国会会議録

【第164通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年4月28日)

 住生活基本法について。

○林委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 防衛庁に聞きます。日米防衛首脳会談で合意されたとされるグアム移転経費に関連して、二点だけ聞きます。

 日本側負担とされる米軍用家族住宅の費用の内訳を、日本円で幾らか、何世帯分つくるのか、お教えください。

○大古政府参考人 お答えいたします。

 今回、先般の日米防衛首脳会談で合意されました沖縄の海兵隊のグアム移転経費の中で日本側負担とされている家族住宅の経費でございますけれども、これについては、ドルでは二十五億五千万ドル、あくまでもドル建てで合意したわけでございますが、十八年度予算の支出官レート、一ドル百十一円でございますけれども、これで計算いたしますと、日本円にして約二千八百億円ということでございます。

 それから、戸数につきましては、現時点で三千五百戸ということで理解しておりますけれども、最終的に沖縄からグアムに移転する海兵隊員の階級構成とか家族構成などに変更があり得るため、あくまでもこれは現時点での見積もりでございます。

○穀田委員 では、住宅局に聞きます。

 二〇〇四年度の公営住宅の供給実績と建設費等補助の予算額は幾らか。

○山本政府参考人 平成十六年度の公営住宅の供給実績は、二万千二百七十八戸でございます。建設費等補助の予算額は、千五百七十二億六千三百万円でございます。

○穀田委員 今わかったように、米軍の家族住宅については、三千五百戸建てて二千八百億円使う、予定されている。日本の公営住宅に使う予算は、二万一千二百七十八戸つくって千五百七十二億六千三百万円だ。

 こういうものだということで、日本全国でつくる公営住宅の予算よりも、米軍のグアム移転経費の家族住宅分が多い。全く情けないし、驚きだということを言っておきたいと思うんです。何せ住宅の議論をしている最中にこういうことをやられる、全くとんでもないことだと思っています。

 そこで、二十一日、参考人質疑で、本間参考人は、本法案には居住者の視点がないと指摘しました。とても大切な指摘だと私も同感でした。これに関連して少しお尋ねします。

 簡単に言うと、本法案が既存居住者の居住の安定確保、向上を促進するものかどうかということを最初に聞きます。法案の第一条には、住生活の安定の確保、向上の促進ということを目的にしています。この場合、既存居住者の住生活の安定確保も対象になる、当然、公的賃貸住宅の居住者も居住の安定が確保されるべきであって例外ではないと考えますが、そう確認して間違いないですね。

○山本政府参考人 御指摘のとおりでございます。

○穀田委員 指摘のとおりだと。

 そうすると、私は、昨年の四月、地域住宅交付金など住宅関連法案の審議でやりとりしました。その際、民間を含めた住宅は空き家の数など量的には充足しているように見える、しかし、最低居住水準以下が百九十五万戸、国土交通省が目標としている誘導居住水準以下が二千万世帯、新耐震基準を満たさずに改修が必要な既存不適格が千百五十万戸あるなど、質的に満たされた住宅というのは極めて不十分だということを指摘しました。

 さらに、公営住宅を初めとする公的住宅は量的にも不十分だと。自力では適切な居住水準を確保することが困難な世帯は百七十六万世帯。要するに、政府が公的賃貸住宅を提供しなくてはならない数字が百七十六万戸となるわけですよね。

 ところが、実際は、建てた住宅が少ないものだから、応募の倍率というのは十倍から二十倍だという点だと思うんですけれども、そういう百七十六万世帯、また百七十六万戸ということについて確認するが、間違いないですね。

○山本政府参考人 第八期住宅建設五カ年計画を策定しました時点で、平成十三年三月に決定したものでございますが、この時点で、公営住宅等の公的賃貸住宅の施策対象となり得る世帯として、自力では適切な居住水準を確保することが困難な世帯数を百七十六万世帯と推計していたことは事実でございます。

○穀田委員 それで、私はいつも言うんですが、最低居住水準というのはどれだけかという問題なんですよね。きょう防衛局長が来ておられるからあれですけれども、アメリカなんかの住宅に提供しているのでいうと、おふろが三つもあるとか四つもあるとかというのを提供しているわけだけれども、日本の最低居住水準というのは、一人でいうと約五畳、畳五枚なんですね。そういう低水準だということを、ほんまにつましい基準だということをお互いに心に刻まなくてはならぬと思うんです。

 今までの答弁でも、その百七十六万戸というのに対してどう言っているかというと、入れかわりがある、だから、公的賃貸住宅というのは大体七十六万戸ぐらい供給する必要があるとしていたわけですよね。

 そこで、当時、第八期ということで先ほどありました、策定した時点の数字、根拠を出されて、その後、入れかわりがあるからということで大体七十六万戸ぐらい建てなくちゃならぬなとお考えだというのは去年議論したんですね。ところが、そのときも議論したんだけれども、高齢者などがふえていて、住宅困窮者はふえている。なのに、新規の供給数というのは一万以下だということを私は指摘しました。

 そこで、もう一度確認の意味で、年々減少しているんじゃないか。したがって、二〇〇〇年度から二〇〇四年度までの公営住宅の新規供給戸数は一体幾らか、述べてください。

○山本政府参考人 今、公営住宅のストックは非常に老朽化したものが多いものですから、老朽化した公営住宅ストックを建てかえる、あるいは改善するといったような努力をしております。

 したがって、公営住宅の新規供給という概念が的確かどうかはともかく、各年度の公営住宅の供給から建てかえを除いたもの、全体の供給量から建てかえを除いた数字で申し上げます。

 平成十二年度が五千六百四十六戸、平成十三年度が五千九百二十七戸、十四年度が五千八十一戸、十五年度が三千三百九十六戸、十六年度が三千五百十戸でございます。

○穀田委員 防衛局長、もういいですよ。

 くしくも、アメリカに建ててやるのは三千五百戸ということで、〇四年度は三千五百十戸ということなんですけれども……(発言する者あり)文句があるんやったらアメリカに言うたらどうやねん。公営住宅が足りないのは明白なんですよ。

 国土交通省は「公営住宅管理の適正な執行について」という通知を出しています。これを見ますと、その第二のところに「入居承継に係る承認の厳格化について」として「公営住宅の入居名義人が死亡し、又は退去した場合において、入居承継が認められる者は、原則として、現に同居している配偶者」、こうなっているんですね。

 これまでは、同居者による入居承継というのは三親等まで認められていました。ところが、この通達でどんなことが起きているか。例えば、入居名義人であるお年寄りの介護をしながら一緒に暮らしている子供が、お年寄りが亡くなれば出ていかなくてはならない、あるいは、ミスマッチの解消などといって、お年寄りの夫婦の相方が亡くなって一人になると一Kに強制的に転居させる、こういうことが東京の都営住宅で起こっている。現に住んでおられる方々が、今後どうなるのかという大変な不安を抱えておられるわけですね。

 通達でこういう事態が起こっているんだけれども、こういう事態が起こっても当然と考えるのかということが一つ。それから、現に住んでいる方々が追い立てられて、どうして住生活の安定、居住の安定と言えるのか。このような通達は押しつけるべきではないと思うけれども、どうか。

○山本政府参考人 公営住宅の目的との関連で、本当に住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃でこれを賃貸するという目的でございますので、この施策対象に公平に、的確に供給するというのが公営住宅供給の真髄であるわけでございます。

 ところが、現実を見ますと、公営住宅の応募倍率が大都市を中心に非常に高くなっていることに見られますように、多数の住宅困窮者が一刻も早い入居を待ち望みながら、現実にはなかなか入居できないという状況があることは事実でございます。そういう中で、長年にわたって同一の親族が居住し続けたり、あるいは入居後に単身となった方が引き続き広い公営住宅の住戸に住み続けておられるといったようなことは何とか是正をして、本当にこの住宅を必要としている方にこれを御利用いただきたい、そういう観点から昨年の通達は出しました。

 先生は先ほど引用していただけませんでしたけれども、「原則として、現に同居している配偶者及び高齢者、障害者等で特に居住の安定を図る必要がある者とする」という通達としておりますので、公営住宅管理者において的確にこれを運用していただきたいと考えております。

○穀田委員 後半の方に、ではもう少し読みますと、「高齢者、障害者等で特に居住の安定を図る必要がある者とする」だと、どうせ言うんだったらそこまで言っていただかないと。

 それで、それは確かにそうだけれども、今おっしゃったように倍率が高いといっても、もともとちゃんとつくればいいわけで、それをやらぬといて、とにかく追い出してそこを埋めようとするからそういうことが起きるんだということを何回も私は言っているわけで、同じ議論をしちゃあきまへんで。

 大体、公営住宅というのは実際足りないからこういうことが起こっているわけで、その中で、住宅困窮者の入居を促進するということになると、比べると、当然、今住んでいる方々を追い出さざるを得なくなると。しかし、実際には、いわゆるあなた方がおっしゃっている収入超過者などが退去したとしても、その数は一〇%に満たないんですよ、数%なんですね。だから、ここにも公営住宅の絶対量が足りないということが明白だと。

 私は、今あったように、倍率は高い、入る人はいたい、そして実際にはまだ、住んだ方も、しかも、広いところから狭いところへと、そんなうんとこさ広いところを言っているんじゃないんですよ。先ほど言った話を言うとまた文句が出るから言わぬけれども、そんな大きな広い家に入れると言っているんじゃないんですよ。それは知っているんですよ。だから、今後も新規住宅を供給してこそ住生活の安定の確保となると思うんですけれども、どうかな。

○山本政府参考人 公営住宅のストックは十六年度末で二百十万戸でございます。昭和三十年代、特に四十年代、五十年代に供給したものが非常に多いものですから老朽化している、これを何とかしなきゃいかぬという課題がございます。

 したがいまして、住宅困窮者の居住安定を確保する観点から、まず第一に、この公営住宅の二百十九万戸のストックを最大限に生かしてセーフティーネットとして機能させるんだという観点から、老朽ストックの建てかえあるいはバリアフリー化といったような改善によってストックを再生させていくという点にまず重点を置きます。それから、今引用していただきましたけれども、入居者の八%を占める収入超過者について自主退去を促進するということなどによりまして、公営住宅の管理を適正化する。この二点に重点を置いて取り組んでいるところでございます。

 こうした取り組みとともに、さらに民間を活用した効率的な供給方式であります借り上げ方式の公営住宅の供給、あるいは高齢者向けの優良賃貸住宅などの公的賃貸住宅の供給も図ります。加えまして、民間賃貸住宅で住宅弱者の入居を受け入れるあんしん賃貸支援事業なども導入いたしまして、中核は公営住宅でございますけれども、さらに民間賃貸住宅も生かして、重層的な柔軟な住宅セーフティーネットとして構築して活用していくということを考えているわけでございます。

○穀田委員 重層的と言うんだけれども、いつも周りの話はいっぱいするんだけれども、新規についてはきちっとやりまっさという話はいつも出えへんわけね。それでは、重層的といっても肝心かなめのものが抜けていると言っておきたいと思うんです。

 というのは、全住宅に対する公共賃貸住宅の割合というのは、イギリスや、それからドイツ、フランス、イタリアに比べても少な過ぎるんですね。これは客観的事実なんですよ。だから、私は、省の計算だって先ほど言ったように七十六万世帯ないしは七十六万戸というものも含めて必要じゃないかと言っておるわけだから、建てかえについてあれこれやめろと言っているんじゃないんですよ、それはきちんとしろと。まして、今八%の話をしたけれども、要するに移ってもらってなんと言うけれども、追い出そうと図っているのは問題だということを言っておきたいと思うんです。

 では、次に、公団賃貸住宅はどうかということを聞きたい。

 この間、当委員会で山本局長は、既存の七十七万戸は維持、ストックとして活用するということで答弁された。ところが、居住者の方々がそのまま安心して住み続けられるかというと、ここでも大変な不安がある。

 公団自治協が行ったアンケート、第七回団地の生活と住まいアンケート調査、これですよね。これがあるんですけれども、これは大体、後でも言いますが、高齢化の問題や、それから収入の減っている問題などを言っています。結局、高家賃にたえられなくて出ていかざるを得ないと。

 ところが、先ほど来いろいろお話ししているけれども、実際に民間では高齢者の賃貸というのは厳しいという現実はだれもが知っているんです。一番それを受け取る側の人たちも含めて、それはかなわぬと言っているわけだから、だから、そういう現実からしますと、不安を抱えておられるのに、機構は三年に一回近傍同種とするなどといって家賃の値上げをぐっとやる、それで不安は募るばかりなんです。だから、まさに居住の安定がこの分野でも侵されている、脅かされている。こういう実態、既存居住者の不安について把握していますか。

○山本政府参考人 都市再生機構の賃貸住宅に住んでいただいております七十万世帯近くの世帯のうち六十歳を超えた方々、六十歳代の前半で六万九千ですか、六十歳代の後半で五万九千、七十歳以上が七万五千で、合わせて二十万世帯おられます。ですから、機構の賃貸住宅に住んでおられる方々の三割が六十歳以上だということを認識しております。

 その上で、法律に基づく機構の賃貸住宅の家賃でございますけれども、市場家賃との均衡を図る必要があるために定期的に改定しているものでございます。直近は、本年これを改定しまして、引き下げは一月一日から、引き上げについては四月からこれを実施したところでございます。全体を加重平均すると、戸当たり百円程度の引き上げになったというふうに聞いております。

 市場家賃との均衡を図るために家賃の引き上げが必要となる場合に激変緩和を講じる、そういった措置をとることで、急激な家賃上昇とならないような算定方法をとった上で、低所得者の高齢者世帯については、家賃上昇をさらに抑える特別措置が実施されているところでございますので、機構も居住の安定のために配慮して努力しているというふうに考えているところでございます。

○穀田委員 私はとてもそうは思いませんね。

 まず実態ですけれども、この全国公団自治協のそういうアンケート調査によりますと、私はこれは本当に深刻だと思うんですよ。ちゃんと聞いてね。

 世帯主の高齢化について言えば、六十歳以上が五五・三%、過半数を超えているんですよ。第二に、世帯の収入の低下が続いていて、三人に二人、三分の二、六七・五%が第一分位、四百四十六万以下ですね。私、感心したのは、このアンケートの中で、収入の欄の中に、自治協が書いていますけれども、収入の質問であるにもかかわらず九三%の人が答えている、この回答を。この意味は、ほんまにこの実態を見てほしいということのあらわれだと思うんですね。そして第三に、収入の中心は年金という世帯がついにトップを占めるというふうになっています。

 まさにここの三つ簡単に言いましたけれども、公団の多くの方々の生の実態を反映したものだと言えると思うんです。だから、先ほど何万世帯というふうにありましたけれども、三割どころか、実際は極めて深刻な事態が生まれているということに目を背けて、どうして安定と言えるのかと私は思うんです。

 そこで、七十七万戸の箱、これを維持するだけでは現に住んでいる人の居住の安定は図れない、中に住んでいる人こそ守らなくちゃならぬ。このアンケートにも、七割の人が公団に住み続けたい、値上げや高家賃で払えなくなるという声が出ているわけです。だから、収入が減少しても家賃減免や家賃補助などの制度によって住み続けられるようにしてこそ、本当の意味で居住の安定を図り、公団住宅を維持するということに初めてなると私は思うんです。

 居住者の実態を踏まえた公団住宅制度を守る必要がある。その点はいかがですか。

○山本政府参考人 今回の家賃の改定で、低所得の高齢者世帯に対して、一般世帯より引き上げを抑制する特別措置を講じているんですが、対象が五万五千世帯ある中で、家賃を据え置いたというのが五万世帯、減額措置を講じた上で引き上げたというのが五千世帯でございます。引き上げ世帯は、この五千戸の平均は千四百円の引き上げとなっておりまして、一般世帯の引き上げ額に比べますと二千八百円の減額となっている、これが平均値でございます。

 法律に基づいて制度を運用する、大都市の賃貸住宅市場のいろいろな課題にこたえていくという機構の役割を果たす中で、居住者の、特に低所得高齢者の居住の安定のためにできるだけの努力をしているという結果がこの数字にあらわれているというふうに思っているわけです。

○穀田委員 やはり政府を代表して言っているわけで、個別のそういうことでいうとそれは二千円とかという話になるでしょう。だけれども、大事な問題は、年金の控除だとか定率減税の廃止だとかで、それを基準にして税金をかけられる、さまざまなことでいうと、もう雪だるま式に上がっているわけだから、そういうものを全体として見なくては、二千円減らしたなんて何かえらい自慢げに言うのは、全く実態を見ないものの最たるものだというふうに言っておきたいと思うんですね。そこの苦しみがあるからこそ、こういう声が上がっているんだということを見なくてはだめですよ。

 そこで、次に行きますと、本法案には居住者の視点がないと先ほど言いましたけれども、これをよくあらわしているのが定期借家制度です。

 もともと借地借家法で、家主が借家人に対して明け渡しを求める際には正当事由がなければならなかったわけです。これは、あくまでも基本的に力が弱い借家人の権利保護の観点からの規定でした。権力を持った公的団体が家主である公営住宅や公団賃貸住宅などにこの定期借家制度を導入しようとしているというのは、私はだめだと思うんですね。

 特に、公社住宅などは三年から十年などの期限つきが導入されていて、もう既に公営住宅でも東京都は実施されている。だから、居住者の居住の安定を確保するという法案の目的、趣旨とこの期限つき並びに定期借家制度というのは矛盾するんじゃないですか。簡単に。

○山本政府参考人 公営住宅における期限つき入居でございますけれども、住宅に困っている方の事情といいますか、態様をつぶさに見ますと、例えば子育て世帯とか事業を再建する途上の方といったように、一時的に住宅に困窮するという世帯、しかも非常に困窮しているという世帯があることも事実でございます。住宅困窮者全体の入居機会の公平を確保する観点から、この期限つき入居の制度を活用することとしているわけでございます。

 ですから、住宅に困っておられる方の態様を見てそういうことを努力するということでございますので、公営住宅の公平、的確な供給による国民の居住の安定の確保を推進するための手だてだというふうに考えております。

○穀田委員 いつも大体言う言葉というのは、困窮者の事情、それから公平に、こういうキーワードなんですね。

 でも、結果として何が起こっているかという現実、それから、公社にお住まいの方、公団にお住まいの方、公営住宅にお住まいの方、これらの今の生活実態、事実上追い出しが図られているということに対して本当に何の痛痒も感じないのでは困るんですよ。

 だから、その根本のところでいえば、それはきちんと物を建てる、ふやすという以外に全体を満たすことはないんですよ。だから、私、一番最初に、どの程度の金をかけるんだという話をして、どの程度つくっているのかという話をしたわけですよ。そこの一番の基礎をつくりもせんといて、ふやしもせんといて、それで金はほかのところで使って、それで追い出しを図るというのは全くけしからぬと私は思っているんですね。

 だから、結局のところ、公営も公団も公社も見てきたけれども、進行しているというのは追い出しの路線であって、居住者の安定になっていないということで、しかもこの法律ではその担保がないということだと思うんですね。

 そこで、では、この法律は何を言おうとしているかというと、簡単に言えば市場任せにしようというわけですな。これまで、公営、公団、公社といういわゆる三本柱で住宅政策を進めてきた、曲がりなりにも公的住宅の供給をしてきました。しかし、バブル崩壊以後はどうだったかと見ると、民間の活用と称して公的関与の縮小が顕著だと言えます。

 例えば、公営住宅でいえば、建設の縮小、近傍同種家賃の制度の導入、九六年ですよね、これで住民追い出しを事実上図る。それから、住宅公団について言えば、都市整備公団になって、分譲住宅からの撤退、そして賃貸住宅も新規建設をやめて、都市再生機構になり、今や仕事の中心は都市再生と土地有効利用、開発にシフトしている。住宅金融公庫を廃止して、公庫ローンは縮小され、民間銀行の証券化支援になった。こういうふうに民間任せの方向が実際に進められている、そういうもとで今回の法案は出されている。

 今後、住宅供給や居住環境の形成というのは民間活力、市場整備によって推し進めることを中心にする。一言で言えば、住宅に関する国の責任を大きく後退させて、これまで以上に民間任せにするものだと言えるんですが、違いますか。

○山本政府参考人 今の御指摘は非常に大事なポイントで、大きな誤解をいただいていると思いますので、ぜひ理解をしていただきたいと思うんです。

 と申しますのは、考え方として、最近における需要が非常に高度化、多様化しているので、住宅のストックの質をよくする、よくすることを通じて、それをきちんと使い切るという観点から、ストックを重視し市場の力を生かす、そういう政策が正面の課題になってきておりますということなんですね。

 具体的に、その観点から力を入れてやっておりますのは、例えば、市場の制度インフラであります住宅性能表示、この制度をつくって普及するとか、あるいはいろいろな住宅関連事業者についての情報提供とか、あるいは住宅取得者について税制、金融で応援するとか、あるいは住宅取引紛争に関連して紛争処理体制を充実する。そういったような制度インフラを拡充していくということが一つの政策の正面に立つんですが、一方、住宅の市場で、自力では的確な住宅を確保できない住宅困窮者に対して、きちんと居住の安定を確保するということがもう一つの非常に大事な政策の課題でございます。

 したがって、この両者を車の両輪として位置づけて、住生活基本法のもとに的確に推進するという考え方で取り組んでおりますので、国の役割が後退するという御指摘は当たらないと考えております。

○穀田委員 先ほど述べた事実からして、明確に、この間、国の役割は後退してきた、しかも、建設コストもずっと減ってきたということは紛れもない事実じゃありませんか。

 そして、現実の、この間の本間参考人も言っていましたように、山本さんもいてはったわな、住宅というものが市場化になじむかということで、例えば、昨今話題になっております建築確認業務が市場化された、その結果、町じゅうの至るところで建築基準法、都市計画法違反の建築物がふえて、町が壊れてしまっている。住宅金融公庫の業務が民間に全面移管されることになった、その結果、公庫が定めていた戸建ての住宅基準でなくなったことによって、法により水準の高い設定をしていた住宅が全く姿を潜めることになった。安かろう悪かろうの戸建ての新築住宅がふえてきているという陳述までしているじゃないですか。

 そして、結論として、ここが大事なんですよ、住宅というのは商品じゃない、環境というのは商品じゃない、これはある程度秩序立てて供給され形成されなきゃならぬ。だから、ここに公的な役割というのは非常に重要なものがあるということを言っていたわけですね。

 だから、民間に任せるということは、金がある人はそれは市場で買えるだろう。そうじゃない者を、本来、権利としてそれを保障するというところがイスタンブール宣言にもある。これは、この間議論してきたわけですよ。私は、この間もそれを主張したわけです。

 だから、ここは大臣に聞きたいんですね。公的役割の重要性は、今いささかも後退していないどころか、本来増すべき話だということの原理論はいかがですか。

○北側国務大臣 住宅のセーフティーネット、これについては今回の住生活基本法案の中でも第六条で規定をさせていただいて、これは、これからも、国の責務としてしっかりこのセーフティーネットを確保していく役割は果たしていかねばならないというふうに考えているところでございます。

○穀田委員 そう聞くと、必ずセーフティーネット論にすっとやるんですね。しかも、その場合、住宅困窮者の、こうくるわけですよ。違うんですよ。

 イスタンブール宣言、しかも、この間も議論になって、先週も議論になりました。この住宅の住生活基本法になぜ憲法二十五条に定められた精神が入らないのかといったときに、入っているんだという話をしたんですよ。入っているんだとすると、大事なのは、イスタンブール宣言にわざわざ規定された内容は何かということにやはりさかのぼらなけりゃいけないんですね。

 それは、国民が適切な住居を手にする居住の権利、と同時に政府は、政府の住宅保障責任について、しかもそれは住宅困窮者でセーフティーネットというんじゃないですよ、より適切な、適正な、そしてより満足できるものを供給する義務があるということを言っているんですね。そこの精神が私は大事だと思うんですね。そこはいかがですか。

○北側国務大臣 まさしくそういう趣旨で、住宅の質の向上をこれからしっかりと図っていこう、これからまさしく本格的な高齢社会がやってくるわけでございますし、また、住宅に対するニーズというのは昔と違いまして、さまざまな、多様なニーズが生まれてきているわけで、そうした多様なニーズに適合できるような、さまざまな選択ができるような、そうした住宅市場を整備していく、環境整備をしていくというのは非常に私は大事なことだというふうに思っております。今回の法案につきましては、こうした時代の社会経済情勢の大きな変化に応じた適切な法案であるというふうに私は認識をしておるところでございます。

 穀田委員の質問の御趣旨は、昨年の住宅二法のときもお聞きをさせていただいておりますので、大体理解をしているつもりでございますが、どうなんでしょう、穀田委員。穀田委員も団塊の世代でございますので、私どもの子供の時代、また若いころと比べたら、どうなんでしょうか。住宅事情は、もちろんまだまだ問題点、課題はありますけれども、あの当時に比べたら本当によくなってきたんじゃないでしょうか。これからは、そういう面で、よりよく、この高齢社会にふさわしい、またさまざまな時代の要請に合わせた住宅政策をしっかり発揮していくことが私は大事だと思っておりまして、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。

○穀田委員 懐古趣味じゃないんですよ。世の中はそれこそ前へ前へ行くというのが本来の筋だ、そういう趣旨からいって、例えば憲法二十五条に決められている基本的人権というのはあるけれども、あのイスタンブールの宣言のときに、日本政府の代表はこの居住の権利を入れるということに反対したんですよ。それを全世界が説得をしてわざわざ入れた。それは、常にそういったものをしなければ、為政者が必ず行うということに対してくぎを刺し、それをやったわけなんです。その趣旨を私は体して言っているんです。そこに根本的な違いがあるということも改めてわかりました。

 ですから、私は、何度も言ってきたといいますが、お互いに理解していますよ。私は、憲法二十五条の精神に基づいてよりよきものを、そして、それが政府の果たすべき責任であるということを言っている。あなた方は、セーフティーネット、そしてニーズの多様、市場化、こういうベースで来ているということの違いが相変わらずよくわかったという点ではよかったなと思っています。

 そこなんですよね、大きな違いはそこなんですよ。しかも、それの中に何があるか。違いがあるわけじゃない。現実があるんだ。それは、住宅の、やはり公社や公団や公営住宅に住んでいる実情があり、そして全世界のそういう考え方があるということも私は背景にあってしかるべきだと思っています。

 そこで、最後に……(発言する者あり)まだ、慌てなさんな。本当に情けないな。まあ、終わりますけれども……(発言する者あり)私はいつも守っているでしょう。

 そういうことで、お互いに違いがわかって、私はその意味で本当の住宅の生活を安定させるために今後も頑張りたいということをお話しして、質問を終わります。

○林委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。


    ―――――――――――――

○林委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。穀田恵二君。

○穀田委員 住生活基本法案に対する反対討論を述べます。

 政府の住宅政策は、既に、公営、公団住宅の新規建設の抑制、公庫融資の縮小など市場任せを強め、国、自治体の公的責任を大きく後退させてきました。この背景にあるのが、アメリカや財界の圧力のもとに進められた住宅分野の規制緩和政策です。耐震強度偽装事件に見られるように、住宅政策を市場任せ、民間任せにすれば、国民の命、安全すら守れなくなるのは明らかです。

 本法案は、基本的考え方において市場重視を掲げ、住宅の供給や居住水準などを市場任せ、民間任せにするとともに、住宅に対する国、自治体の公的責任を後退させることを追認し、固定化するものであり、賛成できません。

 法案には、居住者団体などが求めてきた居住の権利や安全な住宅に居住する権利が明文化されていません。住生活の安定の確保、向上を目的としながら、住居費負担や居住水準など重要な要件も明示されていません。これでは、住生活の主人公である居住者の視点が欠落していると言わざるを得ません。

 今、耐震強度偽装事件を初め、自然災害、ホームレスの増加など、住まいに対する国民の不安と不満は深刻です。民間任せや自己責任を基調とした現在の住宅政策を、住まいは人権という立場に立った住宅政策に転換することを求め、討論とします。