国会会議録

【第164通常国会】

衆議院・予算委員会
(2006年2月21日)

 予算委員会で午前と午後の2回、いずれも耐震強度偽装問題について取り上げて質問。偽装された物権が広がり続けている問題について、実態の把握と政府の姿勢をただした。

○大島委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 私は、一月二十六日の補正予算質疑で、構造計算書の偽装は姉歯氏以外にもあるのではないか、事件の背景に、規制緩和、そしてコストダウン競争、建築主や施工会社などからのコストダウン圧力があることを指摘しました。不幸にもこの指摘が当たり、二月八日、福岡県の賃貸マンション三棟のサムシングによる偽装が発覚しました。危険な建築物が建築され、拡大しています。

 設計士の偽装はあくまでも、施主や施工業者の圧力もこの間問題になってきました、この際、偽装の有無に限らず、耐震強度など、建築物の安全性を徹底して調べる必要があります。

 そこで、聞きたいんですけれども、福岡市や国交省は、サムシングが設計した賃貸マンション四件中三件について偽装があったと考えられるとしています。ところが、構造計算を行ったサムシングの仲盛昭二一級建築士は、偽装したとの認識はない、計算書のデータを差しかえたことは認めましたけれども、これは偽造でないとも言っています。

 本人が偽装を否定しているもとで、国交省が偽装だと断定した根拠は何か、述べていただきたいと思います。

○北側国務大臣 これはまず、福岡市が偽装というふうに判断をいたしました。福岡市は、JSCAという専門機関ですけれども、そこに再計算を依頼いたしまして、その結果、計算過程で操作を行わないと生じない不適合が明らかになったということで、偽装があったとしか考えられないというふうにしておるわけでございます。

 国交省といたしましても、構造計算に連続性がない、また、三件ございますが、建物の重さを九%から一六%小さくした設計が行われているということから、福岡市が偽装と判断したことは妥当な判断というふうに考えているところでございます。

○穀田委員 そうしますと、偽装を通してしまったという点では、行政、公の責任は免れない。今までの大臣の言動からすると、当然そうなります。

 そうしますと、これは事は重大でして、サムシングは、明らかになったところでいいますと、福岡県を中心に通算一万二千件、年間六百から七百件の構造計算にかかわったとされています。姉歯氏にかかわった物件に比べても膨大な数です。何よりも実態の把握とその偽装、強度の検証が急務であります。そういう責任が当然国交省にはあるわけです。

 現時点での実態掌握について述べていただきたいと思います。

○北側国務大臣 この件は、いわゆる非姉歯物件で、木村建設関連の物件の調査の中から出た事案でございます。

 福岡市では、この木村建設に係る調査において六件のサムシング関与物件を把握しておるというふうに聞いているところでございます。この六件のうちに、今おっしゃった三件が偽装と判断をしているということでございますが、さらに、残りの件についても現在再計算を実施中でございます。

 さらに、木村建設関係ではない、サムシングが関与した物件については、福岡市で確認申請図書が残されておりますのが四件、さらに、福岡市の補助事業で所有者の方からサムシングが関与しているということで再計算を依頼されたものが三件、これについては現在実施中でございます。

 県の方ですが、福岡県の方では、保存されているものが三十五件ございまして、この三十五件の確認申請図書等について調査を行っているところでございます。

 さらに、福岡市の対応といたしまして、さらに建築士事務所協会等々に呼びかけて把握に努めているところでございます。

○穀田委員 今お話しなのは、現実にトータルでいけば五十一件しか把握していないということですよね、簡単に言えば。総トータルとしてね。つまり、一万二千件とも言われ、その中でどのぐらいマンションがあるのかという問題、いろいろあります。でも、相当膨大な数が分母にある、そういうことをしっかり認識して取り組まないと、私はえらいことになると思うんですね。

 そのやり方を見てみると、膨大な件数をこなすために、サムシングは、仲盛氏のもとに四人から五人のチーフがいて、そのもとにそれぞれ三、四人のチームを組ませて数をこなしていたと言われています。県の建築指導課によると、この仲盛氏は、十六年前から自分では構造計算していないとしていますが、構造計算書の一部だけを変更する手法は所属技術者に指導していたと言われています。国土交通省の九州地方整備局の聴取に対しても、差しかえはよくやった、特別なことではないとの認識を示したとも報道されています。つまり、仲盛氏本人が偽装したというケースよりは、サムシングという会社ぐるみで偽装したということになるわけです。

 サムシングで働いていた建築士が偽装に手を染めたと言えるわけですよね、当然、こうなりますと。だとすると、〇二年に廃業した後、それぞれが、他の設計事務所に移籍したり個人で開業したりしているはずです。そこで今でもサムシングのときの手法をやっていないかどうかというのは、当然、これは調べなければならないわけです。

 したがって、まず、三件の偽装にかかわった建築士はだれなのか把握できているのか、また、仲盛氏以外の建築士の現在の所在、仕事内容について掌握しているのか、お答えいただきたい。

○山本政府参考人 旧サムシング株式会社一級建築士事務所の開設者兼管理建築士は仲盛昭二一級建築士でありまして、十四年九月にサムシングを廃業後、他の一社の建築士事務所の勤務を経て、現在、また別の建築士事務所に所属していると聞いております。

 今お尋ねの、偽装があったとされました三件の構造計算を具体的にだれが担ったかということは、市、県、それから地方整備局の聴取で仲盛昭二一級建築士自身に尋ねておりますけれども、実は掌握できておりません。これからさらに事情聴取を重ねて掌握することが必要だと考えております。

 それから、もう一点の仲盛建築士自身でございますけれども……(穀田委員「以外」と呼ぶ)本人への事情聴取を福岡市が二月七日、県が立入検査を二月八日、整備局が二月九日に事情聴取をしておりますけれども、今申し上げましたように、さらに必要に応じて聴取をしてまいります。

 複数の所属建築士が旧サムシングにいたという話も聞いておりまして、廃業後の動向、所属について現在調査中でございます。事実関係を掌握するように努力する考えでございます。

○穀田委員 私、そんな悠長なことでどないすんねんと思うんですよ。だって、これは一万件近くやっているということで不安に駆られているときに、非常に腰が重いと言わざるを得ない。

 大体、今裁判になっているサムシング物件であるエイルヴィラツインコートシティマンションのイースト、ウエストのかかわった建築士だってわかっているわけですよ、名前。それから、前所長の名前だって、これはわかっているわけですよ。それさえも追及していないということはどういうことかと思わざるを得ない。

 しかも、この三件の物件について、施工は木村建設だということまでは公表されているんですね。ところが、建築主や元請設計事務所は公表されていない。一部メディアでは、三棟は二〇〇〇年から〇一年に福岡市が建築確認し、うち一棟は不動産会社シノケンが木村建設に下請に出した物件だと報道されているわけですね。だから、木村建設下請で、元請施工会社はシノケンだとも考えられるわけです。だから、ここでもシノケンが関与しているという可能性がある。そして、元請会社には、姉歯のときでさえゼネコンもいたわけですね。

 したがって、私は、大事なのはここだと思うんですよ。建築士の設計料というのは、偽造のあるなしで変わるわけではない、あくまでも施主や施工業者の考えを色濃く反映しているべきだと考えるとゼネコン業者が言っているんですね。つまり、建築士主導の偽装は基本的にはあり得ないというのが、今のある意味での常識なんですね。だから、私は、こうした元請設計それから元請施工会社、建築主など、関係事業者からの圧力も想定して、関係事業者を調査し、公表すべきではないかと考えているんですね。その見解をお願いします。

○北側国務大臣 この福岡市の三件につきましては、今おっしゃった建築士が偽装を否認しているわけですね、否定をしております。ということもありますし、再度、今精査をしているところでございます。再度精査をして、近々その結果も出ると思いますが、その精査の結果、検証の結果、構造耐力が充足されていることが確認されないときは、物件の名称、所在地、建築主、設計者等を公表するというのが福岡市の見解でございます。

○穀田委員 それはわかっているんですよ。それは、少なくとも、偽装と認めた段階でのそういうやり方については当然なんですよ。ただ、問題は、今言いましたように、やはり広く背景にあるものをしっかり追及するという必要があるということだけ言っておきたいのです。

 最後に一言だけ。

○大島委員長 時間が来ております。

○穀田委員 はい。

 この問題で、ほかの、先ほどあったエイルマンションの二棟に関して裁判が行われているんですね。だから、そのときに、二〇〇四年の六月の提訴前に民間検査機関に検査要請したが、動かなかった。そして、二〇〇五年の十一月の提訴は……

○大島委員長 時間ですよ。はい、おしまい。

○穀田委員 はい。

 姉歯物件が公表された後だったんですね。したがって、そういう点では本当に腰が重いという点だけ指摘をしておきたいと思います。

○大島委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。