国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・予算委員会
(2005年2月21日)

 社会保障・年金問題の集中審議がおこなわれ、質問に立った。

○甘利委員長 これにて古川君の質疑は終了いたしました。
 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。
 きょうは、尾辻厚生労働大臣に介護保険についてお聞きしたいと思います。
 五年目の見直しの年で、昨年末に介護保険制度の改革の全体像が出され、先日、法案も出されました。読売新聞が、厚生労働省が全体像を提出した後にアンケートを行っています。それによると、国民の六割が介護保険の保険料やサービスの自己負担の増加を懸念している、そして制度に何らかの心配や懸念を表明するなど、九割が制度に心配や不満を持っていることが明らかとなっています。
 このようなアンケート調査の結果を労働大臣はどのようにお考えでしょうか。

○尾辻国務大臣 御心配の向きは当然だ、いろいろなことを、当然我が事でありますから皆さんが御心配になる、そういう意味で当然だとは思います。
 ただ、介護保険制度、正確に言うと四年半前と言っていいのだろうと思いますが、施行をいたしました。その施行状況を見ますと、創設時に百四十九万人だったサービス利用者が、現在三百十七万人、スタート時の約二倍を超えております。それからまた、在宅サービスを中心に大きく利用が伸びてもおります。世論調査を見ても、介護保険制度を評価する声が年々高まっておりますので、基本的に介護保険制度というのは国民生活の中に定着をした、こういうふうに考えております。

○穀田委員 私は、不安や懸念が当然だとすると、やはり、利用者、また今後利用したいと思っている方々の意見をよく聞いて改善するというところに基礎を置いてやらなくちゃならぬということを初めに申しておきたいと思うんです。
 やはり、依然として、介護が必要だが利用料や保険料が高くて十分な介護から遠ざかっている、さらには施設の入所も必要なときになかなか入れないという状態があるわけですから、これの改善が求められていると思っています。
 大臣は、結論として言えばおおむね評価できる、そういう考えでしたけれども、私は、このアンケートによる重大な問題は、将来、保険料や使用料が高くなる、これに対する不安というのが五九・八%あるんですね。さらに、特養など施設に入れない、今現実そうですから、そういう問題についての意見が三六・一%。そこにこそ十分耳を傾けるべきではないかと思うんですが、それはいかがですか。

○尾辻国務大臣 利用者が、先ほど申し上げましたように急増いたしまして、したがって介護給付費も急速に増大しておる、これはやむを得ないところでございます。
 そこで、現在、全国平均で約三千三百円、これは市町村別でございますから平均をとらざるを得ないわけでありますが、全国平均をとると約三千三百円の高齢者の方々の保険料でございますけれども、これが、私どもの試算では平成十八年度には千円程度上昇し、さらに十年後の平成二十六年度には六千円に達すると見込まれております。
 そこで、そこまで保険料が上がったのでは、今お話しになりましたようにこれは大変でありますから、こうしたことを避けるために、今回の給付の効率化、重点化を図って給付費の縮減を図りながら、今の御心配のようなことについておこたえしようと考えておるところであります。

○穀田委員 その心配をなくそうという、それはわかるんですが、それは、保険料が上がっていく、それだけじゃないんですね。今大臣おっしゃったけれども、では、今度の見直しで何がやられるか。その特徴を言いますと、やはり施設利用者から住居費並びに食費を全額負担させるということなんですよ。これが新しい問題なんですね。
 標準的な負担額は、個室の場合、居住費用は月額六万円、そして食費負担は四万八千円。多床室、いわゆる相部屋といいますか大部屋といいますか、その場合の居住費用は一万円となる。
 だから、厚労省のモデルで、要介護五で個室利用の場合には、一割の利用料を含むと月額で十三万四千円になり、現行より三万七千円の負担増となります。相部屋の場合でも、月額八万七千円で三万一千円の負担増となる。これは皆さんに今お配りした資料の一で、これ自身は厚生省がつくっている表です。
 一体、この負担増で、総額どの程度になるというふうに判断しておられるんですか。

○尾辻国務大臣 施設がどうなさるかということにもよりますから、必ずしも単純に数字が出るわけではございませんけれども、ざっと今の御提案申し上げておるようなやり方でどうなるかということを申し上げますと、平成十七年度で約一千三百億円、これを平年度ベースにしますと約三千億円の総額の増にはなるというふうに考えております。

○穀田委員 つまり、平年度ベースでいけば三千億円の新しい負担がかかるということなんですね。
 そうしますと、今、施設の入所者、療養者は四月現在で七十四万五千人。ということになると、単純に言えば、一人当たりでいくと四十万円の負担の増になるということになりますね。そうですね。

○尾辻国務大臣 確認したことありませんが、単純に割り算すると、今、そうなるのかなと思って聞いておりました。

○穀田委員 それは割り算ですから、そうなるんですよ。それはいろいろと格差はあります。だけれども、問題は、平均して言えばそういうことになるということなんです。
 だから、低い収入の層の人なんかはどうなるかというと、年金と一部負担の合計が逆転するという事態が生まれるわけですね。つまり、このような負担、平均して言えば一人当たり四十万円ということができるのか、やっていけるか、負担できると考えているのかということについてお聞きしたいと思います。

○尾辻国務大臣 今お話しのような御心配がありますから、とにかく私どもは低所得者の皆さんがお困りにならないようにということで、最大限の配慮をいたしたところでございます。居住費、食費を給付対象外とすることにより低所得者のサービス利用が困難となることがないように所得に応じた負担の上限を設けますとともに、介護保険制度内に補足給付を創設することなどにより低所得者の負担軽減を図ることといたしております。
 多分、お手元に、御説明に参ったと思いますけれども、私どもが言います第一段階、生活保護の皆さんでありますと、現行も食費を一万円いただいておりますけれども、見直し後もやはり同じ一万円でございますし、第二段階、年金八十万円以下の方で見ますと、現行は食費を一万五千円いただいておりますものを一万二千円に抑える。いろいろな努力をいたしておるということでございます。

○穀田委員 それについて否定しているんじゃないんです。だけれども、皆さんの資料にもあるように、今ありましたように、収入が年間八十万円、月額でいいますと六・七万円程度以下の場合でも、相部屋からも居住費用を取る。国民年金だけしか収入のない年金生活者は平均四万六千円程度しかないわけですよ。この人たちは、逆に言うと、個室への入所ができなくなるということも起こるわけです。
 ただ、個室というのは、医療との関係でいいますと何か非常にいいように聞こえますけれども、今厚生省も含めて進めているのは、プライバシーの問題もあり、生活拠点という考え方もあり、今後つくるものについては個室にしようという考え方ですよね。こうなりますと、個室を推進する厚生労働省の施策とも相矛盾する結果が生まれるじゃありませんか。その辺はいかがお考えですか。

○尾辻国務大臣 御負担をお願いすることでありますから、いろいろなことが出てくることは事実でございます。
 ただ、今お話しのように、居住費ということも私どもは御負担をいただきたいというお願いはいたしております。それは、施設におられる方と居宅の方、この両方に不公平が生じないようにという考えでやっておるわけでございます。そして、今お話しのように、それは個室の方が好ましいとおっしゃる。そのとおりでもありますからできるだけそういうことを進めておりますが、ただ、今回の、御負担いただくということで、個室におられる方については減価償却費をいただくとか、複数の方が一緒の部屋におられる方からはいただかないとか、そういったようなことも考えておりますので、若干の差がつくことは、個室と複数の方がお入りになっている部屋の方との間に負担していただく額が違うというようなことは生じるところであります。

○穀田委員 でも、結局それは二重取りになるんじゃないかということを私は言いたいんですよ。大臣、大臣が仮に、あなたのお連れ合い、奥さんが施設に入って居住費を払う、片や大臣は自分のおうちについての居住費を払うとなるじゃありませんか。だから、そういう意味でいいますと、そういう理屈は成り立たぬということを言っているんですよ。
 あわせて、では食費の問題について少しお聞きしますと、食費の場合、例えばデイサービスの食費を取ることに今度なりますよね。デイサービスというのは、在宅サービスの中では訪問介護に次いで大きい利用ですよね。全体の半分以上が要支援それから要介護一などの軽度の要介護者です。だから、極めて一般的な在宅サービスなんですよ。
 ところが、食費などを徴収する理由として、先ほど言いましたように、厚生省は、在宅と施設の費用の公平化、均衡化、そういう公平感ということだと。しかし、デイサービスは在宅サービスじゃありませんか。全く矛盾するのではありませんか。それはいかがお考えですか。

○尾辻国務大臣 基本的に施設と居宅の不公平がないようにということで今回の制度の改正を考えておりますということは申し上げたとおりであります。
 ただ、デイサービスで、お昼にお行きになって食費を取られる、それは自宅においても当然食事をとられるわけでありますから、その分をデイサービスの方でお払いいただくというのは、まさに公平感で判断しても正しいのではないかというふうに考えております。

○穀田委員 よくそういうことを言えますね。大体、在宅サービスを受けておいて、それで食費を取るというのはおかしな話じゃないですか、両方から。しかも、レストランに行くわけじゃなくて、通所をして、介護しに行ってもらうという、話をしに行くわけですから、全くそれは成り立たないと思うんですね。
 食費の負担について言いますと、私、関係者からちょっと状況を聞いてきたんですが、例えば定員百人程度の特養施設の場合どうなるか。食費の問題ですね、今あわせて言いますと。
 これまで利用者の食費負担というのは、一日、大体、京都なんですけれども、七百八十円程度だった。これが、厚生労働省が、大体千六百円程度になるだろうと言われている。そうすると年間一人当たりどうなるかというと、当然、千六百円引く七百八十円掛ける三百六十五ですから、一人当たり、単純に計算して、きちんとそこは合っていますから、二十九万九千三百円の負担増ということになるわけですね。そういう負担になるんだということなんです。そして、施設の方も保険負担を外される。どのぐらいマイナスなのかと聞くと、大体二千万近くのマイナスになると。つまり、利用者も、それから施設も、なかなかやるのが困難になるということになるわけですね。
 そこで、先ほど大臣がおっしゃった、低所得者に対して云々かんぬんとありましたけれども、ここでグラフをちょっとついでに見ておきたいわけです。保険料負担区分で新たにできる第四段階、これ以上については、居住費や食費の負担について、その水準ですが、利用者と施設の契約により設定するとして、標準的なケースを示しているだけなんですね。この標準的なケース、これは資料一の右の下の方ですが、いかなる意味合いを持っているのかについてお聞きします。

○尾辻国務大臣 まず、施設の方の食費の部分のお話もございましたけれども、これは補足給付するということを先ほど申し上げました。ということは、例えば、先ほど言いましたけれども、第一段階、生活保護の方は食費は一万円お払いになる。しかし、今の標準的な食費の計算は四・八万円にしておりますから、御本人が一万円お払いになるとすると、その差額を、三万八千円になりますけれども、補足給付するということでございまして、施設の方への配慮はそういうことでいたしておるわけでございます。
 今、居住費の標準的なケース、額の算定基準はというふうにお尋ねでありますけれども、これは、先ほど申し上げましたように、減価償却費と、それからあと……(穀田委員「いや、食費も居住費もちゃんと両方入っていますよね」と呼ぶ)両方入っているというのは居住費と食費が入っているということでございましょうか。食費の方の計算は、今申し上げましたように四万八千円というのを標準で考えております。
 あと居住費の方は、先ほど申し上げました、個室であれば減価償却費プラス電気、水道、ガスといったようなものを入れた数字になりますし、それから、個室でない方の場合には電気、水道、ガスの実費ということになりますので、大体全国的にこういう数字になるだろう、標準の数字がこんなものだろうということでお示しをしておる、こういうことでございます。

○穀田委員 そこで大事なのは、やはりこれは、標準的なケースとわざわざ書いているというのは、上限ではないということなんですね。当然、上限ではないということですよね。そうしますと、厚労省の説明によると、これは利用者と施設との契約にゆだねるということだと言われたんです。
 そうした場合、標準的なケースでも、大部屋、相部屋では現在の二万六千円から五万八千円と二倍以上に負担がふえるのに、例えば当事者同士に任せると、契約だということで任せるとなりますと、今施設が不足しているわけだから、入所したい者は高くても入らざるを得ないという事態になるわけです、当然。そして、選択の余地は生まれない。だから、そういう天井知らずの高い負担を強いられてもいいのかということになるということをしっかり見ておかなくちゃならぬということですね。私はそこを指摘したいわけです。おわかりいただけますか。
 そこで次に、今言った問題で、利用料だけじゃないんです。先ほど大臣は、全国平均の月額というのは三千三百円だ、二〇一二年には大体六千円になるということもおっしゃっていました。
 そこで資料二なんですが、これも厚労省が出した数字で、六千円になると。それを効率化、重点化した場合、ケース1の場合は四千九百円になる、こう言っているわけです。だけれども、これは、今るるお話ししたように、実際には負担が保険外という形でかぶさってくる。そして保険も、これで事実上、利用料と保険料が上がっていくということになって、ダブルパンチになって十年間続くということでしかないということを私は言わなくちゃならぬと思うんです。
 だから、結局のところ十年後には四千九百円になるというわけだけれども、そこで、資料の三のところにあるわけですが、給付費というのは十兆六千億円から八兆七千億円になる。私、今言いましたように、保険料は上がる、そして居住費や食費で負担増になる。それから、予防給付といういろいろな問題がありまして、それについても減の懸念も広がって、結局のところ、利用料と保険料については十年間上げ続けるということには変わりないということだと思うんです。それはそうですね。

○尾辻国務大臣 総体の数字で申し上げておるのはそのとおりでございますけれども、ぜひ御理解いただいておきたいと思いますことは、その中に、今度の私どもの改正の中で大きな主眼でございます、予防による給付の減というものがある、こういうふうに考えております。
 特に、まず、私どもが予防ということを二つ考えておりますけれども、一つは、全然介護を必要としない方々、その介護を必要としない方々が介護が必要とならないようにという、そこでの予防が一つあります。それから、軽度の方が重度にならないようにという予防がもう一つあると思っています。その二つの予防を重視して今度の制度を考えておりますから、そうした予防による効果というのが今言っていただいた数字の中にはかなり入っておりますから、そのことは申し上げておきたいと思います。

○穀田委員 では、それは最後にもう一度聞きます。
 今私が言っているのは、保険料もちゃんと上がっていくよと。それは計算済みなんですよ。事実、三千三百円から六千円まで上がるけれども、それを四千九百円だというだけの話なんですよ。
 あわせて、私、今度とても大事だなと思ったのは、今政府がやっている施策との関係で物を見る必要があるんじゃないか、全体を。それは、例えば所得税の高齢者控除の廃止、それから公的年金控除の縮小、これらによって収入の減少が進み始めています。それに加えて、〇六年度から住民税の非課税措置の廃止が予定されている。実行されれば、税負担はふえるわ、それから国民健康保険、介護保険に連動して雪だるま式に負担がふえていく。そういう影響についてちゃんとお考えですか。そこをお聞きしたい。

○尾辻国務大臣 そこで肝心なことは、低所得者に対する配慮だ、こういうふうに思いますので、先ほど来申し上げておるような配慮をした、こういうことでございます。

○穀田委員 では、低所得者について聞きたいと思うんです。
 うんと低所得者といいましても、私、京都でちょっと調べてもらいまして、今のお話でどんなふうになるかということで資料四を見ていただきたいわけですけれども、グラフです。これは、心配になって京都市役所で調べてもらったわけです。既に決定している配偶者特別控除の廃止に伴う負担増の例なんです。
 このケースの場合は、所得でいえば百六十三万円。そんなに高いわけじゃありません。夫の給与のみで生活し、年金はなし、妻は専業主婦ということで今どんなふうに取られているかといいますと、所得税が今までかかっていなかったものがかけられる。数字でいいますと三万三千円。京都市がつくってくれたものですから市府民税となっていますけれども、市府民税がかかる。次に、介護保険が四段階の区分に上がってしまう。国保料は所得に掛ける制度になり、上がる。合計でいいますと、今徴収されている額でいいますと、十六万四千七百八十八円が三十九万二百三円になる。倍以上の負担になってしまうわけです。こういうケースがあることを否定できませんよね。

○尾辻国務大臣 今初めて見ますので、市町村の計算によっては、こういう計算をお示しになったわけでありますから、あり得るのかなと思いながら見せていただいております。

○穀田委員 こういう数字なんです。これは京都市に出していただいてやったわけです。これは、配偶者特別控除が廃止されてこういう実態になる。
 もちろん、京都市の場合、国保料という問題が少し、特別に所得に掛けるという新しい制度になっているという実態は確かにございます。しかし、所得税、市府民税、介護保険料そして国保料と、今まででいうと十六万円台のものが三十九万円というとてつもない数字に上がる。こういう負担になるんだということはよく見てほしいんですよ。これでもそんなに所得が多い人じゃないんですね。そう言いますと、先ほど言ったように低所得者対策、こう言うわけですけれども。
 そこで、先ほど言いましたように、さまざまな制度改正が準備されている。それが行われれば雪だるま式に負担がふえる実態が一層、単にこれは配偶者特別控除が廃止された例なんですね。ところが、住民税の非課税を少しおろしますと、そこの層というのは物すごく京都の場合でも多いわけです。だから、広範囲に広がるという事態になると私は思うんです。
 だから、尾辻厚生労働大臣が低所得者に配慮した配慮したと言うけれども、現実はこういうふうになりますよ。一番ボーダーラインでもこういう被害を受け、低所得者はもっとさらに被害を受ける。こういう事実をしっかりと見てもらう必要がある。こういう事態を見過ごして、何が社会保障かということを私は言わざるを得ないというふうに思っています。
 だから、本当の意味で、こういう事実をしっかり見詰めながら全体的な対策をとる必要があるんじゃないかということをお聞きしておきたいと思います。

○尾辻国務大臣 先ほど来の御議論にありますとおりに、社会保障全体を持続可能なものにせざるを得ない。その中で、私たちが精いっぱいどうやったら持続可能にできるかということで努力をいたしておるところでございます。そうした中でそれぞれに御負担をお願いしたりということでございます。
 負担能力に応じた負担をしてくださいということでお願いをしておるつもりでありますけれども、今お話しのようないろいろなケースもあると思いますので、私どもとしては、そうしたことに配慮しながら、特に、もう繰り返し申し上げておりますように、低所得者に対する配慮というのはいろいろな配慮をさせていただいておるつもりでありますから、さらにそうしたことに努力をしていきたいというふうに考えます。

○穀田委員 制度を持続的なものにする。しかし、先ほど来いろいろなお話がありましたけれども、年金の問題でもそうです、医療の問題でもそうです。制度があって、何のために制度があるのか。それは、国民がそれを受ける、そしてそれを社会保障で支えるというためにあるわけです。受け手の人たちが、払うこともできない、実際に受けることもできない、それで制度が維持される。そんなあほな話がありますか。ここが大事なんです。
 だから、そこを見ないと、低所得者対策についても制度についても、どうしたら本当に維持できるかということについて、今の問題について、現実にこんなケースもある、こういうケースもある。つまり、介護保険だけ単純にとって見た場合、単純という言い方はちょっと失礼ですが、見た場合に、これは負担がそんなにふえていないかもしれないけれども、今行っている施策全般を通じて見ればこういう被害が及ぶんだということをよく見てやっていただかねばならない、私は、そういう点をあえて指摘しておきたいと思うんです。
 もう一つ、負担増の問題とあわせて聞いておきたいと思うんです。
 今まで利用していたサービスを受けることができるのかという不安がもう一つ多いわけなんです。介護保険の見直しで、来年の四月から、今まで在宅でヘルパーやデイサービスを利用していた人たちがこれらのサービスが受けられなくなるとなれば大きな問題なんですね。
 そこで、制限なく今までと同じサービスは受けられるのか、根本問題について聞いておきたいと思います。

○尾辻国務大臣 その御心配はよくあるところであります。私どもも、お尋ねになる話として一番多い話の一つでございます。
 なぜそういう御心配になるのかなというのは、私どもも今言っていますことは、さっきの、軽度の方が重度にならないようにというような、予防というふうに考えておりますので、例えば家事援助というようなことでいいますと、今までのやり方ですと、単にお手伝いさんのかわりになるというような家事援助ということがある。そうすると、逆に、介護を受ける方は、もう自分はそのまま何もせずに見ていればいいものですから、体を動かさないことになる。それが逆に、体を動かさないから介護の状態が悪くなるというようなこともあるので、そういうことにならないようにということで見直しをしようと言っておるわけであります。
 私どもが言っていますのはそういうことでありますので、決して、今までのサービスが受けられなくなるとかなんとかということを言っているつもりはないということを申し上げておきたいと思います。

○穀田委員 そこで、先ほどの給付の問題とも関係するんですが、家事サービスをやっている実態について、そう単純ではないんですね。そういう例を出されますけれども、例えば高齢者の場合、私が言っている場合でも、家事をしてもらっている、洗濯していただいている、だけれども最後の干すときに高いところは届かない。これだけはやってくださいという人もいるんですよ。そういう多くの方々が行っているヘルパーの実態について、そう単純化してはならぬということだけ私は言っておきたいと思うんです。そういう努力が自立を逆に促しているんだということもよく見ないと、単純に、家事、介護がそういうことになってお手伝いさんがやっているんだなんという話は間違っているということだけ言っておきたい。
 そこで、私、もう一つだけ。対象は要支援、要介護一を原則対象とするが、現在サービスを受けている人のうち、どのくらいが対象になるのか、その想定をしているのか。最後にこの点だけは介護の問題についてお聞きしておきたいと思います。

○尾辻国務大臣 先ほどの家事援助のことについてだけは申し上げておきたいと思いますが、すべてを否定しておるわけじゃありませんから、本当に必要な家事援助の方は、当然それはサービスとして今後も受けていただく。すべてを否定しているものではないということを申し上げたいと思います。
 それから、今の数字については直ちに出ませんけれども、要支援の方と要介護一の方を二つに今度は分けます。ですから、要介護一の方の七割ぐらいの方と要支援の方と足した数、大ざっぱに言うとそういうことになろうかと思います。
 数字は、また後ほどお答えをさせていただきたいと思います。

○穀田委員 何でこんなことを言っているかといいますと、介護サービスが制限されれば軽度者の在宅生活は成り立たないという調査結果が出ているんです。
 それは、全日本民主医療機関連合会が行ったケアマネジャーの意見聴取。担当している、要支援、要介護一の六千件以上について調べてみると、介護サービスの制限で懸念があるという意見が九四%出ているというわけです。
 だから、私、こういうふうな問題が起こり得る、しかも、どういう問題かということで問うているということを言いたいと思うんです。
 最後に、時間も来ましたので、障害者の問題について言うことはできませんでしたけれども、一言だけ言っておきたいと思うんです。
 私は、今度出されている障害者自立支援給付法というのは、重い負担と苦しみを課すものだけだという実態になりはしないか。応能負担から応益一割負担が導入される。さらに、成人と子供の障害者の医療や精神障害者の通院医療の負担増が押しつけられる。それから、子供の難病についても自己負担。社会保障が最も重視しなくちゃならぬ障害者に対して、容赦のない負担をこんな形で負わせるだとか、そして、当事者からまともな意見も聞かないだとか、数カ月でやってしまうなどというやり方は私は許しがたい、決して許せないということを言って、質問を終わります。