国会会議録

【第169通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2008年5月30日)

国土交通委員会において、北朝鮮に対する措置。



○穀田委員 私は、昨年の北朝鮮に対する措置の継続の質疑で、次のように主張しました。
 十月の六カ国協議の合意について、朝鮮半島非核化への重要な一歩として歓迎する、日本政府が、この枠組みの中で協力を強め、核兵器のない朝鮮半島を実現するために先頭に立つことが急務だ、そうした上で、私はさらに、北朝鮮の核問題は切実な問題なのに、これまで日本政府が核問題で熱意がないと世界の少なく
ない国から見られてきたのは残念なことだ、現実にそういう弱点が存在するのだったら、大胆に正す必要があるということを指摘しました。
 そして、国会承認が求められている問題について、日本独自の二つの制裁措置は、北朝鮮による核実験を契機としてとられた対応措置である、核兵器問題の情勢が前向きに前進したにもかかわらずこれらの制裁措置を継続することは、核問
題解決のために日本政府が積極的役割を果たす上で障害になりかねないという点を指摘しなければならないと私は発言しました。
 そして、結論として、情勢の進展に即した対応が大切だ、したがって、制裁措置の継続、延長に反対をするということを私は明らかにし、我が党として反対の態度を明らかにしました。
 その後の半年間、私は、昨年の六カ国協議の合意がどのように進展しているの
かを注目してきました。きょうは、外務省にその点をただしたいと思います。
 五月十九日、ワシントンで、日本とアメリカと韓国の首席代表が集まりまして、会合が開催されました。そこでは、一つは、六カ国協議の現在置かれている
状況、二つに、このプロセスの進みぐあい、三つに、それを前に進めていくにはどうすればよいかなどの意見交換が行われたと仄聞します。
 外交問題でありますから、すべて報告しろと言っているわけではないんですけれども、報告可能な範囲内で答弁されたい。外務省にお聞きします。
○石川政府参考人 お答え申し上げます。
 五月十九日に、委員御指摘のとおり、六者会合の日米韓三カ国会合、首席代表者が集まりまして、ワシントンで協議を行いました。その内容でございますけれ
ども、これまでの米朝間の申告をめぐるやりとり、あるいは北朝鮮側が米国に提示をしました一万八千ページに及ぶ寧辺の核施設の稼働記録の資料、こういったものにつきまして、米国から詳細に説明を受けたということでございます。
 その上で、三カ国で、今後北朝鮮が行うであろう申告に含まれるべき要素について突っ込んだ意見交換を行いました。その上で、北朝鮮が早期にしっかりした申告を議長国であります中国に提出しまして、その後、六者会合プロセスが前に進むことができるように日米韓で緊密に連携をしようということを話し合ったと
いうことでございます。
○穀田委員 今、申告の提出を初めとした状況と、アメリカが北朝鮮に対して行っているテロ支援国家指定の解除をめぐる動向については、外務省はどのように掌握していますか。
○石川政府参考人 お答え申し上げます。
 申告につきましては、今申し上げましたとおり、いずれにせよ、できるだけ早期にしっかりした申告が北朝鮮から中国に提出されるということが大事だということでございます。
 それから、御指摘のテロ支援国家指定解除についてでございますけれども、米国の立場は北朝鮮の行動次第であるということでございまして、現時点におきま
してテロ支援国家指定解除を決定したわけではないという説明でございます。
 いずれにせよ、この問題は米国内法の適用に関する問題でございますけれども、米国の側の説明によれば、北朝鮮のテロ支援国家指定解除がなされるかどうかは北朝鮮による非核化措置次第である、こういう立場を維持する一方で、拉致問題に関する我が国の立場もよく理解している、これまでも、あらゆる機会をと
らえて北朝鮮側に対して拉致問題の解決に向けた具体的行動を働きかける、こういうことを実行してきているということでございます。
○穀田委員 申告という問題については、検証ということが当然必要なわけですけれども、例えば、検証が全部終わるまではその申告が正確かつ完全なものであるというふうに見るのか、その辺の、今の北朝鮮側がやろうとしている申告と検証という問題の関係については、今どのように方向性を持っているんですか。
○石川政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、申告の検証、これは非常に重要な課題であると私どもも考えております。
 まず、もちろんしっかりした申告が北朝鮮からなされるということが第一でございますけれども、その申告がなされた後には、検証をどうやってきちんとするかということが非常に重要でございます。
 その具体的なあり方、これについてはまだ議論は十分深まっておりません。今後、六者会合が開かれれば、この場で議論をされるということになると思います。
○穀田委員 つまり、しっかりしたものであって、検証については具体的やり方は六者協議でやるということになるわけですけれども、そうなると、少なくとも、去年の十月に行われた六者会合における合意で、十二月末までにそういうことをやろうといった内容が、わかりやすく言えば、少しずつ前へ動き出している
というふうに見ていいということですか。そこはどうでしょうか。

○石川政府参考人 昨年十月の合意におきましては、年末までに寧辺の核施設の無能力化を行うこととすべての核計画の申告を行うという二つの宿題があったわけでございまして、そういう意味では、若干そういう実施がおくれているという状況だと思いますので、いずれにせよ、合意したとおりに、できるだけ早く申
告がなされるということが重要だと考えております。

○穀田委員 要するに、当時は無能力化と申告という問題があったんですけれども、無能力化の問題の状況についてはどのように掌握していますか。改めて聞いておきたいと思います。

○石川政府参考人 無能力化につきましては、昨年末までに完成をするということでございましたけれども、まだ完成はしておらないということでございます。ただ、現地の状況によりますと、無能力化の作業は継続しているというふうに聞いております。

○穀田委員 総称して言えば、約束した十月の事態について、その二つの状況は、二つの項目、つまり、無能力化については作業が動き出している、それで、完全に終わっているわけじゃないと。申告についても、正確かどうかについてはまだあるが、一万八千ページに及ぶ内容が出されて、それを今検討し、さらに、そういう場合についてはしっかりしたものとして検証していく、その具体的やり方は今後あると。つまり、引き続き六者協議を開きながらそれを一つ一つ前へ進めていくという段階だというふうにとっていいということでありますね。

 そうなりますと、私は、今お話をした点で、それらが、北朝鮮の核問題をめぐる第二段階の措置の履行に向けた内容が、我々の目から見ても、だれの目から見ても、少しずつ動き出しているということだと思うんです。そういう点では、アメリカもその進展を一定評価していることは明らかであります。

 昨年の質疑で、私の質問に対して外務省は、非核化のプロセスというのは一定の進展を示している、北朝鮮がきちんと行動によって明確にしていくのかどうか見守りたいということを答弁しました。

 そこで、大臣に聞きますが、今の状況を踏まえますと、昨年の十月の六カ国協議以後、この間の動向と現状を大臣は全体としてどう見ておられるのか、所見を伺いたいと思います。

○冬柴国務大臣 約束は、期限を守るかどうかという問題ですけれども、それは違反していると言わざるを得ないと思いますが、ただ、寧辺についての三施設の無力化というものについては作業が進められている。それがどういうところまで進んでいるのかということが明らかにされなければならないと思いますが、進められている。

 一部では、無力化については、安全性等に問題があって当初のように作業を進めることが困難で、そういう物理的な問題ですね、おくれているけれども、作業は実施しているという評価を国際社会はしているようですから、その点については、期限はおくれているけれども、履行をする意思、それからその能力も認められるんではないかというふうに言っていいと思います。

 それから、すべての核計画の完全かつ正確な申告、それも末までには出されませんでした。これは、国際社会は早く出してほしいということでやっていたわけですけれども、一万八千ページに及ぶ報告書というものがここに言う二〇〇七年末までのすべての核計画の完全かつ正確な申告という内容なのか、それとも一部分なのか、そこはわかりません。けれども、そういうものが出てきたということは、履行する意思があり、そういうことを作業し続けているというふうに見ていいのではないかなと思います。

○穀田委員 要は、昨年の十月に六カ国協議で合意された内容の進展は、期限は守れていないけれども、少なくとも国際社会が無力化の問題については一定評価をしている、また、報告書については、一万八千ページ出ているけれども、値するかどうかを含めて検証する必要があるということだと。

 そうすると、全体としては、ストップしていた状況はいろいろあるけれども、前向きに事態は動いていると見ていいということですね。

○冬柴国務大臣 ですから、そのスピードはいらいらしますけれども、やる意思があると見なきゃいけないんじゃないでしょうか。そしてまた、六カ国のメンバーがどう評価するか、先ほどの一万八千ページはどうも寧辺のもののようでございますから、約束はすべての核計画ですから、その意味ではまだ部分的なものにしかすぎないんではないか、まだ見ていないからわかりませんけれども、そうではないかと思います。

○穀田委員 それでは、北朝鮮に核を放棄させる上で、六カ国の中で特に五カ国の協力は欠かせないと思うんですね。各国の動向も重要です。この間、中国の胡錦濤国家主席と韓国の李明博大統領との首脳会談が開催されました。核問題をめぐる六カ国協議と朝鮮半島の非核化の進展に向けてどのような論議が行われ、一致点はどのような内容があったのか、簡単に報告していただけますか。

○石川政府参考人 お答え申し上げます。

 二十八日に中韓首脳会談後の共同声明が発表されております。この中で、双方は韓中協力が六者会合と朝鮮半島の非核化プロセスを推進する重要な要因として作用するということで認識が一致し、朝鮮半島及び北東アジアの平和と安定を実現するために引き続き緊密に協力していくこととした、こういう記述がございます。

 それからまた、二十七日の中韓首脳会談に関しまして韓国政府が報道資料を出しておりまして、その中で、李明博大統領は北朝鮮の核問題の解決、北朝鮮の経済発展、朝鮮半島の平和実現のため北朝鮮の変化が必要不可欠である旨述べ、朝鮮半島の非核化を最優先とすること、非核・開放・三〇〇〇構想等、韓国政府の対北朝鮮政策の方向につき説明した、このような記述がございます。

○穀田委員 そのとおりだと思うんですね。

 その後、また五月二十七日、二十八日と両日にわたって北朝鮮の核計画申告実現に向けての米国首席代表ヒル国務次官補と北朝鮮の首席代表金桂冠外務次官の会談が行われています。

 私は、この二つ、要するに無力化と申告の問題と、あわせて拉致問題の進展についても議論されたと報道されているのを目にしています。齋木局長もその米朝の報告を受けていると思いますが、その中心点を報告できる範囲内で報告してほしいと思います。

○石川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、二十七日及び二十八日に北京で米朝協議が行われました。この結果につきまして、二十八日の夜でございますけれども、齋木アジア大洋州局長がヒル国務次官補と会いまして、中身について説明を受けたというところでございます。

 基本的には、今回の米朝協議におきましては、先ほど御質問ありましたけれども、十九日に行われた日米韓の三カ国会合、この結果を十分に踏まえて米国は対応したということでございまして、北朝鮮に対しましては、申告を早期に議長国中国に提出する必要性あるいは今後のプロセスについて米朝間で協議を行ったということでございますが、加えまして、アメリカ側からは、拉致問題を含む日朝関係、これにつきましても具体的な行動をとるよう北朝鮮側に対して働きかけを行ったもの、このように承知をしております。

○穀田委員 最後に私、私どもの見解だけ述べますけれども、今あったように、全体としては、いろいろあるけれども、前向きに進み始めているということははっきりしていると思うんですね。

 それで、六カ国協議がいつ行われるか、それはまだわかりません。私は、前回の質疑の際にも述べましたけれども、核問題それから拉致問題、過去の清算問題などの包括的な解決を図ることの重要性はるる述べました。その点については大臣もそれはそのとおりだとおっしゃっていましたけれども、核問題という重要な問題で前向きな突破が図られれば、それは他の問題の解決の妨げになるというんじゃなくて促進となるというのが私の考えであります。今進行している核問題の第二段階を前進させれば、拉致問題の早期解決の新しい条件が開かれることになると確信をしています。

 何度も強調しますが、日本独自の制裁措置は北朝鮮による核実験を契機としてとられた対応措置であります。〇七年五月に、私は、この禁止措置の延長が制裁のための制裁というのではなく、日朝間、六カ国協議の誠実な履行、そのための対話を促進する手段であることを大臣との間で確認したところであります。

 北朝鮮をめぐる情勢は各国の努力の中で前向きとなってきており、制裁措置を続ける理由はない。にもかかわらず制裁措置を続けるのは、日本政府が核問題の解決で積極的な役割を果たす上での障害になりかねないことを重ねて指摘したいと思います。拉致問題の早期解決の上でも、六カ国協議の合意に即して核問題の解決のための積極的な役割を果たすことが日本政府に求められています。そのためにも、制裁措置に対しては情勢の進展に即した対応をとることが大切であると考えます。

 したがって、反対の態度を表明して、質問を終わります。

○竹本委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。