適切な運用が図られるよう努めること。 六 自動回転扉等については、安全基準及び管理体制を早急に整備し、事故の防止に努めること。また建築物の事故についての情報収集システムを早急に構築し、事故情報を建築物の安全対策に的確に反映すること。 以上であります。 委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。 ○赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 採決いたします。 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕 ○赤羽委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。 |
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