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【第162通常国会】 衆議院・国土交通委員会
これまで国が行っていた航空機設計検査の一部を民間事業者に任せようというもの『事故によって収益の悪化を招き、その結果いっそうの効率化・リストラを余儀なくされ、さらに安全がおろそかになるという悪循環が一連の事故・トラブル多発に如実に現れている。"儲け第一"に走る企業に対して、政府・国交省が企業に安全第一を守らせる。このことが、本当の意味で、企業経営を応援することになる』と指摘した。
○橘委員長 穀田恵二君。 ○穀田委員 今回の法案は、二つ目の改正事項で安全規制の見直しがされます。 改正の説明の際に、航空機設計検査の見直しとして、設計検査の一部に民間能力を活用する観点から、国が認定した事業場が設計した航空機について国が行う設計検査を一部省略すること等ができるとしています。すなわち、これまで国が行っていた航空機設計検査の一部を民間事業者に任せようというものであります。 相次ぐ航空機の事故が多発し、航空機の整備などに関する事故原因も指摘されているときに、よりによって民間事業者の能力を活用しようという法案を通すというのは、私は、いかがなものかと考えます。それで、改善命令以後も事故を繰り返しているJALを初め、民間の航空会社の能力を活用する、本当に大丈夫かという不安を私は抱かざるを得ません。 そこで、大臣に一言、まず、基本的なそういう考え方の問題だけお聞きしておきたいんですが、本当に大丈夫だと責任を持って断言できるのかということについて最初に問うておきたいと思います。 ○北側国務大臣 今般の改正は、航空機の設計検査におきまして民間能力の活用を図るため、国の認定を受けた事業場が設計した航空機について国の検査を一部省略することができるという内容でございます。 これは、安全上の影響が小さい部分の設計の検査や、既に確立されております定型的な試験の実施に限定をしているものでありまして、安全上重要なものにつきましては引き続き国が直接検査を実施するということでございます。 設計検査というものは航空機の安全性の根幹でございまして、今回の改正に伴っては、特に厳しく認定要件を設定するとともに、認定事業場に対しまして業務改善命令等の行政処分や罰則規定といった事後監督規定も整備をしておるところでございまして、認定事業場における不正行為等を未然に防止することができると考えておるところでございます。 事前、事後の監督をしっかり運用することによりまして、航空の安全性は確保できると考えております。 ○穀田委員 結論は、大丈夫だというふうに言っているんですが、前提がいろいろ今回の場合はついているというふうには思いましたけれども、やはりこれだけの事故が起きているときに、こういう問題というのは慎重な審議が必要だと私はある意味では考えています。 四月十四日にJALが改善措置を提出して、当委員会でも、新町社長は安全第一を繰り返し述べて再発防止を約束したことは記憶に新しいところです。ところが、それ以後も、カートを未収納のまま飛ぶ、これは五月十五日でした。飛行中に客室与圧が低下した、五月八日。着陸時に前輪タイヤが脱落する、六月十五日。重大インシデントが繰り返し起こっています。先ほども同僚議員の話があったように、ANAも高度を誤ったまま飛行を続けた、こういうぞっとするような事例も発生をしています。最近も、那覇行きのJAL機、エンジン故障で関空に緊急着陸、さらに全日空機でも、機内に煙が充満、大阪空港へ引き返す、それから自動操縦のスイッチが入らず引き返すなど、多発しています。 国交省が事業改善命令、報告書、立入検査等をしても、一向に改善されない。それどころか、重大インシデントも発生してひどくなっている。私は、この点は、この間、事故にかかわる、航空にとどまらず、それからJR問題を含めて、いろいろ議論をしてきました。 そこで、率直にお聞きしたいんですけれども、今回起こっている一連の航空機トラブルの原因として、またその背景に、リストラや規制緩和、労務対策、JRでありましたような形を変えた日勤教育などがあると考えないかどうか、その点についての見解をお聞きしたい。 ○岩崎政府参考人 先生が御指摘のとおり、四月十四日にJALグループから改善措置の報告を受けましたけれども、その後もトラブルが続いております。そのすべてのトラブルが、原因がまだ調査中のもの、それから機械的なトラブルのものもございますが、今先生が御指摘になったように、ヒューマンエラーに基づくようなものもまだ幾つか続いている、このような状況でございます。 私ども、特にJALグループにつきましては、四月十四日に出された改善措置の報告で、全社一丸となって安全を最優先とする企業風土をつくっていきたい、こういうふうなことで報告を受けておりますが、それがまだまだ十二分には浸透していない、そうしたことがトラブルの続く一つの原因ではないか、このように思っております。 私どもも、立入検査、これも抜き打ちの立入検査なんかも実行しておりますが、そうしたことをしながら、監査、監督を続けております。 それから、六月十七日には、大臣からさらに指示を出しまして、より安全に強い企業風土をつくってくれということで、外部有識者の意見を取り入れるというようなことも考えてもらいたいということを指示したところでございます。JALの安全に強い企業風土づくりを何よりも期待したいところでございます。 それから、なお先生がおっしゃいました、リストラ、労務対策がどうか、こういう点でございますけれども、私ども、リストラ、労務対策それ自体が直ちにこの一連のトラブルの原因になっているものと認識をしておるわけではございません。 ○穀田委員 私も、ストレートに、それが即イコールになるんだなんと言ってはいないんですよ。だから、私が言ったのは、その背景にあるんじゃないかということを言っているわけですね。 それで、今の局長の話でいうと、浸透していない、浸透すれば大丈夫だという、逆にそれはとれるみたいな話だけれども、私はそう簡単ではないと思うんですね。だって、この間、参考人の、参議院でもあったように、JALとANAのトラブルというのは、結局、では、社内の意識改革だとかヒューマンエラーに対する取り組みが改善されるまで今後も続きかねない、ある意味では、そう言っているにすぎないと思うんですね。JALは改善措置で社内の意識改革を強調していますが、その後もやっている。ANAは、この間聞きますと、社員の半分近くとの会話をしているんだなんということまで言って、社内の風通しのよさを強調していますよ。それでもやはり起こっているわけですね。 それで、六月七日の参議院の委員会で、JAL並びにANAの両社長は、これまでのトラブルと技術規制の緩和との直接な関係はないと答えています。さらに、「航空法に基づいて認定、事業の認定等きちっとした安全の担保の上に行われている」、「ヒューマンエラーあるいはメーカーの製造品質が原因である」とも言っているんですね。これを聞いて、私驚いちゃったんですね。どうもこの両社長は、事故やトラブルを起こすのは品質が悪いと。労働者の怠慢や航空機の製造会社や下請整備会社のせいで、経営陣には何の落ち度もない、こういうふうに聞こえる。社長が口を酸っぱくして安全運航を言っているのに、それをやらない下が問題なんだ、こう言わんばかりの話をしているわけですね。 大臣、もう一度聞きたいんだけれども、こういう航空会社の社長の意見と同じなのか、こういう姿勢で本当に今後トラブルがなくなると確信が持てるのか。どうもそういう形で責任を、問題をそこに見出していること自体に大きな問題があるんじゃないかと私は考えるんですが、大臣、どうです。 ○北側国務大臣 私は、そういうふうに受けとめはしませんでしたけれどもね。私は、両社長のお話を聞いておりまして、やはり経営トップの姿勢というのが非常に大事だと。また、一連のトラブルについて当然責任を感じていらっしゃるというふうに私は認識をしておるところでございます。また、そうしたトラブルが、従業員の方々や機材のせいにしているというふうな発言ではなかったのではないかというふうに思っておるところでございます。 大事なことは、こうしたトラブルの一つ一つにつきましては、当然これは原因というのがあるわけでございまして、その原因というものをしっかりと解明をすること、また、直接的な原因だけではなくて、その背景にあるものまで含めて分析をしていくこと、これが非常に大事なんだと私は思うわけでございます。 今穀田委員の方から、一連のトラブル、幾つか御紹介があったんですが、その中にはまだ原因が不明なものもあるんですね。例えば、この間のJALの前輪が脱輪をしたことにつきましては、今事故調が入っておりますが、これが一体どういう原因でそうなったのかというのは不明でございます。機材のふぐあいによるものなのか、もしくは運転士の着陸の際のミスによるものなのか、その他の原因なのか等々、まさしく今客観的に公正に究明をしていただいているところでございまして、その結果を待たないといけないというふうに思っているわけでございますが、いずれにしましても、JALにしてもANAにしましても、事業者みずからがその問題点というものを把握して、トラブルが発生した背景について掘り下げた分析を行っていくことが、これが再発防止につながってくるわけでございまして、こうした取り組みをしっかりやっていただきたいというふうに思っているところでございます。 ○穀田委員 私は、委員会における発言をそのまま引いて述べたつもりです。だから、そこに問題があるかのように言っていることも事実だと。なおかつ、私は、だから背景問題についてきちんと議論をしないとあかんのじゃないかと言っているわけですね。 この両社長の発言というのは、そういう問題について深まりがないこともまた事実だと思っています。私は、その一つの例として、リストラや規制緩和や労務対策というのがあると。しかも、それは航空会社自身が、あの御巣鷹山の教訓に学んだときにそういう発言もしているということも、あわせて私は前回指摘したつもりであります。 そこで、規制緩和というのは、国のチェックをなくして企業任せにしてしまうということなんですね。今回、相次ぐトラブルとこういう問題について関係ないということについて言うのは、私はどうかと考えています。 そこで、今JALその他で起こっている現実の問題について少し聞きます。 大臣は、いつも、経済的規制緩和は当然だが、社会的規制というのは強めなくちゃならぬ、安全のことはこうだ、こう必ず言います。しかし、安全にかかわる部門の人員も効率化し、コスト削減ということでJALは減らしてきています。そして、それをセットでやってきたところに問題があると私は考えています。 安全部門の規制緩和ですが、その内容は、少し挙げてみますと、整備における検査部門の独立を廃止してダブルチェックを形骸化したのが八八年です。定例整備の海外委託を認めたのが九四年、さらに契約制客室乗務員の採用。そして、国による検査を民間に委任する検査制の導入が九五年。さらに、整備士資格制度の見直しによる運航整備士の問題、そして、需給調整規制の廃止をして事業免許制から許可制などなど、こう来ました。 そこで、大臣は、先ほど言ったように、社会的規制についてはこれまでも堅持してきたというふうに考えていると答弁していますが、安全にかかわる人員が減らされ続けてきています。私は、昨日もJR西日本の安全部門にかかわる人員削減を指摘しました。これでもやはり大臣は、また局でもいいんですけれども、安全規制は堅持してきたというふうにお考えですか。 ○北側国務大臣 昨日に引き続きまして、同趣旨の御質問だというふうに理解をしております。自社においてすべてをやることが、それが安全なんだというふうにつながるものでは決してないと私は思っております。 航空会社の人員につきましては、運航、客室については特に変動しておりませんが、御指摘のあるところは、地上関係人員について減少しておる、これには整備の人員も確かに含まれております。しかし、整備関係の人員の減少分につきましては、主に子会社への業務の移管に伴うものでございまして、グループ会社全体としては、必要な人員が確保されているのではないかというふうに考えております。 また、航空機の整備の外注による業務移管につきましては、外注先である受託者に対しまして、整備事業者としての整備の能力の認定を行うとともに、委託者である航空会社に対しても、委託先に対する委託管理を的確に実施し安全対策に万全を期するよう指導しているところでございまして、整備の外注がされているということをもって必要な安全性が確保されていないというふうには考えておりません。 ○穀田委員 そこが認識の違いなんですね。 大臣は、この一連の議論の中でも、現場の声を聞く必要があるということは言ってこられました。私も、そういうことについて前回の新町社長にも言いました。そのときに、整備のアンケート、航空連、航空連絡会はやっているんですね。それを見ますと、現場の声というのを聞いていまして、アンケートを現場の整備士の多くの方々からいただいています。それを見ますと、「整備品質はどの様に変化したか」という問いに対して、「向上した」というのは二%なんですね、向上せずに「低下した」というのが五九%なんですね。つまり、整備の現場では、今どういうふうに万全を期しているとか、どう言おうが、現実の現場の声というのはこういう実態なんです。六割近くの方々が整備の現状について言えば、明らかに後退している、品質が落ちている、時間に追われて大変だということを言っているんですね。 その中に何があるかと言うと、私が何回も言っているように、JR西日本でいえば、稼ぐということを第一に据えるもうけ第一主義だ。JALでいきますと、いかなる事態、いかなる環境においても利益の生み出せる事業構造の構築、これを中心に据えているわけですね。まさに共通しているんですよ。だから、そういう根本のところに大きなゆがみがある。したがって、安全や整備部門の人員の削減や修繕の整備の外注化というのは全くこのことと一緒なんだということを改めて私は指摘しておきたいと思います。 大臣も、既に人員が減るということを言って、部門がそうなるということを言っていますから、それについては、私は、では、部門ごとにどういうふうに減るのかということについて局の方にお聞きしたいと思います。 ○岩崎政府参考人 JALグループでございますけれども、JALグループの整備部門の現状あるいは今後の見通しでございますが、JALからヒアリングをいたしましたところ、JALグループ全体、整備部門で七千五百人程度でございます。JALインター、JALジャパン合わせまして約四千名、グループが一緒で三千五百名という構成になっております。 今後、退職による減耗等はあるかということでございますけれども、やはり定期定量の採用を行っていくことでほぼ同規模の人員は確保していきたい、このようなことだと聞いております。 ○穀田委員 私は、そこを今後きちっとよく掌握していただいて、結果としてどうなったかということについてよく見ていきたいと思います。 時間があれなので、一つだけ聞きますと、JALが発生した整備に関して機材に関するふぐあいは何件あるのか、そして、航空局が行政指導した事例はあるのか、ここだけ聞いておきたいと思います。 ○岩崎政府参考人 昨年度の数字でございますけれども、JALグループ、これの機材ふぐあいの件数は八百二件でございました。これは整備に関して生じた機材に関するふぐあいということは特定できませんで、結果として機材のふぐあいがあった件数が八百二件でございます。 原因といたしましては、航空機や部品そのものの設計に問題があったもの、あるいはメーカーが指示する整備方法の設定が適切でなかったもの、あるいは整備作業が不適切であったもの、こうしたものをそれぞれ合わせた合計の数でございます。 それから、整備に関して厳重注意を行った件数でございますけれども、JALグループに対しては、昨年度、日本航空インターナショナルに対しまして、二度、厳重注意を行ったところでございます。 ○穀田委員 最後に、一言言っておきますけれども、このほかにもさまざまなミス、ふぐあいがあることについては現場の組合が既にこれをまとめています。JR事故のときも私は指摘したのですが、そういったささいなミス、ヒヤリ・ハットなど含めて、きちんと掌握していただきたいと私は思っています。 先ほど、整備士の問題について一言言ったわけですけれども、日航労組は、現場の職場の状況についてこう言っているんですね。「経営は整備士を、整備士は経営を信用出来ない状態です。」と。「リストから見える職場の現場はきれい事を言う経営と裏腹に、時間に追われ人も充分ではない整備士が背中に冷や汗をかき走り回り、何かあると出されるその場しのぎの数多い対策を思い出そうとしている姿があります」、ここまで言っているんです。私はこの告発をしっかり受けとめておく必要があると思います。 このごろ、効率化ということがはやっていますけれども、私は、そこの問題が多いと思うんですね。つまり、今日の社会環境というのは、企業のコンプライアンス、それから社会的責任をいかに果たしているかが企業価値を判断する基準になっていると思うんです。ですから、今、効率化か安全かというバランスを名目に実際はもうけ第一主義に走っている企業に対して、政府や国交省が安全を第一に守らせる、このことが本当の意味で企業経営についても応援することになる、また、そのことが、今、安全第一という形で国民の期待のこたえになるということだと思っていますので、そのことを指摘して終わります。 |
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