国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年6月14日)

 近年の都市化にともなって、豪雨時に雨水を浸透・貯留する地表の能力が低下し、都市部において、局所的な豪雨に対して低地や地下街などで排水が間に合わずに下水道から水が逆流する、いわゆる「内水浸水」による被害が増えてきている。この内水浸水被害を減らすことや、先進諸外国に比べまだまだ低い下水道・浄水処理施設の普及率向上などを目的とした、下水道法の一部を改正する法律案について、国土交通委員会で審議が行われ質問した。

○橘委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。穀田恵二君。

○穀田委員 国土交通省にいただいた資料によりますと、浸水被害額のうち内水被害額の割合が、全国レベルでは四六%が内水被害とされております。
 そこで聞きたいんです。特に東京や京都など、大都市圏におけるその割合はどうなっているかということについてまずお聞きします。

○竹歳政府参考人 東京都について申し上げますと、内水被害が八〇%、十年間の合計で約一千億でございます。

○穀田委員 ほかの三大都市圏はわかりませんか。

○竹歳政府参考人 今、手元にございません。

○穀田委員 いずれにしても、全国平均を大きく上回って東京などは八割だ。私は、私自身も驚いたわけですが、それほどまでに内水の被害が大きいということは、大都市部を預かっている行政の方々と、そして住民に正しく認識されているんだろうかということに危惧を覚えるんですね。その認識がなければ対策に本腰が入らないからです。
 先ほど副大臣が答弁に立っていまして、お聞きしていると、国土交通省が行った、都市化の進んでいる都市を選定してアンケート調査を行ったと言われました。参議院の質疑でもこれらのことが語られているのですが、回答を寄せた七十二都市のうち、浸水想定区域策定の予定がない都市が三十二もあるとありました。それらの都市は浸水被害が一度もなかったところなのかどうか。
 もう一つは、なぜこれほどまでに、事態が重大であるにもかかわらず、想定の予定なしと平気で、平気でと言ってしまうと失礼ですけれども、答えているのか。その辺の討論といいますか、話し合いというのをされて、どんな理由だと考えているのか。報告を願いたいと思います。

○竹歳政府参考人 この内水のハザードマップの作成の予定がない都市の中には、もちろん水害を今まで受けた市も多数ございます。それで、なぜ今その内水のハザードマップをつくる予定がないか、アンケートでは直接には確認しておりませんが、次のような理由が考えられます。
 一つは、現在のシミュレーション技術では公表にたえうる十分な精度が望めないのではないか、それからもう一つは、シミュレーションの再現性をチェックするのに必要な水位や浸水に関するデータの蓄積がない、シミュレーションモデルに組み込む管渠等のデータの電子化が進んでいない、このほか、内水のハザードマップをどのように活用していくのか十分議論がされていない、そのような理由が考えられます。
 したがいまして、国土交通省といたしましては、こういう技術的な心配が各地から寄せられているわけでございますので、全国に配付できる高度なシミュレーション手法を開発して、そのために必要なデータを蓄積する、そういう技術的な検討をまず進めたいと考えております。

○穀田委員 私、いろいろな資料をいただいたんですが、確かに技術的資料も大事なんですけれども、例えば浸水対策小委員会、ここでやっておられるんでしょう。そこの中で書いているのは、例えば、十年確率だとか五年確率ということで物事を考えたんでは住民もわからない、だから現実は、いつあった浸水でということでわかりやすくしようという話をしてはるわけですね。
 だから確かに、今局長がおっしゃったように、高度なシミュレーション、それから技術的な問題というのはあるんだけれども、そうではなくて、例えば地方自治体で問いますと、やはり同じ十年確率、五年確率という話をしているんですよ。だから、実際に検討されている国土交通省のその知恵を出しただけだって、別にできると思うんですね。そういうことをすべきだというのが第一なんです。
 それと、私が考えていますのは、二年前、特定都市河川浸水対策法が制定されました。その際、「都市部を流れる河川の流域において、著しい浸水被害が発生し、」中は略しますが、「浸水被害の防止が市街化の進展により困難な地域について、河川管理者、下水道管理者等が連携し総合的な浸水被害対策を講じていくことが制度化された。」そしてさらに、「下水道により浸水対策を講じなければならない地区は全国に存在する。 このような背景から、今後より一層、下水道による浸水対策を強化していく必要があるが、」これもちょっと略しますが、「まず法目的に下水道の役割としての都市の浸水被害の防止について明確に位置づける必要がある。」このように実は、下水道政策研究会法制度小委員会が提起しているわけですね。私が言っているのは、やはりこういう下水道法上の位置づけを明確にすること自身がそれを促進することになると思うんですね。
 参議院でもいろいろ局長が答弁されていますけれども、私は、どないしたらこの問題について促進できるかという立場からすれば、法制度小委員会で議論されたわけだから、しかも、その結論があったわけだから、法にもそれをきちんと入れるということが、進める一つの大きな足がかりになるだろうと思うわけなんです。
 同時に、これは下水道部がつくっている「都市を浸水から守る下水道」という小冊子です。この中にも、「都市に降った雨(内水)の排除は下水道の重要な役割」だ、こう書きまして、その中に、内水による浸水、やはり下水道による対策が必要であると書いているわけですね。
 だから、そういうことからしますと、どうしても私は、制度的位置づけ自身をきっちりすることがそれを促進することになるんじゃないかということだけ提起しておきたいと思います。
 二つ目に、先ほど少し局長からお話ありましたけれども、ハザードマップの問題と内水浸水被害について聞きます。
 私は、四月の委員会で、水防法改正に関連してハザードマップの質疑を行いました。その際、わかりやすい基準とわかりやすい行動の示唆ということを提起しました。内水被害を想定したハザードマップを作成するに当たっての基本的考え、これは、先ほどあった技術的云々かんぬんというんじゃなくて、現実に既にできているものがあるわけですから、その辺の基本的考え方についてお聞きします。

○竹歳政府参考人 内水による浸水は、河川堤防の決壊に代表されるような洪水はんらんと比較しまして、一般的に浸水面積が小さく、また、浸水時の水の流れも穏やかでございます。
 ただ、内水による浸水でも、地下街やビルの地下空間におきましては人的被害が発生する危険性が高く、洪水ハザードマップと同様に降雨時の避難を目的とするハザードマップが必要と考えられますが、通常の市街地では、内水はんらんによる浸水時に建物を離れて避難することは必ずしも適切な行動とは言えないと言われているところでございます。
 また、内水浸水は外水はんらんよりも発生頻度が高く、市民生活、企業活動に密接にかかわりを持つなど、内水被害を想定したハザードマップは洪水ハザードマップと違う目的でやはりつくっていかなくてはいけないということでございます。
 そこで、国土交通省としては、本年二月に設置した委員会におきまして、今申し上げましたような基本的な考え方を含めまして、内水のハザードマップの作成方法や利用方法についても検討を行って、適切な内水ハザードマップの作成を促進していきたいと考えております。

○穀田委員 どうも最初の、河川と違って穏やかという話は、実は参議院でも同じような議論が出まして、局長がそういう発言をしたときに、ひたひたと来るという話で、それ自身は耐えがたい事態もつくられていることもあって、そんなに、来方は穏やかか知らないけれども結構大変だという話をしていましたので、そこは一言言っておきたいと思うんです。
 私は、そこで、水防法で河川の関係の義務化したハザードマップとの一体化がよいのか、それとも、今お話のあったように、違う目的でつくるという、目的の違いもありますから、そういう浸水想定区域だけがよいのかという点は、もう少し住民の意見を求めて具体化すべきだと思っているところです。その点では、小委員会で行われている議論の中でも受け手の側の立場に立ってという議論をされていますから、それはそうだと思うんです。
 ただ、現実は、作成されているハザードマップの中では、例えば私が住んでいます京都なども出しています。それはこの間もお示ししたわけですが、見ますと、「市内を流れる主要河川を対象に、大雨による河川の氾濫を想定した浸水区域や深さを示し、水災害からの避難についてまとめたものです。」こう書いているように、先ほど副大臣がお答えになった二十三区と大阪など八都市を除けば、こういうことを、やはりつくったというものもこれは河川のはんらんによる洪水ということを設定していますから、私は、さらに踏み込んだ努力が必要だと考えています。
 先ほど来、穏やかに浸水してくるといっても、その心得が大事でして、対応としてどのようなことを想定しているのか。
 そして、現実に内水被害に遭うたときの対応でいいますと、私どもの京都なんかでも起きているのが、やはり水が浸水してきて、電話をしようと思ってしたりするんだけれども電話はもうつながらないということで、ただじっと待たざるを得ないというのが結構あるんですよね。それと、災害に、内水被害に遭うた際に、では消毒はどうするのかなどというのが徹底されていない。
 つまり、このことが起こった際にどう対応すべきか、どこがやってくれるのかということを初めとした周知徹底などはどのように考えているのか、議論をお聞かせ願いたいと思います。

○竹歳政府参考人 内水による浸水は、ひたひたと来るという特徴がございますが、参議院のときにも御議論がございましたが、平屋に、一階建ての家に住んでおられる高齢者、障害者の方々、そういう方が二階に逃げられないというようなことについては、地下街と同じように、やはり避難をどうするのかということをきちっと考えていかなくてはいけない場合だと思います。
 これらの地区については、あらかじめ対応策を講じておくことが必要でございますし、危険箇所や避難ルートを示す、それから行政や地下街管理者等が協力して避難のための情報提供をして、住民が自主的に避難できる体制を日ごろから整えておくことが重要だと思います。
 また、避難する必要のない場合における対策としては、地下施設等においては水をとめる止水板の設置や施設の耐水化、土のうの設置、また、宅地においては浸水時の土のう設置や宅地のかさ上げなど、こういうものがございまして、リアルタイムの降雨情報提供や内水ハザードマップの公表の促進等が必要である、このように認識しております。

○穀田委員 都市部というのは、例えば今お話あった対策はどうしても必要ですが、私が言っていますのは、例えば京都の場合でも、いわゆる北部の方などといいますと、連絡方法を無線だとかいろいろ、有線もやっています。ところが、今度は逆に真ん中の都市部になりますと、連絡方法自身がなかなかうまくいかないというのがあるんですよね。そこを考えてやっていただきたいと思っています。
 それで、私も、都市における浸水被害の原因というのは、国交省も認めるように、都市化が原因だと。ですから、だとすれば、無謀な都市開発を進めてきた今までの開発路線といいますか、民活路線ということを反省することが根本だと私はあえて指摘しておきたいと思うんです。
 ただ、同時に、河川や下水といった枠を超えた総合的な対策が必要なことは言うまでもありません。そこで、二つだけ聞いておきたいと思うんです。ここで大臣にお聞きしたいんですが、緑地をふやす等、雨水のそういう浸透の面積をふやす施策、雨水の調整池、公園や公共的施設の表面貯留と地下貯留、貯留管の整備など、さらに、各戸の排水設備に貯留浸透機能を付加する、いわゆる住宅用の貯留浸透を積極的に推進すべきではないか。だから、総合的な対策について大臣、その前に、住宅用の貯留浸透について局長にお尋ねします。

○竹歳政府参考人 都市の水害対策は、河川、下水道のみならず、雨水貯留浸透、こういうことが必要であるわけでございまして、御指摘のとおり、各家庭における貯留浸透を積極的に推進することが重要です。これまでも、助成制度を設けて各戸における貯留浸透の推進を積極的に図ってきているところでございます。

○北側国務大臣 都市部の浸水対策につきましては、流域全体を視野に入れた総合的な治水対策が重要であるというふうに考えております。したがって、河川管理者と下水道管理者が緊密に連携協力をしなければならないというふうに考えるところでございます。
 これまでもさまざま取り組みをしておりまして、例えば横浜の、新横浜のすぐ駅のそばのグラウンドがありますね。鶴見川のところですね。あそこはサッカー場のところを、下のところを水が入るようにしているわけですね。これは河川でやっているんですが、一方で、同じ、関連する鶴見川流域で、横浜市の新羽末広幹線、新羽雨水調整池、こういうところは下水道整備を通じて水をためるというようなこともやっております。
 こういうぐあいに、河川管理者と下水道管理者がよく連携をして総合的な治水対策をすることが都市部においては極めて重要であると考えております。

○穀田委員 あと、高度処理の関係について一問だけ。
 閉鎖水域における環境基準の達成率は依然として低いです。霞ケ浦や琵琶湖などにおいては、下水道の普及率が大きく向上しているにもかかわらず、環境基準である化学的酸素要求量、いわゆるCOD、わずかずつであるが上昇しているわけです。このことは下水道の高度処理だけでは問題が解決しないことを示すものだと私は考えています。
 高度処理の普及が閉鎖性水域の水質改善にどの程度寄与するのか。それともう一つ、高度処理の処理レベルをどの程度として想定しているのか、その処理レベルは公共用水域の水質と比較してどの程度か。この点、簡潔にお答えください。

○竹歳政府参考人 閉鎖性水域に対する下水道からの窒素、燐の負荷というのは半分強ということでございますから、その他の政策も総合的にやらなくてはいけないという点が一つございます。
 それから、具体的なお尋ねとして、高度処理によってどれぐらい改善するのかということでございます。
 窒素についてまず申し上げますと、流入する水の全窒素の量が四〇ppmでございます。これが、二次処理だと二〇ppm、高度処理だと一〇ppmになります。それから、燐について言うと、流入する水の燐の量が五ppmですが、これが、二次処理で二から三、高度処理をすると〇・三から〇・五となります。
 これが河川の水で十倍に希釈されるといたしますと、ほぼ公共用水域の水質と同程度になりますが、若干高い。琵琶湖のように超高度処理をすると、かなりのところまで、希釈しなくても高い効果が出てくるということになります。

○穀田委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ただ私は、その処理施設だけでなくて、結局は、住民の理解と努力、お互いのそういう啓発なしにはできないんだということだけ言っておきたいと思うんです。
 大臣は、下水処理と下水再生水としての有効利用のことについて言及してはりました。私はこれはとても大事だと思うんですけれども、やはり二十一世紀、水の時代とも言われ、水不足の時代とも言われる。こういう中で、雨水の自然還流などを考えると、降った雨水を山林や緑地で貯留し有効活用、そして浸水対策などの水行政については、本当にこれは、上流から下流までという言い方は悪いですけれども、そういうことを含めた総合的な施策をやらなければならない。
 しかも、大臣はいろいろ言っていますから、渇水対策ということも含めまして、それは活用できると。そうなりますと、ダムの建設の抑制にもなる。そういうことも含めてあえて言っておきまして、質問を終わります。