国会会議録

【第165臨時国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年12月8日)

 「北朝鮮の万景峰号入港禁止について」承認を求める件

○塩谷委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 私は案件のみ質問します。

 十月十八日の質疑で、既にこの案件に対して私どもの基本的立場を明らかにしています。北朝鮮に、核兵器を、核計画を放棄し、即時無条件に六者協議に復帰することを要求し、そのために、国際社会が一致協力して北朝鮮に迫って、平和的、外交的に解決することが重要だという見地を強調してきました。それは本院の決議にも反映されました。日本独自の措置もこうした見地からあり得ると表明してきたところです。

 私は、万景峰号の入港禁止措置とそれに続く措置が、いわゆる制裁のための制裁ではなく、北朝鮮を六者協議に戻し、平壌宣言に基づく対話の道に復帰させ、外交的解決を図る手段としてとられたことを了とするということまで前回も明らかにしてきたところです。特に、日本独自の措置は、中韓を初め近隣関係諸国との協調のもと、国際社会の一致結束を強め、外交解決を図る方向で実施されるべきであることを要求してきたところです。

 そこで、まず、官房副長官にお伺いします。

 日本が行っている制裁について各国の反応はどういうものか、そして、日本独自の措置というのは、中韓を初め近隣関係諸国とどのような連携、協調のもとで行われているか、改めてお伺いしたいと思います。

○下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 北朝鮮の核実験実施の発表を受けて、十月十一日、我が国は、すべての北朝鮮籍船の入港禁止等の措置を発表いたしました。我が国のこの措置に関し、米国国務省は、プレスステートメントを発出し、これを支持するとの立場を明らかにしております。また、中国外交部は、関連の措置が六者会合の再開に資するものであることを希望する等としつつ、日本がいかなる政策をとるかは日本政府が決定すべき事柄であるというふうにしております。また、韓国政府、ロシア政府は、我が国の措置に関し、公式の論評等は発出しておりませんが、そのような措置をとった我が国の立場について理解しているものと考えております。

 いずれにしても、北朝鮮自身が核実験を実施した旨、既に発表していたこと、北朝鮮のミサイル開発とあわせ、我が国安全保障に対する脅威が倍加したものと認識されたこと、北朝鮮が拉致問題に対して何ら誠意ある対応を見せていなかったこと等の諸般の事情を総合的に勘案して実施したものでございまして、適切であると考えております。

○穀田委員 どんな連携か、協調かというのを何で聞いているかというと、やはりAPECの際にもそういう中韓の方々がそういう点で表明されているということなんかも、私、言っているものですから、前回も冬柴さんは、うまくと言っては失礼ですけれども、なかなか答えないものだから言ったんですけれども、まあ、しゃあないですな。

 状況認識について、では、冬柴さんに聞きたい。

 自民党の中川昭一政調会長は、訪米した際に、北朝鮮核実験について、報道によれば次のように語ったと言われています。キューバ危機のように、キューバが核を持ち込もうとし、切迫した状況に似ているとしているんですね。政府も、これと同様の認識ですか。

○冬柴国務大臣 私どもの認識は、十月の十一日に官房長官が北朝鮮が核実験を行ったという発表をしたことに対して論評したことに尽きます。

 したがいまして、我々は、我々の方の核というものについて一切論評をいたしておるわけではございません。我々は、核は持たず、つくらず、持ち込ませずでございます。

○穀田委員 ちょっと違いますね。状況認識というのが、キューバ危機、いわば切迫していると。もちろん、核を持ち込んだという点での当時の現実はあります。というよりも、状況認識ですね。そういう切迫している状況なんだ、危うい状況なんだというふうに対処する状況認識としてとらまえているのかと聞いているんですけれども、そっちの方はどうですか。

○冬柴国務大臣 切迫感というのはそれぞれの主観でございまして、我々の、私の主観といたしましては、先ほど言いましたように、十月十一日の官房長官談話のあったように、そういう発表をしたということ、そして、それにより我が国に対する脅威というものが倍加したという脅威はあります。しかし、それをキューバの問題と対比するということはいたしておりません。

○穀田委員 そっちの方を聞きたかったわけです。

 ライス国務長官は、国連決議が行われた後に中国を訪問している際に、CNNのテレビインタビューやそれから同行記者団のインタビューに答えて、こう言っていますよね。何かキューバミサイル危機の再現であるかのような、北朝鮮の船舶を隔離か全面封鎖であるかのような話も含めて誤解が存在している、こういうふうにして、そう単純じゃないということを規定しているという点は、似たり、そんなものだということですな。

 では次に、そういうもとでライス国務長官も言っている、やはり大事なのは国連決議一七一八なんですね。だから、原則的な問題について改めて問いたい。

 国連決議の意義について、認識はいかがでしょうか。

○冬柴国務大臣 北朝鮮による核実験というものは、我が国のみならず、東アジア及び国際社会の平和と安全に対する重大な脅威である、断じて容認できないという認識でございます。

 国連憲章三十九条に基づきまして、国際の平和及び安全に対する明白な脅威の存在が認定されました。これは全会一致で採択されたわけでございます。それは一七一八でございます。これはすべての国連加盟国の判断を拘束する法的効力があります。我が国は、このような認識を広く国際社会が共有しているということを示しているものであり、非常に意義深い決議であるという認識をいたしております。

 北朝鮮は、こうした国際社会の強い懸念と非難を真剣に受けとめて、問題の解決に向けて、この決議において示された措置を履行するための具体的措置をとらなければならない、そのような認識でございます。

○穀田委員 この北朝鮮制裁決議というのは結構長いものでして、十七項目にわたっているものですよね。意義という点では、今、全会一致であるし、拘束するものだということもそのとおりです。

 私は、その経過にある、やはり非軍事的措置をとるんだといったことを何回も何回も確認していること、とりわけ、アメリカの当初案では第七章という形だけ書いていたものを、四十一条ということで限定的にしたという経過がとても大切だと思うんですね。そして、その上、とりわけ十三項などでは、六カ国共同声明、二〇〇五年の九月十九日に発表された共同声明の速やかな履行を目指して外交努力を強める必要がある、そして、緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎み、及び六カ国協議の早期再開を促進するすべての関係諸国による取り組みを歓迎し、さらに奨励すると。

 ここはやはり、つまり、単に国連決議一般というだけじゃなくて、日本が六者会議と六者共同声明に負っている責任という意味からいいまして、それが一つの入り口なりかけ橋になっているという意味合いは極めて重大だと思う点は御異議ございませんね。

○冬柴国務大臣 あなたのおっしゃるとおりでございます。

 なお、その中に、北朝鮮が国際社会の他の安全保障及び人道上の懸念に対応することの重要性も強調するという部分もありまして、これなど、我が国がこの一七一八決議がされることに尽力した足跡がここに残っていると思います。そういう意味で高く評価しているわけでございます。

○穀田委員 では、その意味で、やはり六者協議というのがとても大切なルートになっているし、一番ポイントになっているということは一致していると。

 そこで、今後の六カ国協議の展望、見通しについて官房副長官に聞きたいと思います。

 アーミテージ元アメリカ国務副長官は、報道によりますと、ワシントンで行った講演の中で、部分的な核の放棄や核の凍結などの成果は期待できるだろう、しかし、北朝鮮に核を完全に放棄させることは難しくなってきていると述べた。

 これについて、どんな見解をお持ちですか。

○下村内閣官房副長官 御指摘のアーミテージ氏の発言内容やその趣旨について必ずしも承知しておりませんので、コメントは差し控えたいと存じます。

 いずれにしても、北朝鮮の核保有は断じて容認できるものではなく、このことについては米国政府を含め五者の間で一致しております。

 政府としては、再開される六者会合において、米国、中国を初めとする関係国と緊密な連携をしつつ、北朝鮮に対し、安保理決議第一七一八号及び六者会合共同声明に従って、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄するよう強く求めていく考えでございます。

○穀田委員 もちろん、アーミテージ氏はアーミテージ氏の意見があるんでしょう。ただ、やはり重要な国際的な人物の発言ですから、私としてはどないかいなと思ったんです。

 では、もう一つ、重要な人も発言していますのでお聞きしたいと思うんです。

 小泉首相は三たび北朝鮮訪問の意向について述べたとこれまた報道されています。もちろん、真意はというようなことを言い出すと、またコメントを避けたいと思いますと言うのか知らぬけれども、しかし、この問題は、一回目、二回目訪朝されて重要な平壌宣言を結んでこられた当事者の発言ですから、それはいかがなものかというような話にはならぬと思うんですけれども、その辺はいかがですか。

○下村内閣官房副長官 御指摘の報道については承知しておりますが、一方、きょうの報道では別の報道もございまして、小泉前首相が正確にどのように発言されたのかは承知しておりませんので、コメントは差し控えたいと思います。

○穀田委員 では、もう一つ。

 私は、今官房副長官もそれから冬柴大臣も言っておられる、一番大事なのは、六者共同声明に基づいてどないして実行するかだと思うんですよね。

 それで、例えば拉致問題の解決という問題でいいますと、平壌宣言に基づいて、死文化されていると言う人もいますけれども、そうじゃなくて生きているんだ、だからこそこれに基づいて追及するんだというのが政府の立場ですよね。

 問題は、核問題の解決に当たってこの六者共同声明の意義をどのように理解するか、ここはやはり政治の要諦だと思うんですね。そこはいかがですか。

○冬柴国務大臣 遠い過去ではなくて、昨年の九月十九日、六者会議が、もちろん北朝鮮代表も入って開かれ、そして合意された、それが共同声明でして、その中に、今官房副長官も述べられましたように、朝鮮人民共和国は、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、並びに、核兵器不拡散条約及びIAEA保障措置に早期に復帰することを約束した、こういうふうに明記されているわけでありまして、約束したことは守らないかぬわけでございます。したがいまして、単純な法理でございます、何人も守らなければならない普遍の原理ですから、この約束を守りなさいということを通じてこれは履行されるということに尽きると思うわけでございます。また、そう期待をいたしております。

 したがいまして、早急に六者会合が再開され、そして約束したことを守っていただくということでこの問題は処理をされなければならないというふうに思います。

○穀田委員 その点は同感です。

 国連決議の一七一八にも、前文を含めてこの六者共同声明については三度も言及しているという、いわば国際社会としても、ここに礎石を置いているということは決定的なんですね。

 私どもも、この六者協議の再開を一日も早く望んで、その意味での朝鮮半島における非核化、東アジア全体の平和がつくられることを望んで、質問を終わります。