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【第162通常国会】 衆議院・国土交通委員会
2002年2月から行われたタクシーの規制緩和が実施されてから3年、タクシー業界の実態をふまえて、規制緩和の結果を検証、タクシー労働者の労働条件が著しく悪化し、事故も急増、タクシーの最大のサービスである安全・安心が脅かされている現状を指摘して、国土交通省の規制緩和路線を厳しく糾弾した。
○橘委員長 穀田恵二君。 ○穀田委員 日本共産党の穀田です。 今指摘ありましたので一言だけ言っておきますと、私は、住民の暮らしに密着した公共事業についてはしっかりやるべきだということで前回質問したところでありまして、竹ノ塚の問題については、そういう問題が解決できない事態をイニシアチブをとって国交省がやるべきだ、こういうことを指摘したということを最初に念のために言っておきたいと思います。 そこで、きょうはタクシーの議論がありまして、この問題は、二〇〇二年二月にタクシーの規制緩和が実施されてから三年がたったというもとで議論されていますので、私もこの議論に参入していきたい、このように思います。 二〇〇〇年の規制緩和の審議の際に、当時の運輸大臣は、「規制緩和を行うことによって、それぞれ事業者間の競争、そしてまたタクシーの運転手さんも含めたいろいろな方々が、」中間は略しますが、「これからは自由にいろいろな面で競争を導入して対応していくということは、やがてまた新しいタクシーの需要も起こってくる」、さらに「当然労働力を必要とする最も重要なタクシーの事業でございますから、新しい事業が参入してくることは、労働者に対してもまた条件をさらによくしていく方向になっていく。」このように述べて、規制緩和を行うことで競争が起きる、新たな需要も起こってくる、労働者の条件もよくなる、こう言ったわけです。 このように国土交通省、当時の運輸省が描いてきた内容で、新しい需要は起こったのか、また労働者の条件がよくなると言ったことは実現できたのか、その点についてまずお聞きしたいと思います。 ○金澤政府参考人 お答え申し上げます。 規制緩和、当時の運輸大臣のお話を今引用されました。私ども、規制緩和を当時の運輸省として決断いたしましたときには、今委員の御指摘のように、規制緩和を行うことによって自由な競争が行われ、そして新しい需要が出てきて、上向きになるということを目指して実施したものでございます。 しかし、残念ながら、本日るる議論がございますように、現段階でまだ、総需要がはっきり上向きになったというふうにはなっておりません。しかし、一方で、局部的には新しいサービスが出てきたり、そのサービスが利用者の支持を受けている面もございますが、その面では、今委員が引用されました当時の大臣の規制緩和の目的は、まだ道半ばというふうに私も認識をいたしております。 ○穀田委員 要するに、需要の話はするけれども、労働条件がよくなったのかということについてはなかったですわな。 そこで、総需要が上向いていない、道半ばだ、こういうわけなんですが、委員の方々もいろいろお話ありましたので、私はちょっと違った角度から述べてみたいと思うんです。サービスの面から見たいと思うんですね。というのは、サービスもよくなるということを言っていたんですね。 それで、タクシーの最大のサービスである安全、安心という点は向上したのか、この点から考えますと、タクシーの事故件数はどうなっているのかという点をお聞きしたいと思います。 ○金澤政府参考人 お答え申し上げます。 タクシーの事故件数でございますが、警察庁の交通統計によりますと、規制緩和実施前、前年の平成十三年に、ハイヤー、タクシーの事故件数は全国で二万六千五十二件でございました。これが最新の平成十六年の数字でございますと二万七千百四件ということで、この三年間で約四%ほどの増加ということになっております。 ○穀田委員 今ありましたが、四%程度の増加だということなんですけれども、よくよく見てみると、私は国土交通省と警察庁の資料を突き合わせてみて、これは自交総連がまとめた資料なんですけれども、それによっても、私、ちょっと大事な問題をはらんでいるなと考えましたのは、事故件数、確かに二万数千という話があるんですが、九〇年段階は一万六千なんですね。そのときに、走行キロ百万キロ当たりの指数というのは、全自動車とタクシーというのはほとんど変わっていないんですね。つまり、タクシーが起こしている事故の割合と全部の自動車が起こしている割合というのはほとんど変わっていないんです。百万キロ当たりもそうだし、千台当たりもそうだと。それが大きく変化し出して、全自動車の中で突出して、一・二五倍を超えるという事態になってきているのは、九六年、九七年以降なんですね。 だから、いわば、前回このタクシーの規制緩和の法案を議論する際に、実際行われてきた、九七年ぐらいから事実上規制緩和が行われているわけですね、そういうあたりからふえているということをぜひ見てほしいと思うんです。今お話ししたのは、規制緩和推進計画で実行に移されていたという問題ですね。 その中で、大きな原因となっているのは、一つは、今まで各委員からお話がありましたように、労働者の賃金の問題とそして長時間の過密労働の問題だと私も思います。 そこで、年間大体二千四百時間働いても、〇三年の平均年収は三百十五万。平均的な労働者の六割程度だと言われています。全国自動車交通労働組合総連合会、略称自交総連が行ったアンケート調査によりますと、全国のドライバー一万三百七十七人の方が回答を寄せています。その中で、営業収入がふえたと答えている方が四・三%、逆に減ったと答えている方が八五・二%。また、賃金がふえたと言っている方が二・二%で、減ったと答えている方が八六%にも上っています。だから、これが実際の働いている方々の現場の声であります。 タクシー業界というのは、他の職種とは違った特性があります。長引く不況やマイカーの普及など、利用者は利用を控えます。このときに、事業者の場合は、一台当たりの収入が減っても台数をふやすことで利益を確保する、ドライバーの方は、歩合制賃金であるために、収入を上げようと長時間労働に陥りやすい、こういう悪循環が起こります。少なくなった客をドライバーが奪い合うという状況になっているのが現状です。 私は、規制緩和による企業参入で自由な競争がふえたといいますけれども、それは表向きの話で、大事な現場での実態、末端での実態は何かというと、ドライバー個人による競争が激化されたというのが実態だと思うんですね。そこが肝心かなめのところなんですよ。 だから、企業が参入した、競争がふえたじゃないんですよ。客を奪い合う、そのためには長時間労働や過密労働、こういうことを含めてやむを得なくなっているという実態があるんだというところに着目しなければならないわけです。しかも、そのことによってタクシーの最大のサービスである安全、安心は向上したと言えるのかということについてお聞きしたいと思います。もう一度お答えいただきたい。 ○金澤政府参考人 お答え申し上げます。 規制緩和前後の事故の動向をどう考えるかということについては、今穀田委員おっしゃったとおり、それまでの傾向が引き続き続いておるということでございます。 しかし、その事故の要因となる運転手の皆さんの労働条件がどうかということについては、これまたたびたびこの委員会でも議論になっておりますとおり、増車が歯どめがかからない状態の中、総需要がふえないということで、当然、一人当たり、一台当たりの収入が減っておるという状況にあるわけでございまして、ドライバーの皆さんの賃金がどのような状況にあるかは厚生労働省からも御開陳がございました。 このような状況を踏まえると、果たしてタクシーの基本である安全、安心が規制緩和前に比べて向上したというふうに言えるのかということでございますが、私どもといたしましては、これも繰り返し答弁申し上げておりますとおり、事後チェック体制の強化と各省連携しての取り締まり等によりまして、事業者の皆さん、そして労働現場における安全の確保が徹底するように努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。 ○穀田委員 この問題は、事後チェックで済む問題じゃないんですね。 タクシーの最大のサービスというのは、今お話ししたように、客を命を預かって運ぶ仕事で、安心、安全を提供することなんですね。タクシーを利用する場合、普通、車を選ぶことは難しくて、実際乗車するまで、サービスのよし悪しや、支払い額についてもおりるときになって初めてわかるものです。 私、お願いして国土交通省にまとめてもらった資料で、これなんですけれども、タクシー業界の現状と課題というものを見ましても、利用者側には中途半端な運賃割引よりは安心、安全を求める傾向もあると国土交通省も言っているんですね。ここが肝心なんだ。大体、事故は、長期にわたって、今言ったようにずっとふえてきている。 長時間過密労働の中でドライバーに何が起きているか。さきに紹介したアンケートでは、長時間労働で眠気を抑えられない、疲れて安全確認がおろそかになるという回答が七割に上っています。さらに、ここにはもう少し、貴重な資料が出ていまして、これを見て驚いたんですけれども、運転中の急性死、亡くなる方ですね、二〇〇〇年には十一件、そして〇一年には八件だったものが、規制緩和以後の〇二年は十七件にふえ、翌〇三年には二十件、倍になっている。 幾ら利用者のサービス向上といっても、これでは大変だと思うんですね。だから、こういう事態になっているということをよく踏まえないとだめだと私は考えます。 何で私、労働条件の問題がかなめだと言っているかといいますと、この間も公共工事の品質確保法という議論をしましたよね。あのときも私は、一番品質を最後つくっているところの現場を見なけりゃだめだ、そこから上がっていって解決するということをやればこれはできるんだと。だから、あれやこれや話してもあかんのや、肝心なところをずばっと押さえなんだらだめなんやと言ったわけですね。 だから、先ほども、前の前の委員の質問にも、監査に入っていると。監査に入ったら入るだけ、ひどいということがわかるというような状況なんですね。だから、事後ではなくて、どうしたらそのことがストップできるのかということなんです。 問題は、そこの中心ポイントが安全輸送、これは、タクシードライバーの労働条件の改善と良質な労働力の確保ということが密接不可分の関係にあるんだ。だから、この二つの点について、安全に対する問題について、大臣の総括的な意見を伺っておきたいと思います。 ○北側国務大臣 タクシーは、多くの国民の皆様が利用される非常に重要な交通手段でございます。もちろんのこと、安全走行というのが最大のサービスであるというのは、そのとおりであると私も思っているところでございます。 先ほど、運転者の健康状態に起因する事故等の件数がふえているのではないかという数字が示されましたが、これは、昔の数字と同じような基準でやりますと必ずしもふえておりません。新しい基準、要するに、人身事故だけではなくて、人身事故以外のものも平成十四年からふやしておりますので、その基準に照らし合わせますとふえているように思えますが、従来の基準でやりますと必ずしもふえているわけではございません。ただ、少数であれ、そうした事故が発生していること自体は極めて問題でございますので、こうした事故のないように努めていくことは当然であると思っているところでございます。 きょうは、タクシーにかかわるさまざまな問題点につきまして、委員を初め、さまざまな委員の先生方から御指摘をちょうだいいたしました。規制緩和をして三年たちます。この規制緩和がどうであったのかということについて、よく実態を踏まえた上で、その課題、今後の対策についてきちんと取りまとめをさせていただきたいと思っているところでございます。 安全確保というのは最大のサービスであることはそのとおりでございまして、それが最大の利用者へのサービスであるわけでございますので、いろいろな規制を緩和することによっていろいろなサービスができたからといって、それで安全走行が損なわれているようなことが仮にあるならば、それは断じてあってはならないことであるというふうに思っているところでございます。 ただ、一方で、規制を緩和することによっていろいろな新しい事業が生まれてきていることも事実でございます。委員の地元では、京都駅から見えますけれども、一日京都観光幾らと出ているタクシーの運転手さん、業者があるわけでございます。こういう観光タクシーなんかも非常に出てまいりましたし、また、福祉タクシーだとか空港までのタクシーだとか、いろいろなタクシーの新しいサービス形態が出てきていることも事実でございまして、そうしたことも大切に育てていく必要があると私は思っておるところでございます。 ○穀田委員 社会の変化に伴って、さまざまな企画が出てプラス面が出るというのは当たり前の話なんですよ。それはそれで当然のことであって、いろいろなアイデアもあるでしょう。問題は、それの一番大事な点の、安全が増加したのか。当時、規制緩和で議論になった際の中心問題である、労働の条件がよくなる、サービスがよくなる、この二つがどうなったかという根幹についてはっきりさせないと私はだめだと思っています。 私は、規制緩和が、当初言っていたようなバラ色の話ではなくて、末端のドライバーに犠牲を強いるものであったこと、そして二つ目に、国民の安全というサービスの根本が事実上ないがしろにされる結果をつくってきた、これが明らかになったのがこの三年間ではなかったかと思っています。このことは、二〇〇〇年に規制緩和が当時の運輸委員会で議論されていた当初から私どもが指摘してきたことです。 審議の中で、我が党の議員の質問に答えて、運輸省は、以前から供給過剰状態であることを認識していたにもかかわらず、規制緩和措置を実施し、一層の供給過剰状態を進行させてきました。タクシーの適正な車両規制が必要ではないかという我が党の求めに対し、当時の運輸大臣は、この供給過剰の状態というものについては、今日の経済状況だとして、自由競争の中でそれぞれ工夫を凝らしていくわけで、タクシー業界そのものは今御心配をいただいているようなことにならないものと判断しておりますと述べています。 しかし、これまでのところ話をお聞きしていると、その心配な状況に今なっているということは言わざるを得ない。現実は、規制緩和で思い描いていた方向とは全く違うことになっている。それはなぜか。まさに、規制緩和に反対してきたけれども、当時私どもはその法案に対しても反対してきましたが、今の状況を見ると、まさに規制緩和、このタクシー業界における規制緩和は失敗であり誤りだったと言わざるを得ないと思うんですが、その点、いかがでしょうか。 ○北側国務大臣 先ほど来、非常に有益な御議論をこの委員会でちょうだいしております。きょうの各委員からちょうだいした御意見もよく踏まえて、実態をよく見させていただきたいと思っております。そういう指示をしておるところでございます。 規制緩和後三年たちました。プラスの面もあると思います、マイナスの面もございます。そのプラス面、マイナス面、よく実態を掌握した上で、今後の対策についてしっかりと取りまとめをさせてもらいたいと思っております。 ○穀田委員 何度も言いますけれども、プラス面というのは、実際行われている企画の内容は、それについて私は否定しているんじゃない、それは社会の進歩としては当たり前だと言っているんですよ。問題は、マイナスのところでいうと、当時、労働条件がよくなると言っていた問題、サービスがよくなる、安全がよくなる、この問題は後退しているじゃないかということを言っているんです。 私は、どこにかぎを求めるか、ここだと思うんですね。やはりかぎは働く労働者、今、現場の実態を見させていただくということがありましたけれども、かぎは労働者の賃金なんですよ。やはり、仮に最低賃金違反が漏れなく摘発されて、すべての労働者が最低賃金以上の支給を確実に受けられるということになれば、増車の全体の抑制効果があることは明らかなんです。 だから、総量全体を規制するということ、それは簡単にはできないわけです。だけれども、労働者の実態に目を当てて、労働者の地位を向上させる、自交総連などは、その意味ではタクシードライバー法案などを出していますけれども、そういう地位を高める、そして規制をある意味では強化するという方向にこそ道があるんだということを最後に述べて、私の質問といたします。 |
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