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【第162通常国会】 衆議院・国土交通委員会
洪水ハザードマップ(防災地図)作成の推進と住民にわかりやすい情報の提供を自治体に義務付けること等を主な柱とした、水防法の改正に関わって質問。ハザードマップ作りだけでなく、「すべての住民が避難できるよう」地域のコミュニティ作りが必要ではないかとの指摘に、大臣も「地域コミュニティーづくりが重要との指摘はまったくその通り」と答弁。
○橘委員長 穀田恵二君。 ○穀田委員 国土交通省は、〇一年に「洪水ハザードマップの作成の推進について」という通知を出して、作成を指導してきています。ことしの一月段階で、少ないとはいえ三百一市町村が作成しております。 昨年の一連の台風などによる水害被害が起きたところでは、そのハザードマップ、いわゆる防災地図を作成した市町村は幾らになるのか。要するに、つくっているところで被害があったという状況はどんなふうになっているのかとお聞きしたいんです。 ○清治政府参考人 昨年各地で水害があったわけでございますが、その中でも非常に大きい水害に遭った市町村が、今御指摘のハザードマップがどうであったかということでお話をさせていただきますとすれば、大きい被害のあった市町村、どう決めるかということは別にしまして、十市六町についてその作成状況を調査いたしましたが、残念ながら、昨年の十月現在では作成されている市町村はございませんでした。 これは義務づけになっているか、なっていないかということも大きく影響していると思いますので、やはり今回の水防法改正によりまして、ハザードマップの重要性というものを市町村長さんにもしっかり認識していただいて、普及していただくことが重要ではないかと考えております。 ○穀田委員 調査室が配ったこの法案についてのさまざまな資料があります。それによると、今お話ししたように三百一市町村が作成しているということになっています。 その一覧表を見ますと、例えば大きな被害があったという十市六町に入っているのかどうか、私は十市を今聞いていませんからあれですが、例えば福知山市などは一応作成していることになっているんですね、もちろん日付が違うのかもしれませんが。しかし、現場にいろいろお聞きすると、二十三号台風の前から作成されていたが、市民への公表はされていなかったというふうな現実もあるようです。 私は、やはり今大事なのは、つくっていたところで被害があったと。少なくとも福知山というのはつくっていたわけですから、皆さんの報告の資料によればできているわけだから、そこでは、この防災地図、ハザードマップがどんなふうに活用されて、どんな教訓があったのかというものを検討しなくちゃならぬと思う。だから、聞いたんですね。 そうすると、十市六町だけじゃなくて、一定被害があったところで、マップがあった、地図があったというところでの教訓というのは特別に重視していく必要があると思うんですけれども、そういう検討はしていますか。 〔委員長退席、望月委員長代理着席〕 ○清治政府参考人 昨年のハザードマップができていたかどうかというところで申し上げた市町村の中には、京都では宮津市が、大手川という川で大きな水害があったわけでございますが、ここでは作成されていなかったということがあるわけでございます。 それから、一般論で申し上げますと、既にハザードマップが整備されていたところでの成果、避難の時間的なものでありますとか、それから実際に住民にどういうふうに役立ったかというようなところについては、幾つかの成果、事例については私ども調査してございますが、そのほかに住民へのアンケートによりましても、早急に作成して公表してほしい、そういうことが必要だと思っていらっしゃる方が八割から九割いらっしゃるというようなことがわかっています。 また、先ほどもお話に出てきておりましたが、円山川で大きい水害を受けました豊岡市の市長さんも、やはりハザードマップというものがうまく周知できていれば、もう少し被害は少なくできたのではないかというような感想を持っていらっしゃるようでございます。 そういうようなことから申し上げますと、ハザードマップの有効性というものはやはり高まっていくのではないかというふうに考えております。 ○穀田委員 私は、有効性を否定しているんじゃなくて、これをつくることについては当然だと思っているんですよ。問題は、そういう地図をつくったところで、どのようにうまくいったか、どの点がうまくいかなかったかという、先ほど大臣からありましたように、ガイドラインを今後つくっていく、したがって指導していくということになりますから、そういうところを生かさないとあかぬから言っているわけなんですね。 福知山の話を私ども聞いていますと、例えば住民の避難がおくれた問題について、避難指示世帯六千八百七十世帯一万五千八百人に対し、実際に避難した人は三千三百二十八人で、約二割しか実際には避難しなかった。避難勧告よりも避難指示の方がより深刻な状態であるということを知らなかったという市民もおられる。こういう現実があるわけですね。だから、何が要点なのかということを見きわめて、防災マップいわゆるハザードマップ、防災地図をまとめる必要があるんじゃないか。 しかも、昨年起きた今回の一連の水害というのは、想定を超えた被害というのが割と多いわけですね。そうしますと、今出されている地図というのは、大体こういう浸水が起きますよ、過去起きていますよという分類なんですね。その想定を超えて出るわけだから、結局どうなるかというと、瞬時の判断が求められる。そのときのわかりやすい基準と、わかりやすい行動の示唆が大切じゃないかと思っているんですよ。その点が私は基準の一つになるんじゃないかということを言っているんです。その辺はいかがですか。 ○清治政府参考人 ハザードマップの有効性というのは、やはりそれがしっかり周知できていて、いざとなったときに避難行動に役立つ情報でなければならないということは無論でありますが、それを、そういう形になっていくように、どういうつくり方をしたらいいか、情報として何を盛り込んだらいいか、それから、それを受け手の方で受けたときに、どのような視点で受けとめて災害のときに生かしていってもらうようにしたらいいか、そこは御指摘のとおりだと思いますので、作成するだけではなくて、それを周知していく。 それから、避難勧告とか避難指示があっても自分のところは大丈夫だろうというような考え方が安易に出てこないためにも、役立つようなハザードマップにしていかなければならないと思いますし、いざというときに、知りたい情報が中から読み取れるような、そういう形のものにしていきたいと思います。 〔望月委員長代理退席、委員長着席〕 ○穀田委員 私、何回も言うんですけれども、なぜ聞いているかというと、実際に生きた教訓というものを反映する必要があるということを言いたいからなんですね。 私は、実際に、では配布されている防災地図の問題について聞きたいと思うんです。作成されている数が三百一ですから、でき上がっているところは大変な努力を傾注して作成しているし、敬意を払いたいと思うんですね。しかし、一定の予算を計上して作成するわけだから、よいもの、わかりやすいものというのが肝心だと思うんです。通知の内容によりますと、作成要領、第一、「目的」というのがありまして、「浸水状況と避難方法等の対策に係る情報を、住民に分かりやすく提供することを目的とした」、こう書いています。 さらに、その点でいいますと、現実に私、少し持ってきたんですけれども、こういうものなんですね。これは京都のものなんです。これは、今私ども宿舎が分散していますから、港区の浸水ハザードマップなんです。これなんですね。これは二、三回しか見ていないんだけれども、こうなるんですね、若干破れちゃう。けちをつけているのじゃなくて、これは京都のものなんですね、立派なものをつくっているんです。 私が京都にお聞きすると、非常に小さい字なんです、これでお年寄りに見えるのかと言っていたんですけれども、いや、全体の紙の大きさの基準がありましてというようなことを言っていました。それから、どうしても入れるものの情報を一定入れなくちゃなりませんから、こう言っていまして、小さくなることについてやむを得ないんだという話をされていました。これが京都市の分なんですね。 これは長岡京市という私の近くのところなんです。これはこの大きさなんですね。これを見ますと、違いますやろ。京都市は半分の大きさなんです。だから、大きさでいえば、もうちょっと大きいのができても構わないと私は思うんです。だから、一概には、経費の問題もありますから、私はどれがいいとかこれがいいとかと言えない問題があると思うんです、努力されているわけですから。 だけれども、問題は、ではどこに視点を置くのか。先ほども大臣もおっしゃっていたし、ここで私、聞きたいのだけれども、みんなこれ、保存版と書いてあるんですね。そうしますと、どういうふうに周知されているかということが問題だと思うんです。例えば京都市の場合は、市民新聞に入っていますと折り込みをしているんですね。入っていたの気づいていますかと消防団の方に聞いたら、それ、あったかいなというようなことを言っているというのもあるんです。これではおよそ周知がされていないということになるんじゃないか。 それと、私が住んでいます京都の北区の場合なんかでも、例えば市民新聞と一緒に配りますから、当然、対象でない学生アパートなんか入らないというようなことにもなる。だから、どないして周知するかという問題がある。しかも、保存版にふさわしく、そういうこともよく考える必要があるんじゃないかというのが二つ目。 三つ目に、防災地図に盛り込むべき情報についてです。何でもかんでも盛り込めばよいというものではないし、細かい字になり、わかりにくくなるのを避ける工夫も必要だと思うんです。私は、かぎとなるのは学区単位だとか町名など、何丁目というふうなところなどに、身近できめ細かな情報提供が必要じゃないか。そして、情報の受け手の立場に立った地図の作成が必要じゃないか。 したがって、作成に当たっての過程が大事で、住民、居住者、そして商店、商業施設などの管理者、そして専門家などの参加を重視してつくっていくことが必要じゃないかなと思っているんですが、その辺の、今一連述べたことについて見解を示していただきたいと思います。 ○清治政府参考人 ハザードマップの内容につきましては、更新でありますとか改善とかいうことにつきましてはガイドライン等の中で示せると思っているわけでございますが、そのほかに、保存版という御指摘につきましては、唯一それしか周知の手段がないというものではございませんので、例えば、どこかにアクセスすれば情報としていつでも得られるような情報になっているとか、そういうようなことも工夫していかなければならないと思っていますし、また、知っていただくためのいろいろな手段を講じていかなければなりませんし、できたものをどのように活用するかというようなものを訓練の場で生かすとか、いろいろな試みをやっていきたいと思います。 これは、各市町村がガイドラインに基づいて一斉につくるとしても、その地域その地域、河川の浸水形態等に合った形でつくってもらうことが重要だと思っていますので、こういう川ではこういう工夫をしていますよとか、こういう市町村ではこういう周知の方法をしていますよという好事例をやはり情報としてお伝えできるように支援することも重要かと思っていますので、その辺の取り組みも力を入れていきたいと思います。 ○穀田委員 大臣にお聞きしたいんですけれども、例えばNHKで「ご近所の底力」ということでこれを特集していたんですよ。そこにありますように、緊急避難場所として活用できる鉄筋の建物なんかをお知らせする、すべての住民が五分以内に避難できるように工夫している、こんなふうにありました。 だから、その点では、今言った防災地図などに書き込む情報の工夫とあわせて、ここまでのコミュニティーをつくり出すということが大切だと思うんですね。そういう点はいかがお考えでしょうか。 ○北側国務大臣 全く同感でございます。地域力と言っていいかもしれませんが、防災、減災をしていくためには地域コミュニティー、地域力というものが備わっていないと、私は、幾らいろいろな制度をつくったとしてもなかなかそれが機能しないというふうに思います。そういう意味で、この地域コミュニティーの形成というのは極めて大事であると思っております。 少し具体的な話をしますと、昨年豪雨災害が多発をしたわけでございますが、お亡くなりになられた方の六割が高齢者の皆様でございます。これから日本の社会はますます高齢社会になっていくわけでございまして、どこに高齢者の方がお住まいなのか、どこに足が不自由な方がいらっしゃるのか、そういうことはやはり、もちろん行政もしっかりかかわっていく必要があるわけでございますが、地域の中が一番よくわかっているわけでございますので、そういう意味で、地域コミュニティーの形成、改善というのは極めて重要であると思っているところでございます。 今回の法案でも、NPO等を含む多様な主体の参加による水防体制の確立や、またこれは活発な地域ではなされておりますけれども、イベント等地域活動の場を通じて住民の防災意識の向上を図るだとか、こうした自助、共助、公助のバランスのとれた地域の防災力の再構築を図っていくことが極めて重要であるというふうに思っております。 ○穀田委員 したがいまして、私は、こういう防災地図なんかの作成に当たっては、要は下から積み上げていくということが大事だということも改めて指摘をしておきたいと思います。 今度のところで、そういうお年寄りの施設に対する連絡網などについても整備を図るということがありましたが、私は、この点では官庁がそれぞれ違いますから、やはり一体的になって、例えば緊急通報システムの利用者名簿と介護の関係の名簿だとか、よく連携をしてやっていく必要があるだろう、ここは指摘をしておきたいと思います。 時間がありませんので、あと二つだけまとめて質問をしておきたいと思います。 手当の問題について一言だけ言いたいと思います。水防団、消防団員の確保も大変だと思います。消防団の出動手当について消防庁に聞きたいと思います。 出動手当の地方交付税算入額は、昨年度で六千九百円。実際は、ある決壊した地方では千五百円程度で、およそやっておられぬというような意見も出ているそうです。平均して二千四百円程度だと言われています。消防白書によりますと、「引上げ等、適正化を図る必要がある。」としているが、具体的にはどう考えているかということを消防庁にお聞きしたい。 もう一つは、訓練の問題ですね。実際の被害を想定して、役立つ訓練が大切じゃないかと私は思っているところなんです。それは、消防団員の活動や水防団の活動に、本当に頭が下がるボランティア活動です、なぜ青年の加入の割合が低いのか、その原因を掘り下げる必要があると思っています。 例えば、京都の水防団の訓練などでも、最近の水害のほとんどが内水はんらんで、一級河川があふれることは余りないんだが、一級河川に土のうを積む訓練をしている。むしろ、下水があふれて、浸水建物の中で、老人施設など守るべき建物を対象にした訓練が必要じゃないかという意見も出されています。ポンプの活用などの訓練を重点にして査閲を行うべきじゃないかとの意見も出されています。だから、要は、実際の被害を想定し、それにいかに役立つかを基準に総点検をすべきではないかと考えています。 その点で、魅力ある団活動、やりがいというのも知らせる必要があると思うんですね。NPOにはたくさん参加しているわけですから、そういう人たちの工夫というのも私は必要だし、町内会単位で、京都では防災説明会に消防団員が説明に行くなどの、役割を高める工夫をしていると聞いています。 その点での、今お話しした手当の問題と、そして、実際の被害を想定した役立つ訓練をすることによっての加入を大きく盛り上げるという必要があるんじゃないか、その二点だけ最後にお聞かせいただきたいと思います。 ○東尾政府参考人 消防団の手当についてお答え申し上げます。 御指摘のように、消防団の処遇改善は非常に重要でございますので、出動手当につきましてはこれまでも引き上げを指導しているところでございます。ただ、御指摘のように、各市町村がそれぞれの条例に基づいて支給しますので、その額はさまざまでございます。 今後も、市町村長の考え方はいろいろあると思いますけれども、消防庁といたしましては、地方交付税を踏まえた適切な額にすることを引き続き指導してまいりたい、このように考えております。 ○清治政府参考人 水防訓練につきましては、やはり実践に役立つ形にならなければならないと思いますし、多くの方が参加することによって、それぞれの立場で水防意識を高めて実践力も高めてもらう、地域力も高めてもらうということは重要な視点だと思います。 来月から水防月間に入るわけでございますが、その中でも各地で水防演習が行われます。水防演習の中身につきまして、今御指摘のような身近な水害対策、こういうものも盛り込む工夫をしてまいりたいと思います。 ○穀田委員 終わります。 |
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