国会会議録

【第164通常国会】

衆議院・予算委員会
(2006年2月21日)

 予算委員会で午前と午後の2回、いずれも耐震強度偽装問題について取り上げて質問。偽装された物権が広がり続けている問題について、実態の把握と政府の姿勢をただした。

○大島委員長 これにて馬淵君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 確認検査前の段階、構造設計をつくる段階について、つくり手の側からの問題点についてきょうは聞きます。

 まず、構造計算プログラムについてです。ほとんどの構造設計士が大臣認定プログラムを使用して構造計算をしています。大臣認定プログラムは百六種あると言われています。うち、市販されているものは五十六種、他の五十種は企業内のオリジナル。今回の事件を通じて、この大臣認定プログラムが改ざんできることが明らかとなっています。なぜ改ざんできるプログラムを認定したのか、お聞きしたいと思います。

○山本政府参考人 建築確認の際に、建築基準法に規定された確認申請書を提出する必要がありますが、その中に構造計算書も含まれております。

 通常、構造計算書は膨大な量になることが多くて、申請者にとりましても、審査を行う建築主事、指定確認検査機関にとっても大きな負担になることから、大臣認定を取得したプログラムを使用して、エラーなく一貫計算を終了するなど一定の条件を満たすものについては、建築確認時に構造計算過程の図書の提出を省略することができるようにしたものでございます。

○穀田委員 それでは、改ざんできるという話について答えたことになりませんよね。改ざんできるんですよ、それが。つまり、この間の一連の事態で明らかになったのは、そういうものも、まず、エラーか変えているかどうかということについても見逃していた、さらには、そういうものが使われていたということについても改ざんできるということが明らかになった、こういう点が今の問題なんですね。

 そこで、大臣認定プログラムはいつから認定するようになりましたか。

○山本政府参考人 ちょっと正確な資料を持ってきていないので恐縮なんですが、昭和五十年ごろでしたでしょうか。また正確に御報告させていただきます。

○穀田委員 それは、評定をしたのはそのころですよ。大臣認定プログラムというのをつくったというのは、二〇〇〇年の六月から、建築基準法の改正に伴う建築物に関する新たな構造規定が施行されて、そこでは、電算プログラムの審査は、構造方法等の認定、当時、法の第六十八条の二十六、これの対象になって、そして、性能評価機関、日本建築センターなどが認定するようになった、これが事実ですよ。そうでしょう。そして、この性能評価機関が認定したものについて大臣認定とみなすことになった、これが一連の事実でしょう。そうでしょう。

○山本政府参考人 まことにお恥ずかしい次第ですが、手元に資料を持ってきていないので正確に答えられません。恐縮です。

○穀田委員 それはありません、大臣認定プログラムについて聞くと言ったわけだから。

 そして、この認定するというのは、それは今のプログラムが問題なわけだから、そしてそれは、認定することによって国がお墨つきを与えることになる、これが一連の経過なんですよ。ここの大事な点が、実は二〇〇〇年六月、つまり、九八年建築基準法の改正に基づいて施行されたときに行われた、ここが大事なんですね。

 そこで、その結果どうなったかと。それまで高層建築物の建築確認は、学識経験者や実務に詳しい構造設計者で構成する評価委員会の示唆を受ける委員会方式、わかりやすく言うと、構造設計士から設計の考え方を聞きながらチェックする方式で行われるのが通例だったんです。ところが、九八年の建築基準法改正によって、建築確認審査の民間開放とともに、高さ六十メートル以下の建築物はすべて一般的な建築申請でよくなった。つまり、出された書類の審査で済ませることができるようになった。これは事実ですよね。

○山本政府参考人 事実でございます。

○穀田委員 つまり、これは大事なことでして、これについて国交省の緊急調査委員会のメンバーでもある和田東京工業大学教授は次のように述べています。できない人々が次々に設計し、わかっていない人が審査することがふえたと。構造設計はコンピューターがしてくれると誤解され、計算結果はフリーパスになり、構造設計図をきちんと審査することもなくなったと述べているんです。さらに、構造計算プログラムの大臣認定がこの過信を生み、状況をさらに悪化させたと述べているんです。実際、日本建築センターの方に聞くと、認定になった以後は、まれに自発的な評価を実施しているぐらいで、ほとんど委員会方式はなくなったと言われています。

 私は、この事態を見たときに、今の一連の偽装事件、建築確認制度のさまざまな不備、こういった問題を考えたときに、少なくとも、一つは大臣認定は廃止すること、二つは、例えば多数の住民が住む高さ二十メートル以上のマンションなどについては委員会方式にすべきではないか、その点を大臣の見解を伺いたいと思います。

○北側国務大臣 この構造計算のチェックをどうするか、まさしくそこは非常に大事な問題というふうに認識しております。

 社会資本整備審議会でもそこのところを重点的に今論議をしていただいているところでございまして、私は、いずれにしましても、一定の要件のもとでこの構造計算についてはダブルチェックができるような体制をとっていく必要があるというふうに考えておりますし、また、ピアチェック制度を導入すべきということについても、この委員会でもこれまでも議論をいただいたところでございまして、そうしたこともしっかり議論をしていきたいというふうに思っております。

○穀田委員 私は具体的に提案しているんですよ。やはり、つくる側がプログラムを使って改ざんできる、そして、そのプログラム自身の認定は一気に二〇〇〇年からふえた、こういう事実も明らかにして、それが、先ほど和田教授が述べたような新しい事態を生んでいるということを指摘したわけです。

 そこで、そのつくる側の問題もそうなんだけれども、では、見る側はどうなのかという問題について少しお聞きしたいと思うんですね。特定行政庁の検査実態も極めて不十分です。そもそも、再計算しようにも、では、大臣認定プログラムを持っていたのかということについてお聞きしたいと思うんです。

 国土交通省は、百六にも上る種類の認定プログラムを持っていましたか。

○山本政府参考人 国土交通省は持っておりません。

○穀田委員 大臣が認定したプログラムで構造計算をしてきてこれを省略するというプログラムを、確かめるソフトを持っていない、これが国土交通省。

 それでは、四十七都道府県と十四の政令市は持っていますか。

○山本政府参考人 事実関係はすべて掌握しておりませんけれども、すべての特定行政庁がプログラムをそろえているというものではないという認識でございます。

○穀田委員 今の話を聞くと、何か持っているところがありそうな言い方と違いますか。私が言っているのは、持っているところがあるかと聞いているんですよ。あなたの話だと、すべて持っているというものではありません、違うんですよ、持っているところが圧倒的に少ない、ないしはほとんど持っていないのと違うかと聞いているんですよ。

○山本政府参考人 ほぼ同じ認識でございます。

○穀田委員 ちょっとそんな、何と言うのかな、安全かどうか確かめる点での再計算を自治体ができる能力があるかどうかという話をしているわけでしょう。そういういわば国民の建物に関する安全という問題を議論しているときに、そんないいかげんな話をして、ほぼそんな認識だなんという話をしていたらあきまへんで、それは。ほんまにあかんわ、それは。

 それで、私は聞いたんですよ、少なくとも近畿の各府県に。そうしたらどうかというと、やっと買ったというのが、この事件が起きて以来、一本買いましたとか三本買いましたとか、だけれども、何か、大体リースが多いんですよね。四本買うたら六百八十万円ぐらいする、そういう多額のあれなんですよね。そして、それだけじゃないんですよ。では、使えるかといったら、すぐ使えないんですよ。研修しなくちゃこれは使えないわけですから。そういうとんでもない事態があるわけですね。

 しかも、では、構造計算のわかる担当者がいるのかとこう聞くと、この間、新聞にも出ていますように、例えば、鉄筋建築物など構造計算の審査ができる、できるですよ、全国の自治体のうち、構造審査担当の建築主事を置く自治体は一四%にすぎないということが国土交通省の調べでわかった。いいですか、ソフトを持っていない、そして、構造計算の審査ができる自治体のうち構造審査担当者の建築主事を置いているのは一四%しかない、全く体制がないということじゃないですか。

 だから、つくる側のそういう大臣認定プログラムも改ざんできる、そしてそれを調べる方の内容も不十分、これが実態じゃありませんか。

 しかも、それがいつ起きたかというと、先ほど来、何か九八年の建築基準法改正は間違いでなかった、冗談じゃないですよ。このことが、民間開放とこういう事態をもたらした最大の原因じゃありませんか。そのことを指摘しておきたいと思うんです。

 最後に……

○大島委員長 穀田君、時間です。

○穀田委員 終わります。