国会会議録

【第169通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2008年2月22日)

古都・奈良の世界遺産を破壊する道路計画は撤回せよ。

 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 政府はこの間、高速自動車道の整備の現状については、つながっていないとだめだ、ぶつ切りの道路が日本全国に見受けられる、そういうことでいいのかを含めて考えなければいけないと述べて、総理大臣もこの間、道路のネットワーク整備が重要であるという点を強調しています。ただ、一つ一つの道路の建設に当たっては、私は、財源や地域の環境や景観、安全、住民のニーズなど、さらには弊害に対する対応など、精査しなければならないことはあるんだと思うんですね。

 そこで、総理に、基本的な考え方なんですけれども、手続の問題でも、行政内部だけで決めるのではなくて、客観的な手続を行う必要があると思うんですが、その基本的見解をお聞きしておきたいと思います。

○福田内閣総理大臣 高規格道路の整備につきましては、これはやはり基幹的な問題、すなわち国際競争力の確保とか、また地域の自立、活力の強化を図る、こういうふうな観点から、極めて重要な役割を担っております。ですから、その機能を十分発揮させるために、ネットワークとしての全体としての広がりが必要であるということであります。

 ただ、実際に、では全部つなげるのかといったときに、今ちょっと御指摘があったかもしれませんけれども、地域住民の意見を聞かなければいかぬとか、そしてまた環境アセスメントの結果といったようなことも配慮しなければいけませんね。そういうようなことも必要だし、また同時に、その費用を負担する自治体の意見を聞いて調整しなきゃいかぬということもございます。客観的かつ厳格な事業評価、こういうことも必要だと思っております。

○穀田委員 手続の問題も極めて透明で客観的でなければならないということは、再三にわたって冬柴大臣も強調しています。

 実は、冬柴大臣は予算委員会における私への答弁で、道路の関係で、大きいものは国幹会議に諮るのは当たり前だ、抜けている部分があればそういうやり方について改正するということを述べました。

 そこで、具体的に聞いてみたいと思うんです。皆さんのところに資料をお渡ししている一を見ていただきたい。この間の予算委員会でも使わせていただきました。京都、奈良、和歌山を結ぶ京奈和自動車道で、三つの府県にまたがっています。そこで、総理が述べた、つなぐという意味では、この前、予算委員会で指摘しましたけれども、将来構想としての関西大環状道路構想の一部であることは明らかであります。高規格道路である京奈和自動車道の内容について、これは国幹会議で審議、決定した路線ですか。

○冬柴国務大臣 これはそういうものではございません。それでいいですか。これは違います。

○穀田委員 そういうものではないと。しかし、これは今お話ししてわかりますように、三つの府県にまたがって、大きな道路だ。大きいものは諮るということからしますと、抜けている部分があれば訂正するという言質の実行をしてもらわなければならないと思うんですね。その点はいかがですか。

○冬柴国務大臣 国幹会議というのは最高であります、道路の整備については。しかし、社会資本整備審議会というものもございます。そういうところも弾力的に、ここにも立派な先生方がたくさん入っていらっしゃるわけでございますので、弾力的に利用する、またそれを、その結果を国幹会議に御報告を申し上げる、そういうようなものも組み合わせて、皆様方に御納得いただくような、そういうようなものを今後検討し、つくっていきたい、そのように思います。

 高規格自動車道、そういうようなものにつきまして、一万四千キロにつきましては、それに編入するものについては国幹会議というものに諮ることになりますが、その外にある部分についてはそのような手続は今定められておりません。しかしながら、穀田議員からの御指摘もございましたように、県をまたぐような大きな道路、そういうようなものについては、私は、やはり第三者の公平な御意見も伺い、そういうものを経由して、そしてまたそれは透明性も図られるわけですから、そういう手だてが必要である、そういうふうに私は思っておりますし、そのように進めたいというふうに思っています。

○穀田委員 つづめて言えば、一般国道の自動車専用道路についても、そういう形で制度的にも保障していくということで理解してよろしいですね。

○冬柴国務大臣 私もそのような理解でございます。

 ただ、私もその意味では素人でございますので、学者その他に諮って、その機会とかはありますけれども、しかし、今穀田議員がおっしゃったのは、私は同感でございます。そういうものは諮るべきだろうと思います。

○穀田委員 そこで、確認しておきます。

 当然、一般国道も、この間お話があった、計画や整備を適切に判断するための手続を設けると。その際に、一般国道の自動車専用道路はほかにもありますが、圏央道などもその例なんですけれども、そこも当然同じ対象だということは確認できますね。

○冬柴国務大臣 そうだろうと思います。

○穀田委員 それを確認しました。

 そこで、私は、京奈和自動車道は先ごろ調査してきました。そこで、資料の二を見ていただきたいと思います。

 それは白黒なので見にくいんですが、この京奈和自動車道というものは、区切りがありまして、八つあるということがおわかりいただけると思います。これは、供用中、事業中、調査中とありますように、まだできていないところもある、工事中のところもあった。見直すというのは、これらがすべて対象だということになるのですか。そこははっきりさせてほしい。

○冬柴国務大臣 道路は、名前は京奈和とついていますけれども、それはそれぞれの区間でBバイCもとっておりますし、そういうような形で、区間で考えていくことになるんだろうと思います。

○穀田委員 それではだめなんですね。

 つまり、一般国道の自動車専用道路計画決定の手続というのは、実は、決定は国土交通大臣が行い、そして基本計画決定は道路局長が行い、実行するに当たっては一般国道自動車専道の整備計画決定は道路局長が行う、こういう仕掛けになっているんですよ。これではだめだから、そういうものだとすると、今お話があったように、工事中のものも含めて見直すことにしないと、第三者が入っての精査がされないじゃないかということを言っているわけですよ。そこを。

○冬柴国務大臣 この地図でいったらどの部分を言っておられるのか、そこをはっきりしてもらった方が議論が早いと思うんですが、大和北道路という、丸が二つ打ってある、そこら辺のことを言っていらっしゃるんですか。

○穀田委員 それはまだ未供用で調査中のものなんです。供用している部分が既にある、工事中の部分が、例えばここにありますように、大和御所道路などの一部分は工事中である。ここは私は見てきましたけれども、そういうところがやはり見直す対象に入るのかということを言っているんです。

○冬柴国務大臣 事業中のものについては、それなりの行政の決定の手続を経てここへ来ているわけでございますから、これからの例えば見直し、この二重丸を振ってあるとかそういうようなところは、今からするという部分については、それは当然だろう。ですから、全体を一括してやるんじゃないということを言っておるわけです、私は。

○穀田委員 それは違うんですね。工事中のものであって、決定したって、それは、そういう第三者機関の審議を経ていないから見直すべきじゃないのかと私は言っているんですよ。そこで、今調査中のもありました。それは見直すということなんですね。それはありましたよね。

 そうすると、総理大臣に少しお聞きしたいと思うんですけれども、そこで資料三を見ていただきたいんです。

 大和北道路についてです。これも、今お話があったように、調査中の路線です。この高速道路計画は、平城京跡の地下を掘って道路をつくる計画なんです。地下水の流れが変化し埋蔵物遺産が壊される、悪影響を及ぼす。大体深さ四十メートルに近い道路など、安全の面からも極めて心配だ。だから、もともと高架の構想だったけれども、世界遺産にふさわしくないとして地下方式になったものだ。

 こんな計画を古都奈良で進めていいと思われますか、総理大臣。

○福田内閣総理大臣 大和北道路は、平城宮の跡地の地下に埋蔵している極めて重要な史料でございます木簡というもの、これが影響を受ける可能性があるということで、木簡への影響を避けるために隣接する地下空間を通る計画をしている、こういうように承知しております。

 日本の貴重な文化財を保全し次世代に継承されるように最大限努めていくことが我々世代の責任でありますので、道路整備に当たりましては、環境アセスメントの実施に加えて、継続的な地下水調査、埋蔵文化財調査などを実施してまいりたいと思っております。

○穀田委員 一応やったと言っているんですが、今からも調査するという意味ですね、今の話でいうと。だって、調査してまいりたいと思いますということは、しますということですよね。先ほど冬柴さんは、調査中ですからこれは対象です、こう言っておられる。そこはいいですよね。

 そうしますと、私は、実は小泉さんの時代にも京都の問題を取り上げまして、京都の市内に高速道路はどないやと言ったら、それは余りにも無粋だと言ったんですね、小泉総理大臣は。今、福田総理も、そういう古都の木簡やその他の貴重な埋蔵文化の遺産を守るためにはよくやりたい、こうおっしゃっている。

 トンネル案の推定工事費は何と三千百億円と発表されているんですね。有識者の委員会もこれは開かれていまして、複数のそういう別案も提示していて、トンネルを回避した案の工費は千六百億円と有識者委員会が試算しているんですね。ですから、今お話がありましたように、調査中のものであるから検証し直す、そして踏まえてそれを壊さないようにもするということがありましたので、私は、無駄だというだけじゃなくて、有害なこういう道路はやめるべきだということは言っておきます。

 そして、もう時間が来ましたから一言だけ言いますと、こういう点での見直しをきちんとしないと、日本の道路というのは、つくり続けられること、特につなぐということだけでやっちゃだめだということを言っておきたいと思うんです。

 中期計画自身が、先ほどの議論もありましたように、きっちり精査されたものではありません。そして、総額先にありきということでこの間道路整備を続けてきたことが、そのあり方をゆがめてきたことは明らかであります。そして、私は、手続のあり方、先ほど言いました、大臣も、総理大臣も含めて、そういうことについて見直す必要があるということを言っておられるわけだから、中期計画自身がきっちり精査された内容のものではないということを改めてお二人が述べたに等しいと私は考えています。

 そういう意味で、今後の見直しときっちりとした精査、それから第三者検討委員会による精査、これらが必要だということを改めて申し述べて、終わります。