|
【第162通常国会】 衆議院・国土交通委員会
4月25日に発生した「JR福知山線の脱線事故」問題で、JR西日本の社長が出席、質疑を行った。
○橘委員長 穀田恵二君。 ○穀田委員 日本共産党の穀田です。 改めて、事故で亡くなられた方々に、お悔やみ申し上げ、哀悼の意を表明したいと思います。そして、負傷者の一日も早い御回復を御祈念申し上げたい。 私は、きょう社長に端的に答えていただきたいと思います。百七名の方々の命は戻ってこない。つまり、未然に防ぐことができなかったんだろうか。そして、今回の事故の原因究明、そして、どうすれば再発防止ができるか。JR西日本の社長はしきりに風土、風土と言いますけれども、一体全体何がどんな風土なのかというのはさっぱりお答えになっていないわけだけれども、そういう経営者のトップの責任はどうなっているのかについてただしたいと思います。 重大事故は今回が最初ではありません。これまでも繰り返されてきました。それぞれの事故からどう教訓を学んだか、原因と背景を探り、再発をいかに防止するのか、これらは経営者のトップの姿勢が問われる問題です。 二〇〇二年四月、京都駅ポイント切りかえのミスで先行車両に異常接近。事故調査委員会は、定時運転確保に対する強い意識が、異常時に焦りを招き、基本動作の確実な実施を阻害した可能性があったと指摘しました。JR神戸線での消防署の救急隊員の死傷事件では、二〇〇五年一月、大阪地裁は、ダイヤの正常化に関心を傾け過ぎたと断じた。 いずれも定時運転確保、ダイヤどおりの運行を優先し過ぎたことが事故の原因だと指摘している。社長はこの指摘を承知していましたか。 ○垣内参考人 それでは、先生にお答えをいたします。 まず、この事故が未然に防げなかったか、こういう話でございますけれども、まだ原因……(穀田委員「聞いたことに答えてくれたらいいです」と呼ぶ)はい。原因の方は現在解明中でございまして……(穀田委員「承知しているかだけでいいです」と呼ぶ)はい。最後の質問でございますか。(穀田委員「そうです」と呼ぶ)はい。最後の質問につきましては、そういう御指摘があることは承知しております。 ○穀田委員 では、重要な、そこにおってください、もういいですから。重大な事故が起こった原因の指摘を受けて、経営のトップとしてどのような改善を行いましたか。 ○垣内参考人 御指摘を受けまして、そしてそれぞれの事項に応じて、再度そういうことが起こらないようにというふうなことで、例えば、人身事故で消防士が亡くなった件について申し上げますと、やはり情報連絡が非常に悪かったというふうなことで現地の連絡責任者を設けるというふうなこと、あるいは消防なり警察の方を含めたマニュアルをつくるというふうなことでもって安全を担保しようというふうなことでやらせていただいたところでございます。 ○穀田委員 今の話を聞いて、ほんまに情けないと私は思いましたよね。 指摘されているのは違う話なんですよ。連絡の話を言っているんじゃないんですよ、私。事故調も裁判所も、指摘しているのは定時性の問題そしてダイヤどおりの運行、このことを言っているんですよね。それについてどう改善したかと聞いているんですよね。およそ人の話を聞いていないのか、そういう体質なのか、ちょっとそれは別ですが。 事故調査委員会の指摘は〇二年です。裁判所が厳しく批判したのは〇五年です。その間の〇三年十二月にJR西日本はダイヤ改正を行っています。脱線が起きた宝塚―尼崎間は、このとき中山寺が快速の停車駅になりました。ところが、所要時間は、停車駅をふやす前とほぼ同じ時間での運転を強いています。そして、列車がおくれた場合には指令員が回復運転に努めてくださいとの連絡を行う。 社長はこれらの事実を知っていましたか、知っていましたか。簡単にお答えください。 ○垣内参考人 ダイヤ改正をしたという事実は存じ上げております。 それで、それらを回復運転、ちょっと御質問の方を正確に聞いておりませんでしたけれども、回復運転をすることによってこれらに対応するというふうな、そういう指導はいたしておりません。 以上です。 ○穀田委員 それは事実と違います。後ろの方からいけば、回復運転に努めてくださいと連絡を行っている事実は何度もあるわけですから、それは、そんなことを言ってはだめです。 問題は、ダイヤ改正は行ったという事実は知っているが、私が聞いたのは、同じ時間でやるということ、駅はふやした、しかし所要時間は同じだという事実を知っているかと聞いているんです。 横の人に聞かなくたって、あなたが知っているかどうかということを聞いているんだから。知らなきゃ知らないと言ってくれればいいんだよ。 ○垣内参考人 そのことは存じ上げています。 ○穀田委員 つまり、私は何を言いたいかというと、定時性運転確保、ダイヤどおりの運転の優先が事故の原因と指摘されているにもかかわらず、それを改めるどころか、一層それを強要し逆行させたダイヤ改正を平気で行っているということを言っているわけですよ。その事実を指摘している。 駅員の、社員の方々がどう言っているか。駅がふえているのに同じ時間で走行させるなどむちゃだ。脱線現場は日ごろから危ないと感じていた。カーブに入るまでの直線で、時速百キロを超えるスピードで時間を縮め、それを急速に七十キロに落として運転をする。これが声ですよ。 同じ区間を走る快速でも、一本ごとに駅の停車時間や運転時間は違うということもあるんですね。事故列車は、所要時間は最短の十六分二十五秒に設定している。一本前の快速は十七分五十秒、一本後は十七分十秒。乗客の少ない日中の快速よりも五秒も短く、伊丹駅での停車時間もたった十五秒。定時運転を確保するために不可欠とされる余裕時分さえ削っている。他の私鉄との競争に勝つためにスピードを上げるしかない。もうけ第一で安全は二の次という姿勢がここにあらわれているじゃありませんか。 そこで、聞きます。平成十七年度大阪支社長方針というのがあります。全社員に配付されたパンフです。柱の第一には何と書いてあるか知っていますか、端的にお答えください。 ○垣内参考人 存じ上げております。(穀田委員「何と」と呼ぶ)「稼ぐ」と書いてあるように存じ上げております。 ○穀田委員 今お話あったように、「稼ぐ」というのが第一の柱なんです。これがそのパンフレットです。これです。 三月二十三日に、JR西日本中期経営目標「チャレンジ二〇〇八」を発表しています。「大阪支社は、中心支社として、この達成のために全社を牽引していかなければなりません。」として、「稼ぐ」というのを第一の柱にしているんですよ。 二番目に「目指す」として、そこで「安全安定輸送」と書いています。しかもその中で、昨年度は重大事故が多発した、大阪支社はもっとしっかりしていると思っていたが、はっきり言ってなっていないと言わざるを得ないとまで言っているんですね。 安全の、二番目の内容も、じゃ、何か。今言ったように、一番目は「稼ぐ」なんですね。二番目は「目指す」ということで、安全の問題を言っているんです。その安全の中身、何を言っているか。「経費節減〜身近なコスト削減と、駅区あるいは部門をあげてのコスト削減」、つまり、この文書でも明らかなように、「稼ぐ」ということはすべてのところに貫かれているんですね。安全のところでさえ「コスト削減」と言っているんですよという話が出ている。 では、社長、この十七年度支社長方針、これは撤回させましたか。 ○垣内参考人 お答えをさせていただきます。 私どもの会社では、JR発足後、経営理念を定めまして、それでもっていろいろなことをしておりますし、私どもの中長期計画においても、経営理念を踏まえてやるというふうなことにしております。それが経営のすべての第一番目、こういうことになるわけでございますが、その中の行動方針の第一項目に「安全・正確な輸送の提供」というふうなことを挙げておりまして、それを第一に取り組んできておるというふうなことでございます。 それから、大阪支社の計画につきましては、今回、このような問題が起こってから、稼ぐが第一であるというのを確かに伺わせていただきましたけれども、民間企業でありますから稼ぐことももちろん大事ですけれども、鉄道の場合は安全輸送がなければ稼げないというのは、これは当然でございまして、そういったことを踏まえて、そういうことが大阪支社長の方針になったもの、こういうふうに理解をしております。したがって、安全・安定輸送がどうあってもいい、そういう趣旨では全然ない、こういうふうに理解をいたしております。 ○穀田委員 要するに、撤回させていない。それは相変わらずこういう方針だということですよ。だから、私どもは、利益優先第一主義で事を運んでいる実態があるということを言っているんですよ。それが事故が起こっても、こういう問題について、安全のことは前提なんだから当たり前だ、こういう感覚でいるということが、事故が起きて百七名が亡くなっていても、そして、稼ぐということが第一であることについて、依然としてそれは支社の方針だろうと平然と言っているというところに、私は驚きを禁じ得ない。 だから、社員の方々が、ダイヤの改正の目玉は増便だ、定時運転は毎日言われると。次が大事なんですね。安全運転を言われるのは事故があったときだけだ、これが現場の労働者の声です。 では、安全設備について聞きましょう。 新型ATS―Pの設置工事費は、二〇〇〇年の十九億円から、二〇〇一年には二億円に激減しています。あなたは事故当日の記者会見で、投資効果を考えたと発言なすっています。私は、この間のこの委員会において、とんでもない姿勢だということを批判し、指摘したところです。 投資効果とは何か。なぜ福知山線だけATS新型の設備投資をしなかったか。新快速は百三十キロまで速度を上げて走ります。ATS―Pの設置をふやすと、ブレーキがかかっておくれを回復できない。福知山線はスピードアップ、時間短縮を最大の売りとしていた路線です。しかも、先ほど述べたように、新快速は定時運行の余裕時分をも設けていない。だから後回しにしたんじゃないのか。違うかどうかだけ言ってください。 ○垣内参考人 お答えをいたしますけれども、設備投資、ATSで、ある年度が大きくてある年度が少ないというのは、これはその投資の線区の規模等々によって、大きなところをすれば金額が大きくなり、小さなところであると金額が小さくなるというので、それは年度ごとによってでこぼこが出る、そういうふうな問題でございます。 それから、投資の方の優先順位というふうなことに結果としてなるんだと思いますが、これは列車の本数とか列車の種別だとかいろいろなことを総合的に勘案いたします。それから、ATS―P型の工事につきましては、かなり特殊な、専門的な技術、能力が必要というふうなことでありますので、そういった能力が対応できるかどうかというふうなことも総合的に勘案して決めている、こういうことでございます。 ○穀田委員 もう何で後回しになったかということははっきりしているんですよ。それをやったら定時運転できないからなんですよ。 しかも、特殊な技能が要る、こう言っているんですね。特殊な技能と言っているんだけれども、技師が不足で設置がおくれているということを認めているじゃありませんか。要するに、そういう技師も含めて減らしてきたということについて、みずからの責任について何にも言わないということに、私は、そういう体質というのがあるということも改めてわかりました。 そこで、費用の問題というんだったら、やはり私は、今大阪駅などの大改修をしているわけです。それを見直してでも、ATSについて全部設置するというぐらいの勇断があってしかるべきじゃありませんか。百七名の遺志に報いるというんだったら、そのぐらいのことを英断して、わかりましたというのが当たり前じゃないですか。 しかも、ATS―SWだって、路線上の注意すべきである通過地点には地上設備を置けば、速度チェックできる機能がついていたんですよ。このカーブでこの機能を使えるように整備していれば、電車が制限速度を超えることは防げた可能性があったんです。だから、可能性があったという問題を私は一貫して指摘しているんですよ。そういうものを努力を怠ってきたということを私は指摘せざるを得ない。 もう一つ聞きましょう。 事故列車に運転士二人が乗り合わせていた。そして、救援活動をせずに、上司の命令で通常勤務のために現場を離れた問題、ボウリングの問題などは、JRの体質に、被害者はもちろん、国民の率直な怒りと驚きがある。 社長は、一連の不適切な対処について、先ほども個人として情けないとか信じられないとか残念だとか表明しています。しかし、上司に物を言えない、そういう行事に行かなければにらまれるという体質があることを社長が知らなかったということに国民が驚いているんです。いろいろなことを驚いているけれども、そういうこともあったということについて、社長が情けないだとか信じられないなんということを言っている、その感覚が信じられないと言っているんですよね。そこを私は見誤ってはならないと思っています。 そういうことが起きる、つまり原因をどう考えているのか。これも端的にお答えください。 ○垣内参考人 今回の事故に関連をいたしまして不適切な行動が出たということで、これは大変、非常に残念なことでございます。こういうふうなことが出たことにつきましては、私どもとしてはなかなか理解ができないわけですけれども、その背景につきましてはこれからいろいろと勉強をしてまいりたい、こういうふうに思っております。 この背景としては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり国鉄時代とは違って、しっかり仕事をするというふうなことでもって任務を果たすということに非常に力を入れてきた、こういうことで、指揮命令の系統につきましてはそれなりのきちっとしたことができ、成果が上がってきたんだと思いますが、その陰ということではありませんが、結果として、第一線の社員のいろいろな気持ちとか意見が上の方に伝わらないような状況になってきているのではないかというふうに思っておりまして、そういった意味で、今回、全社を挙げて風土を改革いたしまして、要するに意思疎通の大変いい会社に何としても変わらねばならない、こういうふうに思っているところでございます。 ○穀田委員 すぐ国鉄時代のと話しますけれども、国鉄時代に比べて合理化をした、安全まで合理化してしまったということだけは言っておきたいと思うんです。しかも、指揮命令系統ができるようになった、つまり、命令と服従だけは前進したということですよ。 そこで、事故の際に説明が二転三転していることもありますし、もう業務放送を三十数回やっていまして、その中で、重大な人身事故があったにもかかわらず、そのことは触れられない。自社の運営する大阪鉄道病院にさえも、救援出動も行っていない。だから、こういう体質があると私は思っています。 あわせて、こういうことになっています。救助に向かわなかった人に対して、この日、勤務は午後二時九分から、遅刻の心配はなく、実際には午前十時開会の大阪支社長の講演会に出る予定だったこともわかった。ある中堅運転士は、支社長は王様みたいなもの、講演におくれるわけにもいかないと考えても不思議ではないと推測する、これは新聞で書かれているんですね。 だから、こういうことについて、まずい、間違っていると思った多くの社員はいたんです。でも、休日でも行事への参加を拒否すればにらまれる、勤務成績に響くという中で、物言えぬ職場になっている。下から意見が通らない、じゃないんです。そういうことをやっているということについて気がついていないあなたが問題だということがきょうわかりました。 国鉄労働組合西日本本部は、おかしいことはおかしい、悪いことは悪いと言える風通しのよい職場環境及び安全を優先した規律ある作業環境をつくること、人権無視、不当な命令を根絶しようと呼びかけています。こういうことが今必要なんだということを改めて私は申し上げて、質問を終わります。 |
|