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【第171通常国会】 衆議院・国土交通委員会 ○望月委員長 次に、穀田恵二君。 ○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。 四人の参考人には、貴重な御意見をありがとうございました。 着席して質問いたします。 まず、今村参考人にお聞きします。 タクシー規制緩和の根本について意見を述べてください。 御承知かと思いますが、二〇〇〇年の道路運送法の審議の際、私どもは反対しました。当時の運輸大臣は、新しいタクシーの需要も起こってくる、労働者に対しても条件をさらによくしていく方向になっていくと述べました。規制緩和の未来がバラ色であるとしたわけであります。それに対して、私どもは、需給調整廃止によって供給過剰状態を一層深刻化させると指摘をし、規制緩和によりタクシーの台数はさらにふえ、一層の長時間労働を余儀なくされ、安全を脅かすことになると結論づけて、あわせて、政府の緊急調整措置は台数規制の歯どめにはならないと反対討論を行ったのであります。 結果はどうだったか。もう明白であります。政策の誤りがどれほど多くの方々に被害と苦しみをもたらしたのか。市場の失敗では済まない。利用者の安全、つまり、これは人の命であります。そして、労働者の労働条件悪化、これは生活が成り立たないほど深刻になっているわけであります。したがって、これらの検証の上に、まず真摯な反省が必要だと私は考えます。 タクシーの規制緩和は間違いであったと思いますが、その辺の結論を述べていただければ幸いです。 ○今村参考人 二〇〇〇年の改正道路運送法にかかわる国会の段階で、我々の労働組合も、私も含めてもそうでしたけれども、アメリカやヨーロッパを見渡しても、規制緩和を実施して成功した事例がないではないかと。ことごとくいろいろな矛盾や問題を引き起こしている。最終的には需給の調整や運賃の問題についてもきちっとしたものに変えるといったことで、一言で言えば、失敗というよりも誤り、誤りであるものをなぜあえてタクシーにここまでごり押しをしてやったんだという思いが非常に強かったわけです。 緊急調整措置制度にしても、運賃の認可制にしても、それを維持するから大丈夫であるということが相当言われましたけれども、結果は御承知のとおり、今日行われているような議論の結果になっているわけであります。 もっとわかりやすく言いますと、サービスがよくなるんだ、そして悪い事業者は市場から退出しなくちゃいけなくなるんだ、いい経営者、経営が生き残るんだ、したがって、そこに働く労働者の賃金、労働条件は改善をされる、いいこと尽くしではないか、なぜこのタクシー規制緩和に賛成をしないというのが当時の論調でありましたが、現実との関係でいうと、ことごとく反対の結果が出ているということについては間違いのないことでありまして、そういった面では、私は、一言で申し上げますと、過ちを改むるにはばかることなかれ、そういう精神のもとに今後のタクシー政策を行っていただきたいと考えております。 ○穀田委員 待鳥参考人にお聞きします。 市場の失敗という小委員会の問題提起があったことは御承知かと思います。そこで言うところの原因たる情報の非対称性、乗務員を選択しにくい、これはタクシー業界における従来からあった特性であったはずであります。この間の状況の反省を、市場のメカニズムを動かすようにすればよいという考えが成り立つのであろうかと私は思うんです。 さらに、サービスの多様性と称して運賃が安くなった例を挙げる方もいます。しかし、交通政策審議会答申は、人件費が一般的に費用の七〇%以上を占めるタクシー運賃、参考人によれば七四%と指摘していましたが、したがって、運賃を安くするには人件費を下げるしか、実際上、方法はないわけだということは、もう明らかであります。労働者の犠牲の上に市場原理を働かせることになるというのがこの市場の特質と私は考えています。 したがって、私は、公共交通の最大のサービスは安全だと思うんです。その安全を担う労働者の犠牲の上に成り立つ市場のメカニズムとは一体何ぞやというふうに思うんですが、御意見をお聞かせ願えれば幸いであります。 ○待鳥参考人 タクシーの選択性、今、流し中心ということで選択がきかない乗り物だと特性が指摘をされてきました。あるいは、歩合給を中心とした賃金構造がある。そういったものを放置して、やみくもに規制緩和したことが今日の状況をもたらしている、いわば市場の失敗をもたらしたという指摘だと思いますので、まさにそのとおりだというふうに思っています。 それで、市場の原理がきかないということでありましたけれども、需給調整がなされていた法改正以前、免許制のもとであっても、MアンドAというのは盛んに行われてまいりました。経営権の譲渡譲受も多く存在をしました。九〇年代初頭に八千社あったものが、規制緩和以前には七千社まで減っておりました。それは、MアンドAや経営統合といったことで減って、産業の効率化が図られてきたというふうに私たちは思っていました。 しかし、規制緩和以降、今や一万二千社を超えております。やはりそれは、本当に市場原理が働いて効率化が図られているのかということからすると、大きな疑問だというふうに思っています。需給調整がされていた時代でも、意欲ある資本というのはMアンドA等を通じて参入が十分可能であったということであります。 それから、減車が難しいということも言われておりますけれども、需給調整時代には、例えば、秋田で一割減車をみんなで自主的に取り組んだ、熊本で五%の減車を取り組んだということがありました。しかしながら、逆に、台数規制が撤廃をされてから、結局は、みんなで減車をして効率化を図ろう、適正化を図ろうとしても、ほかがふやすからできなくなってしまった、そういう逆行する状況も生まれてきているということであります。 やはり、きちっとこの業界の特性あるいは経営の体質等を見きわめた上で、いわば市場性をきかすのであればそういう対策をとるべきであって、ただ台数を撤廃する、あるいは運賃規制を自由化するということでは、この業界については健全化、効率化は図られないというふうに考えています。 ○穀田委員 富田参考人にお聞きします。 昨年十二月二十四日、車両台数の適正化及び同一地域同一運賃制度の確立を求める要請においでいただきまして、ありがとうございました。私もそのとき受けた側なんですが、少し、同一地域同一運賃にした場合、利用者、国民へのサービスの低下を招くという意見がありますが、それはどうお考えですか。 ○富田参考人 いろいろなサービスがありますので、私が全部お答えできるかわかりませんけれども、一つは、同一地域同一運賃というのは、お客様がどのタクシーをお選びになろうとも同じ運賃で乗れる、それで、同じように安心して安全に利用できるということの一つだと思います。そういう意味で、同一地域同一運賃が理想的ではないかなと私は感じております。 ○穀田委員 続いて、私は京都に住んでいまして、京都は、御承知のMKタクシーというのがございます。MKタクシーなどは、依然として規制緩和継続を主張し、増車、低運賃戦略をとっているわけであります。そういう事業者がとっているリース制について、どういう意見をお持ちでしょうか。 ○富田参考人 MKタクシーさんは、運賃が安く、またサービスがいいということでよく新聞に出ていらっしゃいますけれども、その地域でそういう会社がありまして、そのサービスというのは非常にいいと私は思いますけれども、運賃を安くすることによって、そこの地域のお客様がそっちへ寄ってしまう。そうしますと、そうでない、安くしていない、普通の運賃でおやりになっているところのお客さんが少なくなってしまう。そこで働いていらっしゃる乗務員さんが食べられなくなる、給料が低くなってしまう、MKさんの方の運転手さんの給料が高くなっていくということになってくるんだと私は思います。 そういう意味で、一カ所、一つの地域で少しの会社が安くするということは、やはり全体の乗務員さんのことを考えると余りいいことではないんじゃないかなというような気がいたします。 それから、リース制の話ですけれども、東京ではそういう会社がございませんので、私は東京の業者なので、実態としては、本当に身についた、肌からよくわかっているということではないと思いますから、概念的な答えになると思います。 リース制というのは、運転手さんに車を幾らで貸す、あとは、稼いだものは全部運転手さんに上げるという、簡単に言えばそういう制度ですよね。そうしますと、稼ぎたい人は、もう労働時間オーバーでも何でもいいから働いて稼ごうとする。そういうことができるということで、どうしても法律を犯してやる傾向が出てくるというような気がいたしまして、今のところ、リース制につきましてはやってはいけないことになっている、これは、国土交通省の方の行政の指導でそれはやらないことになっておりますので、私どもは、どこでもやっていないというふうに信じたいと思います。 ○穀田委員 それは、リース制はやっているんですけれどもね、MKタクシーはやっているんですね。ですから、三十万円を超えればあとは全部自分のもの、こういう仕掛けでやっているところにあそこの秘密があるわけですね。確かに、サービスその他についてはいろいろな意見があるんでしょうけれども、私は、根本は労働者犠牲のリース制だと思っています。 最後に、全参考人にお聞きしたいと思います。 皆さん、事業者並びに労働者の代表を含めまして、中心はやはり、需給調整と同一地域同一運賃というのが基本にあるんだと思うんです。それで、政府提出の、タクシー適正化・活性化法と略して言っていいと思うんですが、それと、野党提出の道路運送法改正案、もちろん、タクシー適正化・活性化法の改正案、二つ野党は出しているんですが、いずれが今の現状の打開に役立つかということについてお考えをお聞きしたいし、そういうのはなかなか言いにくいというのであれば、その両方の案の違いやそれぞれの法案の不十分さを指摘していただいても結構ですので、全参考人に御意見をちょうだいしたいと思います。 ○山内参考人 御指摘の特別措置法と野党の法案、これは両方あるわけですけれども、先ほど申し上げましたように、私は、特別措置法の中の今回の需給調整というよりも、減車の規定というのはかなり重要であるし、大きな問題だというふうに思っております。 その意味で、現状をかんがみますと、これを早急に実現するといいますか、あるいは実行していくというのがまず第一であって、事の緊急性から顧みますと、この問題について、まずは皆さんの御理解を得て、成案としてお取り上げいただきたいというふうに思っております。 それから、野党の提案されている案につきましては、これは道路運送法の本法の改正ということでございますので、その点については、もちろん御指摘の点、例えば同一運賃ということも一つの選択肢かとは思いますけれども、これについては、もう少し、若干の審議の時間が必要である、あるいはその本質についてもう少し見きわめる必要がある、こんなふうに考えております。一つの選択肢であるというふうには考えております。 以上でございます。 ○待鳥参考人 政府案の特別措置法については、タクシーは地域公共交通機関ですから、地域協議会の中で地域の実情を十分酌み上げて議論をするということについては、すぐれた点だと私たちも評価をしたいというふうに思っています。 しかし、供給過剰問題の対策あるいは運賃の対策というのは、今緊急に、全国一律に講じなければならない問題だというふうに思っています。したがって、三案のいいところを取り入れて成立を期していくということが一番求められているんじゃないかというふうに思っています。 とりわけ、特措法には運賃問題が書けておりません。運賃問題の今の問題についても、いわゆる交通政策審議会のワーキンググループの中では十分な議論をされて、今の低運賃競争の問題点についても指摘をされているところでありますから、それを法律に生かしていくということについては問題がないというふうに考えています。 もう一つは、それと、悪質事業者対策についてもそうであります。政府で講じられていますけれども、今、車両停止や営業停止処分等を食らうと、あるいは許可の取り消し処分が近くなってくると、偽装倒産をさせて、あるいは労働債権も踏み倒して新しい会社を起こして、また同じところで商売をするといったような悪質経営もあります。 そういう意味で、運賃問題あるいは悪質事業者対策等も道路運送法の中できちっと講じていくということが今求められていますので、十分な御配慮をいただきたいと思います。 ○富田参考人 野党の皆さん方の提出されている法案における道路運送法第九条の三でございますけれども、その改正が業界の悲願である同一地域同一運賃を制度化するものであれば、大変ありがたいことであると私は感じております。いずれにしましても、先生方のお力により適切な運賃制度が実現できれば理想的だと考えております。 また、道路運送法六条の問題でございますけれども、その改正が平成十二年以前の需給調整規制を復活し制度化するものであれば、大変ありがたいことであると考えています。いずれにしましても、減車を含む需給調整は業界の悲願であり、先生方のお力によって実現できれば理想的だと思っております。 最後に、特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法案への評価でございます。私を含め、国土交通省の交通政策審議会での一年間の議論を経て、今般、政府の法案が出されているものと承知しており、私としましては、この法案の一刻も早い成立を望んでおりますが、野党提出の同法案も政府の法案とほぼ内容を同じくするものであると理解しておりますので、後は国会の先生方の協議にゆだねたいと存じております。いずれにいたしましても、この特別措置法案は業界の発展のために必要不可欠なものであると思いますので、一刻も早い成立をお願いしたいと思っております。 よろしくお願いします。 ○今村参考人 いずれが打開に役に立つのかというふうに言われれば、政府案プラス四野党共同法案ということになるんだと思います。それがもし可能であるとするならば、即座に成立をさせ実行させていただきたい、私はこのように考えております。 いずれにしましても、どこまで詰めていただけるかという問題もあるんですが、すべてがなしよということではない問題、相当いろいろな方々もいろいろな問題意識を持っていらっしゃるわけで、その辺で、よりよい方向でのタクシーの打開という点で努力をしていただけたらと思います。 なおかつ、一点ですが、あえて、この四野党の共同法案との関係でいいますと、私はやはり、タクシー運転者をどう大事にするのか、その人たちが主人公となるような働き方であり職業である、そういう知恵というのももっと工夫していただけたらどうかというふうに思います。 私たちは、ローマとかロンドンの例を引きながら、タクシー運転免許の法制化ということで国家資格制度を提起いたしておりますけれども、これは、間接的な需給調整機能を持つものでもありますから、そういった点では直接的な台数規制ではない、そういう有意性ということも含めて、大いに検討すべき問題であろうかというふうに思いますので、ひとつ、その辺も含めて御尽力をお願いしたいと思います。 ○穀田委員 本当にありがとうございました。 私どもは、今皆さんから御意見をいただいて、やはり与党案と野党四党の案は、今の現状を打開する上でそれぞれ持っているよさが率直に言ってあるんだと思うんです。 ですから、富田参考人からも、最初の方は九条の話や六条の話に触れられて、後ろの方の結論はもう一つ、どういうことかなというのは少しあるんですけれども、九条と六条を変えろということは道路運送法を変えろということですから、はっきりおっしゃっていただくのが、まあ、最初の方に言ったのが多分あるんだと思うんです。 ですから、私どもは、先ほど待鳥参考人もおっしゃいましたように、地域の問題の点については、非常に、私どもはそれをあかんと言っているわけじゃないので、それらを踏まえて、どうしたらこの問題を打開できるかという立場で、我々は過去のことを余りとやかく、まあ、きょうは一言言いましたけれども、それをやはり野党四党にまとめ上げたという経過がございますから、今後はその実現のために頑張りたいと思います。 ありがとうございました。 |
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