国会会議録

【第165臨時国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年12月6日)

 観光立国基本法について

○塩谷委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 私、観光立国基本法についてきょうは論議したいと思います。

 九五年の観光政策審議会答申は、「観光を考える基本的視点」ということで、その第一に「すべての人には旅をする権利がある」として、「旅は、すべての人にとって本源的な欲求である。人は旅により日常から離れ、未知の自然、人、文化、環境と出会い、そして新たな自分を発見する。」と述べています。これはとても大事な視点だと私も同感します。

 そうなりますと、旅をする権利を実現するために、所得と時間のゆとりが不可欠ではないだろうかと考えます。今日、格差拡大の問題が社会問題となっています。収入は減るわ、それから低賃金、さらに税や社会保障の負担はふえるわ、長時間労働が押しつけられる、若い人の中ではワーキングプアの状況が蔓延している。こういう状況のもとで、ほんまに可能かと思わざるを得ないんです。

 権利と規定するならば、それへの保障を国が率先して行わなければならない。労働時間の削減、有給休暇の取得率の向上、偽装請負やサービス残業という違法の根絶、また、安定雇用の確保、庶民の税や社会保障の負担の軽減など、国がこういう点でこそ積極的に取り組むべきではないかと思うんですが、その辺の所感をまずお伺いしたい。

○冬柴国務大臣 もうお説のとおりでございます。

 先ほどちょっと読み上げていただきましたけれども、これはすばらしい視点だと思うんです。私は、この「観光を考える基本的視点」というところ、こういうものを大事にしなきゃならない。その中に「旅には自然の治癒力が備わっており、旅をする自由は、とりわけ、障害者や高齢者など行動に不自由のある人々にも貴重なものである。」というようなくだりもありまして、非常に示唆に富む、そしてまた、今委員がおっしゃいましたように、お金もない、また旅行に出る時間もないという人々をどうするのかというのが、根源的な大きな問題点だろうと思います。

○穀田委員 ですから、大臣もこの答申の基本的考え方はすばらしいものだ、そのすばらしい視点を実行しようと思いますと、何やかや言うたかて、今言いましたように、時間と所得、これがなければ、幾らすばらしい視点でも実行できないわけですよね。問題はそこにあるわけですよね。

 この答申は、今大臣は触れませんでしたけれども、もう少し行きますと、「二十一世紀の観光を創造するための具体的方策の提言」のイの一番に、実は「すべての人々が旅に出かけられるゆとりある休暇の実現」としているんですね。だから、ゆとりある休暇の実現ということがなければ、これはできない。

 そうすると、小泉内閣の五年間というのは、可処分所得がふえたか。減っているんですね。高額所得者は確かにふえているんですよ。だけれども、旅に出かけるのは働く人々であって、一部の人々が幾ら出かけたからといって観光は発展しないんです。したがって、所得とゆとりの向上に逆行するようなやり方をやめなければ、絵にかいたもちになると思いませんか。

 そこで、昨日の夕刊を見ますと、不払い残業が月百二十時間、週六十時間労働が二五%ということで、日本労働弁護団が長時間労働酷書というのを出していて、ひどいと。さらに、きょうの東京新聞では、サービス残業が青天井だ、日本ホワイトカラーエグゼンプションということで、今経団連なんかがやろうとしている内容が出ている。

 大体、残業代自体が現行法どおり支払われていない実態がある。厚労省が先月行った電話調査では、賃金不払い残業が千二十二件あって、前回よりも五割もふえているんですね。四割以上が賃金を全く支払われていなかった。サービス残業の蔓延は明らかだ。こういう事態が広く蔓延していて、どないしてこれはその権利を保障するのかということについてほんまに考えなければ、視点はいい、すばらしい文言だ、そこまではいいんですよ。そのすばらしい文言を実行する方策としての、ゆとりの時間ということをつくり出すための具体的な政府としての責任をどう果たすつもりか、少し私が今述べた点なんかを含めて御回答いただければ。

○冬柴国務大臣 小泉内閣、五年半というものについての評価もあったわけでございますけれども、それに先立つ失われた十年ということを考えたときに、私は、そういう視点もあるけれども、また別の視点もあるんではないかというふうには思います。

 それはさておきまして、観光立国ということをするためには、もうお説のとおり、国内旅行が先ほども言いましたように人口の一・八二倍、そういうふうに動いているわけですけれども、これが、若い人たちが賃金も安い、そしてまた結婚もできない、そういう中で旅行に行けといったってできないと思うんですね。私は、根源的な問題として、我々政府でそういう問題に真剣に今取り組んでいるつもりですし、また今後も取り組んでいかなければならない、このように思います。その上に立った観光立国だろうというふうに思います。

○穀田委員 位置づけはそのとおりなんですけれども、今言っている、逆行する動きが多々あるということもしっかり見据えてやらないと、大臣としては、それは厚生労働行政だというわけにいかないんですよね。これはやはり、観光立国は日本の戦略の一つだ、それから経済発展の戦略の上でも一つだ、こう来ますわね。そのときに、片やそういう労働実態、長時間労働がありサービス残業があり偽装請負があり、こんなことをやっておってどないしてやれるのかということにしっかり目を向けなければ、この面から私は大事だということを改めて指摘しておきたいと思うんです。

 そこで、先ほど大臣は障害者の問題も触れていました。私は、とても大事な指摘、「旅をする自由は、」ここに「とりわけ、」と書いているんですね、「障害者や高齢者など行動に不自由のある人々にも貴重なものである。」と指摘しているわけです。その答申は、単に障害者や高齢者の旅行の容易化のためのシステムの構築を述べただけではないんですね。さらに言っているのは、後段でこう言っているんです。「旅による充足感が他の人々より深い人々である。」こう述べて、いわば、行動などの不自由な人々にとって、だからこそ充足感というのは深いんだ、これらの人々の旅が普通に行われる社会であるべきとの認識の普及が大切だ、ここまで言っているわけですね。

 だから、そういう意味でいいますと、今高齢者に対してそれこそ直接、住民税をばんと十倍も二十倍もやる、二十倍はそんなにないですけれども、やる。それから、障害者の自立支援と称して自立を阻害する。結局、与党の側だって、障害者自立支援法の今の余りにひどい実態の中で、これを変えざるを得ない、こんなことが起きているわけです。だから、本当にそういうことで、今、すばらしい内容であり、後段にはさらにすばらしいことが書いてあるとわざわざ私が言う前に言ってくれているわけだけれども、そこまでいきますと、その高齢者に対する施策、障害者に対する施策、これも充足しなくてはならぬという点は同感ですわな。よろしいか。

○冬柴国務大臣 もちろん同感です。

○穀田委員 同感の割には施策はひどいなと私は思うんですけれども、そこは言っておきたいと思います。

 もう一方、サービスを提供する側の問題がありますよね。これは、二〇〇〇年の答申でも魅力ある観光地ということが、九五年でも触れられていまして、その努力が大切だと思うんです。それは、特に旅や観光の形態の変化が著しく、それにマッチした対応が求められているからです。その際、行政の援助は私は欠かせないと思います。

 今度のこの観光立国という法案を議論したり、いろいろ法案づくりの過程の中で、観光立国の推進に関する決議案をつくろうという努力がされました。その審議の中で、各党が心を砕いたのは次の点なんです。観光立国を支える旅館業を初めとした、観光にかかわる中小企業についての支援の問題だと。

 中小旅行関係者、観光地を支える側の行政からの援助の要請をどのように掌握し、対処方針はいかに考えておられるか、局長にお尋ねします。

○柴田政府参考人 お答え申し上げます。

 観光地を支えます中小の旅館業についての支援措置ということでございます。

 旅館につきましては、地域における旅行者の受け入れの中核的な存在であり、その経営基盤の確立というのは大変重要な課題というふうに認識しております。そのため、国際観光ホテル整備法に基づきます地方税の不均一課税や、中小企業金融公庫の長期低利融資等の支援措置が講じられているところでございます。

 また、先生がおっしゃいましたように、旅館業につきましては、旅行市場の構造が団体旅行から個人、小グループ旅行へと変化する中で、旅行者ニーズの変化に対応し切れず、経営的に苦しい状況となっているものも少なくないというふうに認識しております。そのため、今年度から、旅行者ニーズの変化に対応した新たなビジネスモデルの確立を支援するため、宿泊と食事を分離して提供するなどの宿泊産業活性化のための実証実験も行っているところでございます。

 引き続き、旅館の経営基盤の確立に向けて、しっかり取り組んでいきたいというふうに考えてございますし、中小企業庁等の関係者との連携のもとに、また、旅館業に対する支援措置についても今後十分に検討していきたいというふうに考えております。

○穀田委員 私も実家は小さい旅館をやっているものですから、そんな生易しいものとちゃうねんね。そんなふうに融資が来るとお思いですか。それはうそだと言ったらちょっと語弊があるけれども、貸してくれるなんてことはないんですよ。

 そういう現実が、例えば国際観光旅館連盟などからの要望書にそう書いています。その裏にある特別融資制度、それに対して低金利の融資をやっていますと。現実はどうなっているか。融資を頼めば、おたくのところのこの間の経営実績はどないですかと言って、結局廃業に追い込まれるところまでずるずるずるずる行かされるという現実があって、そんな調子いいものとちゃいますねんで。

 だから、それぞれの地域で頑張っておられて、例えば観光地としての立脚をしているところは、まだそういうものはある。だけれども、その観光の度合いの、目玉が少ないところの旅館などというものは、もっと、それ自身も経営的な問題がある中での支援をやらないと、そんなきれいごとじゃないということだけは言っておきたいと思うんです。次は、これ、自分のところの問題も含めて必ずやらせていただきます。

 そこで、きょうは全体の問題がありますから、政府はこの間、住んでよし、それから訪れてよしの国づくりということで、百選までつくって、パンフレットをつくっています。前に八月ぐらいに配られて、きのうもう一度見させていただいたんですけれども、観光立国推進基本法案ということで今準備されている前文、基本理念にもこの考えが示されています。住民にとって魅力あるまちづくり、地域づくりを進めることが旅行者にとって魅力ある観光地になるという理念は、そのとおりだと私も思うんですね。

 私は、住民本位の地域づくりというのをとりわけ京都で追求してきましたが、これまでの地域の特色、魅力が失われてきたことの反省の上に立っているということと理解していいのか。とりわけリゾート法などは、その失敗の典型として理解してええねんなということをお聞きしたいと思います。

○中島政府参考人 総合保養地域整備法、いわゆるリゾート法でございますが、昭和六十二年に制定されまして、その後、平成九年度におきまして、四十一道府県で四十二の基本構想が策定されまして、それに基づいてリゾート地域の整備が進められましたが、その後、バブルの崩壊などの状況がございまして、施設の整備あるいは想定した利用者、雇用などが想定どおり進まないという事態に至りました。

 それを受けまして、政府で施策の評価や見直しが行われ、平成十六年二月に国の基本方針を改定しまして、道府県の基本構想について廃止も含めた抜本的見直しを求めるとともに、人材の育成などソフト面の一層の充実、地域間交流の促進など、地に足のついた取り組みを進めていくということとしたところであります。

 現在、これに基づいて見直しが進んでおりまして、既に四県で基本構想が廃止されたほか、関係道府県で基本構想の廃止も含めた見直しが進んでおりまして、今後のリゾートも含めました地域整備に当たりましては、このような動向、経緯も踏まえてやっていくことが重要だと思っております。

○穀田委員 余り煮え切らぬ話だけれども、扇大臣は、既に、その問題の質問を受けて、基本構想で想定した需要は結果として過大となっており、このため、リゾート施設の整備も予定の四分の一にとどまった、そして、今後は、今も少し変わったけれども、地に足のついた整備を展開したいと考えていると。ということは、今まで地に足がついていなかった、はっきり言えば失敗だったということなんですよ。だから、反省すべきところを反省しないからみんな信用しないということになるわけで、そこはきっちりしておく必要があるだろう。

 そこで、京都の問題に少し触れたいと思うんですけれども、私は、二〇〇四年の四月にこの委員会で、京都市内の高速道路乗り入れについて質問しました。京都市内のど真ん中に高速道路を持ち込むことは、山紫水明の都、京都の自然と景観を破壊することになると思わぬかということを質問し、当時の小泉首相は、私は京都は大好きですよ、ぜひともあの京都の景観は守っていただきたい、もしあのすばらしい京都の町に不粋な高速道路ができるということを想像すると私も嫌です、できるだけ歴史的な景観を保存する形で必要な道路をつくってもらうように京都にお願いしたいですね、こう答弁しているんですね。

 現在、その高速道路の計画で未着工は三路線あるんですが、その観光の中心でもある京都市内の中心にまで高速道路を延ばしてくる計画の堀川それから西大路の線の話なんですが、大臣も、尼崎ですから私のところは近いし、京都によく行ってはると思うんですけれども、宗派は違うだろうけれども、西本願寺のあそこのところにどかんと高さ三十五メートルもの巨大な排気塔をつくるとか、その間近を高速道路が走るといった景観上の問題をどう考えるのか。いわば観光のメッカである京都にこんなものをつくって、何が観光かと思いませんか。

○冬柴国務大臣 それはおっしゃるとおりですが、しかしながら、京都という地域で、京都市街を通過する交通量を減少させて渋滞を緩和するなど、排気ガスや騒音を低減する効果のある道路をつくってほしいということで都市計画決定されているわけですね。

 それで、今言われたところ、私も、堀川通りとかそれはよく知っています。そんなところに、地上に道路をつくるというのだったら絶対反対します、私だって。この部分は地下にするということで、ただ、その場合には排気口が要ります。その排気口についても、例えば京都大学の先生方とか、意匠とか建築、造園、土木、グラフィックデザインとかを担当される当代一流の先生方の御意見を伺いながら、その景観とマッチした排気口をつくるというようなことをやっているわけでして、これはなお、京都の市民の方の間で、これを実行するためには十分話し合ってもらわなきゃならないというふうに思います。

○穀田委員 皆さんそういうことを言って、また、京都へお見えになったら、こんなひどいものと言いますわ。私、京都駅の駅ビルが建つときに、こんなものあかんと言っていました。そうしたら、亡くなった橋本龍太郎元総理が、私、新幹線が一緒になったら、こんなけったい、けったいなとは言っていませんでしたけれども、ひどい駅ビルって何や、航空母艦みたいなやつだねと言ったわけですね。そういうのをつくってからではどうしようもないんですよ。景観とマッチした排気口、冗談じゃないですよ。そんなものありはしないんですよ。だから、高速道路などという無駄をやってはだめだと。

 二〇〇四年以降、私が質問して以降、民営化に伴う事業区分の見直しで、事業主体が京都市に変更になっているんですね。そのことによって、新十条通り七百四十四億円、プラス油小路路線九百四十四億円の建設事業費のうち、二百七十億円が公団から京都市、京都府、国に負担させられることになるんですね。

 当初、一番最初、負担は要らないとか言っていたんですね。負担はするわ、京都はめちゃめちゃになるわというようなことをやっちゃならぬ。財政上の問題も大きい。京都市民が決めることだ、それは京都市民が決めることだけれども、金を出すのはこっちやねんから、それならやらぬときましょうと言ったらしまいやねんから、そういうことも含めて、本当に観光を考えるんだったら、京都を守ろうじゃないかと私は言っておきたいと思うんですね。

 だから、すぐ、そう言うと必ず、渋滞だとか排ガスというような同じことばかり言っているんですよ。高速道路ができたら渋滞がなくなるか、そんなことはないんですよ。そういうものをつくるから渋滞がふえるのは明らかだというのは世界各国共通しているわけで、そんな理論をいまだに振り回していること自体が、よう同じことを平気で言っているなということになりますわな。そのことだけ指摘しておきたいと思います。

 そこで、先ごろ、「クローズアップ現代」で旅の特集をやっていました。そうしたら、ゲストで数学者の大道芸をするピーター・フランクル氏は、旅のおもしろさとして、ヨーロッパでは、何年たっても変わらぬもの、これが大事なんだということを言っていました。祖父の代もこうだった、おやじの代もこうだったという、語り継いでいくということのよさというものを、何回もお互い行くということを随分言っていました。私もこの点では、ここは賛成できるんですね。

 ところが、政府は、全国で一律的な開発を進めて、大型店出店を野放しにしてきたということもあって、その結果、どこでも同じような町が出現する、どこに行っても同じなんです。町に行ったら、いろいろな大型のスーパーがあり、それから洋服屋があり、電気屋がありというのは、大体どこに行っても同じです。そういうものをつくってきて、貴重な自然や国土、景観、歴史や文化、伝統あるまちづくりというのを事実上私は破壊してきたんじゃないかと思うんですね。

 二〇〇〇年の観光審議会答申は、観光の意義として四つ言っています。人々にとって、地域にとって、それから国民経済にとって、四つ目には国際社会にとってということで、先ほど大臣は、前の方の答弁でもあったように平和の問題に言及していましたけれども、国際平和に貢献するということまで整理しています。

 しかし、では現実はどうかということでいいますと、小泉さんがやったのは、訪日外国人旅行者の倍増を目指すキャンペーンで、二〇一〇年に一千万人が目標だと。外国人旅行者倍増まずありきではないかと思っています。

 これは同僚の方にいただいたんですけれども、ニューズウィークの五月三十一日号で、「世界遺産が危ない 観光ブーム、温暖化、乱開発 地球の宝が消えていく」ということで特集しています。多くの世界遺産の観光と保存の問題についての矛盾が取りざたされているわけです。この中に、「地球上の「遺産」にとって、観光業は大事な役割を果たしている」ということで、世界文化遺産財団の会長は言います。後段に、「だが、うまく管理しないと、コントロール不能になる」ということまで指摘しています。

 だから、私は、観光というのは、ただ旅行者の倍増を目指していたのでは、それこそ住んでよし、訪れてよしという理念に反する事態が生まれかねないんじゃないか。その点についてどうお考えですか。

○冬柴国務大臣 そこに住む人が、自信とか誇りを持てるようなまちづくりが必要だと思います。そして、幸せを感じられることが必要だと思います。例えば、委員のお住まいの京都府の南丹市では、美山のかやぶきの里というものが今なお多く残っている、そういうことで、昔ながらの故郷の原風景を思わせる豊かな自然というものを生かしたまちづくりが進められるということ、そういう視点が大事だと思います。

 世界遺産、もちろん大がかりで、それを、来る人がごみを捨てたり、あるいはその周りに大きな観光客のための受け入れ施設がどんどんできたりして壊されてしまうということは、それは何としても防止しなきゃならないと思いますし、また、そこに住む人たちが、カヤぶきというのは、確かに見る人はきれいだけれども、住む人にとっては、これをもう一度ふき直すというときには大変お金がかかるということを私は知っていますけれども、そういうものを大切にしていらっしゃるという、その住民の郷土を思う心というものが子供や孫たちが幸せを感じる一つの素材になるのではないか、観光というのはそういう面もあるのではないかというふうに私は思います。

 したがって、人間だけをふやしたら、来ていただく人だけをふやしたらいいという視点では進めてはいけないというふうに思います。

○穀田委員 世界遺産を指定したときに、京都の世界遺産の指定というのは単に建物だけじゃないんです。その建物をこうしている北山、西山そして東山、これは何回も議論しているんですけれども、その土地全体を守らなくちゃならぬとここで言っているんです。だから私は、高速道路というのは不粋であって、そういうものは間違っているということを言っているわけなんですよね。

 そこで、大臣は自信と誇りを持てると言いますけれども、そういう方々の自信や誇り、さらには二〇〇〇年の答申を見ますと、そう言っているんですよ、観光の意義として、地域にとって、地域の連帯を強め、地域住民が誇りと生きがいを持って生活していくための基盤となる、これを多分引用しているんだと思うんですけれども、そのとおりだと私は思うんです。だけれども、ではそういう人たちが主体者となり得るかという問題なんですね。

 結局、今度のみんながつくろうとしている法律は、いわば魅力あるまちづくりを進めるための法律ですよね。その場合、今、地域住民の自信と誇りとあったように、結局のところ、では、住民参加、そういう人たちがつくり手としてやらなければ意味がないということですわな。そこが大事なんですよ。だから、私は、今パンフレットをいただきましてもう一度見直しましたら、旅行者にも魅力的なまちづくり、地域づくりを成功させている教訓というのは、住民、関係者が知恵を出し合って協力して取り組んでいるところにあると思うんです。

 したがって、基本計画の作成が今までの観光基本法と一番違う根本なわけですよね。そうすると、そういう基本計画の策定自身に地域住民の声を反映させる仕掛けをつくらねばならない。そこにきちんとした、今大臣は自信と誇りと言っていましたけれども、生きがいもあるわけですね。同時に、そこに息づいている生活があるわけです。その生活の視点から、物事を観光として考えるための住民参加を基本計画策定の中にもしっかり位置づけなければならないということについて、最後に、そこが大事だと思いますけれども、そこの点をぜひお願いしたいと思うんですが、その答弁をよろしく。

○冬柴国務大臣 十分検討させていただきます。

○穀田委員 終わります。