国会会議録

【第166通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2007年5月25日)


○塩谷委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 私は、冬柴大臣と議論をしたいと思っています。

 まず第一に、特定船舶の入港禁止措置を延長する理由は何か、端的にお答えいただければと思います。

○冬柴国務大臣 我が国が昨年十月十四日から実施してきたこのような措置につきまして、期限が本年四月十三日に到来することになっていたことから、四月十日の閣議におきまして、当該措置を六カ月間継続するという所要の手続をとったところでございます。

 これは、政府として、北朝鮮が引き続き拉致問題に対し何ら誠意ある対応を見せていないことや、核問題を含む北朝鮮をめぐる諸般の情勢を総合的に勘案して、当該措置の継続が必要であるというふうに考えたからでございます。

○穀田委員 この法案の提案趣旨説明のところを読まれたということですね。

 私は、この禁止措置の延長が、制裁のための制裁というのじゃなくて、日朝間、そして六カ国協議の合意の誠実な履行、そのための対話を促進する手段であるということだけは確認しておきたいと思うんです。いいですね。(冬柴国務大臣「はい」と呼ぶ)

 その上で、北朝鮮のミサイル発射並びに続く核実験に対して、私どもは、国際社会の意思を無視し、六カ国協議や日朝平壌宣言などの国際的取り決めをじゅうりんする暴挙であるということで、非難、抗議してきたところであります。その上で、北朝鮮に六カ国協議の合意に基づいて初期段階の措置を完全に履行することを求めるものであります。

 私は、院における決議の問題やこれらの対応について発言をしてきました。それらを実現するためにも、国際社会の一致協力した取り組みということと平和的、外交的に解決することが重要だという立場を主張してきたところでございます。

 私どもの、また私のそういう見解、立場についての大臣の所見を伺いたいと思います。

○冬柴国務大臣 これは外交問題でございまして、我々は、我々の主張が通らないからといって、武力に訴えることは絶対できないわけでございます。そうであれば外交交渉で解決する、それはもう当然のことでございまして、そのためには対話と圧力、これに尽きるわけでございます。

 対話ということで、我々は、例えば平壌宣言あるいは六カ国協議というところで本当に誠心誠意この問題を取り上げてきているわけでございますけれども、これに対して、北朝鮮の方が必ずしもそれにこたえているとは思えません。したがいまして、我々としては、それの圧力という面で、本件のような北朝鮮籍船の入港禁止措置をとっているところでございます。

 今後もこのように、対話も圧力もこれは平和的解決を希求しての外交的措置である、私は本質的にはそうだと思っております。

○穀田委員 五月十九日の新聞報道によりますと、「対北制裁六十八か国止まり」というのが出されています。昨年十月の北朝鮮の核実験を受けた国連安保理の対北朝鮮制裁決議第一七一八号に基づいて制裁を実施して安保理に報告書を提出したのは、外務省によると六十八カ国と一機関で、国連加盟国の三分の一程度にとどまっていることが報告されています。

 この事態についてどう見るのか、これまた大臣にお聞きしたいと思います。

○冬柴国務大臣 私の方は、国連に報告書を提出したのは七十カ国と一機関、一機関はEUでございますが、そのように承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、国連加盟国は、国連憲章第二十五条に基づきまして、安全保障理事会が決議したことにつきましてはそれに従うという国連憲章上の条約遵守義務をすべて負っておるわけでございます。特に、国連憲章の定める安保理の決議の遵守というものにつきましては例外が認められていないわけでございますし、すべての国が、それに従ってこの制裁を、一七一八の趣旨に従って措置をとるべきであるという立場だと思います。

 ただ、それが三分の一、七十カ国にしましても約三分の一強ですけれども、よく見てみれば、その周辺国、アジアとか、それから先進国はほとんどすべてその中に入っているわけでございます。遠く離れたアフリカとか、そういうところは入っていないようでございますけれども、私も国の名前とか地域とか調べてみましたけれども、ほとんど、アジア、オセアニア、六者当事国及び安保理メンバー、安保理メンバーの中で二カ国、アフリカの国で出していない国があるようでございます。ただ、実際はやっているんだけれども、報告するのは、対外的に、そういうふうにやっているということはしたくないという国もあるようでございます。

 したがいまして、三分の一だからという評価は、これはいろいろ分かれるのではないかというふうに思います。

○穀田委員 経産委員会で確かに七十カ国と言っていたのは見ました。私は、これは報道によればということで、十九日の報道を使っていますので、その違いは若干あると思います。それは、お話があったように、アフリカだとかいうところではつけないという話はわかっております。

 そこで、外務省に聞きたいんです。

 今、日本が行っている船舶の入港禁止措置並びに輸入禁止措置について、アメリカ、中国、韓国、ロシアの各国はどんなふうに評価しているのか。もちろんつかみ方がいろいろあると思うんですけれども、わかる範囲内で、それぞれの国のこの問題に関しての評価について述べていただきたい。

○伊原政府参考人 ただいまの委員の御質問でございますけれども、我が国が昨年の十一月に、北朝鮮の核実験を受けて、北朝鮮船舶の入港禁止等の措置を発表いたしました際に、まずアメリカの国務省は報道官の声明を出しておりまして、こういった日本の措置を支持するという立場を明らかにしております。

 それから中国については、外交部のスポークスマンが定例の記者会見において質問されて、それに対して、日本がいかなる政策をとるかは日本政府が決定すべき事柄であるというふうに述べております。

 韓国、それからロシア政府につきましては、私どもの承知している限り、我が国の措置に関して公式の論評等は出してはおりません。ただ、ロシア政府、韓国政府との意見交換等を通じまして、こうした我が国の措置について、我が国の立場については両国とも理解しているというふうに受けとめております。

○穀田委員 すべての国が理解をしているという意味ですね。だから、それは評価というよりも、日本側のとっている措置について、そういうことですねというような話ですね。わかりました。

 そこで、それらを踏まえて大臣に、もとへ戻りますが、最近の六者協議の動きをどう評価するのかということですね。六者協議の現状と、この枠組みの将来的展望についてどう考えるかということを少しお聞きしたいと思います。

 政府は、この六者の枠組みというのが北朝鮮の非核化並びに拉致問題の解決にとっては一番いい枠組みだというふうに認識していると答弁しています。

 私は、もちろん焦眉の現在の課題について、北東アジアを構成するすべての国が参加するこの枠組みが大事だというだけではなくて、私が考えているのは、将来の平和と安定に寄与する可能性がある、これを生かして、今現実にある核問題、拉致問題を解決しながら、朝鮮半島全体の非核化という道筋を通じて、北東アジアにおける平和の枠組みに発展させるという展望が必要なんじゃないかなというふうに考えているものですから、その辺の所見をお聞きしたい。

○冬柴国務大臣 前半の問題につきましては、この問題を解決するにこの六者会合というものが最適の枠組みであり、ここで解決を図るべきである、私はそのように心から信じております、努力すべきだと。

 後半の問題につきましては、これはいろいろの考え方があろうと思いますが、私も委員と同じような考えで、このような枠組みで北東アジアにおける部分的な地域的安全保障というようなものが図られるような将来展望が開ければ、それは非常にすばらしいことだと思っております。しかし、現在は、六者協議によって当面する焦眉の問題について解決を図ることに全力を傾注すべきであるというふうに思います。

○穀田委員 では、時間ですから、最後に一つだけ聞いておきたいと思うんです。

 今私は、平和の枠組み、それから朝鮮半島の非核化という問題と将来的な北東アジアの平和の方向ということを目指したい、これはお互いの共通の認識だと思うんです。

 そこで、安倍首相が言っておられる集団的自衛権の行使というのが、この間、かまびすしくやられていまして、有識者会議の発足もありました。そういった一連の関係についての問題が今浮上してきています。集団的自衛権の行使に関する発言についての大臣の認識をお伺いしたいと思います。

○冬柴国務大臣 委員は、安倍首相が集団的自衛権行使を容認するような趣旨の話に受け取れるような発言をされましたけれども、安倍首相は、集団的自衛権は行使しないということを前提に、個別的な問題について、それが集団的自衛権に当たるのか当たらないのか、すなわち個別的自衛権の範囲として、あるいは武器使用、武力行使ではなしに武器使用という範疇とかいろいろな面で、集団的自衛権には当たらないのではないかというような観点での協議が進められていると私は思います。

 安倍総理も、集団的自衛権に当たらないかどうかという、当たるものはできないという前提で議論が進められていると私は理解をいたしております。

○穀田委員 少し踏み込んだ話がもう少しあるかなと思いましたけれども、どうもその前提が違っているみたいでして、私は、少し違うんじゃないかと思うんですね。

 というのは、この間、新聞紙上で秋山元内閣法制局長官がこの問題について発言をしています。これは当時も、二〇〇四年でしたか、安倍さんが幹事長の時代に質問した問題で、そのときの答弁というのは、政府見解では日本が自衛権を行使するには三つの要件が必要だと。一つは我が国への急迫不正の侵害、それから二つ目には他の適当な手段がない、三つ目に必要最小限度の実力行使にとどめる、この三要件だと。問題は、「特に「わが国への」という点が重要で、他国が攻撃されても自衛隊が応戦できるという解釈はできない。」と。

 今かまびすしく議論されているのはこの問題なんですね。自衛隊が応戦できるかどうかというのが世の中で言われていて、冬柴大臣は違う話を、前提を違うところに持っていって話をされたわけですけれども、そういう議論が今されているのは事実だと思うんですね。したがって、彼はその最後の方で、「時の政府の判断で解釈を変更できるのなら、公権力を縛る憲法の意味が失われてしまう。」とまで述べています。

 ですから、研究の余地はないというのが政治家としての私の見解であります。

 私、なぜこんなことを言っているかということを最後に言っておきたいと思うんですけれども、北東アジアの平和と安定を考える際に、アジア諸国が、この集団的自衛権の行使研究に対して、アジアにおける新しい脅威だと言って憂えている事実をしっかり見てほしいということをあえて言っておきたいと思います。

 以上で終わります。