国会会議録

【第169通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2008年6月4日)

大阪国際空港の騒音、環境問題と絡んで、国の財政負担問題について議論


○竹本委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 きょうは、大阪国際空港の騒音、環境問題と絡んで、国の財政負担問題について議論したいと思います。

 大阪国際空港の位置づけと空港区分の見直しについてお尋ねします。

 大阪国際空港は、全国三十二空港へと、羽田空港に次いで多い国内路線を有し、日本の骨格となる幹線ネットワークを形成している空港で、運用時間は十四時間、旅客数は年間千八百五十二万という基幹空港であるというのが大体の国交省の説明だとお聞きしました。それでよろしいか、位置づけについて。

 二つ目に、空港区分の見直し。つまり、役割や機能に応じた分類に変更するということなんですが、空港区分に対応した整備事業費、要する工事費等の負担について、唯一変わるのは大阪国際空港であるという点は間違いありませんね。

 その二つ。

○鈴木政府参考人 お答えいたします。

 大阪国際空港は、年間一千六百万人以上の旅客数があり、関西圏の航空需要を支える重要な空港であると考えておりまして、本法案においても、国際航空輸送網または国内航空輸送網の拠点となる空港として位置づける予定でございます。

 工事費の負担につきましては、大阪国際空港について、今回、負担をお願いしておるということでございます。

○穀田委員 今度の法律は、いろいろありますけれども、整備法を変えてやった、区分を変えたということで一番変化が起きるのは大阪国際空港であるという点は間違いないと。

 やはり、国管理の空港のうち、地方に管理が委託されている特定地方管理空港に係る経過措置や、それから自衛隊共用空港に係る暫定措置を含め、基本的には現状との異同はないということは確かですね。それは、そういうことでうなずいていただいたと。

 そこで、私は、大阪国際空港の歴史を少し振り返ってみたいと思うんです。

 大阪国際空港は、一九五八年の伊丹基地返還から五九年の一種空港への指定と拡張工事の開始のときには、地元住民の拡張反対運動が大きく展開されました。
一九六四年のジェット機の運航開始からは地元自治体の騒音対策協議会が結成され、七九年には大阪空港騒音訴訟が提訴され、その後、訴訟と調停申請が相次いだという歴史があります。一九七四年には大阪地裁、翌七五年には大阪高裁、そして八一年には最高裁判決、その中で、空港供用行為を違法とする判決が出されました。

 空港について、この問題について裁判所は、確定したのは、どのような判断を行い、騒音被害について国に対していかなる判決を下したのか、改めてお伺いしたい。

○鈴木政府参考人 お答えいたします。

 大阪国際空港における大型ジェット機等の運航による騒音被害を周辺住民が争ったいわゆる大阪国際空港訴訟の最高裁大法廷判決、昭和五十六年十二月十六日でございますが、これは、大阪国際空港が空港として使用されることによって周辺住民に騒音被害を与えていることをもって、本件空港の設置、管理に瑕疵があるとして周辺住民の損害賠償請求を認容したものでございます。

○穀田委員 瑕疵がある、責任がある、つまり、住民は騒音被害を受けたわけで、それを減ずるというのは国の責任だということを明確にしたということですね。

 住民の騒音被害については、本当に大変な思いをして、国益との関係だとかいろいろあったりして、その当時本当に苦労なされたわけですよ。そして、それに対して国は環境対策の強化を約束したと。その際、よく見てみると、最高裁の判決は、この大阪国際空港をある意味での欠陥空港と指摘して、国家賠償法に基づく国の賠償責任を認めたわけですね。

 当時から今日まで問題になった騒音問題がどうなったかなんですね。一九七三年に環境庁の告示、航空機騒音環境基準が出されましたが、その概要について述べられたい。

○鈴木政府参考人 済みません、今直ちには承知しておりません。(穀田委員「「数字でみる航空」にあるでしょう」と呼ぶ)失礼いたしました。地域の類型により違っておりますが、専ら住居の用に供される地域では、WECPNLといううるささ指数でありますが、これが七十以下、上記以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域では、同じWECPNLが七十五以下となってございます。

○穀田委員 今言ったのは航空機騒音環境基準なんですね。

 それで、B滑走路が供用開始になってから、今言われたWECPNL、これはうるささ指数といいまして、騒音の大きさと発生回数から計算された計算上のうるささの目安なんですね。これが九十を超えると生活破壊になるということで大問題になった。九四年の関西国際空港開港に伴ってジェット便を制限した結果、一定の改善を見たけれども、では、環境省が定めたこの基準を兵庫県の伊丹市と豊中市で満たしているのか。

○鈴木政府参考人 お答えいたします。

 伊丹空港周辺につきましては、騒防法に基づく環境対策、騒音対策をやっておりまして、WECPNL七十五を超える地域については第一種地域として民家防音工事を進めまして、その防音工事のなされた家屋の中では環境基準を満たしておるというような状況になっておると承知しております。

○穀田委員 それは全然的を射ていないわね。ちゃんと聞く言うてるんやから、改善されているのかと。

 これはあなた方が出されている資料、WECPNLの推移ということで、伊丹市、豊中市、ありますよ。そこで基準にしているところでいうと若干下回っているところもあるという数値、おたくのところが出している一覧表で、例えば伊丹でいうと緑ケ丘、北野、それから豊中でいえば原田、利倉、こういうところがありますよ。そういうところでいうと、若干下回っているというふうには言うんだけれども、これは、伊丹の森本というところに母は生まれたものですからよく知っているんですよ。そんなもの、あそこの例えば北野とか緑ケ丘なんというのは計測値は低いというんだけれども、それは空港から遠い地域を計測しているからなんですよ。伊丹市自身が行っている西桑津、北村、大野という地域では、やはり七十八・八、八十三・〇、七十四・〇という数値が出ているわけですよ。さらに調べると、同じく豊中でも市の独自のところでいうと、ローズ文化ホール八十一・一、服部寿センター七十六・七、青年の家いぶき七十六・七、国がやっている利倉センターでは八十二・八、豊中市域では七十五以下はないんですよ。だから、こういう現実があるということを見なくちゃならぬと。

 大臣、最初の方で答えてもらうはずだったんだけれども、こうなってくると、もう今答えてもらわなしゃあないなと思うんだけれども、これらの地域では、環境基準が定められて何年たっていると思いますか。三十年でっせ。基準を超える騒音の中で生活を余儀なくされている。だから今度の問題で、今まで空港建設から騒音公害、環境の悪化などで地元住民を苦しめてきて、その苦しめられた住民に負担を求めるとはけしからぬという声が寄せられているんですね。そこをしっかり胸に刻むべきだと私は思っています。何かありますか。

○冬柴国務大臣 伊丹は私の中選挙区時代の選挙区でもありまして、人一倍この問題については、例えば直下の中村地区の問題についても御存じだと思いますけれども、一生懸命解決に走ったことがあります。

 今、最高裁で設置、保存の瑕疵ということをはっきり言われて、それで、差しとめは棄却したけれども、損害賠償、後からした人は別だけれども先から住んでいる人に対しての損害賠償は認めたという結論で、その後の経緯としては、公害の調停団と航空局との間での長い長いあれがありまして、平成二年には大阪国際空港の今後の運用及び環境対策に関する協定、いわゆる存続協定というのが結ばれて、これによって今日まで来ているわけでございます。

 ただ、本当に今指摘されたような環境基準を超えるような問題について、いまだに違法だと指摘されたそういう問題が改善されていないところについては、こういう和解はしているけれども、非常に申しわけないと思います。

○穀田委員 そこで、大臣が二つおっしゃいました、申しわけないということと、それともう一つは存続協定という話がありました。

 そこで、この存続協定をめぐる問題は、大阪国際空港を廃港にするかどうかの厳しい議論を経て、九〇年の当時運輸省は、大阪圏における国内航空需要の増大、周辺環境対策の進捗などにかんがみ、利用者の利便の確保と周辺地域との調和を図りつつ、同空港を存続することとするということで調査をまとめたわけですよね。そして、関係自治体の同意を引き出して、大阪国際空港の存続及び今後の同空港の運用等に関する協定、いわゆる存続協定を結ぶに至ったわけですね。

 そこで、その存続協定の基本点についてお聞きしたいと思います。

○鈴木政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる存続協定では、基本方針として、大阪国際空港については、周辺地域との調和と利用者利便の確保とを図りつつ関西国際空港開港後も存続することを運輸大臣の責任において決定すること、二つ目として、空港機能等として、同空港については、関西国際空港開港後も運輸大臣が直轄で管理運営する国内線の基幹空港とし、関西国際空港との適切な機能分担を図ることとすること、三つ目として、発着回数として、総発着回数を一日三百七十回、うちジェット機の発着回数を一日二百回とすること、四つ目として、環境対策として、具体的な発生源対策、周辺環境対策及び安全対策等の事項を定めております。

○穀田委員 つまり、結論として言うならば、やはり今後とも環境基準の達成に向けて不断の努力をするということは基本方針に明示したということと、あわせて、機能との関係でいけば、お話があったように、運輸大臣が直轄で管理し運営するという約束を結んだということなんですね。

 問題はここにあるんですよ。大事なことは、存続協定の趣旨が、それに至る経過に照らせば、空港の運用を初め環境対策の実施、さらには空港の改修、改良に係る費用分担などについても、今後も国が責任を持って対応すべきと広く理解されたことなんですね。ここは大事なことなんです。

 この協定の趣旨と、今度の空港区分の見直しは、地方への負担ということになっているわけだから、明らかに反しているんじゃないのかということを思うんですね。それはいかがですか。

○鈴木政府参考人 空港区分の見直しにつきましては、地元とも十分協議をした上で、今回の拠点空港という位置づけのもとに、大阪国際空港につきましては兵庫県及び大阪府に一定の負担をお願いする。ただし、最初から全部ということではなくて、五年間の経過措置として、耐震工事等に限定した上で負担をお願いするということで決着を見たものでございます。

○穀田委員 私が言っているのは、その趣旨と新しい法は矛盾しているじゃないかと言っているわけですよ。矛盾しているから説得したんでしょう、当たり前じゃないですか。

 しかも、それは当面、その府県、要するに大阪府と兵庫県は一応納得しているみたいな話だけれども、多くの自治体は納得していないんですよ。現に関係地方自治体では、空港問題調査特別委員会等で空港の欠陥性の解消、環境基準の達成に向け抜本的な環境対策及び安全対策の推進を求めて決議して、活動しているわけですよ。

 だから、五年間ぐらい何とかこうとかなんかいう話じゃないんですよ。もともと国が大阪国際空港の存続を決めたんですよ。したがって、空港周辺の住民の安全の確保と航空機の騒音の防止と軽減の責任を果たさなければならないわけですよ。そのことに対して、私はいささかも譲るわけにはいかないということを言っておきたいと思うんです。

 しかも、存続を決めた結果、大阪国際空港は十万回を超える離着陸のある、だから一番最初に基幹空港と、おたくのところはそう言っているんだろうと言ったわけですよ。基幹空港として決めたのはおたくのところ、おたくというか国が決めているわけですよね。そこで役割を果たしているわけで、この現実というのは国の航空政策の結果であって、その点からも国が責任を果たすべきだと私どもは考えているわけです。

 その点の大きな立場から、私はやはりここは間違っていると。幾ら大阪府や兵庫県が納得している、それは国がこういう方向だからと納得するかしらぬけれども、さっき言ったように裁判という歴史的経過と存続協定という中身からすれば、これは国が責任を持つ話だということだと思うんですが、どうですか、大臣。

○冬柴国務大臣 国が責任を持つ事項だと思います。

 ただ、その後、関空、関西国際空港をつくるについて、いろいろな協定をしているわけです。そしてこれを伊丹市も、ここは廃止宣言をしていましたけれども、撤回して、共生宣言をしておられる。そういうその後の事情の変更もありまして、そして今回の仕分けについても、今反対しておられることがあるというお話でございましたけれども、県だけではなしに、関係自治体とも話をしてこういうことの取り決めをしているわけでありまして、そういう時系列的な流れの中で今日があると私は理解をいたしております。

○穀田委員 私は、国が責任を持つべきだと。確かに、伊丹は一九七三年に大阪国際空港撤去都市宣言というのをやって、その後いろいろな経過はありますよ。でも、その経過の中の一番最終は、もちろん審議会等で何度も何度も議論されるという経過はありましたよ。でも、依然として地方自治体の多くのところの希望は、いろいろなお金がかかる問題については運輸大臣が直轄して責任を持つという協定の精神は変わっていないはずだということを言っているわけですよ。
私はそこは絶対譲れないということを主張しておきたいと思います。

 最後に、いわゆる外資規制のあり方についての検討が盛り込まれていることに関連して、一言しておきたいと思います。

 私は、空港の持つ公益的な機能に着目し、公共的役割や代替不可能性といった事業特性を言うのだったら、民営化を行うのではなくて、公共による維持運営によって、利用者に対する安全で安定したサービス提供の確保こそ追求すべきである、このことをあわせて主張して、質問を終わります。

○竹本委員長 次に、糸川正晃君。

○糸川委員 国民新党・そうぞう・無所属の会の糸川正晃でございます。

 私も二十分の持ち時間ということでございますので、質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 今回のこの改正法律案でございますが、空港の整備及び運営に関する基本的な事項等について基本方針を定めることとされております。

 そこで、大臣にお伺いしたいというふうに思いますが、今後の日本全体の空港整備のあり方についてまずどのようにお考えなのかということ。そして、アジア地域において空港間競争が、もちろんシンガポールですとか仁川ですとか、そういうところで激化をしてきております。こういう中で、日本はハブ空港というものを目指していくのかどうか、我が国の空港の全体的な整備について今後のビジョンというのをお聞かせいただきたいというふうに思います。

○冬柴国務大臣 まず、一般空港の整備でございますけれども、これまでの空港整備によりまして、我が国の全人口の九五%が二時間以内で最寄りの空港にアクセスが可能となっております。空港の数も九十七ということでございますから、事業実施中の空港を加えますと、空港の配置的側面からの整備は概成している、ほぼでき上がっている、このように考えております。

 このため、一般空港につきましては、離島を除きまして新設を抑制する、新しく整備を始めるということは抑制するとともに、ソフト、ハードの組み合わせや既存空港の有効活用というものを中心とした質的な充実に重点を移すことにしているところでございます。

 なお、ハブ空港という、ハブ、スポークでございますけれども、我が国におけるハブというのはやはり拠点空港ということになろうかと思います。それは今整備を進めている成田、羽田、関西国際空港、あるいはそのままではどうかと思いますけれども中部国際空港等が、そういう役割を担い得る資格があるのではないかというふうに思います。

○糸川委員 今大臣、新設の空港というのは今後抑制をしていくということですけれども、では、今、既存の空港で使われていない空港なんかはどうするのかなと。これは今後、またその後で質問させていただきます。

 そうしますと、東京国際空港ですとか成田国際空港、こういう整備を国際競争力の観点からは特に急いでやっていく必要があるわけでございますが、今後の首都圏空港の整備、このことについて今どんなようにお考えでしょうか。

○冬柴国務大臣 それについては、五月二十日の経済財政諮問会議におきまして、私から首都圏空港、成田あるいは羽田における国際航空機能の拡充について説明を、これからのイデアルティプスというものを説明いたしたわけであります。

 この提案は、「世界と結ぶ成田」、「世界に開く羽田」の一体的活用によって国際航空機能の最大化を実現しようということでございます。現在の両空港合わせまして発着回数は五十二万六千回にも及んでおりますが、その上に約十七万回を加算する、そのようなことでございまして、それを国際空港として使う場合については、もちろん成田が中心でありますけれども、羽田におきましても、昼間に三万回、そして夜間、それからもう少し、成田が大変不便と言ったらあれですけれども時間がかかりますので、それの二十二時台とか六時台というようなところも、そこへは事実上発着しないんですね、できないんですね、よそから来ても。したがいまして、それを羽田の方で引き受けようというような工夫を重ねまして、両空港合わせて国際航空機能の最大化を実現しようというふうに提案をしているわけでございます。

○糸川委員 五月二十日でございますか、財政諮問会議で発言をされたということで、国際線を当初の計画から倍増するという方針を言われていらっしゃるわけですけれども、ただ一方で、地方の皆さんから東京国際空港への路線を増設してほしいという要望もかなりあるということを、大臣、ぜひまた御検討いただきたいというふうに思っております。

 地方空港のことについてお尋ねをしたいと思うんですけれども、地方空港も、地域競争力強化の観点ですとか利用者の利便性の向上、こういうものを図るために、空港整備は必要だというふうに考えております。

 ただ、先ほど大臣は、新しい空港は抑制をしていく方向にある、そういうビジョンを示されたわけでございます。政府は、今ビジット・ジャパン・キャンペーンを進められておりますけれども、外国人の旅行者、これをふやすためには地元へのアクセス、こういうものを確保していくと。先ほど大臣は、大体どこの県でも二時間以内にアクセスできるようにしているというようなことでございますけれども、さらに、そういう地方へのアクセスというのをしっかりと確保するということが欠かせないんじゃないかなというふうに考えております。

 例えば、私の地元の話になりますが、福井空港というのは、今、定期便が就航しておりません。以前は就航しておりましたけれども、今はもう就航していない空港でございます。地域の観光振興のために、この空港が活用できているとは言えないわけでございます。

 大臣も、この法案の提案理由の説明の中で、既存の空港を十分に活用する必要があるというふうにおっしゃられておりましたが、以前使われていて今は使われていない、こういうような空港の有効活用というものを図っていくために、今後どのような取り組みをされるのか。それから、地方空港の整備、このことについてどのようにお考えなのかをお答えいただけますでしょうか。

○鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今お尋ねの福井空港につきましては、滑走路が短うございまして、かつてはYSで定期便が飛んでおりましたけれども、その後、空港を移設する新空港計画等もございましたが、なかなかうまくいきませんで、現空港のままで定期便が飛ばないという状況が現在のところ続いております。

 せっかく残っております資産でありますので、何とかうまい活用の方策がないかというのは、地元福井県でもいろいろ考えておられると思いますが、私どもといたしましては、福井空港に限らず、今まで整備してまいりまして、それがなかなかうまく使われていないというような空港につきましては、また地元と御相談しながら、いろいろな知恵を出し合いまして、その有効活用に努めてまいる所存であります。

 また、離島空港を除きまして、新規の空港は原則抑制だということを言っておりますが、大臣から前に答弁させていただきましたように、福岡とか那覇のような、どうしても今の一本ではパンクしてしまうというようなところは、また能力増強を図る必要がありますし、それから、既存空港を有効利用する観点から、例えば計器着陸装置を高度なものにかえまして、就航率をよくするような取り組み等もやっておりまして、今度、広島でこの六月五日にILSのカテゴリー3という一番高いレベルの計器着陸装置が運用を開始することになっております。ちょうど梅雨どきで、欠航が割と多い時期でありますので、その欠航の低下が期待されておるところでございます。

○糸川委員 大臣、既存の空港で使われていない空港をどういうふうに使っていくかということで、今の航空局長の答弁では、いろいろ知恵を出し合ってということですけれども、ぜひ、使われていない空港、これも使わなくても経費は、ランニングコストというのはかかっていくわけでございます。

 確かに、福井空港なんかの場合ですと、滑走路は千二百メーターしかない、コンクリート厚も非常に薄いものですから、何回も離発着するというのは非常に難しいんですけれども、そういうところを、今はもうプロペラもかなり高性能なものも出てきております。フォッカーですとか、事故が起きましたけれどもボンバルディアですとか、ああいうものもあります。ですから、いろいろな活用の仕方というのがあると思うので、またそういうものは御検討いただきたいなというふ
うに思っております。

 ちょっと私の地元ではございませんけれども、隣の県で石川県に小松空港というのがございまして、これは、六月一日から台湾便が就航をしておりまして、エバー航空が運航するものでございます。地方空港をオープンにして地方の活性化につながる、こういうことが望ましいなというふうに思っております。

 ただ、今後、規制緩和を進めて、外国の航空会社に国内路線、例えば小松に台湾の便が飛んできて、小松から羽田にそのまま国内線の運航をするようなことが認められる、そういうようなことが起きてしまうと、利益率の高い路線を外国の航空会社に持っていかれてしまったりとか国内航空会社の収益を圧迫してしまうのではないかな、そういうような危惧もあるわけでございますが、今後の国内線の航空路線のあり方について、どのような方針をお持ちなのかをお聞かせいただきたいと思います。

○鈴木政府参考人 今お尋ねの、外国航空会社による国内運送というのは、領空主権の考え方に基づきまして、我が国のみならず、国際的にもほぼすべての国、地域において国内航空運送事業者に留保しておりまして、外国航空運送事業者には国内運送というのは認めないということになっております。いわゆるカボタージュと称する問題でございます。

 したがいまして、外国航空会社が国内運送を行うということは想定しておりませんので、国内航空運送事業者が、外国航空事業者がどこかの空港に乗り入れてきた場合に、そこからまた、フィーダーサービスといいますか、連帯運送みたいなことでつなぎの運送を引き受けるというような形を考えてございます。

○糸川委員 ありがとうございます。そういう考え方であれば安心できますので、継続していただきたいというふうに思います。

 先ほど逢坂委員の質問にも、スカイマークの機長さんが二人退職されたという質問があったと思いますが、二人の方が退職されたために、六月の百六十八便を欠航すること、これを国土交通省に届け出されたわけでございます。

 今後、中・小型機による多頻度の運航によって路線が増加していくというふうに思われますが、例えば、スカイマークのように自前でパイロットの養成施設というものを持っていないところの航空会社がしっかりと安定したパイロットを確保していくということは、非常に難しいんじゃないかなというふうに考えられるわけです。

 規制緩和によっての新規参入、こういうものが例えば利用者の利益になるというのは望ましいんですけれども、こういう例を見ますと、逆に利用者に迷惑がかかってしまうという状態になっているのではないかな。そのために、国としてパイロットの養成、育成に積極的に関与する必要があるだろうと思うわけです。

 しかし、航空大学校の飛行機操縦科の定員、これは平成十二年に、それまでの九十八名から七十二名、こういうふうに減員をされておられます。今後、国として、パイロットの養成、育成について、航空大学校をどういうふうに使いながら取り組んでいくのかということについての方針をお聞かせいただきたいと思います。

○鈴木政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、航空大学校におきましては、年間七十二名のパイロットの養成をやっておりまして、今のところ、この人数が精いっぱいでございます。これを四半期ごとに分けまして、十八名ずつ順次卒業させていく。訓練の関係がありまして、一遍には入学、卒業できませんので、四半期ごとにローテーションさせてやってございます。

 ただ、航空大学校以外に、東海大学でありますとか桜美林大学でありますとか法政大学が操縦士課程というのを大学に設けていただきまして、それぞれ数十人ずつの操縦士の養成を始めてございます。こちらの方を我々としては十分育成させて、あるいは航空大学校とも連携を図ったりさせながら、今後のパイロット不足についてしっかり対応してまいりたいと思っておる次第でございます。

○糸川委員 ぜひ、東海大学さんとか、そういうところが取り組んでいるからということだけではなくて、こういう航空大学校というものもしっかりと利用していただいて、もっと増員をするとか、そういう対応のあり方というのを、しっかりと取り組んでいただいて、良質なパイロットを育てるということでお願いをしたいなというふうに思っております。

 もう時間もございませんので、最後に、これは賛否もございますけれども、成田空港の民営化について大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。

 今回のこの法律案には、成田国際空港株式会社の資本構成に係る外資規制、この関係は含まれておりません。規制がない場合、その弊害として、例えば国内の緊急時の対応が心配される安全保障上の問題ですとか、利益追求、利益の配当が目的である場合、そういう外資の方々が多数を占めると、公共的な観点から空港運営というのがなされなくなってしまうのではないかな、そういうふうなおそれもあると思います。

 成田空港の民営化に関しては、私は、外資規制というのがあった方がいいのではないかなというふうに考えておりますが、外資規制について大臣がどのようにお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

○冬柴国務大臣 四面環海の我が国におきまして、成田空港は我が国の経済社会活動に不可欠な社会基盤である、代替不可能な施設である、このような公共性、公益性を十分に担保して適正な運営を確保することが必要だ。

 これは先ほど来言っていますように、開港三十年、そしてその前を入れれば四十年の歳月を重ね、その中には紛争で亡くなった方もいる。三千五百万人が今使って二兆二千億という国費が投ぜられた。これが危殆に瀕するようなことは許されないと私は基本的には思っています。

 したがって、外資規制というのはさまざまな意見がございました。本法律案国会提出に際しまして、公正かつオープンな投資環境の整備による対日投資促進という一つの要請と、あるいは、私が言ったようなことを総合考慮した安全保障のための空港などの基本インフラの機能の確保というような、それが両立するという要請にいかにこたえるか、これを検討してきた結果、行為規制のあり方あるいは資本規制のあり方について、いろいろな形があるんじゃないか、もっと考えるべきだということで、他の関係法令も含め、諸外国における政府の関与のあり方も参考にしながら検討を行って、年内のできるだけ早い時期に結論を得るということで、今回、この法案に盛り込むことを控えたということでございます。

 ただ、諸外国の例を見ますと、例えば、国とかあるいは公的主体が設置、管理しているところというのは、アメリカ、スペイン、ポルトガル、フィンランド、アイルランド、アイスランド、スウェーデン、シンガポール等がありますし、政府が株式を保有しているというところは、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スイス、韓国、タイがあります。

 それから、外資規制を導入しているところは、オーストラリア、メキシコ、それからオーストリア、韓国、タイがあります。外資規制がないというのは、イギリス、デンマーク、イタリア、ベルギーですけれども、デンマークは政府が三分の一持っています。イギリス、イタリア、ベルギーについて、それぞれにいろいろな問題が起こっておる。

 私は、そういうことを考えても、ここは、冒頭申し上げたようなことを何らかの形で、全体のコンセンサスが得られる形で、対日投資というものをシャットアウトしているのではない、そういう中でこういうものを調整的にどうしたらいいか、これを真剣に検討したい。そのためには、学識経験者等の御意見を伺いながら、早く、年末までにもちろん結論を出したい、こういうことでございます。

○糸川委員 ぜひ民営化の問題もしっかりと御検討いただいて、また協議していただきたいというふうに思います。ありがとうございました。

○竹本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

○竹本委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

○穀田委員 私は、日本共産党を代表して、空港整備法及び航空法の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。

 政府は、新規空港整備を進めてきたこれまでの空港政策について、空港整備は概成しており、今後は運営にシフトする必要があるとしています。これは当然のことです。

 問題は、今回の改正では、直面する問題に何らメスが入れられないということであります。

 全国の空港は二〇〇七年度末で九十七カ所に及びますが、整備中の静岡空港の場合、搭乗率が一〇〇%でも年間三億円以上の大幅な赤字となり、航空会社に対する運航支援のための税金投入、〇八年度だけでも六千万円や、搭乗率が低迷した場合の補償を開業前から投入、検討せざるを得ない状況にあると言われています。空港の建設費は空港整備特会からの補助と地方負担分の大部分を地方債と地方交付税で賄うというものであり、整備後の維持管理費が地方財政をずっと苦しめ続けるということになっています。さらに、羽田便への一極集中が進められ、その弊害が地方空港の経営を圧迫する構造となっています。

 これまで、採算性や環境立地面での疑問や反対意見が表明されても空港建設が進められてきたのは、国の設置許可があったからではありませんか。改正後の基本方針においても、既存空港の積極活用はうたうが、廃港を含めた空港管理のあり方や羽田一極集中の見直しなどは検討されることとはされていません。専ら国際便の開拓を地方に押しつけるやり方では、設置許可をした空港の適正な管理運営を追求すべき国の責任を果たすことにはならないからであります。

 第二は、騒音対策に対する国の責任を地方自治体に転嫁していることです。

 今回の空港区分見直しにより、大阪国際空港は、従来の第一種空港から第二種空港に事実上格下げされることになります。従来は全額国の負担であった工事費については、五年間の激変緩和措置を除き、国が三分の二、地方が三分の一とされています。

 大阪国際空港の位置づけについては、関西国際空港の開港に伴って廃港も検討の対象とされた経緯もありますが、一九九〇年に地元との間で存続協定が結ばれ、国が直轄で管理運営する国内線の基幹空港とすることとされてきたものです。これらの経緯に照らせば、環境対策の実施に係る費用負担などについて、今後も国が責任を持って対応すべきものであります。もともと国策として、東京と並ぶ国際空港として設置してきた空港であり、国の責任で騒音対策を行うのは当然のことであり、地方自治体に責任と負担を転嫁するのは本末転倒であり、断じて許されません。

 以上を申し上げ、私の討論を終わります。

○竹本委員長 これにて討論は終局いたしました。