国会会議録

【第161臨時国会】

衆議院・イラク特別委員会
(2004年12月1日)

 衆院イラク特別委員会で、イラク特措法廃止法案の質疑が行われ、私は提案者の一人として(他に民主、社民の議員とともに)答弁席に座り、赤嶺議員の質問に答弁した。

○船田委員長 次に、赤嶺政賢君。

○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 私は、今回の廃止法案を提出された各政党に伺っていきたいと思います。
 先ほど来、与党の方から、イラクはこの一年間成功しただとか、今撤退をすれば日米同盟関係はどうなるかだとか、いろいろ見解、質疑がありました。十二月十四日でイラクへの自衛隊派遣の期限切れを迎えるわけですが、政府はそれ以降も延長する構えのようであります。
 イラク特別措置法を廃止し、そして自衛隊を撤退させるべきと考える理由について、最初に民主党の提出者の方からお伺いをしたいと思います。

○末松議員 提案理由、るる申し上げておりますように、最初のそもそも論、民主党のこの特措法に対する反対という立場のそもそも論のほかに、先ほどから申し上げておりますように、サマワにおける状況はどんどん厳しくなってきている。そういうことを踏まえて、この期限が切れる十二月十四日に向けて、今直ちに撤退することが日本の国益に沿うというふうに考えているわけであります。
 一部にアメリカとの関係を云々する向きは当然ございます。私ども考えるのは、あのサマワにおいて自衛隊がやっていることは、実は、この一年間、イラク人にきちんと教え込んで、そして機材も供与すればできることだ、できないわけはない。ただ、その中で自衛隊がずっといるということは、すなわちアメリカに義理立てして、そしてアメリカへの人身御供のような形でいるんじゃないかとも私は個人的には考えております。
 そういったことを踏まえれば、やはりそこで逆に自衛隊が何か人的被害なんかが出れば、それは日本国内でも、これはアメリカのために人的被害が出たんじゃないかと、逆の対米非難ということもあり得ると思います。そういうことも踏まえて私どもはこの法案を提出したわけであります。

○赤嶺委員 次に、同じような質問、穀田提出者、お願いします。

○穀田議員 私は、三つ理由があると思うんです。
 そもそも、イラク戦争は国連憲章違反の侵略戦争です。査察の継続を求める圧倒的な国際社会の世論を踏みにじって行われたものです。国連安全保障理事会の認定のない違法な武力行使であることは明白です。このことは、アナン国連事務総長が国連憲章に照らしても違法であると言明していることからも明らかです。しかも、この戦争の口実とされた大量破壊兵器の保有が虚偽であったこともアメリカ自身が認めていることであります。
 そして第二に、全土で戦闘の継続するイラクに武装した自衛隊を派兵することは、明白な憲法違反であると考えるからです。ましてや、武力行使を任務とする多国籍軍への参加が憲法上認められる余地は一切ありません。さらに、最近、米軍はファルージャで国際人道法違反の住民虐殺を行っているが、こうしたアメリカ中心の多国籍軍の一員として自衛隊が居座り続けることは、日本が戦争犯罪の共犯者になることだと考えます。
 第三に、しかも自衛隊派兵は、イラク特措法の要件からいっても成り立たなくなっていることは明らかです。もともと非戦闘地域という要件自体、政府が自衛隊派兵の違憲性を言い繕うために虚構の論理をつくり出しました。この一年の経過は、その虚構さえも通用しなくなっていることを示しているんじゃないでしょうか。今や、イラク全土は非常事態宣言が出され、自衛隊の宿営地にも攻撃が繰り返される事態となっています。大体、自衛隊が宿営地に閉じこもっているということは、周りじゅうが戦闘地域になったということをみずから証明する行動ではないかと私は考えます。
 このような事態に至ってなお、自衛隊の活動するところは非戦闘地域だなどといいかげんな答弁で派兵継続することは断じて許されないと思っています。
 先ほど来の議論の中で明らかになっているように、もともとイラクに派兵する根拠が崩れ去っているにもかかわらず、なぜ固執するか。結局、日米同盟、つまりブーツ・オン・ザ・グラウンドというアメリカの要求にこたえるにほかならないということは明らかとなったんじゃないでしょうか。
 私は、自衛隊を直ちに撤退させ、イラクの主権確立を本当に応援する、憲法九条を持つ国にふさわしい非軍事の復興支援こそ求められていると思います。

○赤嶺委員 同じような質問でありますけれども、社民党の横光提出者、お願いします。

○横光議員 私たち、こうして三党で廃止法案を提出したわけですが、政府・与党の方は、自衛隊の期限が来てもさらに延長しようという流れになっております。しかし、私たち、この委員会の中でも、これまでの質疑を通して、本当に自信を持って自衛隊の延期をしようとしているのかと思えば、そうでもない。やはり非常に不安の中で、与党の皆さん方も非常に不安の中でその延長という考えに賛同しているという気がしてならないわけですね。
 非常に私は、ここになぜそのような状況になっているかということを考えると、やはりこれは、すべての発端から無理に無理を重ねてきた結果ではなかろうかという思いがいたしております。いわゆるイラク戦争からすべて、私は、無理に無理を重ねた結果がこういった廃止法案につながってきているんだという気がするわけです。
 それで、この法案を提案した理由は、先ほどからるるお話がございますように、やはり戦争そのものの大義がなくなった、そして、その大前提としてつくられていた特措法も、結局は、国連憲章、国際法に違反するということが明らかになったわけですので、これはもう当然廃止すべきであるということ。
 それから、このイラクの大変な状況の変化。自衛隊が活動がスタートしたときには、イラクの中でも最も安全な地域サマワを選んで活動を始めたわけですね。しかし、それが一年という期限が来た今日、その間、サマワはどのような状況になったかということをやはりしっかりと認識しなければならない。その状況よりさらに安全になったのならば、恐らくこういった法案は、法律上できているわけですから、我々たちも出すことはできなかったでしょう。
 しかし、なぜ出さなきゃならなかったかということを考えたときには、この一年間のサマワの、イラク全土の状況の変化はもちろんですが、あの安全と言われたサマワまで今非常に状況が厳しくなっているということ、こういったことを考えたときには、やはり国民の皆様方もそういったことを勘案して、六割以上の方々が、やはり期限が来た以上、一回撤退すべきだという意見があるわけでございますので、そういったことを踏まえて、私たち、しっかりと国民の声を反映させるべく出したわけです。そして、出した以上、しっかりと国会の意思を国民に示す必要がある、そういうことをぜひこの委員会で採決をしていただきたいということでございます。

○赤嶺委員 どうもありがとうございました。
 それで、今の廃止法案の提出者の答弁を聞いていましても、さらに、私自身のこの一年間、イラクの問題での論議にかかわってきた経過からしても、イラクは安定したどころか、テロリストのいなかった国でテロリストが自由に泳ぎ回る温床になっているという点で、一刻も早くこういう事態を解決するためには、自衛隊の撤退、米軍の占領をやめる以外にない、このように考えています。
 そこで、きょう外務省の出されたペーパーによりますと、ファルージャの問題で、十一月八日に開始されたファルージャにおけるイラク治安部隊と駐留米軍による反政府武装勢力に対する掃討作戦については、十一月三十日現在、戦闘はおおむね終了したものの、武装勢力による攻撃が散発的に発生している模様ですということで、ファルージャの戦闘がまだ続いている旨を述べておられます。
 そこで、外務省にも聞きたいと思いますし、それから提出者の各政党にも質問をしたいのですが、米軍のファルージャでの掃討作戦は多数の民間人の犠牲者を出し続けています。先週ファルージャに入った赤新月社の発表によると、犠牲者は六千人以上だ、このように伝えております。
 米軍がファルージャで行っている攻撃をどのように認識しているか伺いたいのですが、まず政府に対して、ファルージャにおける民間人の犠牲、これについてどのように認識しておられるのか。出ているのか出ていないのか、ここも含めて答弁をお願いします。

○吉川政府参考人 お答え申し上げます。
 日本国政府が、イラクにおけるアメリカ軍の行動について事実関係の詳細を承知する立場にはございませんが、そういう前提で申し上げますと、今回の掃討作戦に至るまでに、イラク暫定政府それから駐留米軍は、ファルージャの住民に対して事前に市外に出なさいという退避勧告を出し、また、その退避のための手配を進めるというような格好で、できるだけ民間人の被害を回避する、そういう努力をしてきたというふうに承知しております。また、住民の多くが市外に、十一月八日の掃討作戦の前に退避したというふうに承知しております。
 もちろん、軍事作戦において民間人の犠牲者をできるだけ少なくするというのはこれまた必要なことだと考えておりますが、この場でも大臣または総理大臣から累次御答弁申し上げておりますとおり、今回のこのファルージャの掃討作戦というのは、来年の一月三十日の選挙の実施に向けて国内全体の治安を回復するため、法の支配を回復するため、これらの目的のための万やむを得ざる措置であったというふうに私ども理解しております。

○赤嶺委員 知り得る立場にないと言いながら、民間人の犠牲は最小限にとどまっているだろうとか、今、国際社会にファルージャから伝わっている事態とは全く別の認識を政府が持っていることを本当に遺憾に思います。
 そこで、今回はちょっと共産党の穀田提出者から先にお伺いをいたしますが、そのファルージャの認識について、いかがですか。

○穀田議員 今、外務省からお話がありましたけれども、私はとんでもないと思いますね。
 まず第一に、事実というのは明らかでして、十万人の住民が残っていたということは、いかなる報道でも明らかとなっています。そして、今度の攻撃というのは非常にひどいものでして、四月に行われた攻撃の際に犠牲を告発し続けた病院をまず占拠するということをやってのけました。そして、報道によりますと、建物の屋上から、老人、女性、子供の区別なく、動くものすべてに銃撃を加えたというふうに告発されているとおりでありまして、ましてさらに、モスクで海兵隊員が、負傷した無抵抗のイラク人を射殺する光景は全世界に衝撃を与えました。これらが国際人道法に違反するのは明らかだと思います。
 そして、今、治安を回復するためにというお話がありましたが、本当にそうだろうか。国連のアナン事務総長は書簡を送っていまして、武力行使は、特定住民の疎外感を強めるだけでなく、イラク国民にまだ占領が続いていると思わせる、イスラム教スンニ派勢力の選挙ボイコットを誘発しかねず、治安安定への努力を妨げかねない。まさに、妨げているということが大事なんですね。だから、攻撃中止を呼びかけている最中に攻撃したという点からいっても、不届き千万と言わざるを得ないと思うんです。
 実際に、イスラムの聖職者協会が選挙のボイコットを呼びかける声明を出し、スンニ派、クルド人系など十五の政党が国民議会の選挙の延期を求めるなど、政治プロセスにも重要な影響を与えていることから見ても明らかだと思うんです。
 もう一つ言っておきたいのは、小泉首相がこうした攻撃を成功させないといけないと言ったことに対して、私はけしからぬと思っています。そして、住民虐殺は直ちに中止するよう、アメリカ政府に求めるべきと考えます。
 政府は、昨年十二月の国連安保理で、原口国連大使が、日本人外交官の殺害にかかわってこのように言っています。文民に対するあらゆる攻撃は厳しく非難されなければならず、加害者は国際法にのっとって裁かれなければならないと演説しているんですね。日本人の文民の殺害は許されないが、イラクの民間人の女性や子供やお年寄りの殺害を進める作戦を成功させるべきだという立場は全く許されないと私は思います。
 以上です。

○赤嶺委員 同じ質問ですが、民主党の方それから社民党の方、よろしくお願いします。

○前原議員 我が党もいろいろな情報ソースを、アンテナを張りめぐらせて、特にNGOの皆さん方でございますけれども、三十万人の住民のうち、二十五万人は避難をされたけれども、五万人の方が残られていて、かなりの数の方が犠牲になったんではないかというふうに我々も承知をしております。そういう意味では、避難勧告をして、そして民間人の被害は極めて少なかったんではないかという政府の発言は到底信じがたいというのが我々の現状認識でございます。
 そういう意味では、まさに、国際法、人道的な観点からいっても、アメリカのファルージャ、二度における掃討作戦というものは極めて大きな問題であり、そしてイラク統治に対する大きな汚点を残し、また、これがイラクの復興に大きなマイナスになっているということを我々は認識しております。

○横光議員 今度のファルージャ等での米軍の掃討作戦は、米軍の指揮官が、ベトナム戦争以来の大規模市街戦だと発言している人もおるぐらいに、私は大変な武力攻撃をしてしまったなという気がするんですね。
 先ほど政府の方は回避の努力をしたとおっしゃいましたが、それは当然のことであって、しかし、では全員回避してからやったのかというと、そうじゃない。まだいるのがわかっていながらも攻撃をしかけた。しかも、イスラムの象徴であるモスク、もう本当に激しく攻撃している映像がございました。また、国際法に違反するようなこともありました。それは、武装勢力を放逐するということは必要ですよ。しかし、そのために、結局あれだけの武力攻撃をした。
 では、それでおさまったかというと、おさまっていないわけですね。先ほどお話がございますように、まだ散発的な戦争はある。そして、これはさらに憎しみの連鎖を広げて、千六百人の武装勢力を殺害したと言っていますが、これは何十倍の逆の憎しみの連鎖を広げる結果になるだけであって、やはりここは違った形で解決していかなきゃならなかった問題ではなかろうか。
 私は、非常に批判しなきゃならないファルージャ攻撃だったと思っております。

○赤嶺委員 最後の質問で、残り時間は少ないんですが、それでは、その場合の我が国の支援のあり方について、ちょっと時間が短いですので、穀田提出者に伺いたいと思います。

○穀田議員 今のお話ですけれども、私は、まず、米軍による無法な侵略戦争と占領支配という枠組みが続けられたままではイラクの復興はあり得ないということだと思うんです。したがいまして、私は、まず第一番目に、占領の中止、撤退、このことが第一の条件だと思います。
 そして、その上で日本が行うのは、非軍事的な支援、これに尽きると思います。とりわけ、日本がイスラム社会との友好、信頼を築き上げてきた経過というのは、日本が、憲法九条を持ち、そしてイスラム諸国を一度も侵略したことのない国だからだったと考えます。その日本が、イラク戦争を支持し、米軍の占領に加担するために軍隊まで派遣したことに対し、イスラム社会の人々の深刻な落胆と非難の声が上がっていることはうなずけます。
 したがいまして、日本は、戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認を定めた憲法九条を持つ国であることを踏まえて、それにふさわしい非軍事の復興支援にこそ積極的に取り組む。そしてなおかつ、そのことを現実に行っているNGOの団体がいかに活動しやすくできるか、そういうことを行うべきであると同時に、国際社会に対してそういうメッセージを発することが大事だと考えています。

○赤嶺委員 終わります。