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【第162通常国会】 衆議院・国土交通委員会
3月15日に女性2人が電車にはねられて死亡、2人が負傷した東京竹の塚駅近くの踏切事故を取り上げ、事故の原因究明と再発防止対策を早急にとるよう求めた。北側一雄大臣は「重要かつ喫緊の課題。連続立体交差化を重点的に推進してまいりたい」と答えた。
○橘委員長 穀田恵二君。 ○穀田委員 鉄道利用者にとって、鉄道施設などが整備されて駅の乗り継ぎなどが便利になる、これは当然歓迎すべきことです。しかし、利便性の向上を図るといっても、財政が逼迫する今日では、何でもかんでもというわけにはいかないと考えます。やはり、緊急性があるかどうか、必要性や採算性はどうか、あるいはだれがその負担を負うのかなど、一つ一つ精査をする必要があると言えます。 そこで、まず聞きたい。国交省が重点政策として掲げているバリアフリー化、踏切解消についての進捗状況はどうなっているか、JR並びに大手私鉄の鉄道施設の整備状況はどうなっているか、お答えいただきたい。 ○梅田政府参考人 鉄道駅のバリアフリー化についての御質問でございます。 本格的な高齢化社会の到来、あるいは障害者の社会参加への要請というのは非常に高くなっております。鉄道駅におきましても、バリアフリー化を行うというのは強く求められている。そういうことで、交通バリアフリー法に基づきまして、一日当たりの平均的な利用者数が五千人以上の鉄道駅等におきましては、平成二十二年までに原則としてすべてバリアフリー化するということの目標を掲げているところでございます。 私ども、この目標の達成のために、鉄道事業者みずからがバリアフリー化の取り組みを行うということを強力に促すとともに、事業者のエレベーター整備などの取り組みに対しましては補助等の支援を行ってきているところでございます。 平成十六年三月末の時点で、一日当たりの利用者数が五千人以上の駅のうち段差が解消されたものの割合は四四%となっております。バリアフリー化に一定の成果を上げてきているものと認識しているところでございます。 ○穀田委員 目標からすれば、今の到達点は四四%ですから、やはり極めて少ないというのが私の判断です。まるで少ない。 それで、進んでいない理由は何か。それは、事業費の増大や、さらには自治体の財政難等、いろいろあると思うんです。 そこで、今もお話があったように、私は、大事なことは、利用者にとって便利な施設整備を進める際、最大の責任を負っているのはだれかという問題なんですね。財政的にいえばだれの負担によって整備すべきか、ここをしっかり整理する必要があると考えています。私は、言うまでもなく、今もみずから事業者が行うという話がありましたように、第一義的には鉄道事業者の責務が挙げられると思います。 鉄道事業者は、公共交通を担うということから、安全輸送、利便性向上についての社会的責任は重い、重要です。安全輸送、利便性向上のための鉄道施設等の整備改善については、本来鉄道事業者が整備主体となるというのが基本だと思うんですが、その点はいかがですか。 ○梅田政府参考人 大変失礼いたしました。あかずの踏切についての答弁を忘れておりまして、よろしければ今の答弁にさせていただきます。 鉄道のバリアフリー化あるいは踏切の安全対策についての鉄道事業者の責任の問題でございます。 先ほど言いましたように、バリアフリー化というのは、鉄道事業者みずからが鉄道のサービスの提供主体として自治体あるいは国と連携しながら主体的に取り組んでいくものと考えております。社会が高齢化し、障害者の方々の社会参加が強く求められ、進行している社会でございます。そういう利用者の方々のニーズに対して的確に対処していくというのは事業者の責務であろうというふうに考えております。 また、踏切の安全対策につきましては、現在、鉄道事故の約半数を占めております。一たん発生しますと被害は甚大でございます。私どもといたしましては、この踏切事故の防止につきましては、連続立体交差化を初めとした立体交差化あるいは踏切の安全対策等、さまざまな措置をとってきております。しかしながら、踏切の安全、事故防止というのは鉄道事業者がみずからの責任において取り組むべき問題でございます。踏切保安設備の整備等を進めるべきものであると認識しているところでございます。 国土交通省といたしましては、こういう責務を踏まえながらも、鉄道事業者のこういう取り組みにつきましては必要な支援措置を講じてまいりたいと思っております。 もちろん、抜本的な対策でございます連続立体交差事業を初めとする立体交差化につきましては、鉄道事業者のみの負担でできるわけではございませんので、これは国、地方、十分連携をとりながらやっていく必要があるかと思います。 いずれにいたしましても、事業者の支援を今後とも強めてまいりたいというふうに考えております。 ○穀田委員 エレベーターも四四%で、それで全国の手動踏切というのは五十八カ所だ。そして、東京都内のあかずの踏切というのは大体二百六十六ある。これは、答えていないけれども、もらった資料で私は知っているんです。 今お話があったように、主体的に取り組んでいく、事業者がその責任を果たすというのは当たり前なんですね。ところが、その施設整備が進んでいない。そこには、事業者側の投資意欲の縮小、つまり、利便性向上のための投資というものに対する消極的な姿勢があるんじゃないかと考えています。 なぜ準備が進まないか、整備が進まないか。一つの事例として、西武グループについて聞きます。 西武鉄道については、実質的オーナーであったコクドの前会長堤義明氏が証券取引法違反の虚偽記載、インサイダー取引の罪で、法人としての西武鉄道も虚偽記載で起訴された。公共交通機関である鉄道会社としては、まさにゆゆしき問題であります。これについて、国土交通省も、三月三日、西武鉄道の石橋副社長を呼び、あなた自身が鉄道局長名で厳重注意し、経営の透明性確保と信頼性回復を求めたと報道されています。 ただし、ここで聞きたいのは、鉄道事業法に基づく刑事告発は見送っているんですね。これは、私は非常に甘いと思うんです。事は国土交通省の監督責任に関する問題でもあって、西武鉄道は国交省に対して虚偽報告をした。これは、私は何度か取り上げましたが、三菱自動車のリコール隠しと同じではないか。なぜ刑事告発を見送ったのか、そこを明らかにしていただきたいと思います。 ○梅田政府参考人 今般、西武鉄道におきましては、営業報告書に事実と異なる記載があったということでございました。これは、私どもの鉄道事業法に基づく報告の義務違反でございます。こういう問題につきましては、企業倫理に照らして問題があるだけではなくて、鉄道事業という極めて公益性の高い事業を営む鉄道事業者でございますから、この社会的信用を失墜させるというものでございます。私どもとしては極めて遺憾であるというふうに考えております。 しかしながら、今回の事態によりまして、西武鉄道が提供する鉄道輸送サービスにつきまして、鉄道事業法の目的でございます安全運行、安定的かつ良質な鉄道輸送サービスの低下、これによって利用者の利便に支障を生じたという事態が発生したかというふうなことを考えました。つまり、虚偽の、結果的に虚偽になった記載でございますが、そういう営業報告書の提出がその利用者の利便に支障を生じたということがあるのかということを検証したわけでございます。 これは、鉄道事業法が罰則をもって担保しようとする重大な法益侵害があったかどうかということでございますが、私どもは、この点につきましては、そういう重大な法益侵害があったということまでは言えないという判断に基づきまして、刑事告発はしなかったものであります。 しかし、先ほど申しましたように、西武鉄道に対しましては、鉄道事業者としての公益的、社会的な使命、それから安全運行、利用者利便の増進、向上のために、今後一層万全を期するよう厳重な注意をしたところでございます。 ○穀田委員 私は、あれこれ言っているけれども、結構甘いなと、結局甘いと思うんですよね。西武鉄道をめぐっては、国交省は昨年十月、総会屋への利益供与事件に絡んで、宅地建物取引業法に基づき改善指示の行政処分を出しています。企業の社会的責任という点から見ましても極めて悪質なんです。 口を開けば、今お話あったように、支障を生じたわけでない、鉄道事業の安全性や乗客の利便性が損なわれたわけではないと。これ自身は今回の虚偽記載をめぐっての判断だけれども、じゃ、西武鉄道が安全性や乗客の利便向上についてどういう態度だったのかということを検証してみましょう。 私は、まず第一番目に、今お話ししたように、反社会的行為を行う者に対しては徹底した指導が必要だということが前提にあると。その上で、ある新聞にこういうふうに載っています。「鉄道、ただの道具」「「開かずの踏切」ワーストの西武線」、そして「観光に傾倒 住民軽視」という記事です。よう見ると、東京都内のあかずの踏切、鉄道事業者路線別箇所数で二百六十六あるうち、西武鉄道は九十六もあるんですね。断トツなんですよ。 だから、利便性だとか安全性だとかといって、一番肝心の問題について一番おくれているということがはっきりしているんですね。私はそこを問題にしているんですよ。 だから、こういう点、二番目が京王鉄道の七十四カ所、JRは四十四カ所、これは間違いないですね。 ○梅田政府参考人 そのとおりでございます。 ○穀田委員 新聞では、「「開かずの踏切」に悩まされる住民の声にも背を向け」「もっぱらコクドの観光開発にいそしんだ。鉄道はそのための「道具」に過ぎなかった。」とまで、これは告発しているんですね。 結局、鉄道の利益をコクドに吸い上げて、リゾート観光やその他に投資をし、鉄道本来の施設整備には投資しなかったという結果になっているんですよ。こういう企業だから虚偽記載をやったとしか思えない。まさに鉄道事業の安全性や利便性を損なってきた証拠ではないですか。 問題は、今お話ししたように、観光活動だとかその他のそういう活動、コクドが行っている活動、西武鉄道がやっている全体の活動、全部国土交通省が知り得る、そういう条件に一定あったわけですね。だから、そういう状況全体を知り得る立場にいる国土交通省の指導監督責任が問われているんじゃないかと。そういう立場から物を見る必要があるんじゃないかと私は言っているわけですね。 その点だけ、大臣、どうです。 ○北側国務大臣 今回の西武鉄道の事件につきましては、これは有価証券報告書、それに虚偽記載をしたということでございます。これは、上場企業、また今委員がおっしゃっているように、公共鉄道という立場から考えても、これはあってはならないことでございます。投資家、株主の信頼を裏切る、また証券市場への信頼を毀損するという意味で、これは厳しく、今回の件については指弾されないといけないというふうに私は思います。 ただ、これはあくまで証券取引にかかわる部分であるということが中心であるということもぜひ御理解をお願いしたいと思っているところでございます。 西武鉄道につきましては、西武鉄道グループのあり方について、本年の三月二十五日に、コンプライアンス体制の強化やグループ再編の方向性について、西武グループ経営改革委員会から答申が出されました。その答申におきましては、今委員がおっしゃっておられました、鉄道事業を核にした事業基盤を強化して、社会に信頼される企業を目指すというふうにされておるところでございます。 私といたしましても、この西武鉄道、首都圏にとっても非常に大切、貴重な足でございます。公共鉄道でございます。この事件を契機にいたしまして、西武鉄道が透明性のある、そして利用者の方々から信頼される企業としてぜひ脱皮をしてもらいたいというふうに考えているところでございます。 ○穀田委員 だから、今お話ししたように、やはりそういうものをやっているというときは、必ず本業のところががたがきているんですよ。そういうものだということが、これがわからないようでは困るという話を私はしているんですね。 だから、虚偽記載であったからといって、じゃ、本業の方は利便性や安全性に問題がなかったからと。それ自身は、一たん、その時点に限ってみれば、そうかもしれない。ただ、長い目で見れば、そういうことを行っているということは、どこかひずみが来ているんだということで見ておかないと、たまったものじゃないというんですよ、そこをしっかりしておいてやというんです。 同じように、東武鉄道もそうなんですけれども、三月十五日に起こった東武伊勢崎線の竹ノ塚駅近くでの女性が二人電車にはねられて死亡する、二人が負傷した事故、これは起こるべくして起こった事故として、同じような踏切がある地域の方々にも不安が広がっています。 事故原因についてはきっちり究明して、再発防止対策を早急にとる必要があります。しかし、根本的には、これまでとるべき対策をとっていなかった。それは、十八年も前から高架化の構想があったが、財政難などで実現しなかったという。地元の住民や私どもの区議団など二十年以上前から抜本的な対策を要求してきました。二〇〇一年からは、都や足立区、東武鉄道は高架化の可能性を協議していますが、なかなか進んでいない。それは、連続立体交差化の事業の要件に合わず、国の補助金が出ないことが一因だと言われています。 大臣に聞きたい。とうとい人命が事故によって失われた。緊急対策を実施するのは当然だけれども、国としてもあらゆる手だてを尽くして抜本的な改善対策を実施すべきだと思うが、どのように対応するおつもりか、お聞かせいただきたい。 ○北側国務大臣 踏切対策につきましては、重要かつ喫緊の課題であるというふうに認識をしております。 これまでも国土交通省といたしまして取り組みをしてきたわけでございますが、抜本対策による立体交差化とか踏切の除去とか、それと、こちらの方は一方では時間がかかりますので、速効対策による踏切交通の円滑化、これを両方でやっていくしかないというふうに考えているところでございます。 抜本対策の方は、連続立体交差事業を重点的に推進をしてまいりたいと思っておりますし、これまでこの連立事業につきましては、都道府県、政令市に施行者が限定をされておったわけでございますけれども、今年度から県庁所在都市、人口二十万人以上の市及び特別区を追加したところでございます。 立体化までに時間を要する箇所につきましては、それまでほうっておくわけにいきませんから、これは高度な踏切遮断機の導入による遮断時間の短縮だとか踏切の拡幅だとか、そうした速効対策への取り組みを強化してまいりたいと考えております。 ○穀田委員 私は一つの例を出したわけですけれども、竹ノ塚の場合なんかはもう長い話なんですよね。しかも、連続立体交差のいわば補助要因のところが一つ欠けているとか欠けていないという話でずっと推移してきた経過がある。 問題は、そういうときに、今、確かに区やそういう、やる場合の主体者として追加しているのはわかるんだけれども、やはりイニシアチブをとってでも、どうしたらこれはできるのかという点での積極的なイニシアチブが今必要じゃないかと思うんですね。もちろん、今ありましたように速効的な対策も打たなければなりません。ただ、抜本的な対策がどうしても必要だということは、やはりあえて私は言いたい。そこの、何が困難なものになっているのかということを突破するための指導と援助をどうしても私は求めたいと思うんです。 そこで最後に、私、西武に対しても言いましたけれども、鉄道事業者である東武鉄道に対する強力な指導も必要だと思うんですね。東武鉄道も西武と同じようにリゾートや観光に重点投資をし、経営が苦しくなると労働者犠牲のリストラなど、まさに社会的責任を果たしていないという実態を私はかいま見る思いがするわけであります。 組合側は、東武鉄道利用者の要望、わざわざ利用者の要望まで出して、くみ上げて、組合としてこれはどうやという話し合いを申し入れても、東武鉄道側は書面の受け取りさえ拒否する。利用者の利便の要求を集めた話でさえも拒否する。これが本当に利便性、安全性に責任を持つ会社の態度だろうかと私は思わざるを得ません。 したがって、私は、竹ノ塚の踏切改善の抜本対策は時間がかかることから、東武鉄道に対して緊急対策はもちろん、今お話があった速効対策についても積極的、中心になって考え、実行する、この責任をどうしても果たしていただきたいということをあえて最後に申し述べて、私の質問といたします。 |
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