国会会議録

【第169通常国会】

衆議院・予算委員会
(2008年6月11日)



○竹本委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 きょうは、淀川水系の河川整備計画の策定について聞きたいと思います。

 四月二十五日、近畿地方整備局が諮問した淀川流域委員会が、整備局の河川整備計画原案に対する意見書を提出しました。大臣は、一つの意見として重く受けとめなければなりませんと述べています。きょうは、その重く受けとめる内容について少し確認をしていきたいと思います。

 そこで、議論の中身に入る前に、二十七日に開かれた流域委員会で、整備局側が委員会の審議打ち切りを示唆したと報道されていることは御承知かと思います。

 九七年の改正河川法に基づいて、近畿地方整備局が学識経験者からの意見聴取の場として設置したのが流域委員会であります。〇七年八月に再開した際の委員も整備局自身が選んでいます。審議が終わっていないのに国交省側が勝手に審議を打ち切ることになるとすれば、審議に協力してきた委員の方々に大変失礼であります。そればかりか、何のために審議してきたのかということになります。

 私は、審議打ち切りなどとんでもない、流域委員会を尊重すべきではないかと思いますが、その点をまずお伺いしたいと思います。

○冬柴国務大臣 淀川水系流域委員会におきましては、平成十九年八月に近畿地方整備局が作成した淀川水系河川整備計画原案につきまして、二十回に及ぶ委員会で、河川管理者から延べ二千六百ページの資料を提出、説明し、延べ九十時間にわたり熱心に議論をしていただいたと聞いております。河川管理者といたしましては、これまでの議論を通じて、環境、利水、治水の各般にわたり既に流域委員会から広範かつ十分な御意見をいただいたものと考えております。

 洪水による被害から国民の生命財産を守るという河川管理者の責務として、淀川水系の河川整備計画が策定できていない現状をこのままこれ以上続けることはできないと考えております。河川管理者としましては、流域委員会あるいは関係住民、知事を初め関係自治体の長の御意見を踏まえた上で、責任を持って適切に判断し、一日も早く河川整備計画を作成すべきである、このように考えております。

○穀田委員 そこが問題でして、つまるところ、何のために法を改正したのか
ということになるんだと私は思うんです。

 大臣は、この問題についての答弁で、審議時間と資料の枚数が二千六百ページに及ぶという点をいつも言うんです。しかし、四月二十五日の流域委員会の意見には「これまでの委員会の審議は決して十分に尽くされたとは言えないが、」「より良い計画の策定に資するために、現時点までに委員会で審議検討してきた課題について、意見を提示することとした。」ということで、これは明らかに途中経過であるということが明記されています。

 それで、今のお話を聞くと、要するに策定しなければ命と安全が守られないと、今までずっと策定してこなかったから守れなかったのか、そんなことはないんですね。やはり今の事態の中で、どうしたらこれは一番いい案ができるのかということでみんな真剣に議論しているのであって、この間五月十五日に参議院の国交委員会でも、もう聞いたからこれでいいんじゃないの、こう答弁しているわけですね。これでは、自分のところがお願いした委員が一生懸命議論しているのに打ち切る、どうしていい計画ができるのか、何のための委員会かと言わざるを得ないと私は思うんです。

 大臣は九七年の法改正の趣旨、そしてその法に基づいて設置された淀川流域委員会についても、私は、率直に言ってよくわかっていないんじゃないかと言わざるを得ないんですね。

 河川法改正の経過と趣旨をどのように理解しておられるのか、端的にお答えいただければありがたい。

○甲村政府参考人 平成九年に河川法を改正しておりますが、大きく二つございます。

 一つは「河川環境の整備と保全」を河川法の「目的」に加えたことでございます。これにつきましては、環境関係は従来から河川でもやっておりましたけれども、それを明確に法律に位置づけたということでございます。

 具体的には、河川法一条におきまして「この法律は、河川について、洪水、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする。」というふうに改正したわけでございます。

 二点目は、計画の立て方でございます。

 従来の河川の計画は、工事実施基本計画を河川審議会の意見を聞いて定めるということでございましたが、平成九年の改正におきまして、その中身を、基本的なものを定める河川整備基本方針と具体的な整備の計画である河川整備計画に分けまして、河川整備基本方針につきましては社会資本整備審議会の意見を聞いて定め、河川整備計画を定める際には、まず原案につきまして学識経験者、住民等の意見を聞き、それをもとに河川整備計画の案につきまして都道府県知事の意見を聞くということで、いろいろな人の意見を聞きながら案をつくって最終的には知事の意見を聞く、そういうふうに変えたわけでございます。

○穀田委員 いろいろな方の意見を聞く、つまり、計画決定段階における住民参加を大きく位置づけたと。いろいろな不十分さはありますけれども、有識者を含む住民合意を手続として位置づけて、これまで建設省など行政だけが計画をつくって、有識者や住民などにこれですよということで押しつけるやり方を改めた。つまり、計画はお上がつくり国民は従うだけだという今までのやり方を改めて、行政も有識者や住民など国民と一緒になって河川整備の計画をつくっていこうということに改めた、これが一つの眼目であるというように理解していいと思うんです。

 九七年改正当時の建設省河川局長だった尾田栄章さんは、次のように述べております。整備計画策定に関しては住民の意見を聞く仕組みにした、関係住民を含めてみんなで議論して整備計画をまとめるのが改正河川法の趣旨だ、場合によっては、ここからが大事なんですね、場合によっては基本方針にさかのぼって見直すこともあり得ると述べておられます。これは、国会でも次のように答弁しています。「基本方針で定めた中ではこの整備計画がどうしてもできないということになれば、またこの基本方針のあり方についても再度検討をする、」としています。

 さらに、この答弁については、当時の課長だった竹村公太郎元河川局長も、ダムがだめなら次の代替案はあるということだとまで言っておられます。

 つまり、この一連の国会答弁や河川局長の見解からすると、住民らの意見で行政のダム案がまとまらなかったならば、別の代替案を考えるということなんですね。

 したがって、流域委員会の意見を無視するということは、結局、国の決めたことに文句を言うなという発想であって、国交省が住民参加の方向への一定の転換をしたという経過それから流れというものを逆戻りさせちゃいけないということを、私は指摘しておきたいと思います。

 そこで、そういう河川法改正の趣旨が生かされているかどうか議論しましょう。まず、河川整備の基本的考え方についてです。ダムと環境の問題について問いたい。

 整備局は、計画原案で、河川の整備や利用が淀川水系や生活環境に与えてきた影響を真摯に受けとめ、生態系が健全であってこそ人は持続的に生存し活動できるとの考え方を示して、これからの河川整備と管理の取り組みを転換しなければならないとしています。

 この河川整備と管理の取り組みを転換するということを示す内容は、これまで、先ほど局長も答弁したように、配慮が弱かった、わざわざ「目的」の第一条に加えた、環境への影響をこれからは重視すると受けとめるのが普通なんですね。

 これに対して、流域委員会は、意見書においては「ダム建設については、治水・利水面から先行的に計画が検討され、その上でダムが建設された場合の環境への影響についての検討が行われ、環境への影響は「小さい」あるいは「影響は回避、低減される」と結論づけており、上記の考え方が十分に反映されているとはいえない。」としているんですね。その上に「これまでの河川整備が与えてきた河川環境への影響を真摯に受け止め、治水・利水の考え方を根本的に転換するという姿勢で、環境・治水・利水を総合的に検討することを求め」ています。私は、とても大事な指摘だと思います。

 流域委員会の指摘は当然だと思うんですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

○冬柴国務大臣 先ほどの委員会は、委員会自身は二十回ですけれども、部会は三十五回やっているんですよ、五十五回やっている。その前は、実に五百八十二回やっているんですね。それで結論が出なかったんですよ。

 それで、この間出していただいたのは、もう一遍やり直せということですけれども、それには、中に入っている有力な学者は、その結論にはずっと異論を述べておられます。私も読みました。それについて、両論併記じゃなしに、委員長だけの御意見が主文に書かれていますけれども、それは、そうではないんだという学者が三名、異論を唱えていられることが議事録の中に書かれているんですね。そういうことが積み重ねられているわけでございます。

 それで、私は、人口や資産が高度に集積している、委員も私もそこへ住んでおるわけですけれども、大阪平野を初めとした淀川沿川は高い堤防で守られております。仮に一たん破堤するということになれば、壊滅的な被害が発生することが予想されるわけです。

 淀川におきましては、破堤による壊滅的な被害は極力回避し、また、万一破堤した場合でもはんらん量を少なくし、はんらん被害を軽減することがまことに重要である、このように考えております。

 このためには、洪水時の水位をできるだけ低くすることが必要であります。淀川におきましては、洪水時の流量を低減させるために、水量とかそういうものを全部計算できるダムあるいは遊水地の整備、それから河道の掘削、それから浸透、侵食対策としての堤防強化、さまざまな手法を工夫して実施することによって、着実に治水安全度を向上させることとしているわけであります。

 それで、堤防で全部できるということは、それはできないと思いますよ、そういうふうに思っております。

○穀田委員 私が今言ったのは、河川整備のあり方について議論をしているんですね。一番最初に大臣は、ダムは必要だという意見もある、こう述べられました。それは、わざわざ議事録も公開されているんですから、本当にみんなの意見がどうなっているかということを公開しているという点でも非常にすぐれた見解だと思うんですね。だから、この方式がよかったということはだれもが認めているということははっきりしていると思うんです。

 問題は、今言っているのは、「環境・治水・利水を総合的」というのがこれまでは利水、治水が優先で環境が後回しだったという話をしているんですよ。そうしますと、ダムが必要だということだけ言っているようじゃ、やはり今もってダム優先と受け取られるということをはしなくも私は明らかにしたんじゃないかなと思うんですね。

 流域委員会の意見書は、ダムについて、どうしても必要だという意見が不十分だと述べているんですよ。それは、「河川環境に与える影響や社会的影響から、ダムはできるだけ建設しない方がよい。しかしどうしても必要であるという場合には、他の施設にも増して徹底的な検討を行い、十分な説明責任を果たす必要があるということをこれまで整備局と委員会は共有してきた。」ということを言っているわけですね。しかし、「整備局のこれまでの説明は、ダムがどうしても必要であることについて十分説得的な内容になっておらず、環境への影響もダム建設を前提とした検討であり不十分」だ、ここを言っていることを、私は環境論の話をしているということをぜひ見ていただきたいと思うんです。

 そこで、わざわざこうなりましたから、次に治水の問題に入りましょう。そこからなんですね。

 流域委員会の委員が指摘しているのは、治水の考え方であります。何がどのように治水という問題について変わったかと。二〇〇一年にできた第一次流域委員会の委員長だった芦田和男氏は、「理念転換の第一は、河川環境に影響の大きいダムと河道改修による治水から容易に破堤しない堤防と流域対応を併用した治水への転換」、「もう一つの点は従来の計画規模の洪水を対象とした治水計画から、いかなる洪水にたいしても少なくとも住民の生命を守り、かつ被害を最小限にくい止める治水計画への転換」だ、こう述べているんですね。だから、こういう考え方でちゃんと議論しているわけです。それがしかも、当時の国土交通省も含めた、そういう意見だったと言っているわけですよね。みんな議論しているわけですから。

 ところが、今お話あったように、結局は何が何でもダムをつくるんだと。なぜそんなに変わるのか、なぜそうかたくなになるのかがわからぬというのが議事録にも書かれてあるし、そして意見として述べられている。

 そうすると、今までの二〇〇一年に転換した方針の考え方をまたもとへ戻しているということがこれで大体おわかりいただけると思うんですね。なぜ治水に対する考え方を変えたのか、ちょっとお聞きしたいと思います。

○甲村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、近畿地方整備局が十七年七月に公表しました淀川水系五ダムの方針につきまして、その委員会の提言を具体的にあらわすために、大戸川ダム及び余野川ダムは建設しないという方針を出しました。

 この理由といたしましては、淀川水系における治水対策として、まずは淀川本川及び宇治川、桂川、木津川等の堤防強化を実施することとし、洪水時に下流の流量の増加をもたらす狭窄部の開削や河道掘削等の河川改修は基本的に実施しないということを前提といたしました。そうすると、中上流部で洪水のときにあふれますので、ダム事業の洪水調節効果が小さいことから、当面は実施しないとしたわけでございます。

 その後、近畿地方整備局が平成十九年八月に公表いたしました淀川水系河川整備計画原案におきましては、余野川ダムは実施しませんけれども大戸川ダムを実施すると書いたわけでございますが、その理由といたしまして、堤防詳細点検の結果、先ほどの五ダムの方針の公表の後、淀川本川の堤防を調査いたしまして、その本川の堤防強化がおおむね五年間で終了することが判明いたしました。

 それとともに、先ほど申しましたように、中上流部で多くはんらんしているものを、戦後最大の洪水が起こったときにはんらんしないようにするということが必要であろうし、地域からもそういう要望が出ていたわけでございます。

 一方、そういう中上流部で堤防の整備を進めますと、あふれていた水が下流の方に集まってきますから、今度は淀川本川が危なくなるということで、その影響を小さくするために、淀川本川の橋梁のかけかえだとか、さらには、それだけでは足りないので、大戸川ダムで洪水調節を行うとしたわけでございます。

○穀田委員 質問の趣旨をよくとらまえていないんだよな。それは、大戸川ダムの関係について復活したのはなぜかというのは次に聞く話であって、今言ったのは哲学、思想を変えたのかという話をしているんですよ。

 やはり、今までみんなで議論をしてきて、どうも治水というのを抑え込むというやり方ではあかぬなというのが当時の考え方だったんですね。だから、私は、「最小限にくい止める治水計画への転換」、つまり、洪水が起きるかもしれない、それをどういうふうに対応しようか、それから、ダムと河道だけではあかぬ、そこから「破堤しない堤防と流域対応を併用した治水」、この二つを哲学として考えたわけですよね。その結果どうなったかという問題を聞いているのです。

 その問題を議論した当時、整備局側にいたのが宮本さんで、今の流域委員会の委員長であります。

 私は、その方に意見を聞いてきました。先ほども、命にかかわる問題と言っていました。彼は、ダムにかかわる仕事を通じて、ダムは、人々の暮らしや自然環境など、いろいろなものを犠牲にし、人の心をずたずたにする、ここまで犠牲にするのだから、納得するまでつくってはだめだ、河川法が改正され、住民の意見が反映される仕組みができた、そして、そのことによって既定路線を変えるチャンスだと思ったと彼は言うてはりました。

 だから、私は、そういう意味で、治水に対する考え方をそういうふうに改めたということに対して、また戻ったのはなぜか、こう聞いたわけなんですよね。

 そこで、大戸川ダムの話をやっていますから、これは皆さんにお渡しした、大戸川ダムの、どこにあるのかということと、一連の経過が何であったかということについて、わかりやすい資料として皆さんに配付しております。

 お話がありましたけれども、それをまとめると、先ほどの答弁からいくと、要するに、〇五年のときの七月の淀川水系五ダムについての方針では、利水者である人たちが全量撤退の見込みだ、それで、狭窄部を開削するまでは洪水調節効果も小さくて、治水単独目的の事業となることで事業費が増加して経済的に不利になる、だから大戸川ダムをやめるということですわな。そこで、お話があったように、その後どういうふうになったかという話がるるあった。

 先ほどの話をまとめると、要するに、淀川中流部での河川の掘削が必要だ、そうすると、改修後は下流で流量がふえる、だから、その調節のために上流でダムが必要だという論法なわけですね。

 しかし、もともとあなた方がやってきた大戸川ダムの建設というのは、治水、利水、発電を目的とした多目的ダムとして事業を行ってきたということを明言しているんですね。利水それから発電が撤退しているにもかかわらず、治水単独ダムに目的を変更して建設するというと、なぜこうなるのかということなんですね。利水、発電の目的がなくなったのであれば、工事実施の根拠はなくなったはずなんですね。治水単独なら、一からの計画検討をし直すべきであって、それは理解できないということなんです。

 そこで、滋賀県の嘉田知事は、そもそも利水も含め多目的ダムとして計画され、滋賀県では、さっき言ったものですよ、水没予定地の集落が移転するという犠牲を払った、利水が消え、何を犠牲にしたのかという思いだと苦言を述べておられます。

 さらに、〇五年に整備局が大戸川ダムの凍結を打ち出した際に、治水単独では事業費が増加し経済的に不利になると説明したのに、今になって治水単独ダムが経済的に有効という理由は何かとの疑問を投げかけているわけですね。当然じゃありませんか。

 また、利水や発電がなくなれば、膨大な建設費を水道料や利用料として後年度に徴収することができない。だから、治水単独では建設コストが丸々かかってくるわけだから、そういう意味で、費用便益分析など経済的評価が行われているものか、明らかにしていただきたい。

○甲村政府参考人 まず、治水の思想を変えたのかということでございますが、整備計画原案におきましても……(穀田委員「そこはもう飛ばしていいよ、さっきもしゃべったんだから」と呼ぶ)はい。

 次に、大戸川ダムの費用対効果でございます。

 大戸川ダムは、地図を見ていただいてもわかりますように、天ケ瀬ダムの上流の大戸川に整備することとしておりまして、大戸川の洪水を貯留し、下流の天ケ瀬ダムに到達する洪水流量を低減させ、天ケ瀬ダムで消費する洪水調節容量を少なくすることで、より大きな洪水に対しても天ケ瀬ダムで安全に洪水調節を行うことができます。そういう意味で、天ケ瀬ダムと一体となって淀川本川及び宇治川に対して効果を発揮するものでございます。

 大戸川ダムと天ケ瀬ダムの再開発、この両者を一体といたしまして費用対効果分析をいたしまして、費用対効果は約一・四となっております。

○穀田委員 では、端的にもう一度お聞きします。

 昨年十二月、ダム事業費の見込み額を示しています。多目的ダムから治水専用ダムに変更した場合、地方負担はどうなるのか、言ってください。

○甲村政府参考人 お答えいたします。

 整備計画原案に基づく大戸川ダムの総事業費につきましては、平成十九年十二月に近畿地方整備局が概算事業費として約一千八十億円であることを公表しております。これは、昭和六十三年度の事業費が七百四十億円でございますので、変更額は三百四十億円の増になります。

 関係府県の費用負担につきましては、今後、現行の事業計画である特定多目的ダム法第四条に基づく基本計画の廃止手続にあわせ、関係機関と調整の上、費用負担が定められるものでございます。

○穀田委員 だから、明示できていないということですわな、簡単に言えば。あれこれ言うけれども、明示できていない。問題は、地方負担が明らかでないということが最大の一つの結論なんです。

 そこでもう一つ、大戸川ダムの治水効果というのは、さっきありましたけれども、極めて限定的なんですね。二百年に一度の洪水時に淀川の水位を十九センチ下げる効果しかないんです。大戸川ダムがない場合は、HWLと言っているんですが、計画高水位を十七センチ超えるが、大戸川ダムをつくり水位を十九センチ下げても、HWLから二センチしか水位を下げることができないんです。

 最近は想定以上の集中豪雨などが相次いでいるわけで、想定以上の雨量があった場合、二センチメートルなどすぐ超えてしまうんです。だから、治水効果はいわば限定的になると彼らは指摘をしているわけですね。

 そこで、私は、時間がないから端的に言うけれども、整備局は、この流域委員会のさまざまな意見に対して、長い時間かかって幾らかかるかということについて答えるという、本当に僕は誠意がないと思うんだけれども、そこで、流域委員会側の方は、そういうことに対して新しい考え方で来ている。つまり、計画どおり整備した場合でも堤防が決壊する可能性はあるわけだから、結局のところ、今大事なのは、堤防補強をすることが必要じゃないのか、さっき言いました理論からすると。

 そして、五月までに出せと言ったけれども、出してきたと思ったら、私も見させていただきました。最大三千六百五十億円、二百年かかる、現在の職員を三倍にしても八十年かかるなどという試算を出してきています。この数字は淀川流域全域で、大戸川ダムと関係のない木津川や桂川まで対象としたものであります。

 問題は、計画高水位を超える区間は三・六キロしかないんですね。この区間の
堤防強化にはどれだけの費用と期間がかかるのか、明らかにしてほしい。

○甲村政府参考人 まず申し上げます。

 盛り土によってつくられた河川の堤防は、一般的に洪水時における水位が上昇するに従って破堤する危険性が高くなり、また、計画高水位をさらに上げることにより、破堤した場合の被害が大きくなること等から、淀川本川において計画高水位を上げることは適切でないと考えております。

 しかしながら、そのような課題をあえて無視して、仮に大戸川ダムが整備されなかった場合に計画規模の洪水が発生したときに、淀川本川において計画高水位を超える区間約三・六キロにつきまして、堤防のかさ上げ、それから侵食防止工事、それから用地買収、橋梁のかけかえ等を実施したといたしましたら、仮定でございますが、概算の事業費は約一千百二十億円と試算し、四月二十二日の流域委員会で説明をしております。

○穀田委員 私は、今の話を聞くと、あなた方の論理をすべて悪いと言っているんじゃなくて、あっち側が全部いいというんじゃなくて、きちんとした数字に基づいてお互いに議論すべきだということを私は言っているんですよ。

 しかも、堤防が壊れるといった問題についても、どれだけの水が出たら壊れるかとか、当然、侵食した場合に下の方から壊れるとかいう話は、お互いに共通しているんですよ。問題は、その距離全部のところにやるとかいうことでない問題を提起しているのに、やはりそれにかみ合った議論をしようとせずに物すごく時間をかけて答えるというやり方が極めて不的確だと私は言っておきたいと思うんです。

 私は、結論から言えば、堤防を強化すべき範囲というのは、計画高水位を超える危ない堤防をまず強化するのが必要だと思うから聞いて、その議論をしたらどうだということをまず言っているわけですね。

 私、もう時間が終わりましたと来ていますので結論から言いますと、国交省が選んだ人物でやっているんですよ。だから、そういう人たちに諮問していながらその意見書を半ば無視するのは、法改正の趣旨と逆行するということだと思います。ましてや流域委員会というのは、先ほどありましたように、何百回という話を大臣されていましたよね。それを全部、会議の報告や資料を原則公開して住民参加でつくってきたわけですよ。だとしたら、やはりそういう立場で配慮する必要がある。大阪、京都、滋賀の三知事は、四月に、ダムの必要性について有権者が納得する説明をすべきだと国交省に対して物を申しているわけですね。

 だから、そういう点もしっかり踏まえて流域委員会の意見を尊重すべきだ、公共事業のあり方全体が問われていて、ダムありきという河川行政を改める必要がある。真の意味での住民の参加を求めて、私は質問としたいと思います。

 終わります。