国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・本会議
(2004年5月25日)

 小泉内閣総理大臣の北朝鮮訪問に関する報告及び質疑

○穀田恵二君 私は、日本共産党を代表して、総理訪朝報告に対して質問をします。(拍手)
 日本共産党は、北朝鮮問題の解決に当たって三つの角度を提起してきました。
 一つは、朝鮮半島の軍事的な衝突の危機は絶対に避けなければならないこと。あくまで平和的、外交的手段によって解決するということです。
 二つに、拉致問題は、日本国民の人権と安全を脅かした国際的な犯罪行為として許すことのできないものであり、この問題の全面的究明と被害者家族の帰国の実現を強く求めてきました。
 三つに、日本と北朝鮮の国交の確立。戦前の植民地支配の歴史を清算することは、戦後の日本が負った重大な歴史的責任に属する問題であること。
 こうした角度から、交渉を包括的に進めることが大事であり、二〇〇二年九月に締結された日朝平壌宣言を重要な前進として評価してきました。
 今回の日朝首脳会談で、小泉総理と金正日国防委員長が、日朝平壌宣言を日朝関係の基礎として再確認し、拉致問題や核、ミサイル問題、人道援助問題などで一定の合意をしたこと、そして国交正常化交渉への前進の方向を確認したことを評価するものです。(拍手)
 拉致問題について、今回、地村さん夫妻、蓮池さん夫妻の御家族の帰国が実現したことを率直に喜びたいと思います。(拍手)
 また、曽我さんの御家族の問題では、総理は、ジェンキンス氏の身柄引き渡しの懸念に対して、私が保証すると述べました。米国防総省が特別扱いはしないと声明しているもとで、どのような見通しを持っているのか、はっきりとお答えください。
 安否不明の方々にかかわり、北朝鮮が約束した白紙からの調査について、総理は、日本側も参加して徹底的な調査を進める、北朝鮮側も協力し、早期に結果が出るよう互いに努力すると述べましたが、どういう段取りで再調査を進めるのか、答弁を求めます。
 この問題は、拉致被害者の家族の方々の切実な願いであり、多くの国民が心を痛めています。日本側も納得できる答えに達することを目指して、政府自身の努力を強く求めるものであります。
 朝鮮半島における核問題の解決は、日本にとっても切実な問題であり、北東アジアの平和にとっても重要な問題です。この点で、本年二月の六者会合でも、朝鮮半島の非核化、平和的解決という議長声明に各国が同意したことは、重要な意義を持つものです。
 総理は、今回の会談で金正日委員長に、核を完全に廃棄することによって得られるものと、核を持つことによって得られるものは天と地ほども違うことをよく考えるべきだと強く迫った。かなりの部分で理解を得られたと記者会見で述べましたが、ここは大事なポイントです。総理の説明を金委員長はどう受け取ったのか、述べていただきたい。
 総理は、今後、六者会合の場を通じて、核問題の平和的解決に向けて一層の努力を傾けることで意見の一致を見たと報告しましたが、日朝両国の指導者間での一致として重要であり、六者会合を成功させる一層の責任を負うことになりますが、総理は一方の当事者としてどのような役割を果たすのか、答弁を求めます。
 北朝鮮問題の中心は、力ずくではなく、諸懸案を一つ一つ解決しながら、また、六カ国の協議を通じての核問題の解決を達成しながら、日朝平壌宣言を基礎に、両国間の国交正常化を実現することです。
 これは、日本の今後の平和と安全の上でも、日本の最も身近な生活環境である北東アジアの平和と安定を実現する上でも、重要な一歩となると考えます。こうした方向は、東南アジア友好協力条約などが目指しているものですが、北東アジアでも一致ができれば、それはアジア全体の平和の大きな流れとなるものです。
 日本共産党は、日朝間の諸問題を、平和的な交渉によって、道理ある形で解決することを一貫して目指し、そのために努力してきた政党として、今後とも力を尽くすことを表明し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 穀田議員にお答えいたします。
 政党の立場を超えて御激励をいただきまして、ありがとうございます。(拍手)
 ジェンキンス氏の問題に関する今後の見通しについてでございますが、政府としては、今回の日朝首脳会談及びその後の私とジェンキンス氏とのやりとりを踏まえ、曽我さん御一家が一日も早く再び生活をともにできるよう最大限努力してまいりたく、米国とも鋭意話し合っていく考えであります。
 安否不明の拉致被害者の方々に関する調査についてでございますが、安否不明の方々についての真相究明は一刻も早く行う必要がありますが、我が国のみでできることには限界があり、北朝鮮側の協力がぜひとも必要です。今回、北朝鮮側が、本件は解決済みであるとの従来の姿勢を改め、白紙に戻り、早期に本格的かつ徹底的な調査を行うとしたことは、極めて重要であると考えます。
 我が国としては、早急に先方の再調査の結果を求める一方、我が国独自の調査結果とも突き合わせて真相の解明を図っていく考えであります。
 核問題に関するやりとりでございますが、私は、金正日国防委員長に対し、国際的な検証のもとにおける完全な核廃棄やNPTへの復帰を強く求めました。また、そうすることが北朝鮮の利益にもなると強調しました。これに対し、金委員長から、朝鮮半島の非核化が最終目標である、六者会合を活用して平和的解決に努力したい等の発言がありました。
 六者会合における我が国の役割についてでございますが、北朝鮮の核開発は我が国の安全保障にとって重大な脅威であり、六者会合を通じて平和的に解決するというのが我が国の基本的考えであります。我が国としては、米国、韓国を初めとする関係国と緊密に連携しつつ、完全、検証可能かつ後戻りできない核廃棄という目標に向け、今後も努力を続けていく考えであります。(拍手)


【「しんぶん赤旗」2004年5月26日】

北東アジアの平和に重要
日朝首脳会談 正常化交渉への前進評価
拉致・核問題解決へ力つくせ
衆院本会議
穀田国対委員長が質問

画像  小泉純一郎首相の北朝鮮訪問についての報告とそれに対する各党の代表質問が二十五日の衆院本会議で行われ、日本共産党から穀田恵二国対委員長が質問に立ちました。
 日本共産党は北朝鮮問題の解決にあたって、(1)朝鮮半島の軍事的衝突の危機は絶対に避け、平和的、外交的手段で解決する(2)拉致問題は国際犯罪であり、全面的究明と被害者家族の帰国を実現する(3)戦前の植民地支配の歴史を清算し、日朝の国交を確立する―ことを提起し、二〇〇二年九月の「日朝平壌宣言」を重要な前進として評価しました。
 穀田氏は、今回の首脳会談が同宣言を日朝関係の基礎として再確認し、拉致問題や核・ミサイル問題で一定の合意をし、国交正常化交渉への前進の方向を確認したことを評価するとのべました。
 拉致問題について、曽我ひとみさんの夫ジェンキンス氏ら家族帰国の見通しや安否不明者に関する再調査の段取りを明らかにするよう求め、核問題について首相が「核を完全に廃棄することで得られるものと、持つことで得られるものは天地ほど違う」とのべて廃棄を求めたことを金正日総書記がどう受け取ったのかをただしました。
 さらに日朝国交正常化が「日本と北東アジアの平和と安全を実現するうえでも重要な一歩となる」と指摘。「日本共産党は日朝間の諸問題を平和的な交渉で解決するよう、今後とも力を尽くす」と表明しました。
 答弁で小泉首相は、「政党の立場を超えて激励をいただきありがたい」と前置きし、安否不明者について北朝鮮側が従来の姿勢を白紙に戻したことは重要であり、真相解明を図っていくと強調。核問題について、北朝鮮側から「六カ国協議を活用して、平和的解決に努力したいと発言があった」と答えました。
 各党が質問に立ち、民主党の鳩山由紀夫氏は「結果はきわめて残念、無念」とのべ、「平壌宣言」を順守する限り「日本は制裁措置の発動はしない」との小泉首相の言明は「外交的大失態だ」と批判しました。

写真=日朝首脳会談について質問する穀田恵二国対委員長=25日、衆院本会議


【関連記事(「しんぶん赤旗」2004年5月26日)】

小泉首相訪朝報告に対する穀田国対委員長の質問(大要)

 二十五日の衆院本会議で日本共産党の穀田恵二国対委員長がおこなった、小泉純一郎首相の訪朝報告に対する代表質問(大要)は次のとおりです。
正常化交渉前進の方向の確認を評価
 日本共産党は、北朝鮮問題の解決にあたって三つの角度を提起してきました。
 一つは、朝鮮半島の軍事的な衝突の危機は絶対に避けなければならないこと。あくまでも平和的、外交的手段によって解決するということです。
 二つに、拉致問題は、日本国民の人権と安全を脅かした国際的な犯罪行為として許すことのできないものであり、この問題の全面的究明と被害者家族の帰国の実現をつよくもとめてきました。
 三つに、日本と北朝鮮の国交の確立。戦前の植民地支配の歴史を清算することは、戦後の日本が負った重大な歴史的責任に属する問題であること。
 こうした角度から、交渉を包括的にすすめることが大事であり、二〇〇二年九月に締結された「日朝平壌宣言」を重要な前進として評価してきました。
 今回の日朝首脳会談で、小泉総理と金正日国防委員長が、「日朝平壌宣言」を日朝関係の基礎として再確認し、拉致問題や核・ミサイル問題、人道援助問題などで一定の合意をしたこと、そして国交正常化交渉への前進の方向を確認したことを、評価するものです。
安否不明者再調査どういう段取りか
 拉致問題について、今回、地村さん夫妻、蓮池さん夫妻のご家族の帰国が実現したことを率直に喜びたいと思います。
 また曽我さんのご家族の問題では、総理は、ジェンキンス氏に、身柄引き渡しの懸念に対して「私が保証する」とのべました。米国防総省が特別扱いはしないと声明しているもとで、どのような見通しをもっているのか、はっきりとお答えください。
 安否不明の方々にかかわり、北朝鮮が約束した「白紙からの調査」について、総理は「日本側も参加して徹底的な調査をすすめる」「北朝鮮側も協力」し「早期に結果が出るよう互いに努力する」とのべましたが、どういう段取りで再調査をすすめるのか、答弁をもとめます。
 この問題は、拉致被害者の家族の方々の切実な願いであり、多くの国民が心を痛めています。日本側も納得のできる答えに達することをめざして、政府自身の努力をつよくもとめるものであります。
どのような役割を6者協議で果たす
 朝鮮半島における核問題の解決は、日本にとっても切実な問題であり、北東アジアの平和にとっても重要な問題です。この点で、本年二月の「六者会合」でも「朝鮮半島の非核化」「平和的解決」という議長声明に各国が「同意」したことは、重要な意義をもつものです。
 総理は、今回の会談で、金正日委員長に、「核を完全に廃棄することによって得られるものと、核を持つことによって得られるものは天と地ほどもちがうこと」をよく考えるべきだと強く迫った。「かなりの部分で理解を得られた」と記者会見でのべましたが、ここは大事なポイントです。総理の説明を金委員長はどう受けとったのか、のべていただきたい。
 総理は、「今後、六者会合の場を通じて、核問題の平和的解決に向けて、一層の努力を傾けることで意見の一致をみた」と報告しましたが、日朝両国の指導者間での一致として重要であり、六者会合を成功させるいっそうの責任を負うことになりますが、総理は、一方の当事者として、どのような役割を果たすのか、答弁をもとめます。
日朝国交正常化はアジア平和の流れ
 北朝鮮問題の中心は、力ずくではなく、諸懸案を一つひとつ解決しながら、また六カ国の協議を通じての核問題の解決を達成しながら、「日朝平壌宣言」を基礎に、両国間の国交正常化を実現することです。
 これは、日本の今後の平和と安全のうえでも、日本のもっとも身近な生活環境である北東アジアの平和と安定を実現するうえでも、重要な一歩となると考えます。こうした方向は、東南アジア友好協力条約などがめざしているものですが、北東アジアでも一致ができれば、それはアジア全体の平和の大きな流れとなるものです。
 日本共産党は、日朝間の諸問題を、平和的な交渉によって、道理ある形で解決することを一貫してめざし、そのために努力してきた政党として、今後とも力をつくすことを表明し、質問を終わります。

小泉首相の答弁

 【ジェンキンス氏の問題】首脳会談と、その後のジェンキンス氏とのやりとりをふまえ、曽我さん一家が一日も早く、再び生活をともにできるよう最大限努力したく、米国とも鋭意話し合っていく考えだ。
 【安否不明者の調査】真相究明は一刻も早く行う必要があるが、わが国のみでできることには限界があり、北朝鮮側の協力がぜひとも必要だ。今回北朝鮮側が、本件は解決済みだとの従来の姿勢をあらため、白紙に戻り、早期に本格的かつ徹底的な調査を行うとしたことはきわめて重要だ。早急に先方の再調査の結果を求める一方、わが国独自の調査結果ともつき合わせて、真相の解明を図っていく。
 【核問題のやりとり】私は金委員長に、国際的な検証のもとにおける完全な核廃棄やNPT(核不拡散条約)への復帰を強く求めた。またそうすることが北朝鮮の利益にもなると強調した。金委員長から、朝鮮半島の非核化が最終目標である。六カ国協議を活用して、平和的解決に努力したいとの発言があった。
 【六カ国協議における日本の役割】北朝鮮の核開発は、わが国の安全保障にとって重大な脅威であり、六カ国協議を通じて平和的に解決するというのがわが国の基本的考えだ。米国、韓国をはじめとする関係国と緊密に連携しつつ、完全、検証可能かつ後戻りできない核廃棄という目標に向け、今後も努力をつづけていく。