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【第166通常国会】 衆議院・国土交通委員会
国土交通委員会で、海洋基本法についての審議が行われた。
○塩谷委員長 次に、穀田恵二君。
○穀田委員 私は、少し違った角度から海洋政策の基本について議論をしたいと思います。 御承知のとおり、CO2の排出によって温暖化など、地球環境問題の解決というのは喫緊の課題になっています。海洋政策を考える上で、海洋というのは人類共有の財産であって、地球の主要な部分を占める、そういう意味での海洋環境の保全が大事だと私は考えるんですね。そういう点から、海洋の環境というのは今はどのような現状にあると認識しているのか、大ざっぱなそういう基本的な考え方、認識をまず大臣に聞いておきたいと思います。 ○冬柴国務大臣 四面環海の我が国は海洋国家であります。はるか昔から、人の往来、文化の往来、物の輸送、産業、生活、そのようなあらゆる分野におきまして海と深くかかわってまいりまして、海の恩恵を満身に受けてきた国である、私はそのように思います。 しかしながら、我が国の海洋につきましては、海上における安全の確保あるいは防災、海上の治安・秩序の確保、海洋環境の保全、それから海上輸送の確保、海事産業の振興、海洋調査の推進など、多くの課題があるわけでございます。 したがいまして、これらの課題につきまして、今後とも、海の恩恵によりまして我が国の発展や国民生活の安定を図るためには、総合的かつ体系的に対処していく必要がある、このように考えているところでございます。 ○穀田委員 原理論というか、漠とした話になっているんですけれども、私が聞きたかったのは、さっきも言いましたけれども、どちらかと言えば、海洋環境の保全と開発利用の関係について、九二年の地球サミット、先ほども少し議論になっていますけれども、アジェンダ21で示された持続可能な開発とは何か、改めて原点を確認したい、ここを少し明らかにしていただきたい。 その上でまた、国土交通省、本来これは、皆さん海洋基本法という話を一生懸命しておりますけれども、なぜここの省なのかという問題はあるんですね。無理くり持ってきたというのが割と否めない感じがあって、聞いている方も、ほかの人たちが全部来ているというようなことがあって私はどうかと思うんですけれども、しかし、国土交通省は海洋・沿岸域政策大綱というものを出していますから、その基本的な考えにおいて、環境保全と開発利用をどう位置づけているか。 この二つの点を明らかにしていただきたいと思います。 ○冬柴国務大臣 持続可能な開発ということが考えられるわけでありまして、将来にわたりまして我々の子供や孫たちも海洋の恵沢を享受できるように、海洋の開発や利用をするに当たりましては、海洋環境の保全との調和、あるいは水産資源の保全に配慮を示す、そういうことが非常に大事だ、それが持続可能な開発を実現するということになるのではないか、そのような認識でおります。 ○宿利政府参考人 今、穀田委員の後半の部分について、私の方からお答えをさせていただきます。 穀田委員からお話がありましたように、昨年、私どもは国土交通省海洋・沿岸域政策大綱というのを作成しておりますが、これはアジェンダ21が採択されたその理念であります持続可能な開発といったものを踏まえて私どもが作成したものでありまして、この大綱の中で、環境の保護及び保全の推進、また自然環境や美しい景観の再生といった施策を柱の中に位置づけておりまして、こういう理念に基づいて関係施策を推進していくこととしております。 例えば、一例を申し上げますと、閉鎖性海域を中心に、国土交通省、海上保安庁を含めてでございますが、あと関係の地方公共団体など関係行政機関が連携して行動計画を策定するということにしておりますが、これに基づいて、水質の改善、干潟や海浜の再生などに取り組む全国海の再生プロジェクトというのを今進めております。既に平成十五年には東京湾について、平成十六年には大阪湾について行動計画を策定しており、また、去る三月には伊勢湾と広島湾についても行動計画を策定したところでありまして、このように着実に施策を進めているところでございます。 ○穀田委員 着実にというふうに言われると、ほんまかいな、こう率直に言って疑いたくなることはあるわけですけれども、環境保全を考慮した節度ある開発、あなた方はこう言っているわけですね。それは趣旨は当然だと思うんです。 そこで、今、日本や世界の中で席巻している市場万能主義や、さらにはナショナリズム的な権益獲得を優先した場合、そっちの話は随分多いんですけれども、節度やルールが壊されて、はっきり言って、海洋生物資源さらには水産資源の乱獲だとか鉱物などの資源の乱開発が海洋環境を破壊するおそれがある。そういう点で、私は、地球環境や海洋環境がこれほど深刻になっている今日はないんじゃないか。したがって、優先すべきは環境保全であるということをしっかり位置づけて取り組むべきではないのか。その点の御所見を承りたいと思います。 ○冬柴国務大臣 もうそれはお説のとおりだと私は思います。 持続可能ということになれば、乱開発ということになればもう持続は不可能になるわけでありまして、我々の貴重な海というものを壊してしまうことになるわけですから、我々は、持続可能な開発を実現するための人類の行動計画、アジェンダ21が掲げる持続可能な開発は、海洋については、海洋の開発利用に当たりまして、海洋の環境保全との調和あるいは水産資源の保全というものに配慮することを示す概念であるというふうに理解をいたしております。 また、我が国の海洋をめぐりましては、海洋環境の保全のほか、海上輸送の確保、これはもう我が国の食料自給率が四〇%ということになりますと、多くの部分を外国に仰いでいるわけで、こういうものはすべてと言ってもいいぐらい海上輸送。これは、貿易立国と言っていますが、我々の製品も、あるいは資源も、九九・七%までが外航海運によってもたらされているわけでございます。大変大事だと思うんです。そのほか海洋産業の振興も課題になります。 これらを踏まえれば、我が国の海洋政策につきましても、海洋の開発利用、海洋環境の保全と調和を図りながら、すべてを推進しなければ持続可能なということにならないというふうに思うわけでございまして、非常に大事な視点だと思っております。 ○穀田委員 あえて私、確認しようと思いましたのは、やはり海洋国家というふうなことを、どちらかといえば、権益という問題にだけずっと話が行ったのでは本来まずい。しかも、アジェンダ21なり国連が決めた海洋法条約なりの趣旨は、単なるそれぞれの主権の発露だけじゃなくて、海全体をどう守るか、それは国民共有の財産だという立場だと思うんですね。その点をまずどんと据えないとあかんのと違うかと思っているものですから、ですから、あえてその点を確認させていただいたということになります。 きょうは一般質疑ということになっていますので、もう少し海洋の環境保全問題について、少し具体的な点を一、二聞きたいと思っています。 漂着ごみの問題について聞きたいと思うんです。 漂流・漂着ゴミ対策に関する関係省庁会議によると、近年、外国由来のものも含む漂流・漂着ごみが日本各地で問題となっている、特に海岸機能の低下や生態系を含めた環境、景観の悪化、船舶の安全航行の確保や漁具への被害などが深刻化しているという指摘が相次いでいると述べています。 漂流・漂着ごみの現状はどうなっているか、環境省にお聞きしたいと思います。 ○谷津政府参考人 お答え申し上げます。 財団法人環日本海環境協力センターが関係の調査を実施しております。その結果によりますと、平成十二年度から十七年度にかけて、年間平均約十五万トンの漂着ごみが国内の海辺に漂着している、こういう結果でございます。また、この財団が平成十七年度に実施いたしました調査結果によりますと、海外由来と推定される漂着物は、全国押しなべて平均いたしますと、重量比で六%、また個数比で見ますと二%という結果になってございます。 また、近年、医療系の廃棄物が漂着するという事案が観測をされております。これにつきまして、一昨年に続いて、昨年の八月中旬ころから、日本海沿岸地域を中心といたしまして、こういった医療系の廃棄物が漂着しているということでございます。昨年十二月末までの合計で見ますと、総数で約二万六千点以上、このうち約九百点につきましては中国語などの外国語表記が見受けられた、こんな状況でございます。 ○穀田委員 そうなりますと、二つあると思うんですね。漂着ごみ問題は、ごみが流れ着いた日本国内の市町村だけでは解決できない、だから国としてどう対応するかということが当然あるわけですね。今あったように、当然外国からの問題が出てきているというのが一つの新しい問題。これは昨年十二月にも開かれているんでしょうけれども、日中韓の三カ国で環境大臣会合もやられているし、また北西太平洋地域海行動計画、NOWPAP、そういったところでも議論されていると思うんですが、そういう点で、外交ルートを含めてどんな対応をしているのか。 つまり、今言ったように、国内市町村だけでは解決できない、負担はそっちへ行くわけですけれども、それをどうするかという問題と、対外的な問題での外国対応をどうしているのか、この二つ。 ○谷津政府参考人 お答え申し上げます。 まず、国内の対策でございますが、これにつきましては、昨年の四月に関係省庁によります局長級の対策会議を設置いたしまして、検討を続けてきております。 ことしの三月になりまして、この対策会議において当面の施策の取りまとめが行われました。この中で、各省が実施いたします平成十九年度以降の施策に関しまして、一番目、状況の把握、二番目、国際的な対応も含めた発生源対策、三番目、被害が著しい地域への対策、こういったことにつきまして、新規予算あるいは既存施策の拡充、こういったことで対策の進展を図ろうということでございます。 また、お尋ねの国際的な働きかけということでございます。 昨年十二月に北京で日中韓三国の環境大臣会議が開催をされたわけでございます。ここにおきまして、我が国から漂流・漂着ごみの問題を議題として取り上げるべきだという主張をいたしまして、議論になったわけでございます。その結果、三国のさらなるこの問題についての協力が必要であるという認識で一致をして、その旨コミュニケに記載をされております。 また、国連環境計画、UNEPが主導いたしまして、海洋環境に関する地域協力を世界で進めるというプロジェクトが動いております。その一環といたしまして、日本、中国、韓国及びロシア、この四カ国が参加をいたしまして、北西太平洋地域海行動計画というプロジェクトが動いております。この中で、二〇〇六年からでございますけれども、海洋ごみ問題についての個別具体のプロジェクトが動き出しております。この中で、モニタリングに関するガイドラインの作成、行動計画の策定、こういったことが進んでいるというのが実態でございます。 ○菅沼政府参考人 ただいまの環境省からの答弁に補足して、外交ルートでの近隣国、地域に対する問題提起についてお答えさせていただきます。 韓国に対しましては、数次にわたり調査及び原因究明を申し入れております。昨年の二月の日韓環境協力合同委員会においても問題提起をいたしております。これに対して韓国側からは、どのように漂着ごみを減らしたらいいのかということについて高い関心を示して、努力をしておるという説明がございました。多分台風などの自然災害が主な原因であって、すぐに解決するのは困難かもしれないけれども、韓国政府としても積極的に取り組みたいので長期的な視点で見守ってほしいという回答がとりあえずございました。 それから、中国についても、先ほど先生の御指摘のございました医療関係の漂着物について重大な関心を示すということで、外交部及び関係当局に対して注意喚起をいたしました。それから、調査及び原因究明を求めたところ、中国側から、沿岸地域における医療系廃棄物に関する管理を厳格に行うつもりだ、それから調査を継続するという回答を得ております。 それから、台湾についても事実関係の照会をしております。今までの調査の結果では投棄は確認されていないという回答があったところでございます。 ○穀田委員 医療廃棄物の中国問題というのは、そっちが答えたもので、私が質問する前に出ちゃったから、私が言ったわけじゃなくて、環境省がしゃべったものにあなたは言っていたから、ちょっと討論をよく聞いていただかないと、そうは言っていないので、そういうつもりだったけれども少し変えたわけで、ちゃんと聞いていてくれなあきまへん。 そこで、国土交通省はこの対策をどうしているのか、一言。 ○宿利政府参考人 国土交通省におきましても、この問題は重要な問題だと思っておりまして、二つの観点から対応しております。 一つは、船舶の航行がふくそうする海域で、私どもが所有しております船舶によりまして、船舶航行の安全の確保と海域環境の保全の観点から、浮遊ごみの回収といったことをやっております。 もう一つは、処理に要する費用の補助の関係でありますけれども、従前は大規模な流木などに限って対象としておりまして、また漂着量の七〇%までの処理量を補助対象としておりましたが、今年度から予算措置を拡充いたしまして、流木等に限らず漂着ごみの処理を補助対象とするということと、処理量も漂着量の全量を補助対象にするということで、対応を強化して取り組んでおります。 ○穀田委員 私、何でこんなことを言っているかというと、足元をきちんとやっていなければあかん、そういうものに一つ一つ努力しなければあかんということを言いたいわけですよ。 だから、海洋政策というのは、やはり海洋の環境維持、保全というものを最優先の立場に立つこと、それから、海洋基本法の制定を機会に、政府として、その意味で海洋の環境維持や保全のイニシアチブを発揮する、こういうことを国際社会にアピールしていくということが必要だ。私としては、その点が大事じゃないかということを申し述べて私の質問を終わります。 |
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