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【第162通常国会】 衆議院・予算委員会
13日の国土交通委員会に引き続き、さらにJR西日本の福知山線脱線事故を取り上げた。新型ATS義務化を政府が遅らせた問題を追及、小泉首相に「政府として反省すべき点ある」という答弁を引き出す。
○甘利委員長 これにて仙谷君、菅君、田中君の質疑は終了いたしました。 次に、穀田恵二君。 ○穀田委員 きょうは、JR西日本福知山脱線事故について質問します。 質問に先立って、お亡くなりになった百七名の方々にお悔やみ申し上げ、五百名を超える負傷者にお見舞いを申し上げるものです。一日も早い御回復を祈念したいと思います。 今度の事故についてのJR西日本の責任は極めて重大です。事故の詳しい原因究明については事故調査委員会の解明を待たねばなりませんが、スピードの出し過ぎに要因があったことは既に明らかです。事故の路線にATS、列車自動停止装置が設置されておれば事故は防げたのではないかと国民の多くが思っています。 そこで、社長に聞きたいと思います。 国交省からの資料で、ATS―P型を設置していないのは、この福知山線、JR西日本の数ある近畿圏の主要路線の中で福知山線だけです。設置しなかったのはなぜか、この一点だけお答えいただきたいと思います。 ○垣内参考人 お答えさせていただきます。 ATS―P型の整備につきましては、鉄道事業の根幹である安全・安定輸送を確保する観点から大変有効な手段であるということで、この認識のもとに、京阪神地区におきまして、線区における列車本数、列車種別、利用人員等を総合的に勘案いたしますとともに、計画設計、施工能力を踏まえて、順次計画的に整備を進めてきたものでございます。 それで、当該の福知山線でございますけれども、これらにつきましては、私どもの一番の中心でございますJR京都線、神戸線のATS、これは整備延長が非常に長くて、かなりの工期なりお金も要したわけでございますが、その整備がおおむね完了いたしました平成十五年度から着手したものでございます。 以上でございます。 ○穀田委員 とんでもない話なんですね。 大体、福知山線は、JR西日本が発足した八七年に比較して、電車の本数は四倍近くもふえている路線なんです。だから、きょうの新聞でも報道されていますように、新幹線の問題や、そして迅速なダイヤ復旧を第一とする機構には力を入れるが、そこは後回しだったということが問題なんですね。だから、こここそ急いで真っ先にATSを設置すべき箇所だったことは余りにも明らかだと思います。 そして、二〇〇三年の十二月のダイヤ改正の際、宝塚―尼崎間では中山寺という停車駅をふやしました。停車のために必要な所要時間が一分以上増加したのに、所要時間をふやさなかった。その上、事故を起こした快速電車は、ダイヤ上、トラブルなどによるおくれを駅間で回復する余裕のない、余裕時分がゼロの設定で、その中でも最も短い運行時間でした。余裕時間ゼロの快速は百三本のうち三十一本。事故電車以外は宝塚―尼崎間の所要時間が十六分三十秒だったものが、事故電車は十六分二十五秒でした。余裕がないから、おくれるとスピードを上げて時間を取り戻す、これが常態化していた。 この路線では、ATSを設置すれば制限速度以内のスピードしか出せない、定時運行やおくれを回復するのにATSのブレーキが作動しては困る。だから、設置をおくらせてきたのではありませんか。実際に、調べてみますと、(パネルを示す)これがJR西日本の経営状況とATS―P型の設置工事費の推移です。結局、経常利益はどんどん上がっているのだが、そのP型設置の工事費は下がっているという現状です。 これだけではないんです。JR西日本大阪支社長方針、これです。これは、一番が稼ぐ、そして二番は安全を目指すというふうに、全社員に配付されたパンフであります。つまり、これらに明らかなように、肝心かなめの安全よりも、稼ぐことに中心が置かれる。そして、安全よりもスピード、そして定時運行。安全よりも利益を優先した、このことがJR西日本の経営方針であることは明らかです。 国交省の責任も見逃せません。事故は未然に防ぐことができなかったんだろうか。国交省は安全のチェックをしていたのか。これまた多くの国民の思いです。 二〇〇二年の四月、京都駅ポイント切りかえのミスなど先行列車に異常が出るなど、三件の事故につながりかねない事態がありました。このとき事故調査委員会は、二十二ページに及ぶ鉄道重大インシデント調査報告書を発表しています。三件の重大な兆候に関する共通する要因として、定時運転確保に対する強い意識が、異常時に焦りを招き基本動作の確実な実施を阻害した可能性があると指摘しています。つまり、余裕時間がないことを問題にしているんです。 これを受けて国交省はどう指導したのか、答えていただきたいと思います。 ○梅田政府参考人 御指摘のように、京都駅構内におきまして、大体三件の重大インシデントが起きました。その際、私ども、JR西日本に対しまして、御指摘を踏まえまして、マニュアル等のチェックリストの点検指導、あるいは訓練をきちっとやるようにというふうに指導したところでございます。 ○穀田委員 そのマニュアルどおりということが基本ではないんですね。事故調の調査に対して、JR側は、余裕のない時間設定に問題があったと回答しているんですよ。それを是正すると約束しているんです。JRが回答どおり是正するか、そして、ほかにそのような路線はないのか、きちんと点検し、そして監督指導するのが国交省の責任のはずではありませんか。 今度の脱線事故の後、国交省は、編成ダイヤに問題がなかったか総点検を行っていますが、二〇〇二年に、そのときやっておれば、事故は防げたじゃありませんか。 しかも重大なことは、国交省は点検指導を強めるどころか、事故調が問題を指摘した二〇〇二年の十月の後、三年の十二月にJR西日本がダイヤ編成の改正を申請して、フリーパスしているんですね。余裕時間の極端に少ない宝塚―尼崎間の過密ダイヤを、事故が起こった今でも、この間の国土交通委員会の審議においては、鉄道局長は適切だったと述べているわけです。全く許しがたいと言わなければなりません。 しかも、そればかりではありません。では、もう一度ATSの設置問題で聞きたいと思います。 先ほど述べたように、このように新三田から尼崎間だけはATS―P型がおくれていたということですね。国交省は、今回の事故を受けて、福知山線の復旧に際してはATS―P型の設置が条件だとしています。だとすると、なぜ二〇〇二年に国交省の事故調が指摘したときにATS―P型の設置の指導を強めなかったのか。なぜ余裕時間がないダイヤ改正を申請したときにATS―P型の設置を義務づけなかったのか。ATSの旧型を、せめてカーブの危ないところに地上子を置きなさいとなぜ指導しなかったのか。悔やまれてならないと思います。その点の答弁を国土交通大臣に求めます。 ○北側国務大臣 今回の重大事故の事故原因につきましては、今、事故調査委員会が究明をしております。 今までの調査で、少なくとも次の点ははっきりしているというふうに言えるわけでございます。それは、半径三百メートルのカーブのところでございますが、その中ほどにおきまして、制限速度を大幅に上回る速度により、ここは制限速度は七十キロでございます、そこを大幅に上回る速度により左側に脱線転覆をしたということは、これは現在までの調査で明らかなところでございます。 なぜそのような制限速度を大幅に超えるような速度で走っていたのか。それは、車両に問題があったのか、施設に問題があったのか、もしくは運転士の人的な要素だったのか、そこはしっかりと究明する必要があると思っておりますし、事故調査委員会もそういうことで今調査を進めていると思っております。 このような重大事故になった以上は、これは安全対策がやはりきちんと確保されて初めて運転再開というのがあってしかるべきでございまして、その一つの条件として、今委員の御指摘のように、この地点におきましては、ATS―P型の設置、これをまさしくしようとしておったんです。しようとしておったのが、まだできていなかったわけでございます。これをきちんと整備することが、運転再開のやはり一つの条件であるというふうに言わせていただいたところでございます。 ○穀田委員 私は、しようとしていたことを問題にしているのじゃなくて、しようとするチャンスはあったと、そこを言っているんですよ。予兆があった、そこをすべきだった、その国交省の指導がおくれている、ここが問題だと私は言っているんです。 同時に、政府がJRに対して安全指導を緩めた問題があったと思います。先ほど議論になりましたけれども、政府は一九六七年に大手私鉄に対してATSの設置を義務づける通達を出しています。これは速度照査機構を備えるものとして指示を出しています。ところが、この通達をJR発足時には廃止をして、JRに義務づけをしなかった。こういうことをやったからこそ、事態は生まれたという点を指摘しなければなりません。 総理に聞きたいと思います。 これまで質問してきたように、政府に責任がないとは言えないと思うんです。国民の命と安全を守る、今回のような鉄道事故を起こさないための監視、監督の責任は政府にある。それを認めるかどうか、端的にお答えいただきたい。 ○小泉内閣総理大臣 今の御指摘も踏まえて、私鉄に対する指示なり対応とJRに対する指示、特に安全対策に対して違うという点が、これが事実だとすれば、政府にも反省すべき点があったのではないかと考えまして、このようなことがないように、御指摘を踏まえて、より安全第一、安全重視、こういう点に向けて、より一層公共輸送機関には厳しい安全対策をするような措置を講じなきゃいけないと思っております。 ○穀田委員 私、先ほどの通達と通達の撤回の経過をお示しし、同時に、この間の一連の事故の兆しがあったときにきちんと手を打っていればいけたはずだという問題を指摘しました。 今回の事故の最大の責任は、当然これはJR西日本にあります。しかし、国民の命と安全を守る最終責任は政府にあるんだ。民営化と称して安全まで民営化し、規制緩和して、国の責任を放棄してきた結果が、利益第一主義を許して今回の事故につながっていると言わざるを得ないと私は思うんです。だから、この視点から徹底して事故の究明と再発防止策を立てる必要がある、このことが、とうとい命を亡くされた方々に対する本当の責任の表明である、このことを申し上げて、私の質問とします。 |
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