国会会議録

【第164通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年3月14日)

 国土交通関係の独立行政法人の整備に関する法律案の質疑。



○林委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 私は、共産党の穀田です。きょうは建築研究所に聞くものですから、たまには自分の名前を言わへんと。

 姉歯物件である新宿区のマンション耐震強度が、姉歯建築士と同じ許容応力度等計算で調べたら基準の八五%と算出されながら、限界耐力計算で再検証したところ、基準を満たしているとの結果になった。一たん強度不足とされたものが今度は安全と判定されたことから、強度不足の建物を抱える他の自治体の間では、うちも限界耐力計算で再検証する必要があるのではとの動揺が広がっていると報道されています。

 国土交通省は、異なる判定の原因となった二つの計算法の違いについて改めて検証するため、独立行政法人建築研究所に検証を依頼し、幾つかの建物について、形、地盤の強さによって二つの計算方法で算出した耐震強度にどのような違いが出るか、特性を分析するとも報道されています。

 そこで、きょうは建築研究所に来ていただいたので、耐震強度事件に絡んで聞きたいと思うんです。

 まず、構造計算法について、そして許容応力度等計算と限界耐力計算の基本的な違いについて述べてください。

○山内参考人 許容応力度計算における保有水平耐力と限界耐力計算は、どちらも建築物の耐震性能を把握する計算方法でございますけれども、まず、違いの前に共通点として、入力する地震度を両者とも一定のレベルの強さの地震に対して設定をするということでございます。

 それと、計算方法の違いについて申しますと、まず相対的に言えば、保有耐力計算というのは略算法であり、簡単、簡便な方法ですね。それから、限界耐力計算法というのは精緻な計算方法である。さらに具体的に申しますと、保有水平耐力計算というのは、建築物の構造形式、つまり鉄骨とか鉄筋コンクリートとかの構造形式、それから形状等に応じて、比較的簡便な方法で地震時における建築物の変形による耐力の影響を大まかに考慮するのに対して、限界耐力計算は、地震時における建築物の変形を精緻に算定して、それに基づきまして必要な耐力を求める高度な計算方法です。

○穀田委員 簡単に言うと、簡便と精緻だというふうに聞こえたんですけれども。

 ただ、限界耐力計算について、JSCAは、設計者の裁量によって地震力を小さく評価できるなどの問題点も述べています。性急に事を運ぶことは、混乱の一因となるおそれが多く、奨励すべき方法でない、採用する場合には審査に当たって慎重を期することを強調すべきであるという意見書を国交省に出しているんですね。ですから、限界耐力計算の問題点について、素人にもわかりやすく説明していただきたい。

○山内参考人 日本建築構造技術者協会、JSCAと略称しておりますけれども、JSCAさんの御意見にあるように、限界耐力計算法というのは、先ほど申し上げたように非常に精緻で高度な手法でございますので、その適用と審査に当たりましては、専門的な知見を有する技術者が適切に判断した上でやらないと運用を誤りがちだということを考えております。

 JSCAさんの御意見といいますか、それはよく承知できると思います。

○穀田委員 もう一つ今のはちょっとわからないのだけれども、要するに、専門的な知見がないとだめだと。だけれども、簡単に言えば、JSCAが言っていることはもっともだ、こういうことですね。(山内参考人「はい」と呼ぶ)どうももう一つ素人にはわかりやすくないような気がしますけれども。

 そこで、JSCAの意見書でも指摘していますが、限界耐力計算によって作成された構造計算書を、特定行政庁や民間確認検査機関がこれから審査するわけですね。今はっきり理事長がおっしゃったように、簡便な方法だと。簡便な方法でさえ見抜けなかった確認検査機関がどうやって審査できるのか、疑問ですよね。

 ですから、簡便な方法でさえわからない、見抜けない。おっしゃったように、精緻で専門的な知見があるものに対して、確認検査機関に審査能力があるとお思いですか。

○山内参考人 先ほど申し上げたように、限界耐力法というのは保有水平耐力の計算に比べまして非常に精緻で高度な検討を要する計算方法と考えておりますが、私どもは、建築技術の研究開発をやっているところでございまして、確認制度とかあるいは確認機関に関する実態の情報は持ち合わせておりませんので、まことに申しわけございませんが、お答えする見識を持ち合わせておりません。

○穀田委員 なるほど。

 それでは、構造計算プログラムの改ざんの可能性についてちょっとお聞きしたいと思います。

 社会資本整備審議会の中間報告でもこう言っています。「今回の偽装物件では出力結果の修正や計算途中の数値の修正、不適切な構造解析方法の使用があり、」として、構造計算認定プログラムによる計算結果の改ざんができることが指摘されています。

 建築研究所として、構造計算プログラムによる計算結果の改ざんの可能性について、どのように認識しておられるか。簡単に言えば、改ざんできると認識していると思うんですが、それはいつ認識したか。

○山内参考人 建築研究所は、国土交通省からの協力要請を受けまして、構造計算書の偽装にかかわる検証作業について技術的な協力を行っております。しかし、コンピューターソフトである構造計算プログラム自体が改ざんされているかどうかについての調査については求められておりません。

 御承知のとおり、国土交通省の見解といたしましては、構造プログラムそのものの改ざんが行われた事実はないものの、プログラム出力結果を電子データとして保存した場合には、市販のワープロソフトなどで修正して出力結果を改ざんするということが可能であると聞いております。

○穀田委員 理事長はその程度で、聞いているということでしまいなのかもしれませんけれども、それはちょっと違うと思うんですね。

 十一月十一日に、国交省内で、国交省と建研とそれから日本建築センター、そして構造計算ソフトメーカーなどの方々を交えて、実は構造計算ソフトの偽装方法の調査分析が行われているんですね。一緒にやっているんですよ、おたくのところが。ということは、そのときにわかっているんですよ。

 これは皆さん、あれなんですけれども、構造プログラムを改ざんできるかというのでいうと、今お話あったように、出力のときに変える、それで入力のときにごまかすということ、これは全体として構造計算プログラムに基づく計算をごまかすことができる、こういうことなんですね。構造プログラムを改ざんできると私は言っているんじゃないんですよ。構造計算プログラムを使った構造計算書は改ざんできるということははっきりしているんですよね。そういうことで理解していると思うんですけれども。

 そこで、イーホームズのホームページを見ますと、今言った国交省、建研、日本建築センター、構造計算ソフトメーカーなどを交えてやっていると。そのときに、紙の差しかえなどしなくても偽装編集が可能なことがわかったと述べているんですよ。したがって、十一月十一日の経緯について、構造計算プログラムによる計算結果の改ざんを認識したとされる点を中心にちょっと説明を求めたいと思います。

○山内参考人 十一月十一日の段階では、その検証に参加した我が研究所の職員に直接確認しましたが、構造計算プログラムについて紙の差しかえをしなくても偽装が可能かどうかというような話がされたことは記憶にないとのことでした。

○穀田委員 そういう方が記憶にないと言われると、それではイーホームズの社長などがやっているインタビューや検証というのは違うと。

 では、国交省、そういうことについて話し合ったということについては、今は建研は知らぬと言っている。国交省は知っていますか。

○林委員長 だれか答えられますか。

○北側国務大臣 済みません。ちょっと住宅局のメンバーがいなくて、失礼いたしました。

 イーホームズの言われているような、十一月十一日のことでございますけれども、紙の差しかえをしなくても偽装が可能なことがわかったとおっしゃっていることについては、国土交通省としてもそうしたことがあったとは考えておりません。

○穀田委員 考えておらないというんじゃなくて、事実はなかったと言っていいんですね。ただ、もちろん十一月十一日にそういうことについて認識したかどうかというのは別ですけれども、その後の経過を通じて、そうだ、できると。つまり、構造計算プログラムを改ざんするというよりも、その前後を含めて改ざんできるということの総称の意味ですね。そこはわかったと思うんです。

 最後に、時間も迫ってまいりましたので、法案は、こういう建築研究所を初めとした独立行政法人の職員を非公務員化するなどを主な内容としていることは、御承知のとおりです。私どもは、今こういう問題を初めとして、研究機関が国民の命とか安全を確保する、そういう点での国の責任を担っている部署であるという点でいうと、ここを弱めることになるから法案には反対なんですが、事は身分にかかわることでありまして、関係労組など、そういう職員の声を聞き、慎重を期すべきではないか。この点についての御見解を最後に大臣に伺っておきたいと思います。

○北側国務大臣 職員の雇用については十分配慮しなければならないと考えております。こういう変わり目だからこそ、職員の方々に無用の不安を生じさせないよう、また士気を鈍らせないよう、また本来の役割を十分に発揮して国民生活にとってプラスになるような業務を果たしていただくよう、しっかり職員の雇用には配慮し、的確な人事運用を進めてまいりたいと考えておりますし、そういう組合の方々ともよく話し合って進めていきたいと考えております。

○穀田委員 終わります。