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【第164通常国会】 衆議院・国土交通委員会
大店法の廃止と、それに変わる「まちづくり3法」が出来て以来、全国各地で自動車での来客を見込んだ郊外型の大規模小売店の出店ラッシュが相次ぎ、中心市街地の空洞化という問題が深刻になっている。
今国会で、まちづくり3法の一つである『都市計画法』を改正し、郊外への大型商業施設の出店に一定の歯止めをかけようという事で、この日はその法改正にむけた参考人質疑がおこなわれた。 ○林委員長 穀田恵二君。 ○穀田委員 私は、日本共産党の穀田恵二です。 四人の参考人の皆さん、本当にお疲れさまです。きょうは貴重な御意見をありがとうございます。私も若干質問させていただきます。 私は、これまで、大型店と中小商店、商店街とが真に共存共栄してこそ地域社会と住民の暮らしを守ることができると考えて、まちづくりの観点から京都で運動してまいりました。京都は、御承知のとおり、保存と開発、さらには規制と緩和がせめぎ合って、そういう町であります。きょうはそういう立場から若干質問します。 まず第一点は、地域社会への企業の社会的責任としての貢献という問題です。これはこの間、委員会で各党が質問しまして、とりわけ大型店の焼き畑商業という点をすべての会派が指摘してきました。これは、大スーパーなどが、商店街や住民が長い間築き上げてきた町、生活の場を席巻してしまうやり方、もうからなくなれば平然と撤退する身勝手な商法についてのそれぞれの発言だと思うんです。 そこで、私は、最低限、大型店の出店の際は、その地域の住民と自治体に対し、商店街など地域の商業環境、住民の生活環境、まちづくり計画など地域環境に対する影響評価、いわゆるまちづくりアセスメントに関する事前の情報提供を義務づけるなどが必要じゃないか、立地予定の住民への説明だとか、自治体との協議を経て合意を得る仕組みが必要じゃないかと。先ほど、矢作参考人もアメリカの例を若干引いてお話がありましたけれども、その点について四人の参考人に御意見をお聞きしたいと思います。 ○小林参考人 私もその点は、今回の都市計画法、建築基準法ではなくて、中心市街地活性化法の枠組みの中で恐らく議論されるべき課題だろうと思っておりますが、重要な視点だろうと思っております。 中心市街地がどのようになっているかということ、ある政策をやったときに、ある施策をやったときに町がどうなっているのかということをしっかりアセスメントするということの重要性、これまで、我が国の中心市街地の活性化にとって、そのアセスメントが非常に欠けていたと思いますね。欠けていたから、結果として何が出てきたのか、どういう効果があったのかはっきりしない、そういう側面は非常に大きかったと思います。 中心市街地活性化を行って、どれだけ成果が上がって、あるいはどれだけ問題が起きたか。例えば、イギリスの中心市街地活性化にかかわる施策を展開している中では、毎週、その中心市街地にどれだけの人が通行者として来ているのか、買い物客として来ているのか、あるいは売上高はどうなのかということをしっかり記録して、その動向をキャッチしている、それによって次の施策を打つというような、そういう関係がとられているというふうに聞いてございます。 そのような全体の仕組み、もし大型店舗が出店するとすると、町全体でどのようにそのような動向がなっているのか、その結果どういう影響が出ているのかということを全体でとらまえる必要性というようなものは、当然のことながら必要だというふうに私も思っております。 ○矢作参考人 アメリカでは、基礎自治体の中に、条例で大型店の出店影響調査を義務づけるところが出てきているようであります。一般的には、大型店が出てきて、その影響をより長い期間、あるいはより広い範囲で見るとマイナスが大きいというふうな評価が多く出ているようであります。より短く、あるいは狭い範囲で見るとプラスが多いということのようであります。すなわち、どこまで評価基準の中に入れるかということでありますが。 したがって、アセスメントがされると、そのアセスメントをもとにまた次の議論が起きてきて、なかなかアセスメントの客観性というのが難しいのでございますけれども、一応、実質的な議論をあるデータに基づいて繰り広げていくという意味では、出店影響調査というものを行うことには意味があるのではないかというふうに考えています。 ○佐々木参考人 今のお話、アセスメント、町を預かる立場の私どもとしては、やはりそれは大変大事なことだと思います。 つまり、どういう方向で町を経営していこうか、持っていこうかとしているときに、出店できるからといって、今までのように、広い市域を持っている私どものようなところにどんどんどんどんと出てしまう、こうなりますと、町の経営者としては非常に困るわけでございます。ですから、そこには一定の歯どめが必要でございます。 今回の新しい法律によれば、原則、いわゆる非線引きとか白地のところはだめよ、こういうふうになっているように拝見しています。その中で、新たに地区計画制度として開発整備促進区を設けて、そして、そういう形で十分な合意を得て、ここなら受け入れられますよ、こうなったときでなければ出せない、こういうふうにされるということは、非常にこれまでとは違った、我々にとってはありがたい方向性だ、こう考えておりまして、まちづくりアセスメントという表現がいいのかどうかわかりませんが、やはり地域が合意の上で受け入れる場合には、そういうしっかりした都市計画法上の手続をしてやるというふうなことにすべきではないかと考えます。 ○森参考人 先ほど来申し上げてまいりましたように、中心市街地の中に一定規模の商業施設というものがあるということ、これはやはり望ましい姿だと思うんです。そういう意味で、今回も、商業地域や近隣商業地域において一万平米を超えるものであっても立地ができる、こうなっている。しかしながら、その際であっても、都市計画法の規制以外の部分で、先生御指摘の一種のアセスメントみたいなものが必要ではないかということについては、非常に難しい問題だろうと結論としては思います。 考え方としては確かにそういうことが言えるわけですが、しかし、消費者のニーズが那辺にあるのかということや、例えば地域の商業者を含めてどういう意向を今は示すのかということを含めると、先ほど矢作先生おっしゃいましたように、短期的にはぜひ誘致したいという動きが起きてきたり、いろいろなことがあって、数値化して、これをゴーサインを出すのかどうかを判断するというのは、技術的にはかなり難しいのではないかと思います。 しかしながら、御指摘のとおり、それでは、自由に退店していってしまって、あとは夏草だけだったということも、確かに問題としては困るなと。問題認識としては持っております。 ○穀田委員 それでは、都市計画法の改正との関係で、お二人の市長にお聞きします。 制限地域はこれでは十分と言えないというのが私の考えなんですけれども、商業地域も含めてすべて原則禁止して、まちづくりに必要な場合のみ許可するという仕組みに変えてもいいんじゃないかなと私は思っているんですね。ただ、それはいろいろありますもので。 そこで、今度の法改正との関係で二つ、最低限、一つは、準工業地域については原則禁止すべきじゃないか。先ほど一万平米という話も先生お二人には問うていましたけれども、私は、床面積一万平米以下の大規模集客施設については規制の対象外となっている、せめて三千平米以下にすべきじゃないだろうか、こういう意見を持っているんですね。ですから、今お話しした準工業地域の問題と、規制の対象三千平米以下という点について、それぞれ町を実際に預かっておられるお二人の市長に御意見をお伺いしたいと思います。 ○佐々木参考人 準工業地域については無制限ではないわけですね。つまり、これはやはり特別用途地区を活用したり、あるいは、特に地方都市では、これを中心市街地活性化法の基本計画の国による認定の条件とすることを基本方針で明記とか、そういうことになりそうなので、だとすると、そこに勝手にどんどんという形にはならないんじゃないか、一定の歯どめがかかるんじゃないか。私どもの方は、そういう形できちっと対応していきたいというふうに考えています。 ○森参考人 私も同じ意見です。準工地域においてはそれぞれの自治体の判断が働くという構造になっていることは、大いに評価していいのではないかと思います。それぞれの地域特性や背景、いろいろなことを踏まえて、自治体ごとに、例えば今お話ありました特別用途地区その他の手法を使っていく、さらには、中心市街地活性化法の基本計画の中でそのことを判断していかなきゃいけないということを含めて、この規定というのは評価していいのではないかと思います。 それから、床面積の問題は、これは妥当性の議論だろうと思いますので、一概にどこが絶対正しい正解値ということではないと思いますが、一万平米という数については、いろいろな法律にも一万という数字は一つの基準になっていることなどもありますので、私個人としては妥当ではないかと思っております。 ○穀田委員 小林参考人と矢作参考人にお聞きしたいと思います。 大規模小売店舗立地法の十三条では、地方自治体が条例などで大型店出店に対して商店街に与える影響を勘案するということについては禁止しました。大型店出店の抑制策をとろうとする自治体の事実上の手足を縛ってきたと私は判断していまして、今回のまちづくり三法の見直しの中で、大店立地法については手をつけていません。 まちづくりは、先ほど来御議論ありましたように、地方自治体や住民が主体性を持って計画、実施してこそ意味があるわけです。今回の法の提案の理由でも、地域の主体的な判断により的確に対応するためと述べています。こうなりますと、この十三条というのは、事実上、真っ向から否定する条項であって、私は廃止が必要じゃないだろうかと思っているところです。これを一点、お聞きしたい。 もう一点。これは一九九〇年以降、アメリカからの市場開放の要求を受け入れて、大店法、とりわけ規制を相次いで緩和したわけです。その実態、これが今日もたらしているわけですが、地方自治体が需給調整の規制を行わないよう監視することを日米の規制緩和の政府協議で約束している、こういう点についてどうお考えか。 この二点、お二人の先生にお聞きしたいと思います。 ○小林参考人 適切なお答えになるかどうかわかりませんけれども、私は従来から、国がつくる法というものがあるとすると、一方で、地方公共団体が独自に考える条例がある。法と条例によって地域が運営されているというのが基本的な原則であって、従来は、法がかなり優先的な地位を占めていたと思いますが、現在は、むしろ条例と法が併存してその地域を支えているというふうに考えています。 そういうようなことを考えますと、条例によってそれぞれの各自治体が独自の政策を、今回の法の枠組みをベースにしながら付加的に考えていくということは十分あり得ることだろうというふうに考えておりまして、そういう方向性を追求する自治体も今後あらわれるのではないかということを私は期待している。 十分なお答えになっていないと思いますが、とりあえずお答えさせていただきます。 ○矢作参考人 都市計画法の中で、特別用途とかあるいは特定用途制限地域という、用途を決められるようになっておりますので、必ずしも立地法の問題が直接足かせになるというふうには考えていないんですけれども、自治体の方でかなりできることも現状の法制度の中であるのではないか。 ただ、いずれの用途も、必ずしも各自治体の方で積極的には採用されてきておられないようであります。その理由の一つは、恐らく、自分のところで秩序ある土地利用を展開しようとすると、ひとり負けになってしまう。周辺の自治体の方で大型店を誘致して、自分だけがひとり負けになるという意味で、広域調整の仕組みがなかなかうまく機能していないということが一つの理由かというふうに思います。 そういう意味で、今般、福島の方で、県レベルで広域調整の仕組みを何とか採用しようというのは、現行の枠組みの中の一つの取り組みとして注目すべきものかなというふうに理解するところであります。 以上です。 ○穀田委員 後半の方を私は言ったんです。 矢作先生は著作で、また、この間の論評の中で、大店法に関連するアメリカからの市場開放の圧力という問題をところどころで言っておられます。私はその点で、今申し上げましたように、当時それがあっただけじゃなくて、この間、一番の問題は需給調整なんですよね、大店法の考えの思想というのは。そういうのを規制を行わないように監視するという日米の政府協議という約束、これがある。この問題が、この間、例えば「拒否できない日本」だとか、いろいろ本が出ていますけれども、一番の問題はアメリカと日本の政府協議で約束があるという点ですよね。その辺なんかについて、どうお考えですか。 ここの後半の部分だけ、じゃ、お二人ちょっともう一度。 ○矢作参考人 私は、政府の間にどういう文書があるのかは具体的に知りませんけれども、新聞報道を理解する限りは、需給調整しない、これはGATSに抵触するんだというふうに報道されておりますし、私もそのように理解しておりますけれども、現状、アメリカの基礎自治体のところでは、需給調整という言葉を条例の中に入れているところはございませんが、実態として明らかに経済規制であるという条例が幾つもございます。 ただ、アメリカの場合は、これが経済規制か社会規制かというような議論はしておりません。逆に言いますと、経済規制を含まない社会的規制というのはあり得ないわけでありまして、そういう無意味なというか、アメリカというのは大変プラグマティックな世界ですので、そういう抽象的な議論はしていない。まちづくり、あるいは環境のために必要な条例の制定、土地利用をしますということしか述べていないわけであります。結果として経済的規制になっているというものが多々あるということは間違いないと思います。 ○小林参考人 いや、その点については特に私の方からコメントするというのはございませんので、申しわけございません。 ○穀田委員 では、最後に端的にお聞きしますけれども、まちづくり三法のスケッチ的総括というのは少し先ほどありましたけれども、私は、矢作参考人に、じゃ、都市計画法でのゾーニング規制は役立ったのかということを端的にお聞きしたい。 それから、小林参考人に、きょうもありましたけれども、まちづくりとは極論すると地域のお金を地域で、こういうことで論述されておられます。私は、地域における再投資という問題なんかを念頭に置いておられるのかと思うんですけれども、その辺について最後、御意見があればお聞かせいただいて、お二人から一言ずつお話しいただければ幸いです。 ○矢作参考人 都市計画法と大型店の関係につきましては、現行の都市計画法は、市街化区域についても幾つかの地域、かなり多くの地域について面積が青天井になっておりますし、それから、市街化調整区域についても首長さんの判断で開発許可ができるような仕組みが、一定規模以上のものですけれども、準備されている。あるいは、白地の地区については青天井になっているというようなことで、ゾーニング規制としてはかなり限界があるものであったというふうに理解しております。 と同時に、都市計画法は国土の二五%しかカバーしていないようでありますので、それ以外のところ、七五%のところについては機能していないわけでありますので、これまでは十分機能したというふうには言えないのではないかというふうに考えております。 以上です。 ○小林参考人 今、私がかかわっている中で地域ファンドづくりをやっておりまして、幾つかの主体がその地域ファンドに資金を投じる。一つは国というか政策投資銀行の絡み、もう一つは行政からお金を出し、全体としてのファンドのリスクをできるだけ小さくして、そこに地域のお金が入れるような、そういう流れ道をつくってやる。そういう地域ファンドづくりをやっておりまして、恐らくうまくいくだろうというふうに考えています。そういうプログラムがいろいろなところで動き出すことを私は期待しております。 ○穀田委員 どうもありがとうございました。 |
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