国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年4月19日)

 通訳案内業法の改正案について質疑。免許制から登録制に規制緩和されることで、「既存の通訳ガイドの就業環境が悪化しないか」と指摘、そのうえで、「外国人観光客に質の高い観光を楽しんでもらうためには、無資格の違法ガイド対策を強化するとともに、国土交通省としてさまざまな外国人観光客の需要に応えるしくみをつくるべきだ」と述べた。また、京都の観光に関わって、LRT・低床路面電車に普及促進を求めた。

○橘委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 私は、通訳ガイドについてまず聞きます。
 観光産業はマンパワーが大事なことは御承知のとおりです。観光客をふやすには、どうしても担い手の量と質を高める必要があると私は考えます。
 本改正に当たって、実際に通訳ガイドをなさっている方に通訳ガイドを取り巻く状況をいろいろと聞いてみました。なかなか厳しい状況であることがわかりました。唯一の国家資格で、合格率も五%ぐらい、難関を突破したにもかかわらず国家資格にふさわしい収入が得られないだとか、プロとして生活をしていけるだけの仕事を確保できるのはほんの一握り、さらには、エージェントから仕事をもらうしかルートがないので非常に立場が弱い、こういった意見が寄せられています。本改正について、資格が取りやすくなって観光通訳士がふえたら仕事の単価が下がるのではないかと、不安の声も寄せられています。
 そこで聞きます。単純に参入障害を取り払って数だけふやすことになれば、今以上に、少ない仕事を取り合う形になって単価が下がり、サービスの質の低下と既存の通訳ガイドの就業環境悪化をもたらすことになるんじゃないか、この点を心配していますが、その見解をお聞きしたいと思います。

○鷲頭政府参考人 お答え申し上げます。
 通訳ガイドサービスに対する潜在的需要というのは、平成十六年で六百十四万人であった外国人旅行者の数を平成二十二年までに一千万人に増加させるということで、今、ビジット・ジャパン・キャンペーンなどに国を挙げて取り組んでいるわけでございますが、そういう意味では、潜在的需要というのは大きく伸びるという要素が一つございます。
 一方で、現状では、これらの外国人旅行者と通訳ガイドサービスを提供したい通訳ガイドとを効率的につなぐシステムが未整備であるということは、我々の反省でございますが、そういうことがあったり、あるいは、アジア諸国からの団体ツアー添乗員が資格を持たないまま通訳ガイドサービスを違法に提供しているといった事情がございまして、既存の通訳ガイドの方がこのような潜在的な需要を十分にとらえ切れていないというような状況にございます。
 これらの課題を克服するために、今回の改正法の施行に先立ちまして、通訳ガイド市場の環境整備というものに具体的に取り組んでいきたいと考えております。
 これによりまして、既存の通訳ガイドが、今後増大が期待できる通訳ガイドサービスに対する潜在的需要をきっちりととらえることができるようになるとともに、そのすぐれた知識、能力、経験といった情報が提供されるようになれば、既存の通訳ガイドが新たな競争環境の中で、創意工夫を生かしてのサービス内容の差別化を図るということで、活動の場を広げていくことも可能になるというふうに考えております。

○穀田委員 私はそう簡単ではないと思うんですね。
 といいますのは、この資格ができて以来、例えばホームページで見ますと、国家資格で難しい順番に並べると上位の方に、司法試験のEランク、それからDランクにこれはなっているぐらい、結構難しいんですよね。もちろん、司法試験に受かった場合に弁護士や検察になったりする、そういう仕事の関係でそれは業が保障されるという問題があって、ここの通訳業というのは、団体の性格だとかそれから国家の援助だとかという問題との関係もあって、なかなか難しいんだと思うんです。
 そこで、今局長がおっしゃったように、潜在的需要というのは需要なのかどうかという問題があると思うんですね。潜在的に来ているということだけは確かなんだけれども、では、それがなぜ今まで喚起できなかったのかという問題について、私は非常にまだ不十分な側面があると思うんです。
 そこで、聞くところによると、イタリアとスペインなどでは必ずその国のガイドを雇わなければならない、そこまでいかなくても、ヨーロッパでは通訳ガイドを雇うシステムがあると聞いています。先ほども局長おっしゃったように、しかし、我が国でも現行法ではライセンスを持った通訳ガイドだけが通訳案内を行うことを認められているにもかかわらず、先ほどあったように、日本人のガイドを雇わずに、添乗員がガイドを兼ねていたり、留学生などをガイドとして雇っているケースもある。しかし、ここが大事なんですね。通訳ガイドがつかないことで、正しく日本を理解することなく帰ってしまったのでは、せっかく日本に来てもらっても大変もったいない。
 例えば、これは実際にあった話ですが、先ほど来観光の話で京都が出ていましたので、私、京都に住んでおりますもので、金閣寺は鎌倉時代に源義経が建てましたなんという話をガイドされておったんじゃ、それは余りにもひどいなというふうに思うわけですね。実際に、韓国人ガイドなんかが説明しているのを横で聞いてがっくりきたというお声まで出ているぐらいです。
 だから、こういうことを正す必要があります。私は、質の高い観光を楽しんでもらえるためには、通訳案内士の資格を持ったガイドに活躍してもらうのが大事になってくると思っています。
 そこで、二つあるんですね。一つは、本改正案では無資格ガイド行為に対する罰則の強化が盛り込まれているけれども、既存の通訳ガイドの有効活用のためにも違法ガイド対策が必要です。これをどうするかという問題。
 もう一点は、外国人観光客の受け入れを促進していく上で、やはり外国人観光客の多様なニーズにこたえた質の高い観光通訳サービスの提供が欠かせないと思うんですね。つまり、ニーズが多様なんですよ。だから、さまざまな形態の通訳案内を提供する。例えば、個人旅行や少人数の旅行で日本人とのフレンドリーな交流を持ちたいという需要などに対して、それならば国家資格を持つしっかりしたガイド、行き先が限定されているので地域限定ガイド、さらにはボランティアとか、そういうそれぞれ適切に紹介できる仕組み、外国人観光客と通訳案内士が互いに出会うことのできる場をなるべく多くつくることが、働く者にとっても外国人観光客にとっても双方にメリットがあると思うんです。
 したがって、国交省として責任を持って、さまざまな外国人観光客の需要にこたえる仕組み、流通のメカニズムをつくるべきではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○鷲頭政府参考人 全く御指摘のとおりでございまして、私どもも今回の法改正に先立ちまして、違法ガイド対策と、流通メカニズムをちゃんとしたものにする、こういう整備が法律の施行の前提であるというふうに考えております。
 まず、違法ガイド対策でございますが、国、自治体、ガイド団体から成る無資格ガイド対策検討会議というのを三月二十二日に立ち上げました。やることとしましては、まず一つは、内外の旅行業者に対して制度を周知し、違法行為に関与しないように指導をします。二番目には、外国人旅行者向けに制度を周知するビラを二十万枚つくりまして、これを作成して配布いたします。それから三点目に、全国の主要観光地において実態調査あるいは個別指導ということを実施して、違法ガイドを防止するというようなことに関する具体策を講じていくということで進んでいるところでございます。
 それから、二点目の流通メカニズムの整備につきましては、国、自治体、ガイド団体、旅行業者などから成ります通訳ガイド市場活性化連絡会議というものを、これも三月二十二日に立ち上げまして、都道府県による登録簿の適正管理、公開、それから、通訳ガイド団体、自治体、独立行政法人国際観光振興機構などによる紹介システムの強化、個々の通訳ガイドについての客観的な評価、情報公開の促進といった課題について今後取り組みをしまして、外国の旅行者側から、あるいはガイドとして仕事をする側からの、お互いのニーズあるいは資質がしっかりわかるような、そういう場を、メカニズムをつくっていきたいというふうに考えております。

○穀田委員 私、今二つの三月二十二日に立ち上げた問題ですけれども、本当にこれが現実に機能しているかどうかということを一年間やはり確かめていただきたいと思うんですね。というのは、昭和二十四年にこの制度ができて以来、ある意味では、結局、通訳ガイドの方が多くて需要は少ないという実態があったわけですよ。だから、それを根本的に変えようと思ったらよっぽどの手だてを打たなくてはならぬということだけは、私言っておきたいと思うんです。
 そこで、別の角度からあと二つだけ聞きたいんですけれども、一つは観光立国懇談会が二〇〇三年四月にまとめた報告書なんですが、その中で、名所見物型から、最近では参加・体験型の観光旅行が注目されるようになったと。また、日本の魅力はどこにあるか。それは、伝統的なものと現代的なものが共存している、自然の景観に恵まれている、そして、日本のブランドの輝きを高めようと述べられている。
 言うまでもなく、我が国日本には、日本らしい町並みや風景、また伝統産業や文化など、外国人観光客が魅力を感じるものが多数存在しています。しかし、一方、私何度もこの委員会で指摘してきましたように、乱開発や、そして伝統産業がなかなか危機的な状況に陥っている事態があります。
 したがって、地場の伝統産業などの振興や町並み保存も観光振興において重要だと考える。これらをどのように促進していくかについてお聞きしたいと思います。

○鷲頭政府参考人 おっしゃるとおり、地域の観光振興というのは、ハード整備を進めていくだけではなく、体験ツアーなどソフト面の観光振興を強化していくこと、さらには、土産品として購入されることも多い工芸品などを生産する伝統産業を観光という切り口から振興していくということと相まって、トータルの観光振興ができることだと考えております。
 そういう中で、ソフト施策という観点からは、ビジット・ジャパン・キャンペーンにおきまして、地方自治体などと協力をして、海外の旅行代理店やマスコミ関係者を招聘して、例えば、京都で抹茶体験、岐阜、美濃での紙すき体験とか、さらには富山にある国宝瑞龍寺での座禅体験など、多彩な体験プログラムを全国各地で実施して、そういう方に、本国に帰って日本へのツアーをつくってもらうというような取り組みを進めております。
 このほかにも、中国、韓国の旧正月に合わせまして、外国人を対象とした観光施設の特別割引とか、例えば京都の平等院観音堂を初めとするふだん公開していない施設の特別観覧だとか、外国人に人気の高い富士山のふもとにある大規模遊園地での外国人向けイベントといったような、さまざまなソフトを総合的に盛り込んだ、ようこそジャパンウィークスといったものも展開をしております。
 それから、伝統産業の分野におきましても、先般、ビジット・ジャパン・キャンペーンの一つ、魅力ある日本のおみやげコンテストというのを私ども実施いたしまして、外国人から見て評価の高い工芸品とか和菓子などの地場産品の発掘、育成を推進しているところであります。
 以上のような施策を総合的に取り組むことによって、地域の特色ある観光振興というものを進めていきたいというふうに考えております。

○穀田委員 今、京の抹茶とか和菓子とか、随分京都の問題が出ましたので、最後に大臣にだけ一言質問しておきたいんです。
 やはり観光地の交通問題、これがとても大事です。京都では、大臣もよく御承知かと思うんですけれども、嵐山が今ちょうど、先週などは桜の時期でもありましたし、今は仁和寺を初めとして御室の桜がとてもきれいなところです。ただ、いつも渋滞になったりして、すぐれた景観を見に来たのか排ガスを吸いに来たのかわからないというふうなこともあります。
 外国人客は、やはり先ほどありましたように、自分からは、確かにレンタカーというのもありますけれども、バスやタクシー、公共交通機関に頼らざるを得ないわけですよね。そうしますと、交通渋滞に巻き込まれたり、そして公共交通機関で観光スポット間を移動できないというのでは、せっかくの観光が台なしです。
 日本の観光のメッカである京都は、ちなみに地球温暖化防止世界会議の京都議定書を発効した都市でもありますし、CO2の排出削減の面でも注目を集めています。京都市は、交通社会実験として秋の観光シーズンにパーク・アンド・ライドを実施し、有効な方法を模索しています。また、LRTの導入のための検討を始め、本年度にその内容を公表する段階に来ていると言われています。
 そしてもう一つ、観光の観点として、フランスのストラスブールやイタリアのミラノのように、そういう意味でLRTが新たな観光シンボルとなっている、それ自身がなっているという問題も私はあると思うんです。
 したがって、観光の面からも環境の面からも、京都の場合には、車両の総量規制とパーク・アンド・ライド方式により、市内中心部からの車を締め出す。それから、その上でLRT、低床路面電車の導入などを国交省として積極的に援助していく必要があるんじゃないか。この間も補助のあり方については改善されて、努力は認めているのですが、例えば、この法案にもいろいろありますけれども、さらに一層の拡大解釈をするなどして、車両基地などの補助をするなど一層の改善を求めたいと思います。
 そういう点での一定の御見解をお示しいただければ幸いだと思っています。

○北側国務大臣 京都の路面電車はなくなったんですかね。(穀田委員「そうです、なくなったんですよ」と呼ぶ)なくなったんですよね。
 あれ、何でなくしたんですかね。私も京都に二年間ぐらい住んでいたんですけれども、よくあの路面電車は乗っていましたけれども、本当に京都の町並みに合う路面電車だったなというふうに思います。いずれにしても、これは京都の方々が決める話でございますが。
 今おっしゃったように、地域の公共交通の活性化というのは、おっしゃっているとおり、外国人の方々はやはり公共交通機関を使う場合が大半なわけでございますので、その活性化をしていくこと、これは環境対策の面からも非常に重要な課題であるというふうに認識をしておりまして、国交省といたしましても、この地域公共交通の活性化のためのさまざまな施策を今講じているところでございます。
 これまでも、公共交通活性化総合プログラムの充実を行ってまいりました。これは、各地域交通の関係者に集まってもらいまして、活性化のためのプログラムの充実をやっておりますし、また、LRTにつきましては、今年度から、国交省の中の鉄道局それから都市局、道路局が一緒になりまして、LRTの総合整備事業というものも創設をさせていただいたところでございます。
 いずれにしましても、公共交通の利用円滑化、活性化というのは非常に重要な課題であると考えておりまして、しっかり積極的に推進をさせていただきたいと思っております。

○穀田委員 今ありましたが、私どもは二十年前に、京都市電を守ろうということで私は運動していた側にいたものですから。その後、モータリゼーションのもとで、なおかつ京都市政のもとで、なくなったというのは非常に残念なことだと思っています。
 先ほどありましたように、三局が共同していただいて、現実的な、そういう意味でいいますと、京都にそういうものを取り戻すという役割を私も果たしていきたいと思っていますし、その決意も聞きましたので、残念だったなという声を聞くということは、そういう復活がいいんじゃないかということにつながるだろうと思うので、そういう点を述べまして、終わります。

○橘委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。