国会会議録

【第163特別国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年10月18日)

 『国土交通大臣あいさつ』に対する一般質疑。尼崎脱線事故の問題で、JR西日本が作成した「安全性向上計画」の監視・監督等について質問した。


○林委員長 穀田恵二君。
○穀田委員 きょうは、JRの事故の問題について大臣に質問します。
 大臣は、四・二五ネットワークという遺族の方々と十月四日に、十分程度ですが、面会を行ったそうです。御遺族の方々の要請にどのようにおこたえになるつもりか、まず、その大きな点での大臣の所信をお伺いしたいと思います。
○北側国務大臣 十月四日にお会いをいたしました。十分ではなくて三十分ぐらいでした、実際お会いしたのは。
 四・二五ネットワークの方々からは、事故原因の徹底的な究明をしてもらいたい、また、JR西日本の事故に対する説明責任をきっちり果たすように指導してもらいたい、その他、ほかにもございますが、御要望があったわけでございます。
 事故原因の究明につきましては、御承知のとおり、今、事故調査委員会で鋭意取り組んでいるところでございますが、遺族の皆様からいただいたこの御要望につきましては、JR西日本の方にお伝えをするということは申し上げをさせていただきまして、現に内容は伝えたところでございます。
 JR西日本には、できる限り誠意ある対応を遺族の皆様にしていくのは当然の話でございまして、していくよう、今後ともJR西日本に対しまして指導をしてまいりたいというふうに考えております。
○穀田委員 この未曾有の事故に当たって、私は、政府には、安全規制の問題や、それから監視、監督を強める問題、そのため、それを通じて国民の命と安全を守るためにあらゆる手だてを尽くす責任があると考えます。今お話あったように、同時に、JRなどの公共交通事業者に安全を守らせる責務があると思います。国交省は、所管の官庁として、みずからの責任を自覚して対応しなければならない義務もあると私は考えます。
 その点で、事故調としての、企業の組織体質まで踏み込んだ事故原因の徹底解明が必要であるし、JR西日本に対する指導を徹底することが求められます。この点が特に遺族の方々の要望の中心だと思います。
 遺族の方々は、「単なる脱線転覆のメカニズムや車輌構造などの解析による原因分析にとどまらず、事故列車の運行ダイヤの危険性、ATS―Pの設置の遅れ、運行責任を担っていた運転士と車掌の安全運行に関する訓練や就業状態等々、事故発生に関わる様々な要因、さらにはサバイバルアスペクツなども含む事故の原因究明と全容の解明を、心から待ち望んでいます。」という切なる願いを訴えています。
 ですから、これは、この思いを実らせることが、実は今後の再発防止対策の原点だと考えます。
 私は、この間、四月二十五日の事故発生以来、何回もこの問題について質問をしてきました。六月には、五月三十一日、JR西日本が提出した安全性向上計画について、この作成に関与した国交省としても、JR西日本に、絵にかいたもちにさせない、確実に実施させる責任があることを指摘したところです。
 そこで、四カ月過ぎた現在、JR西日本はこの安全性向上計画を企業内にきちんと徹底し、具体的に改善が進んでいるかどうか、国交省はどのように把握しておられるでしょうか。
○梅田政府参考人 まず、JR西日本でございますが、JR西日本は、御指摘の安全性向上計画に基づきまして、六月から三カ月間、本社の役員あるいは支社長等が現場に赴きまして、現場の社員と意見交換を行う緊急安全ミーティングを開催しております。その際に、安全の確保こそがJR西日本の存立基盤であり社会的責務であるとの意識づけを社員に対して行ったというふうに聞いております。
 私どもが把握しております緊急安全ミーティングの開催は、九月三十日現在で、箇所で二百四十カ所、対象社員で延べ一万七千人、約一万件の意見があったというふうに聞いております。また、九月以降につきましては、安全ミーティングということで継続しているというふうに聞いているところでございます。私どもも、今後とも引き続きこの計画を着実に実施していただくということが重要であると考えております。私どもといたしましても、定期的にその進捗状況の報告を受けております。
 さらに、JR西日本の本社やあるいは支社に対する監査を通じまして、これは既に七月、八月と三つの支社に入ったところでございますが、近々本社にも監査に入る予定でございますが、その実施状況を確認して、必要な指導は行っていきたいというふうに考えております。
○穀田委員 JR西日本は三カ月間、そういう期間を設定してやっています。私は、当時、一年ぐらい安全点検期間に設定することが必要だと提起しましたけれども、現場で働く労働者が、また社員の方々が、安全性向上計画についてどのように評価し、事故後、安全対策が改善されていると感じているかどうか、ここにスポットを当ててみる必要があると思うんです。今お話あったように、二百四十カ所、一万七千人と、こうありましたけれども、問題は、現場の働いておる社員の方々がこの安全性向上計画についてどのように思っておるのかという点が大事だと思うんですね。そういうところにスポットを当ててこそ、初めて会社の計画が現場でどのように実行されているかということを見きわめる試金石だと私は考えます。
 そこで、もう一度局長に聞いておきますけれども、現場の労働者や代表である労働組合から、この問題で意見を聴取したことがあるでしょうか。
○梅田政府参考人 事故当時でございますが、事故当時、JR西日本の主たる組合でございますJR連合あるいはその他の組合から、事故についての組合としての要望書をいただいたことはございます。しかし、その後につきましては、特段JRの組合の方からそういう要望書は出てきていないというのが私どもの……(穀田委員「もう一回言ってください」と呼ぶ)事故当時、要望書は出てきたのはございます。現実にお会いしてお話を伺ったこともございます。その後につきましては、組合の方から私どもに対しまして、そのような要望につきましては、私の記憶ではございません。
○穀田委員 では、逆に言えば、そういう要望書やその他があれば会うということですわな。そういうふうに理解します。
 大事なのは、現場の声を聞くということ。それについては何度も国土交通大臣も飛行機の事故その他を初めとしてずっとおっしゃっていますし、まあ来れば会うたるよではなくて、どないなっているという話を聞くのが私は積極的にすべき話ではないかと思っているんですね。監査も大事だけれども、そういう現場の意見を、どないなっているかということが私は視点として大事だと何回も申し上げたところです。
 特に、今度、国労西日本では、安全性向上計画監視委員会をつくって八月にアンケートを行っています。約六百人ほどの方々がその時点で答えています。それがこういう結果としてこんなふうにまとめられています。それを見ますと、実際にJR西日本に勤務している社員の声ですから、今の取り組みを知る上での貴重な資料と考えます。
 それによりますと、第一に、周知徹底に関してですが、安全性向上計画については、今ありましたが、六百人ほど答えているんですけれども、「説明がない」というのが二百二十一名に上っていまして、約三分の一以上が説明を聞いていないと。「説明があった」と答えた人に聞きますと、説明は十分でしたかという問いに対して、「読み上げて説明」というだけで、それが実態で、これが半分を超えています。
 第二番目に、今お話あった緊急ミーティングです。これについても、どういうふうに意見を寄せているかといいますと、緊急ミーティングの内容について、よく理解できたかという問いに対して、「理解できた」は九十六、「理解できない」二百三十二、回答がないのが百七というふうに、内容が理解できないというものが多いんですね。その上に、ではその内容はどのようなものだったか。これは、「変わろうとする姿勢で、十分な説明であった」三十八、「相変わらず一方的に話し、社員の意見をきかない」六十一、「形式的で熱意が伝わらない」二百二十二、無回答が百十一。つまり、緊急ミーティングについても、熱意が伝わっていないというのが大方の意見なんですね。
 さらに、第三に、計画策定後、職場は実際に変わったかという質問に対しては、「全く変わらない」というのが四百四十三なんですね。
 だから、なぜこれほどまでに否定的な回答があるのかということを、私は現実はそうなんだということをよく見なくちゃならぬということだと思うんです。
 あわせて、意見を書く欄があるんですね。当然、アンケートですから、マル・ペケだけではなくて自分の意見を書く欄がありまして、その中には、見ていると、説明などは上からやれと言われているのでやっているという感じだと。さらには、労務管理や社員管理など会社の都合の悪い質問には答えない、あるいは、現場の人員は減らされたままだというふうな文言が随分書かれてあって、幹部教育の改善不徹底や、いわゆる効率化のためにリストラやむを得ないみたいな実態について見直しをしてほしいという意見に対しては何も答えない、そういう実態がかいま見えます。
 したがって、私は、安全性向上計画を遂行させるためには、こういう現場の労働者の意見を聞くなど、フォローアップすべきだという点、思うんですが、その点、大臣いかがでしょうか。
○北側国務大臣 まず一義的には、事業者の皆さんが、経営者の方々が現場の方々の声をよく聞く、風通しのいい組織にしていただくということは極めて大事なことであると思っております。ぜひ経営者の皆さんに、そういう現場の方々の声をしっかり聞いていただきたいと思っているところでございます。
 また、この安全性向上計画は、これはもちろん一番責任があるのは経営者の方々でございますが、経営トップから現場の方々まで一体となってこの安全性向上計画を実行していただいて、会社全体の風土を変えていただかないといけないわけでございまして、ぜひ経営者とそして現場の方々との一体となった取り組みを私としては期待しているところでございます。
○穀田委員 それは当然のことであって、風通しがよい風土を目指すということを計画の中で言っているわけですから、それは当たり前のことですよ。問題は、そういう実態があるということを私は言うたわけだから、国土交通省の方々が、現実は、そういう現場の声が、少なくとも、計画、三カ月という事態のもとで、残念ながら否定的な意見が多い、しかも、読み上げられただけだとか説明が不十分だとかと言う方々がおられる、そういう声を監査に生かす、また、その監査のときにも現場の声を聞くというのは当たり前じゃないですか。そのことを私は指摘しているんですよ。そんな、何か経営者の話を、それは当たり前の話であって、国土交通省が何をするのかということを私は提起しているわけですね。
 だから、私は二つあると思うんですよ。そういう声をちゃんと聞きなさいよということで、こういう声が出ていると私は指摘しているわけだから、きちんとやりなさいということで監査のときに言うのと、あわせて国土交通省だってそういう直接の意見を聞く必要があるということを重ねて要求しておきたいと思います。
 そこで、例えば、結局、JR西日本の体質という問題でいうならば、私は何度も指摘したんですけれども、とりわけ日勤教育を初めとした命令と服従の企業体質であることはメディアでも指摘されているわけですね。そこの中で、特に、安全性向上計画の中でも減点主義だとか部下との意思疎通が不十分など反省しているように、先ほど大臣もおっしゃったように、風通しが悪いということが体質であることは明確だったわけですね。したがって、そういう、幹部が話を聞きなさいと言ってやったって、そのことだけで解消するものじゃないと思っています。
 そこで、では、安全性向上計画の位置づけについて、一点だけ確認しておきたいと思います。この安全性向上計画は、安全を軽視してきた姿勢を反省し、これまでの安全対策を根本的に見直すものとして会社が作成したものと認識しているのかどうか。国土交通省はどのように受けとめておられますか。
○北側国務大臣 そのように認識をしているところでございます。
 この計画は、JR西日本にとりましては、被害に遭われた方々や利用者の方々を初めといたしまして、社会全体に対する約束事であるというふうに私は考えているところでございます。大事なことは、この計画をしっかりと実施していただくとともに、これを通じて、安全を優先する企業風土の構築に取り組んでいただくことでございます。
 国交省といたしましても、これまでも監査を重点的に実施しておりますが、これからもこの監査をしっかりと実施するとともに、この安全性向上計画の実施状況についてしっかり確認をしていきたい、また必要な指導を行ってまいりたいと考えております。
○穀田委員 ここに実は、安全性向上計画に対する取り組み、アクションプランというのが、会社側の資料があるんですね。これには、「今回の重大事故の発生を真摯に受けとめ、これまでの取り組みにおける反省すべきところは改善しつつ、」「「安全性向上計画」の取り組みを始めたところです。」こう一応書いているんですね。これはある支社の説明の文章なんです。
 その後に、「しかしながら、この「安全性向上計画」が、これまでの安全対策に代わるものではなく、また、それだけを取り組めばよいというものでもありません。あくまでも、これまでの「基本の徹底」をはじめとした基本的な取り組みの継続を基盤として」やらなければならない、こう言っているんですね。わかりますか。
 つまり、これは、今お話あったように、社会に対する約束だ、それから風土全体を変えなくちゃならない、いわば、新しい再生をかけて安全性を国民にやるんだというのが本来の趣旨ですね。ところが、現場で説明をしている内容は、こういう内容だということなんですね。
 事は重大なんですよ。やはりこれまでの安全対策にかわるものではないんだ、あくまでも徹底が大事なんだというような話で、これを聞いた現場の社員は大変びっくりしたと。つまり、事故を起こした不十分な安全対策を根本的に変えるものじゃないというふうに受けとめたと言っておられるわけです。私も聞いてまいりました。私も、JR西日本の安全意識は度しがたいというふうに思ったわけです。
 この文章の次のところには、さらにこう書いていまして、二つのキーワードを挙げているんですね。一つは当事者意識だ、二番目に意思疎通だと書いているんですね。現場の社員を前に、安全性向上計画を推進するキーワードというのは、まあ簡単に言えば君ら社員の心がけだというふうなことを言わんばかりの、そういう認識なわけですね。この期に及んでも、当事者意識が君たちの問題だみたいな話をしているということに対して、全く私はけしからぬというふうに思っています。
 だから、遺族の方々が、先ほど一番最初に大臣言いましたけれども、事故原因について説明してほしいというような説明責任の問題をずっと要望しているわけですけれども、JR西日本がそういうのに対してこたえていないという問題に対し、さらには反省がないという、憤激されるという理由もここにあると思うんですね。
 どうも、末端で言っていることは、結局、安全性向上計画の根本がどうも違うんじゃないかという意識を皆さんお持ちなわけですね。だから、こういうことがまかり通っていること自身が、根本的反省がないと言われても仕方がない。だから、私、安全性向上計画の位置づけについて聞いたわけですよ。そういう位置づけになっていない実態があると指摘せざるを得ません。
 先ほど言いましたが、このようなJR西日本に対して、監視、監督の責任をいかに強化するかという点がさらに問われます。
 そこで、一点、私は提案したいと思うんです。安全情報の収集、分析の強化についてです。
 現在は、重大事故や重大インシデントに至らないヒヤリ・ハットなどの情報を収集し分析することが事故再発防止に極めて有効であるということは、各方面から指摘し実証されています。相次ぐ航空機の事故を受けて、航空輸送安全対策委員会がこの八月に、国の情報収集、分析のあり方を制度面を含めて検討すること、それから自発的報告者への配慮の検討などを提言しています。この点でも、同じように鉄道輸送の点でも検討すべきではないでしょうか。
○梅田政府参考人 事故の芽のような事象についても報告を求めるべきではないのかという御質問でございます。
 鉄道事故等報告規則では、鉄道事業者に対しまして、列車脱線などの運転事故、列車の運休などの輸送障害、それから鉄道運転事故が発生するおそれがあると認められる事態、これはいわゆるインシデントと言われるものでございますが、こういうものにつきましては、国に対して報告を求めているところでございます。
 今御指摘のような、いわゆる事故の芽のような小さなミスでございますが、こういうミスにつきまして、そのすべての報告を求めるということにつきましては、運転士などの現場の職員に対して必要以上の負担をかけるのではないか、あるいは、御指摘のような、逆にミス隠しを助長させるおそれはないのかというような懸念がございます。
 こうしたミスを、どこまで、どんな形で我々国の方に報告をさせるか、こういう問題につきましては、今度とも慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
○穀田委員 それは逆なんですよ。第一、まず前提が違うている。大体、JR西日本は、安全性向上計画の中に、事故の芽等の報告対応方の是正の項目を設けているんですよ。その中で、これまでの減点主義、つまり、そういうことをやったらだめだということで、まず減点の対象になるんですよ。だから、報告しないということがあって、ミス隠しが起こるということが指摘されて、みんな問題になったわけでしょう。それを是正するということを言っているときに、今ごろそんな逆の話をしているなんというのは驚きますよ。しかも、そんなことを言っていたら、では、アメリカやその他の国でやっている制度というのはまさにミス隠しにつながっているんですか。そんなことはないですよ。
 世界では、当たり前の話になっていて、そういうものが、個人が特定されない形でそういう報告を上げる制度になっていて、本人は対象にせずに秘匿し、なおかつ、情報だけは上げるというシステムになっているんですよ。しかも、負担をかけるんじゃなくて、そのことによって安全を確保するという大前提があるから負担にならないんですよ。そんなことを、安全性の、いわばインシデントにつながらないヒヤリ・ハットについて報告するというのが世界の流れなんですよ。そういうものについて、だから、航空事故についてだってそういうことを検討しているんですよ。
 それを今ごろになって負担をかけるだのミス隠しだのと、これだったら、それこそJRの当時の言い方と全く同じじゃないですか。要するに、事故がある前の態度と全く同じだと言わざるを得ない、断ぜざるを得ないと私は思っています。
 問題は、そういうものから発展をして、JRだって、これまでの減点主義を改めるなど、改善策を示しているんですよ。逆に、今これを確実に実行させるために、企業任せにせずに、政府の責任として義務づけたり、制度化し、さらに今あったように、ミス隠しが起こらないような手だて、負担をかけないような手だての考え方を徹底するということが基本であって、何をか言わんやと言っておきたいと思うんです。
 現状では、今お話があったように、責任事故の問題について、種類を三種類ぐらい、これはお互いにやりましたので言いませんけれども、会社独自の報告制度を持っています。ところが、それが正しくやられているかどうかという問題も、実は報告はありませんから、国交省は知らないということになるんですよね。これは、この間お話ししたとおりです。
 したがって、どのように報告させ、どのように活用するかなど検討の余地はあるけれども、鉄道だけ企業任せにしていては国民の命や安全は守れない。したがって、そういう意味で検討すべきじゃないかと私言っているんですね。そこをもう一度。
○北側国務大臣 鉄道局長も、今穀田委員がおっしゃっているような趣旨で、一切報告をとらないよと言っているわけじゃないと思います。
 私どもも全く同じ問題意識を持っておりまして、一つは、こうした事故、不注意でちょっとしたミス、これはもう当然あり得るんだ、そういう大前提に立った上で、社内の中でそういうちょっとしたミスがあっても、それをマイナスの材料にするんではなくて、これをきちんと報告ができるような、そういうふうな空気、風土というものをつくることが大事ですということは、これまでも我々は強く言ってきたところでございます。そういうことを強く言って、JR西日本の安全性向上計画にもそうした趣旨が盛り込まれている、これは私どもがかなり強く言って、そういうことになっているのではないかと私は思っているところでございます。
 この事故の芽そのもの、ちょっとしたミスを一つ一つ全部、その都度国交省の方に報告しなさいよ、これはどうなんでしょうか。むしろ大事なことは、会社として、ちょっとしたミス、トラブル、そうした事故の芽をきちんと掌握できる体制をとって、それがないようにしていくためにどういう取り組みをしているのか、そういう全体像が非常に大事なことだというふうに思っておりまして、そうしたことを、どういう取り組みをしているのか、全体としてどうした取り組みをし、どうなっておるのかということをきちんと国交省として掌握していくことは、非常に大事なことであるというふうに思っております。
○穀田委員 掌握の仕方はいろいろあるというのは、それは同じ意見なんですよ。一々一々全部上げるかどうかというんじゃなくて、例えばまとめて、そういうことがあった場合についてはすぐ報告するシステムだとかいう話をしているので。ただ、先ほどあったように、負担をかけるんじゃなくて、負担をかけるんじゃないかとかミス隠しが起こるんじゃないかという議論は以前の話だと言っているんですよ、私は。そこはわかっていただけると思うんです。
 その上で、実は、何でこんなことを言っているかというと、事故調査委員会の建議、九月六日にありましたよね。その中にも、三点目に、「インシデント等については、その状況を正確に把握し、分析して活用することが、事故の防止に効果的である。」と建議しているわけですから、大体そういうもののインシデントという前提にはヒヤリ・ハットがあるというのは、この間のこの学界や、いわば安全にかかわる公共交通の関係では、ある意味で常識になっていますからね。そういうことを私言っているわけですよ。
 最後に、そういう意味でいいますと、私どもは、さらに深めた事故調としての、中間報告を前提にした、さらに突っ込んだ話をしていただきたいということを特に要求しておきたい。
 具体的には、事故原因を解明する際に大事なことは、人間個人のレベル、さらには技術レベル、組織レベルの三つの角度からの分析が欠かせないと言われています。この点、事故調査委員会の調査では、技術的な要因は一定程度解明できても、調査範囲、権限の問題、体制上の問題も含め限界があります。
 しかし、私どもは、調査委員会の方々とも話をしている中で、実際に日勤教育などに見られるそういう命令と服従のJR西の体質の問題や、背景にあるさまざまな問題、具体的には、余裕時分のない運行ダイヤの危険性、さらには、その背景にある、安全をないがしろにしたもうけ第一のリストラ経営の問題など、組織要因にまで踏み込んだ事故原因を究明すべきだと考えます。その責任が国交省にあると考えていますが、その点だけ最後にお聞きして、終わります。
○福本政府参考人 お答え申し上げます。
 当委員会におきましては、福知山線列車脱線事故に係ります調査を鋭意今進めておるところでございますが、多角的な事実調査と科学的な解析に基づく最終的な結論を得るまでには相応の日時を要するということでございましたので、去る九月六日に、これまでの調査で判明いたしました客観性の高い情報が比較的速やかに得られるという観点から、ハード面の調査結果を中心に、その概要を御報告し、かつ公表をいたしたところでございます。
 事故調査におきましては、不確かな情報に基づく憶測あるいは予断を排しまして、客観的な事実情報に基づく科学的な解析を行うということが重要だと考えております。当委員会におきましては、JR西日本の社員からの口述聴取を行ったり、あるいはATS―P車上装置等の各種記録の収集を行うなどいたしまして、先生御指摘の日勤教育などの乗務員の勤務状況でございましたり、あるいは運行ダイヤとの関係などにつきましても多角的な事実調査の観点から、鋭意現在調査を進めておるところでございます。
○穀田委員 終わります。