国会会議録

【第169通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2008年5月27日)

港湾法改正案質疑の国土交通委員会において、3月5日におきた明石海峡衝突事故で、深刻な被害を受けた漁業者の救済を強く求めた。


○竹本委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 港湾法改正案には、国際コンテナターミナルへの出入りについて、全国共通のICカードと生体認証により本人確認を自動化するための措置が盛り込まれています。省の説明では、全国共通ICカードと生体認証の導入で、渋滞の解消とドライバーの利便性向上、なりすまし防止を図り、制限区域への人の出入りを確実かつ円滑に管理するとしています。

 そこで、出入りの確認に時間がかかり渋滞が発生していると言うけれども、それはどういう実態なのかという点の説明を求めたいと思います。

○須野原政府参考人 各コンテナターミナルにおきましては、ターミナルの管理者が出入り許可証の提示や本人への質問によるトラック運転手の本人確認に一定の時間を要しているので、ターミナルゲート付近の車両渋滞の一因となっております。

○穀田委員 一因は、それはそうやろうけれども、出入りに時間がかかり渋滞が発生しているというのは、どんな渋滞の実態になっているんやと聞いているわけですやんか。

 私は、聞いてみると、本人確認より貨物の受け取りに時間がかかることが問題だという現場の声があることも聞いております。だから、東京などでは、港の中、内部が狭いために、積み荷待ちの車両が入り切れず、一般道まで並び、渋滞になっている。車両の流れやスペースをどう確保するのかという点の改善が必要と違うのかと思っているわけです。

 もう一遍お聞きするけれども、渋滞で大体どのぐらいの時間がかかっているのかということを言っていただくのとあわせて、そういう点はどうかということを質問していますので、よく答えてくださいね。

 それからまた、貨物受け取りの伝票処理を手作業で行うために時間がかかると。例えば名古屋港のように、各ターミナル共通のコンピューターシステムを導入し、手続が自動化されれば、ずっとスピードアップになる。共通カードをつくるんだったら、貨物の搬入搬出のために必要な情報も自動的にゲートで処理できるようにしてほしいという声もある。したがって、こうした点も改善しないと、出入り管理の電子化だけでは渋滞解消はできないのと違うか。

 その二つについてちょっとお答えいただけますか。

○竹本委員長 港湾局長、少し詳しくお願いします。

○須野原政府参考人 渋滞につきましては、もちろん港によって大分違いますけれども、港によっては一時間ぐらい、あるいは一時間強待たせる港もございます。

 そういう中で、今回、出入り管理のためのシステムを導入するわけでございますけれども、それによりまして、ゲートにおきます手続のための時間は相当短縮できるということで考えています。それによって、ゲートで待っていますトラックが一般道等をふさぐ形によって渋滞が起きるということは大幅に改善できるというふうに思っているところでございます。

○穀田委員 それは短縮の方は、まあええわ。

 一時間ぐらいかかるというのが現実にある。これは重大な事実です、大臣。だって、何でこんなことを言いたいかというと、前、皆さん、高速自動車道のインターチェンジと港をつないで十分にするんだ、こう言ったわけですよね。十分に縮めるのに何百億とかかるねんけど、一方じゃ、港の出入りで一時間かかっているという事実があるということを私は勉強した、これは大変やなというふうに思ったということです。

 もう一つ、今言うたのは、出入り管理の電子化だけでは渋滞解消はでけへんのと違うかと言ったわけです。それは改善が必要ではないかと。つまり、港の中での車両の流れのスペースの問題や、貨物の受け取りのそういう処理のシステムだとか、そういったところも必要でしょうと言っているわけです。そこはいかがかと。

○須野原政府参考人 全体の情報を、先ほども、シングルウインドー化をやる中で、必要な手続につきましても取り組んで、手続についてもスムーズにやるようにというふうに考えております。

 この十月からNACCS等の一体となりましたシングルウインドー化も進みますので、それの中でも、貨物につきましても手続を簡素化することによって扱いをスムーズに進めたいというふうに考えております。

○穀田委員 私が言いたいのは、一つのことを考えて電子化ということで、これができればできるんだというふうに言うのは、ちょっと大丈夫かという気がするんですよ。

 そういうもののもろもろの実情というのは、どこに焦点があるかというと、やはり現場に声があるんですね。その点はよく大臣おっしゃっているわけだし、私は、それはやり方の問題でいうと、率直に言って本人確認よりも受け取りに時間がかかるということが問題だという発言がある点は、そう言うと、担当者の皆さんは、それは本人確認をきちっとしてもらわなきゃ困りますというようなことを言うわけですけれども、それをあかんとは言っていないんだけれども、それらも含めて現場の声をよく聞いて対応してほしいということです。

 それともう一つ。たんたんたんと行きますから、じゃ、まとめてお答えいただきたいと思うんですけれども、電子化にかかる費用について、どの程度見込んでいて、埠頭管理者や利用者の負担はどの程度になるのか。

○須野原政府参考人 出入り管理電子化にかかる費用の関係でございますけれども、埠頭出入り管理システムにつきましては、重要港湾であってコンテナを取り扱う六十五港湾、百二十一ターミナルについて導入を予定しております。また、システムの根幹となります中央サーバー及びリーダーを国が整備することにしておりまして、このような前提で総事業費を試算すると、約二十億円となります。

 その中で、重要国際埠頭管理者やシステムの利用者にかかる使用料金は、現在、埠頭出入り管理システムの全体設計とともに検討中でございます。

 費用負担の基本的な考え方としては、埠頭出入り管理システムの根幹となります中央サーバー及びリーダーにつきましては、国が基盤整備を行いまして、その管理運営費用については、便益を受けるコンテナターミナルの管理者に使用料として御負担していただくことを考えております。

○穀田委員 だから、その仕組みと全体の費用はわかったけれども、問題は、管理者や利用者の負担はどの程度になるのか。

○須野原政府参考人 使用料の水準につきましては、今後、国とターミナルの管理者より構成されます協議会を設置しまして調整を図ってまいりたいというふうに考えております。

○穀田委員 それで、要するに、便益はそれで受けるわけだけれども、そのことによって負担が今までよりも高うなったら困るわけじゃないですか。そこはどないやということを暗に言っているわけやから、ちょっとそこを簡単に言ってほしいんやな。

 それで、言ってほしいついでに言うと、それともう一つ、ICカードですよね。情報管理について聞きたいと思うんですね。カードにはどんな情報が盛り込まれるのかということと、カードを持つ労働者はその内容をチェックできるのかということも含めて、あわせてお答えください。

○須野原政府参考人 共通カードに盛り込まれる情報についてでございますけれども、共通カードの表面上には、顔写真のほか、氏名、所属を表示、掲載することとしまして、共通カード内に搭載されますICチップにはID番号を入れることを考えております。

 また、共通カードを所有します方は、個人情報保護に関する法令に基づく開示請求により、その内容情報について確認することができます。

○穀田委員 あわせてと言ったのに。本当に困るな。

 要するに、もし、皆さん、負担がどの程度になるかわからないということだったら、実際に導入ができるかどうかもわからないじゃないですか。だから、費用が高くなれば、中小企業や零細業者や地方自治体は負担できへんじゃないですか。そこはどないやということで、後半はこれ、あわせて言ってくれと。だから、前の方をすぐ忘れんと答えてほしいんやけれどもな。

○須野原政府参考人 先ほども申しましたけれども、使用料の水準につきましては、いずれにしても、利用者等の御意見を聞きながら決めていくことになりますので、今後構成されます協議会等の中で調整を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。

○穀田委員 だから、言っているのは、協議会の調整はわかっているんだけれども、要するに、今の取り組みの中で安くなるのか安くならぬのか。それが肝心じゃないですか。だって、協議会をやったって、高うなったらそれはあかんと言うに決まっているじゃないですか。そういうシステムをつくるんだけれども、こういうことで全体の、今の経過からすれば、安くなるんでしょう。そう言ってくださいよ。

○須野原政府参考人 現在の実態を踏まえまして、極力低減するように努めてまいりたいと思います。

○穀田委員 ちゃんとやっていただいて、先ほどの情報の問題については、適正な管理と保護を求めたいと思います。

 最後に、明石海峡衝突事故について聞きたいと思うんですね。三月五日、明石海峡で起きた、ゴールドリーダー、第五栄政丸、オーシャンフェニックスの衝突事故についてです。

 ふくそうする海域での事故として黙過できないことであると私は考えます。航行安全対策、事故再発防止対策が必要と私は考えているんです。どのような対応を今されているか、事故を未然に防止できなかった国としての責任をどのように議論しようとしているのか、お尋ねしたいと思います。

○岩崎政府参考人 事故の再発防止でございますけれども、まず一つは、やはり、船の見張りが必ずしも十分でなかった、見張りが不十分だったというのが一つございます。

 それから、この海域は、先生も御案内のとおり、大阪湾の海上交通センターというところで船の動静を監視していたわけですけれども、それに対して、私どもが船側に呼びかけたけれども、十分答えがなかったというのが二つでございます。

 それから、ここは明石海峡でございますので、航路に指定しまして交通方法を決めておりますけれども、ちょうどその航路の入り口でございましたので、そこの船の動き方について少々問題がなかったかというのを検証しております。

 とりあえず、事故が起こりました直後に、私どもの第五管区海上保安本部の担当部長から、こうしたことについて緊急に、見張りをちゃんとすること、あるいは、私どもの海上交通センターからの呼びかけをちゃんと聴守することといった対応を通達したところでございます。

 本格的な対応につきましては、今、本省、中央レベル、それから地方レベルで、私どもなり関係の機関が集まりまして、対応策を勉強しているところでございます。そうしたものがまとまり次第、政策に反映していきたい、このように思っているところでございます。

○穀田委員 お聞きすると、明石海峡衝突沈没海難にかかる安全対策検討会というのと、それから明石海峡航路東口における航行安全対策検討懇談会というのをやり出しているということですわな。そこを言ってほしかったんですけれども。

 そこで、今回の事故で漁業被害は甚大ですから、大臣に聞きます。

 五月十八日、明石海峡のそういう油被害抗議の漁業者の集会が開催されて、事故被害の発生源の除去を含む油どめ対策ということが一つと、もう一つは、特定航路の事故対策としての基金創設の決議を採択しています。私は、この要求については当然だと思うんですね。

 この漁業被害を考える根本に、漁業者に落ち度はあるのか、責任はあるのかということだと思うんですね。それについて御意見をお聞きしたいのと、私は、国としても漁業被害への最大限の努力で対応すべきじゃないのかと。根本的な考え方、哲学をちょっと聞いておきたいと思います。

○冬柴国務大臣 漁業者には全く責任はありません。

 これは、二重衝突によって、最後にぶつけられた船が沈んでしまったという事故で、この帰責事由につきましてはまだはっきりしておりませんけれども、先ほど長官が言いましたように、大変困難な場所で起こった海難事故であるというふうに認識はいたしております。

 ただ、その沈んだ船から油が漏れ出しているんですね。これは、いわゆるタンカー、油送船ではないわけでございまして、普通の船が推進のために使う燃料がタンクから恐らく漏れているんだろうと思うんですね。そういう場合に、こういうものをどうするかということについての国際的な取り決めがないということがまず一つです。

 タンカーとかそういうものについては、これがもし沈んだ場合には、流出する油が大量でありますし、損害が非常に大きくなることが予想されますから、こういうものについては国際的な取り決めというものがあるんですけれども、無数に走り回っている船舶というものの持っている、蓄えている油が漏れ出した場合について補償をどうするのかという国際取り決めがないということ。

 それから、海は航行自由ですから、どこの船が入ってくるかわからないというようなこともあって、日本の国だけでするわけにはいかない。

 そういうことを考えますと、非常に冷たい結論ですよ。ですけれども、これはやはり、加害者と被害者の、民法七百九条、損害賠償の話になってくる、要するに司法で解決せざるを得ないというところにあると思います。

 ただ、それについて保険はありますよ。しかし、その保険にも限度がありまして、無限に広げるわけにいかないものですから、非常に困難な状況になっていると思います。最後は漁業共済だろうと思います。

○穀田委員 はっきりしたのは、漁業者には責任がない。だとすると、どないしたら漁業者の被害を救うことができるのかという立場に立つ必要があるというのが一つですね。

 国際的な取り決めがないと。そうしたら、国際的取り決めをつくろうという努力をする必要がある。すぐは解決でけへんのやから、それはありますけれども、これはこうだと。

 三つ目に、国に全く責任がないのか。とすると、先ほどあったように、困難な場所だ、ふくそうする地域だと知っている、しかも、呼びかけがあったけれどもうまくいかなかったというふうなことを初めとして、そういうシステムがうまく作動したのかどうかということからすると、国に責任がなしとは言えないという問題がある。これらのことを踏まえて、私はきちんと対応すべきじゃないかと思うんですね。

 そこで、言っているように、船主責任制限制度はあるが、船主が申し立てをしなければ、船主の責任が制限されるものでないと理解して間違いはないということですよね。だとすれば、多分そうだと答えてくれるんでしょうけれども、事故の当事者への積極的な働きかけなどあってしかるべきではないか。二つお答えをいただきたいんですが、明石海峡航路衝突沈没海難対策連絡調整会議があると聞いているが、政府としてどのように対応されていますか。

○春成政府参考人 お答え申し上げます。

 最初に、船主責任制限の関係でございますけれども、船主責任制限法によりますと、船舶の所有者が事故等によって損害賠償責任を負った場合に、裁判所への申し立てによりましてその責任を一定の限度額に制限することができるという制度になってございます。したがいまして、船舶の所有者がこの申し立てを行わないということであれば、委員御指摘のとおり、そうした責任制限という法的効果は生じないというふうに理解しております。

 それからもう一つの、事業者に対する指導の点でございますけれども、これは、海上保安庁あるいは私どもの関係も含めまして、現地において事業者に対する適切な措置、具体的に言いますと、主として現在やっておりますのは油防除の関係の措置でございますけれども、指導を行っているというところでございます。

○穀田委員 先ほど述べた、縮めて言えば調整会議、これに三つの船の船主は来ていますか。

○岩崎政府参考人 先生御指摘の連絡調整会議でございますけれども、今までに六回開催しておりますけれども、船舶所有者は出席しておりません。沈没した船舶のPI保険会社が契約した油の防除業者、これが参加している状況でございます。

 海事局長からも答弁ありましたとおり、私どもとしても、この会議にきっちり船舶所有者が出るように強く要請しているところでございます。

○穀田委員 今ありましたように、調整会議は出席を呼びかけていると。船主は、それは過失割合についてどうするかという問題はありますよ、だけれども、こういう問題について、船主は出てこない、何をやっているんだ、はっきり言ってそう思いますね。私は、こういうことこそ公に明らかにすべきで、六回も開催しているのに船主は一度も来ていないという点はけしからぬと思うんですね。

 もう一つ。その船会社は、調べると三井系であるし、さらには韓国の関係者とも聞いています。そういったところにも、最終の過失割合は、分担がそれはあるでしょう、だけれども、それが決まるまでも、まず補償のために責任の一端を担わせて、そのための解決にどんなことができるのかという相談をして、きちんと指導するぐらい当たり前じゃないですか。その点はいかがでしょうか。

○岩崎政府参考人 一義的な防除責任というのは沈んだ船の船主にあるわけですから、そちらに働きかけるのはもちろんのことでありますけれども、関係する船舶の所有者の方にもこの会議に出てくるように、あわせて強く指導しているところでございます。

○竹本委員長 穀田君、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

○穀田委員 会議に出てくればええねんけど、私が言っておるのは、そういったところにもきちんと負担を負わせるべきと違うかと。

 最後に言っておきたいのは、基金の設立の問題が、この間ずっと議論があります。国際的な条約とか枠組みが存在していないと。でも、それだけではだめで、さっき言ったように、そういう意味でいうと、イニシアチブをとって頑張ってほしいというふうに思うんですね。

 しかも、この問題では、油濁の際は被害額が大きいからということでありましたけれども、今回は例えばナホトカ号の際に匹敵するような漁業被害が起きているんですね。だから、油濁の場合は被害が大きいというのじゃなくて、こういう場合も被害が大きいわけですよ。だから、そういう意味での、何としても救済するという立場での接近というか、何ができるかということについていろいろな知恵を集めるという努力が必要だということを述べて、終わります。