国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2004年6月1日)

本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案起草の件
 国土交通行政の基本施策に関する件

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○赤羽委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 特定船舶入港禁止法案は、北朝鮮に対する制裁圧力を目的にしたものです。与党と民主党の間で合意されたと聞きますが、この法案の扱いについては、五月二十二日に小泉総理が再訪朝し、事態の進展が図られている状況を踏まえて考える必要があると私は思います。
 今回の再訪朝で、私は本会議でも見解を述べましたが、簡単に言って、日朝平壌宣言を日朝関係の基礎として再確認し、拉致問題や核、ミサイル問題、人道援助問題などで一定の合意と国交正常化交渉への前進を確認したことを評価できると述べてきました。
 そこで、大臣にお伺いしたい。
 今回の北朝鮮再訪問の成果についてどのように認識しておられるか、お聞きしたいと思います。

○石原国務大臣(国土交通大臣) この点につきましては、本会議でも総理が御答弁されておりますように、私は、小泉総理の毅然たる対応によりまして、五名の家族の方々が御帰国される、また、曽我ひとみさんの御家族についても第三国で再会をするということが決まった、さらに、十人の方についても再調査を行うということを確約した、かなりの成果のあった会談であったと認識をしております。

○穀田委員 拉致問題の解決の方を言われましたけれども、後ろの方もあるんですが、それは私の見解なので、少し違うかもしません。
 外務省に確認したい。
 今回の日朝首脳会談について、日朝双方が「日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む」とした日朝平壌宣言の精神に従った取り組みを北朝鮮が誠意を持って履行しているかどうか、どのように認識しているのか、お伺いします。

○薮中政府参考人(外務省アジア大洋州局長) お答え申し上げます。
 まさに二〇〇二年の小泉総理の訪朝の際、日朝平壌宣言ができたわけでございます。そして、当然のことながら、その時点において、日朝双方ともにこの宣言を遵守していくということでの申し合わせがあったわけでございますが、その後の展開といたしましては、もちろんさまざまなことがございました。拉致の問題でもまだ未解決の問題が残る、そして、どうやって拉致の問題の早期の解決を図るかということを一生懸命やってまいりましたが、他方において、核の問題について、国際的に北朝鮮がNPTからの脱退を表明する等々、さまざまの遺憾な状況ができ上がってきたわけでございます。
 そういう意味では極めて遺憾な面も出てきている。そうした中で、総理としては、改めて訪朝されて、この問題、おのおの、拉致問題の解決、そしてまた核問題においても北朝鮮が積極的に核廃棄に取り組むように、その基礎として日朝平壌宣言があるということで、今回、その平壌宣言の遵守を改めて再確認したというのは、そういう意味での意義があったというふうに考えております。

○穀田委員 そこで、今、二〇〇二年における平壌宣言以降の一連の経過というのがお話がありました。その上で再確認をして、その方向性を再び歩み始めているという評価だと思うんです。
 今、最後の方で核問題についてもお話がありましたから、核についてもお聞きしたいと思うんです。
 私はこれは非常に重要な問題だと思いまして、六カ国協議での進展、それは確かに朝鮮とアメリカという当事者ですから、そこを含みながら解決するという問題もあります。しかし、日朝間というのは、被爆国としても、同時にその問題については、唯一、日朝平壌宣言において核問題についても確認をしている。二つのリンクの問題があると思うんです。
 したがって、私は、日朝会談と六カ国協議がそれぞれ成功し、両々相まって解決へと前進が可能であると考えています。そのリンク、関連性について政府の認識を問いたいと思います。

○薮中政府参考人 お答え申し上げます。
 北朝鮮による核開発問題というのは、日本の安全保障にとって大変大きな脅威であり、日本として絶対これは認めることができないという、まさに日本自身の安全保障の問題が一つございます。そしてまた、それは、この地域、北東アジア地域の平和と安定に係る問題であり、国際的には核の不拡散についての問題である。
 そういう意味で、日朝の問題でもあり、かつまた、この地域あるいは広く国際的な問題、その広く国際的な問題として六者協議という場がつくられたわけでございまして、そういう意味では、日朝の問題、この日朝平壌宣言にも書いてございます核の問題と六者協議の進展というのは、非常に密接な関係がある。
 具体的には、我々は六者協議の一員としてこの核廃棄については一生懸命努力していくということにしておりますが、当然、日朝の中でもこの問題の重要性、核廃棄の重要性を訴えていくというリンクがあるというふうに考えております。

○穀田委員 私は、核問題の解決に当たって、この二つを両輪のごとくうまく進めるということが大切だと思っています。そして、日朝平壌宣言に基づいてまた日朝間のそういう対話を一層進めることによって、六者会議での積極的なイニシアチブをとる可能性があるということについて指摘しておきたいと思うんです。
 私は、北朝鮮の核問題の解決に当たって、北朝鮮が核兵器の開発に乗り出している論理そのものへの理を尽くした批判が大切だと考えます。北朝鮮にとって安全保障の最大の問題は、核兵器を持つことではなくて、国際的な今まで行ってきた無法を反省し、そして国際社会に仲間入りすることだというふうに私は考え、主張してきました。その立場から、首脳会談のやりとりにかかわる記者会見の内容を注目し、本会議で質問したところです。
 小泉総理は、北朝鮮にとって最も利益になるのが核の完全廃棄だ、さらに、核を廃棄することによって得られるものを考えたらどうかと金正日委員長に訴えた、そして、結論として、かなりの部分で理解を得られたものと思いますと述べているんですね。ここが肝心でして、どう受け取ったのかについて、わかる範囲内での答弁を求めます。

○薮中政府参考人 お答え申し上げます。
 まさに日朝首脳会談において、小泉総理から、核廃棄の重要性、そしてまた、核廃棄をすることによって得られる利益、これは北朝鮮にとって国際社会の責任ある一員となるということであって、そうした中では国際的な支援も得られるであろうと。他方、核を持っている限りにおいては、絶対にそうした支援というか国際社会からの支援の手は差し伸べられないんだということの非常に強い、そしてまた説得力のある議論を展開されたわけでございます。
 もちろん、その間におきまして、金正日国防委員長の方からは、いわゆるアメリカの敵視政策、これによって、自分たちは、核あるいは核抑止力を持つことを余儀なくされているんだ、しかし、究極の目的は非核化であるということを繰り返し、そしてまた、六者協議に積極的に参加するんだという意思の表明があったということでございます。
 さらに詳細はございますけれども、いずれにせよ、そうした中では一定の、まさに従来から、これは米朝の問題であるという立場をとっておりましたけれども、日朝の首脳会談においてかなり内容のある議論が行われ、そしてまた、六者協議の進展に協力していこう、努力していこうということが申し合わされたということでございます。

○穀田委員 そこはわかっているんですよ。いつも外枠だけ話して、その中身がもう一つ、米朝というところから、内容のある一定の前進を遂げたというのはわかっているんです。問題は、その中身をどういうふうに相手が理解したかということを、いつも、何回聞いてもうまくお答えいただかないということは、それはそれなりの範囲の話なんだと理解をしたいと思います。
 そこで、私は、準備されているこの特定船舶入港禁止法案について反対です。第一回六者会合で、平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動はとらないという同意が行われ、対話による外交努力が続けられています。これは重要な国際約束であり、その遵守は、北朝鮮問題の平和的解決のために日本政府が果たすべき責任であります。北朝鮮に対する圧力、制裁を目的にした法案を準備することは、国際約束に反するもので、許されないと考えます。
 同時に、小泉総理が再訪朝し、日朝平壌宣言を日朝関係の基礎として再確認し、拉致問題や核、ミサイル問題、人道援助問題などでの一定の合意と国交正常化交渉の話し合いのレールが敷かれたばかりです。そのやさきに、一方で握手しておいて、片方の手では殴るためにこん棒を用意するというやり方は、この間積み上げてきた話し合い解決の精神に反するからであります。
 そこで、法案について、私は理事会でも言いましたが、提出者に質問の機会が与えられなかったことは非常に残念で、承服できません。この法案について一番疑問に思うことは、この法が成立し、発動されたらどうなるか、どういう場合に発動されるかということです。
 例えば、我が国の平和、安全の維持のために特に必要があると認めるとき、閣議決定で特定船舶の入港禁止を決定できるとしているが、この我が国の平和、安全の維持のため特に必要があると認めるときとはどういうときなのか、定義があいまいです。差別的、恣意的な判断が持ち込まれない保証はどこにもありません。しかも、国際法上、違反行為を行った特定の国に対する制裁措置をとる場合は、その国際違法行為を構成する客観性と正当な事由を明確にする必要があり、慎重な検討を要し、国連、国際社会と協調して実施されるべきだというのが今日の世界的常識です。
 そこで、外務省に聞きたいと思うんです。
 特定の国を制裁する目的で、特定の国の国籍を持つ船舶やその国に立ち寄った他の国の船舶などを入港禁止にできるとした法律を持っている国の事例はありますか。

○薮中政府参考人 お答え申し上げます。
 まさにアメリカにおきましては、一般的にマグナソン法と呼ばれる法律でございますけれども、この法律によって、特定の国の船舶の入港を規制するということが行われております。さらには、キューバとの関係でのトリチェリ法があるということ、そしてまた、アメリカ以外の国につきましては、フランス、カナダ、イタリア等におきましては、これは港湾の安全、海上交通の安全等の観点からということになっておりますが、入港を規制する法律があるというふうに承知しております。

○穀田委員 今ありましたように、周辺国にはない。それから、カナダやフランスその他については、海上安全のためにという限定された内容だということはそのとおりです。キューバの制裁に関しても、かつて日本は、二国間の問題であって、しかも、国際制裁の中には国内法の域外適用であるという部分に当たるおそれがあるものが含まれていること、そして、WTOの精神に照らして懸念があるのではないか、こういう理由をもちまして、アメリカのキューバに対する経済制裁終了の必要性に関する国連総会決議に賛成しているという経過があるんですね。ですから、そういう経過を見ても、やはりこういうやり方が非常に世界的にもまれだということがおわかりいただけると思うんです。
 したがって、私は、先ほど言いましたように、こういう問題のやり方はまずいというふうに思うし、もし発動を前提に考えれば、定義があいまいだ。発動要件そのものが極めて恣意的な要素を持つ。発動するとなれば、有事もしくはそれに匹敵する事態、そして、相手国との平和的な交渉がとんざし、国交回復の努力を放棄するなどの特別な状況しか考えられないと思うんですね。
 したがって、先ほど言いましたように、世界じゅうでも例がないというだけじゃなくて、しかも、六カ国協議等で約束した平和的解決、さらに首脳会談での再確認、それに基づく話し合いのレールが敷かれた状況を台なしにし、水を差すものだということを改めて申し上げ、そして、委員会提出法案とすることについては反対だという意見を表明して、質問を終わります。

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○赤羽委員長 引き続き、国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案起草の件について議事を進めます。
 本件につきましては、水野賢一君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案により、お手元に配付してありますとおり、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案の草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。水野賢一君。

○水野委員 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案の起草案につきまして、提案者を代表して、その趣旨及び概要について御説明申し上げます。
 本案は、近年における我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、我が国の平和及び安全を維持するため、特定船舶の入港を禁止する措置について定めようとするもので、以下、その概要について御説明申し上げます。
 第一に、この法律において、特定船舶とは、閣議決定で定める特定の外国の船舶、閣議決定で定める日以後の期間に特定の外国の港に寄港した船舶及び特定の外国とこれらの関係に類する特定の関係を有する船舶のうち、閣議決定で定めるものをいうこととしております。
 第二に、我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるときは、閣議において、期間を定めて、特定船舶について、本邦の港への入港禁止を決定することができることとしております。この閣議決定においては、入港禁止の理由、特定の外国、特定船舶、入港禁止の期間等を定めることとしており、内閣総理大臣は、閣議決定があったときは、直ちにその内容を告示しなければならないこととしております。
 第三に、政府は、告示の日から二十日以内に国会に付議し、閣議決定に基づく入港禁止の実施について国会の承認を求めなければならないこととしております。この場合において不承認の議決があったときは、政府は、速やかに、当該議決に係る入港禁止の実施を終了させなければならないこととしております。
 第四に、特定船舶の船長は、当該特定船舶に係る入港禁止の期間において当該特定船舶を本邦の港に入港させてはならず、また、入港禁止の期間の開始の際、現に本邦の港に入港している場合には、閣議決定で定める期日までに当該特定船舶を本邦の港から出港させなければならないこととし、これらに違反した船長は、三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金に処し、またはこれを併科することとしております。ただし、遭難または人道上の配慮等やむを得ない特別の事情がある場合は適用除外としております。
 第五に、入港禁止を実施する必要がなくなったと認めるとき、または国会がその実施を終了すべきことを議決したときは、速やかに、閣議において、入港禁止の実施を終了することを決定しなければならないこととしております。
 その他、附則において、国は、この法律の施行の状況、我が国を取り巻く国際情勢等にかんがみ、必要があると認めるときはこの法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて、廃止を含め必要な措置を講ずるものとしております。
 以上が、本案の提案の趣旨及び概要であります。
 なお、本案は、本年三月三十一日に民主党・無所属クラブから提出されました特定船舶等の入港の禁止に関する特別措置法案、四月六日に自由民主党及び公明党から提出されました特定船舶の入港の禁止に関する法律案の両案について、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派が修正協議を重ねた結果、まとめられたものであることを申し添えます。
 何とぞ速やかに御決定くださいますようお願い申し上げます。

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 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案
    〔本号末尾に掲載〕

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○赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 これより採決いたします。
 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法案起草の件につきましては、お手元に配付してあります草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○赤羽委員長 起立多数。よって、そのように決しました。


【「しんぶん赤旗」2004年6月2日】

入港禁止法案を可決
衆院国交委
共産党反対 6カ国協議に反する

画像  一日の衆院国土交通委員会で、北朝鮮に対する制裁・圧力を目的にした特定船舶入港禁止法案を「委員会提出法案」とすることが自民、公明、民主の賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。
 日本共産党の穀田恵二議員は、北朝鮮の核・ミサイル問題などの平和的解決をめざして日本、韓国、北朝鮮、中国、アメリカ、ロシアが進めている「六カ国協議」や、小泉首相の再訪朝で再確認された「日朝平壌宣言」に基づき日朝間の諸懸案を話し合いで解決をめざすという方向に逆行するものだと指摘しました。
 六カ国協議の第一回会合では「平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動はとらない」という同意(〇三年八月)がされ、対話による外交努力が続けられています。穀田氏は「重要な国際約束であり、その順守は北朝鮮問題の平和的解決のための日本政府が果たすべき責任である」と強調しました。
 小泉首相の再訪朝で「日朝平壌宣言」を日朝関係の基礎として再確認し、拉致や核・ミサイル、人道援助問題などで一定の合意と国交正常化交渉へ話し合いのレールが敷かれたことをあげて、「その矢先に一方で握手して、片方の手は殴るためにこん棒を用意するというやり方は、この間積み上げてきた話し合い解決の精神にも反する」と指摘しました。
 また、法律の発動が「わが国の平和・安全の維持のために特に必要があると認めるとき」としているが、これは政府の恣意(しい)的判断で発動を可能とするものだと厳しく批判しました。

写真=質問する穀田議員=1日、衆院国土交通委