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【第171通常国会】 衆議院・国土交通委員会
第23号 平成21年6月9日(火曜日)
会議録本文へ 平成二十一年六月九日(火曜日) ○望月委員長 次に、穀田恵二君。 ○穀田委員 私は、まず最初に、新型インフルエンザの観光への影響についてただしたいと思います。 政府並びに観光庁としてどのような調査をこの問題について行っているか、そして、観光庁として、新型インフルエンザによる神戸や京都における観光への影響をどのように認識、掌握しているのか、お答えいただきたいと思います。 ○本保政府参考人 お答え申し上げます。 まず、影響の調査でございますが、御案内のとおり、インフルエンザの発生以降、修学旅行を初め旅行のキャンセルが数多く発生しております。このことから、宿泊業関係の団体などからも、業況が悪化したということで国からの支援が求められておりますので、その状況を把握するということで、日本旅行業協会を通じまして修学旅行のキャンセル状況の調査を行いますとともに、地方運輸局を通じまして宿泊施設への影響を調査しているところでございます。 また、五月二十二日には、政府の基本的対処方針が定められまして、外出については自粛要請を行わない、それから、集会、スポーツ大会等につきましては一律に自粛要請を行わない、こういうふうに方針が決定されましたので、こうした状況を踏まえた対応が自治体等できちっとなされているかどうか、こういう観点から、各都道府県に対しまして、新型インフルエンザ発生に起因する観光産業への影響の実態や、二十二日の対処方針の決定を受けた出張あるいは行事などの対応状況の変化について調査を行っているところでございます。 ○穀田委員 神戸と京都はどうやと聞いているんだけれども、出ていなかったので、まあ、いずれにしても、大変だということなんですよね。 それで、今、自治体への協力をお願いしていると言いましたけれども、私がつかんでいる範囲内では、今、修学旅行のキャンセルという話がありました。これは、京都市の調査は旅行代理店の調査報告をそのまま使っているにすぎないんですね。こういう程度のものなんですわ。 観光客が来るか来ないか、それから、宿泊が来ないかというのは、実は、輸送に関係しているから言っているんですよね。その前ぶれとつかんでいただければありがたい。 ところで、インフルエンザの影響はいろいろなところに及んでいます。今ありましたように、宿泊の問題、キャンセルとありましたけれども、例えば煎茶道大会の様相はつかんでいますか。それから、本委員会ではタクシー業界の供給過剰と規制強化をめぐって今、議論をしています。タクシー業界は、規制緩和、それから昨年来の経済危機、そして三つ目に今回のインフルエンザ、三重苦と表現しているほどであります。このような議論をしている最中に、このタクシー業界への影響はどの程度あったと掌握しているのか、お答えいただきたい。二つ。 ○本保政府参考人 観光関係につきましてお答え申し上げますが、行事やイベントの中止状況、これは、一般的には把握しておりますけれども、今お尋ねのございました全国煎茶道大会といった形で、個々の行事、イベントが開催中止になったか、延期になったかというところまでは把握しておりません。 ○本田政府参考人 タクシーの状況について御説明を申し上げます。 京都の状況で御報告したいと思います。 ちょっと、全体の数量的な情報は把握しておりませんけれども、一部大手の企業に対する聞き取り調査などでは、京都の場合、修学旅行生が利用されます観光タクシーというものがありまして、その予約状況でまいりますと、六月予約分について、既にその半数を超えるキャンセルが出ているといったような影響を受けている企業もございます。 こうした事態を受けて、京都のタクシー業界では、やはり、今回の新型インフルエンザの影響で修学旅行が中止になり、観光地の人影が途絶えておる、あるいは、昨年秋からの景気の落ち込みといったことも含めてタクシー需要が低迷している中で、観光地ではまさに二重の影響を受けている、こういった認識を持っておられ、この認識に立って、タクシー業界として、地元の公共団体を初め、我々の地方運輸局に対しても支援策の要望をされているという状況でございます。 ○穀田委員 私、きのう言ったんですよ、これはちゃんとつかんでくれと。電話番号もちゃんと教えたんやけれども、そこまで丁寧にやってもこの程度やから、本当に、どういうふうな実態があるのかということについて、そんなこともあるのかということぐらいつかみなさいよと私は思うんですね。 私がつかんでいるので言うと、五月二十三、二十四日に第五十四回全国煎茶道大会が、全国の茶道の三十流派が黄檗山萬福寺に集まっているんですよね。それで、お茶席があって、例えば使用予定の生菓子三千四百個、これはキャンセルなんです。お菓子というのは、あんがあったものを使うわけにはいかへんわけやね。全部捨てなくちゃならぬ。一軒のお菓子屋さんだけで七十万円近くのロスがある。こういうふうに影響が起きているということを、先ほど、一般的には把握していないと。把握してくれなきゃ困るというんですよ、そういうものを。 それから、本田局長は、全体を把握していないが、こうくるわね。こんなもの、今タクシーの話をしているんやから、京都だって、タクシー全体がもうまとまっているわけやから、そこに聞けばわかるわけで、そういうものが非常に、議論している最中にこういう話をすると、全体を把握していない、こうくる。この情けなさというの、わかりますか。私は、本当にだらしがないというか、もう情けないなというふうに思うわけです。 例えば、半数以上と言いますけれども、京都の中堅タクシー会社でいえば、七十六校キャンセルを受けて、七千万円の損失。京都市などは、秋口に必ずそれが返ってくると言うわけですよ。修学旅行で九割返ってくる、こう言うわけですよね。 しかし、九割返ってくると言うけれども、それでは、四月、五月に来なかった部分が、そのままぼんと加算されるのか。そんなことはあれへんわけやね。そやから、キャンセル料ももらえない。だから、どうするか困っている。だから、何が困っているか、何が起こっているかということをしっかりつかまなあかんと私は思うんです。 そこで、この問題について、大臣に最後に一言言いたいんですけれども、これは観光地域自身が疲弊をしている。だから、単に個々の事業者を助けろという意味じゃなくて、地域に対してやはり緊急休業補償制度を含めた支援を検討すべきではないか。 観光庁というのをつくった際に、どう言ったか。それぞれの各省をまたいで、きちんと観光問題についてやるんだと大見え切ったわけでしょう。大見え切ったにふさわしく、国土交通省として、これらの問題について、キャンセル料の問題やさらには行事の中止、そういった問題について、観光全般に対してきちんとした支援をするためのイニシアチブを発揮すべきではないか、この見解を大臣に問いたいと思います。 ○金子国務大臣 京都で、一週間前でありますけれども、一週間前までに出たキャンセル料は二十六億円という報告を京都市長が受けております。 それから、観光庁も、全部ではありませんが、今の煎茶道のキャンセルというようなのは、もとより長官もつかまえております。観光だけじゃなくて、タクシーも航空会社も全国で、決して関西だけではないんですけれども関西が中心になりました、一番影響が出てきているということを私も認識しております。 したがいまして、一刻も早く安全宣言を出して、観光客に来てもらう、物が動くようになってもらえるようにしていきたいというポジティブな対策、我々としてもできる範囲でのポジティブな対応というのが一番大事だと思っておりますけれども、これは医学的な見地、いろいろなのがあるようですから、今検討してもらっております。 今の御質問の関係でいえば、資金繰り的にいろいろな面で回っていかないというのに対して、政策金融公庫等、相談窓口を全国で九百二十七カ所つくって、相談をしてもらう。先般、特別保証枠が十兆円、二十から三十兆円にふやしてもらいました。補正で通りました。これに対して、こういうインフルエンザで影響を受けたところが話を持っていったときに、あなたのところはこれまでこれだけ借りているからだめですよみたいなことのようだったんですけれども、今度は新型インフルエンザ対策ということで上乗せで対応してもらえるような、前向きな話を今進めてもらっております。 それから、さっきの、修学旅行のキャンセル料をどうすんやねんという話がありましたけれども、これは地域活性化・経済危機対策臨時交付金というのが、これも地方自治体に渡ったお金でありますが、これをキャンセル料に、自治体が必要とあれば対応してもらうということができるように今しております。 もっと大事なことは、観光客をやはり早くふやしていくことだと思いますので、関西にキャンペーンを、特に穀田先生の京都だけじゃありませんけれども、滋賀県も入っていますけれども、関西への観光キャンペーンを総力を挙げてやるということを今進めております。そういう意味で、前向きに話をしていけるようにしていきたい。 全国の被害を補償かという話になりますと、決して観光だけじゃない、飛行機もある、タクシーもある、あんこ屋さんもあるということで、なかなかその実態の把握というのが難しいのはもとより、基準をつくるというのも難しい。これはSARSのときもできなかったんです。しかし、先ほど申し上げたような金融面での対策で、やはり何とかこれでもっておかしくならないようにしていきたいというのが、今のところ講じている対策であります。 ○穀田委員 これは何度も言うんですけれども、金融というのは返さなくちゃならぬわけですよね。では、先ほど言ったところが七千万戻ってくるのかと。戻ってくる間のつなぎだったら、それは可能性があるんですよ。戻ってこないから、今、休業補償なんかも含めたものを検討しないとあかんというときに来ていると私は思うんですね。これは単に、京都や神戸の例を出しましたけれども、奈良も、それから和歌山、そして滋賀、当然大阪も大変なわけですから、それらはきちんとやっていただきたいと思うんです。 次に、タクシー法案との関係で規制緩和の問題について、これは私はもっと端的に問いたいと思うんです。 大臣に、先ほど来ずっと議論がありましたけれども、私は、規制緩和でタクシー業界はよくなったかということを端的に問いたい。当時の運輸大臣はどう言ったか。新しいタクシーの需要も起こってくる、労働者に対しても条件をさらによくしていく方向になっていくと述べたわけです。つまり、規制緩和の未来がバラ色であるとしたわけです。 改めて質問します。タクシーの需要はふえたのか、労働者の労働条件はよくなったのか、この二つだけ、端的にお答えください。 ○金子国務大臣 全国のベースでいえば、残念ながら、タクシーの需要は減ってきた。これは今回の規制緩和だけじゃなくて、経済が悪くなっている、悪化する経済という背景ももとより複合的にありますから、規制緩和だけではありませんけれども、需要が減ってきている。タクシーの運転手さんの給料も下がってきているという現状であります。 ○穀田委員 経済の悪化のことを言わはりますけれども、私は思うんです。去年からの話は別ですよ。だけれども、この数年間というもの、政府は、イザナギ景気超えと言って、景気がよくなっている、よくなっていると言ったじゃないですか。こういうときだけ悪くなったというふうな話を使うというペテン的やり方はあかんということを言っておきたい。要するに、明確に悪くなったということなんです。 それで、二〇〇〇年当時の質疑で、私どもは、需給調整廃止によって供給過剰状態を一層深刻化させると指摘をしたわけであります。単に労働組合や業界団体がそういう意見も述べたというだけじゃない、うちは共産党としてそういうことになるということを指摘した。 そして、さらに、「規制緩和によりタクシーの台数がさらにふえ、一台当たりの水揚げが減れば、それをカバーするために一層の長時間労働を余儀なくされ、安全を脅かすことになる」と結論づけて、法案には反対の態度をとりました。そして、あわせて、政府の緊急調整措置は台数規制の歯どめにはならないと反対討論でも明らかにしたところであります。 私は、去る六月二日の参考人質疑で主張しました。何か、こう言うとすぐ、ええところもあったとか、デメリット、メリットと言うんですよ。まずその前に、政策の誤りがどれほど多くの方々に被害と苦しみをもたらしたか、そのことに思いをいたすということが政治の基本だと。そういう人に対して、結果として安全が損なわれて人の命が失われることが生まれた、労働者が路頭に迷う事態が生まれる、給料が減っている、そういう事実に対して、タクシーの労働者が塗炭の苦しみをなめているということに対して、市場の失敗という言葉では済まされないと私は思っています。 したがって、当時の見通しは、先ほどの議論じゃないですけれども、ちょっと違うというふうな話をしましたけれども、私はそう思っていない、大きく違うと。だから、大きく間違っていたというその反省はあるかということを端的にお答えいただきたい。 ○本田政府参考人 タクシー事業の規制緩和の当初の趣旨は、まさに事業者間の健全な競争、事業者の創意工夫、多様なサービスの提供、そういったことにございました。そういった意味で、一面、サービスの多様化、待ち時間の短縮といった形で、利用者にとって一定の効果もあらわれているものと認識しております。 ただ、タクシー事業をめぐる状況は、地域によっては、規制緩和後の経済状況の悪化等の影響により、結果として輸送需要の低下に歯どめがかからず、それに伴って運転者の労働条件の悪化などのマイナス面が生じていることも事実であります。 そうした事態について、規制緩和当時の見通しどおりに事態が推移しなかった面があると認めざるを得ません。いずれにしても、この問題に対しましては、現に生じている諸問題に対して適切な対策を講じてまいりたいと考えております。 ○穀田委員 適切な対策というのは、出した政策がどうだったかという検証の上にあるわけですね。よかった話があったなんという話じゃなくて、根本の中心は何だったか。あなた方は、我々の議論の際に、我が党の、当時、寺前議員、平賀議員が言ったのは、悪くなると。あなた方はよくなると言ったんですよ。よくなっていないんですよ。その結論をはっきりせな、何かちまちました話で、サービスがどうやったらこうやったらという話を何回したってあかんて、それは。やはりそういう認識では、タクシー労働者の血の叫びが私は理解できないと思うんです。 大体、いつも例に出す福祉タクシーだとかそういうサービスなどというのは、規制緩和しなければできないことだったのか。だって、これは複数運賃でいうならば、一九九四年からMKタクシーが低運賃で参入している。それから、あなた方がよく言う福祉タクシーでも、むしろ今は採算がとれずにふえない事態に、膠着状況になっている、こうなっているわけですね。 すぐ市場原理が働かなかったとか失敗だったとか言っているんだけれども、やはり市場任せにしたことが国民のサービス向上につながらなかったということを、まず根本を反省する必要があると私は思っているということを改めて主張しておきたいと思います。これは歴史が検証したということですよ。 次に、法案の内容について少し聞いておきたいと思うんです。 まず、地域協議会についてです。 内閣提出法案では、特定地域におけるタクシー事業の適正化、活性化を推進するための地域計画の作成や、必要な協議を行うための協議会を組織することができると規定されています。タクシー事業の適正化、活性化を推進するために、この協議会が積極的な役割を果たすことが求められていると思いますが、こうした役割はどのように保障されるのか、そして、協議会には当然利用者も事業者も労働者も参加して、例えば公共交通機関としてどのようなサービスが求められているか、また、そうしたサービスをどう実現するのか、さらに、安全を確保するためにはどのような取り組みが必要かなど、積極的に議論し、取り組みに反映されることが肝心だと思うんですが、その点の見解をお聞きしたい。 ○本田政府参考人 御指摘のとおり、今回の法案におきまして、やはり、特定地域のタクシー事業の適正化、活性化を推進していく上では、その地域の幅広い関係者の方が参画した協議会、この協議会の取り組みの実効性を高めることは極めて重要な要素であるというふうに思っております。 このために、まず、法案自体におきまして、協議会について、具体的なメンバーの構成、さらには、協議会で作成されます地域計画の成立要件、あるいは、地域計画で定められた場合、その事業の実施に係る協議会構成員の責務、さらには、協議会による事業実施主体以外の者に対する協力要請といった事項について事細かく法定させていただいております。 さらに、協議会の具体的な運営方法等につきましては、本法案に基づき国が定める基本方針等に規定することを予定しておりますし、地域計画での作成事項についても、ただいまお話のありました、その地域をよくするためにタクシーの適正化、活性化、その具体的な施策、どういった事項を盛り込むかといった基本的な事項も、国が定める基本方針の中で明らかにするといった対策を講じてまいりたいと考えております。 ○穀田委員 私は、この問題をなぜ聞いているかということを少し述べたいと思うんですね。 二〇〇〇年の法改正の際には附帯決議がありまして、簡単に言えば、そこでタクシー事業適正化協議会というのをつくりなさいといって、できたわけですよね。その後、二〇〇七年のいわゆるタクシー特別措置法を受けて登録諮問委員会などを地域で設置してきたわけですよね。 ところが、例えば京都で調べますと、そういう後者の登録諮問委員会などというのは、なかなか開催されない。理由がまた振るっていて、学識経験者は夜でないとあかん、ところが、タクシー事業者は夜は仕事で忙しいと。ほんまかいなと思うけれども、それでなかなか開催されない。前のタクシー事業適正化協議会は、これは学識経験者がいない。それで、これは三つ目なんですね。三つ併用するのかどうか、それはいろいろやり方があるんでしょうけれども、私は、地域協議会を本当に実効あるものにするためには、今、本田さんがおっしゃったように、権限と性格をきちんとしなくちゃならぬ、今まであるものをどうするのかということも含めて。 そうすると、やはり協議会というのは、日常的、継続的に開催することが求められるというのはどうか。あわせて、この協議会が実効あらしめるというのは、本当の意味で地域を代表するということになりますと、運賃やそれから労働者の賃金が適正かどうかということも議論しないと、肝心なことが抜けちゃう。そうすると、必要な資料を要求すれば提出されるといったようなルールが必要ではないかと思うんですが、その辺、二つ、お答えいただけますか。 ○本田政府参考人 本法案に基づく特定地域というのは、既に、現実に、供給過剰等により多くの問題が発生している地域でありますから、その問題を具体的に解決していくことが重要だ、その意味で、その中核的な役割を担うのが協議会、そしてその成果である地域計画だと存じます。 順番に申し上げますと、まず、こうした協議会の権限や性格につきましては、先ほども触れさせていただきましたが、本法案八条、九条、十条といった規定において、できる限り具体的に規定させていただいたところでございます。それから、協議会の運営に関し必要な事項自体は、協議会が設置されるそれぞれの地域によって事情が異なりますので各協議会が定めるということにいたしておりますが、やはり協議会に託された責務、これが遂行できるように十分な配慮をしてまいりたいと存じます。 さらに、地域計画の内容に関しては、今御指摘をいただきました、その地域の運転者の労働条件の改善、このための対策あるいは過度な運賃競争への対策につきましては、地域計画の必要記載事項とすることとし、これを国が定めます基本方針等に明記したいと考えております。 また、協議に必要な資料の提出等に関しては、特に国につきましては、本法案第六条の規定により、国の責務として、こうした取り組みに必要となる情報の収集、整理、分析あるいは提供、助言その他の支援を行う、これを国の責務として規定させていただいておるところでございます。 ○穀田委員 したがって、提出は当然だということでいいわけですね。 関連して、それでは利用者負担の軽減について聞きます。 高齢者が増加し、障害者も含めて、移動が困難な方々がふえています。こうした方々の移動の権利を保障し、通院や社会参加の活動を可能にするため、タクシー輸送が果たすべき役割は今後一層拡大すると思われます。あわせて、だれもが必要なときにタクシーを利用できるよう、負担軽減措置が求められています。国には利用者の助成制度はありませんが、自治体によっては、これまでも独自にタクシー利用者への助成制度を設けています。 今後、協議会でタクシーの活性化を議論し、こうした、特に政府や国交省が言う例の利用者ニーズにこたえたタクシーの運行ということや、利用者補助についての取り組みを具体化した場合、国として、こうした運賃の助成を行う自治体に対する補助制度は考えているのでありましょうか。 ○本田政府参考人 御指摘のとおり、地域の協議会では、高齢者の方あるいは障害者の皆さんの移動の確保という観点から、タクシーの活用をどうしていくか、そういった取り組みも当然話し合われることと思います。 この点に関しまして、昨年十二月の交通政策審議会答申におきましては、「今後講ずべき対策」の中で「福祉輸送分野をはじめとして、当該地域社会において住民等から強く望まれている取組みに対しては、積極的な支援を行うことが望ましい。」という指摘がされております。 これを受けまして、個々具体によって事情が違うと思いますので個別に判断をさせていただきたいと存じますが、地域の協議会においてそうした具体的な取り組みが決められました場合には、できる限りの積極的な支援を行うべく検討させていただきたいと存じます。 ○穀田委員 今行われている福祉タクシーというものに対して、車両購入補助などはあります。 ただ、そういう意味でいいますと、地域計画でこういうことをやられた場合、これはいつも大切なのはランニングコストなんですよね。なかなか地方自治体でもそういうことの日常的金まで出せない、財政まで出せないという問題がありますから、そういう運賃の補助が必要だと私は思うんです。したがって、改めてこれは検討を求めておきたいと思います。 次に、特定地域の指定について聞きます。 内閣提出法案では、三条で、特定地域について、条件は四つばかりありますけれども、供給過剰の状況などを基準に、期間を定めて指定されるとしています。現在、通達に基づいて、特定特別監視地域、いわゆる供給の拡大によって運転者の労働条件の悪化を招く懸念が特に大きな地域として、〇八年度には全国六百四十四営業区域のうち百九地域が指定され、新規参入基準の引き上げや増車抑制措置が行われています。 特定地域は、この特定特別監視地域を参考にするということだと伺っています。京都はこの特定特別監視地域に指定されていませんが、タクシーの実態といいますのは、人口百五十七人に一台の世界一タクシー過剰地域なんですね、人口当たりでいいますと。それぐらい台数があるんですよ。そう言うと大体、観光地域だから、こうくるんですけれども、別に観光といっても、波もあるので、そんなもの、いつもそういう人たちが来ているわけじゃないわけですから、問題は、基礎的な数字がこれだということであって、先ほど、私は三重苦という話をしました。規制緩和、そして経済危機、それからインフルエンザ、こういう被害、影響が起きている、そういう三重苦で、ますます深刻であります。 特定地域の具体的な指定基準は今後検討するということでありますが、供給過剰となっている地域がきちんと対象となるよう運用すべきだと思いますが、いかがですか。 〔委員長退席、奥野委員長代理着席〕 ○本田政府参考人 本法案に基づきます特定地域でございますけれども、これは、供給過剰が進行し、労働条件、とりわけ、そこで働かれる運転者の方々の労働条件が悪化している、そういったことを食いとめて、タクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できるようにするのが、この制度の本来の趣旨でございます。 そして、特定地域の指定基準については、現在検討中でありますので、特定の固有の地域について指定の有無についてはお答えできませんけれども、あくまでも、現在運用として実施しております特定特別監視地域の指定制度を参考としながら、この法案の審議内容等も踏まえながら、具体的な指定基準を検討してまいりたいと存じます。 ちなみに、昨年七月十一日の段階で、特定特別監視地域制度の拡充を図りました際の京都の状況でございます。 これは、地域指定の要件として、日車実車キロ、一日にお客さんを運んだキロ数、または日車営収、一日当たりの水揚げでございます。これが規制緩和前の平成十三年度と比較して、当時は直近のデータが平成十九年度でしたので、平成十九年度のデータが減少している、そういった地域で人口十万人以上の都市を含む営業区域、そういった要件を課させていただいたわけです。 京都の交通圏について具体的な数字を申し上げますと、日車実車キロは、平成十三年度で八十七・七キロのところ、平成十九年度が九十キロ。それから日車営収が、平成十三年度が二万六千八百五十三円が二万七千九十九円。そういったデータでございましたので指定に及ばなかった、こういうことでございます。 ○穀田委員 その後、七月十一日以後ですから、大きく下がっているという現実があるから、当然これは指定されるべきものであるということだけは言っておきます。 次に、今言った趣旨、つまり、悪化を食いとめるということが、こういう問題について大きな柱となっているわけですね。そこで今度は、労働者の犠牲を前提にした増車や低賃金の問題について、少し論を進めたいと思います。 交通政策審議会答申は、タクシー事業の構造的要因として、利用者の選択可能性の低さ、歩合制主体の賃金体系を指摘しています。その上で、構造的要因への対応として、この要因が、需要が減少しているにもかかわらず増車が行われるなど、過剰な輸送力の増加や過度な運賃競争を引き起こす根源的な要素ともなっているということで、適切な対応の必要性を説いています。 昨年暮れ、京都に本社を置くMKタクシーが、以下、MKと言いますけれども、一万人を雇用すると言って話題になりました。この話をすると、個々の企業がそういうことをするんですからというふうに国交省はすぐ、私のところに来て、聞きますとそう答えましたが、私はそれでは済まぬと。雇用の拡大と聞こえはいいけれども、MKが一万人雇用するということは、一万台増車するということなんですよ。もちろん、一車二人制ということにすれば、それは五千台ということになりますけれども。 それにしても、結局、こういうことがなぜできるのか。つまり、一万人雇用をふやすんだ、五千台でも一万台でもいいですけれども増車するということを、なぜ彼らが言えるし、できるのかというところのなぞを少し議論し、MKの賃金システムの問題を取り上げてみたいと思います。 皆さんには資料をお配りしていますが、なかなか見にくいのでわからないわけですけれども、まず厚労省に聞きます。 累進歩合制は通達で禁止されているはずですが、その簡単な理由と、それから、ハイヤー、タクシー事業の累進歩合制度に限った指導件数の推移はどうなっているか、お答えいただきたい。 ○渡延政府参考人 お答えいたします。 タクシー運転者に係る累進歩合制度については、水揚げ高等に応じて歩合給が定められている場合に、その歩合給の額が非連続的に増減する、いわゆる累進歩合給、水揚げ高等の最も高い者またはごく一部の労働者しか達成し得ない高い水揚げ高等を達成した場合にのみ支給する、いわゆるトップ賞、水揚げ高等を数段階に区分し、その水揚げ高の区分の額に達するごとに一定額の加算を行う、いわゆる奨励加給が該当する、これを総称して累進歩合制度と呼んでおります。 賃金制度につきましては、本来、労使が自主的に決定すべきものでございますが、このような累進歩合制度については、労働者の長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあることから望ましくないものとして、平成元年の労働基準局長通達に基づき廃止するよう指導を行ってきているところでございます。 ハイヤー、タクシー事業場に対して実施した監督指導、平成十七年から十九年度までの累進歩合制度に係る指導の状況について申し上げますが、平成十七年には、監督指導を実施した九百十一件のうち八十七件、九・五%について、同じく十八年には九百三十二件のうち百十八件、一二・七%について、平成十九年には同じく七百十二件のうち八十件、一一・二%についてこれが認められたところでございまして、廃止するよう指導してきたところでございます。 ○穀田委員 私は、極めて問題だと思うんです。つまり、累進歩合給を禁止しているのに、なくなっていないということなんですね。そして、指導監督の率からいいますと、今ありましたように、九・五%から一二・七、一一・二ですか、一〇%台でずっと推移して高どまりしているということがあるわけで、しかもこれは、指導件数というのは氷山の一角でしかないことは、だれもが知っているわけなんです。 千葉日報は、次のように述べています。 「タクシー業界 累進歩合給の廃止進まず 労基署指導に「偽装」も」ということまで書いて、これは見出しですけれども。「長時間労働を招く「累進歩合給」の廃止が進まず、県内のタクシー運転手から、改善を求める訴えが続いている。累進歩合給は、一定の売り上げに達すると運転手の取り分が増える賃金体系。」中略します。 「給料確保のため、運転手は必然的に過重労働を強いられる。労基署は累進歩合給を廃止するよう指導しているが、給与体系の偽装やその場しのぎの対応をとる業者も」いる。「労基署は、国の告示を守るよう指導しているが、船橋労基署の担当者によると、是正勧告で一旦は累進歩合給を廃止しても、数年後には元に戻す会社や、労基署に報告する書類と内部規定が別で、実際には保障給がなく、累進歩合給を取っている会社もあるという。」 こういう実態があるわけですね。広くこれがあるということは、やはりメディアも認識しているわけであります。 私は、累進歩合給の指導対象が、廃止すべきと言っている対象が、なぜ非連続的に増減する、これは非連続というんですね、なぜそれだけなのか。今答弁があったように、累進歩合給の問題は、売り上げに応じて賃金が大きく変動する場合、長時間労働やスピード違反を極端に誘発する危険性が高いから廃止を通達しているわけですよね。 私は、非連続であろうが連続であろうが、問題は刺激性が高いかどうか、そして、結果として、収入を上げるために長時間労働が行われているかどうかにポイントを見定めて指導すべきではないのかということについて、少し伺いたい。 ○渡延政府参考人 お答えいたします。 本来、労使により、事業場の実情に応じ自主的に決定され、また、実態も多様である賃金制度について、労働基準関係法令の施行を任務とする労働基準監督官が全国斉一的に指導を行うに当たりましては、労働能率への刺激効果を初め、個々の賃金制度の内実に立ち入って評価、判断することは、元来非常な困難を伴うものであることをまず御理解いただきたいと存じます。 こうした制約を前提としつつも、タクシー運転者の長時間労働や交通労働災害につながりかねないスピード違反を防ぐ意味から、賃金制度についても指導の対象とし、かつ、全国斉一性を確保しつつこれを行うためには、ある程度明確な着眼点が示されることが必要であります。 そうした着眼点として、ただいま御説明いたしました、例えば、水揚げ高と歩合給の額が非連続的に増減する、非連続点を有することなどの特徴を持った賃金制度を累進歩合制度として、指導対象として示しているものでありますことを重ねて御理解賜りたいと存じます。 ○穀田委員 いや、労働者は理解できないと言っています。私も理解できない。大体、タクシー労働者の年間総実労働時間の推移を見ましても、やはり先ほども議論がありましたように、全産業労働者平均の労働時間と比べても、二百四十時間も多いわけですよ。そこに象徴的にあらわれているということを見なくちゃなりませんよ。 MKの資料を配付しましたが、一番下の賃金支給額試算表という欄をごらんください。MKの賃金は、売り上げが高くなれば高くなるほど、賃率、すなわち、売り上げに対する賃金の割合が上昇する仕組みになっています。これを見ても、売り上げ五十万であれば賃金が二十三万一千四百二十八円、四六・三%、八十万なら五十一万四千九百二十八円、六四・四%であります。 普通、違法とされる累進歩合制は、最高賃率と最低賃率の差が二〇%程度だと言われています。MKのそれは三四%。最低限は、例えば四十万のラインを見てください、賃率は三四・三%。一番高いところでいいますと、先ほど言いました八十万の場合でいうと六四・四%。三〇ポイント近く開きがある。これは非連続ではないかもしれないけれども、売り上げを上げれば上げるほど、賃率自体が急カーブで上昇する。 厚労省は、非連続というと、こう階段状に言うわけですよ。これが上がったところ、階段のところを上がる場合、ここを問題にしているわけですね。そのカーブは、今お話ししたように、平均でいえば大体この二〇%ポイントに近いものだ。ところが、今お話ししたように、MKの場合には、非連続でないかもしれないけれども、急カーブを描いてぐっと上がる。こういうことになれば、まさに究極の累進歩合給ではないか。 刺激性の高いMKの累進歩合制が、ないしは類似行為がなぜ禁止されないのかということを私は言いたいわけです。多くの人たちがこれは理解に苦しむわけですよ。誘発する極端な長時間労働ということを言うのであれば、そこに着目すれば、MKが京都の中でも極めて長時間の労働を強いている実態や、急速なカーブを描いているということは、だれもが知っているわけですね。それをなぜ禁止できへんのかということを、一言、言ってください。 ○渡延政府参考人 個別の事案についてのコメントはこの場では差し控えさせていただきますが、ただいま御提起がありました問題につきまして、重ねてのお答えで恐縮でございますが、個別の労働基準監督官の立場で指導するに当たりましては、労働能率の増進と水揚げ高と賃金の関係といったものについて、ある程度外形的、客観的に判断できる着目要素がどうしても必要でございます。 そうしたものを全国的に斉一的に指導を展開するために必要な制約があるということを、ぜひ御理解賜りたいと存じます。 ○穀田委員 何回も言うように、それは理解できぬ。そういう現実があるということを見逃しているから、みんな、ほんまに助けてくれへんと思っているわけですやんか。何の労基局だと多くの方々が言っているということについては、私は一言言っておきたいと思うんです。 そこで、もう一つ。このMKというのは、今言った累進歩合給で一方やると同時に、もう一つ、別なやり方をしているんですね。名義貸しという問題について少し触れたいと思うんです。 名義貸しの根本というのは、タクシー経営者とは、タクシー事業に係る損益の帰属主体として、みずからの危険負担のもと、事業遂行に伴うさまざまな責務を適切に全うすべき主体を指すという規定なんですね。 これは、聞いているとなかなかわからないので、簡単に言えば、平たく言えば、事業をする上で損失等のリスクは事業者が負うべきである、労働者にそのリスクを背負わせることがあってはならないとしているわけですね、簡単に言うとそういうことですわな。これは名義貸しの行為の判断の基準であって、労働者性の担保にかかわる問題であります。 そこで、MKのシステム支給基準を見ていただきたい。真ん中ですね。それは、運転手が負担する固定経費の中には、車両費や社会保険の事業主負担分、公課費という名目で事業主負担分が明記されています。車両保険費が含まれている。さらに、下の変動経費の欄には、燃料費、修理部品費、制服費、メーター費、シートカバー費まで含まれています。 要するに、タクシー事業に必要な経費はすべて運転手が負担するという仕組みで、MK側はリース制と言ってはばかりません。このようなやり方が経営者として、先ほど述べた、みずからの危険負担をせずに、事業遂行に伴うさまざまな責務を適切に全うしていないということは明らかではないのか。どうですか。 ○本田政府参考人 まず、道路運送法で禁じております名義貸し行為あるいはその基準について、少し御説明を申し上げたいと存じます。 道路運送法は、タクシー事業の経営に関して許可制をしかせていただいておりまして、輸送サービスの円滑かつ確実な提供、あるいはその安全の確保、さらには利用者の利益の保護、利便の向上、そういったことを目的として、事業者みずからが適切な事業計画と能力を有する、これを確保する、これがまず法の基本であります。 このために、具体的には、許可を受けた事業者に対しては、運行管理の適切な遂行あるいは事業資産の適切な管理、事故時の賠償責任、そういった責務をみずから負うことを求めておるわけであります。 これに対し、道路運送法第三十三条で禁止をされておりますいわゆる名義貸し行為、これは、今申し上げました、許可を受けた事業者がみずから負うこととしております責務を、許可事業者の名義を用いながら、許可を受けていない第三者に実質的に負わせる、そういう行為でありますので、道路運送法のそもそもの事業許可制度の趣旨を没却するということで、これを禁止しておるわけでございます。 この点に関して、私ども、具体的にどういう場合に名義貸し行為に当たるかどうかの判断基準、いわゆるガイドラインを昨年六月六日に策定し、全国の運輸局に指示をしたわけでありますが、その中におきましては、まずは五つの要素、一つは雇用関係、それから経理処理、今先生がおっしゃいました経営のリスクといったようなことも含めた経理処理、それから運行の管理、車両の管理、あるいは事故の処理、これを許可事業者がみずからの責任で行っているのかどうか、それを総合的に判断する必要がある、これが判断基準ということでございます。 今先生からお話のありました特定の企業の賃金制度について申し上げますと、そこでリース制と言われる形態は、タクシーの運送収入のうち、その一定額を控除した金額を運転者の収入とする、そうした賃金体系を指すものと認識しております。 そうした賃金体系自体、労使の間でどう締結され、かつ、労働法規に照らしどう判断するかというのは、今私どもがお答えする立場ではありませんが、これを名義貸し行為の判断基準として見ますと、経理処理等を許可事業者がみずから行っているかどうかがやはり重要な判断要素となりますので、運送収入が一たん全額その会社の事業収入として計上されている場合には、それを直ちに名義貸し行為に該当する、そういった判断をするというのは実態としては難しいと思います。 ただ、例えばその他の要素で、先ほど申しました事業者の雇用関係で、運転者の固定給あるいは保障給等一定の保障された給与の支払いがないとか、本来事業者が支払うべき社会保険料あるいは雇用保険料控除、源泉徴収が行われていないといった他の要素、これを含めてやはり総合的に判断せざるを得ないと考えております。 〔奥野委員長代理退席、福井委員長代理着席〕 ○穀田委員 今言った判断基準の五点、それは承知しています。そこにありますが、ただ、私が言っているのは、労働者性というところに着目をすれば、確かに、料金収入の全額が事業者収入に計上されていないということがあればというふうなことをいつも言うんですね。 最後のところで今、本田局長がおっしゃった、結局、では、どんな形で金を渡しているのか、何を負担させているのかということを見た場合に、先ほど言ったように、公課費として厚生年金だとか雇用保険だとかという、本来事業者が払うべきものまでそんなことをやっている。ということになると、これはまさにすれすれのことをやっているというふうに言わざるを得ない。その辺はうまいんですよ。 今言った五点のところは、確かにクリアしかかっている。例えば一つ、今言った五つのうち一つだけクリアしていないでここの会社がまずいというんじゃないんです。五つともクリアしているんだけれども、法すれすればかりやっていて、全部足すと今までになくひどい。これがMKのやり方というのは、みんな知っているんですね。 MKは、今私が述べましたように、賃率急上昇の累進歩合制ということを一つの柱に、もう一つは、必要経費は全部運転手持ちのリース制という二本柱で来ているんですよ。まさに、先ほど言いましたように、脱法、違法すれすれの行為をやって、告発されるとすぐ訂正して、そこをうまく切りかえていくというやり方をしているんですね、ここは。 そこで、車だけ貸してその経費を受け取る、損をするのは労働者だけで、会社は損しない、こういう仕掛けなんです。だから、増車すればするほどもうかって、運賃を仮に安くしても、会社の収益には関係ない。ここに、増車と低賃金を可能ならしめる構図があるわけですね。 MKのように労働者を犠牲にして低運賃を売り物にすることが公正な競争と言えるのだろうか。ひいては、利用者、国民の安全、安心を守れるのか。そして、地域社会経済に活性化だとかいうことで貢献できるのかということは疑問だと私は思うんですね。 したがって、国交省として、先ほどの五項目もいいんだけれども、実際に起こっている現場の労働の実態、確かにこれは厚労省の関係です。でも、接近の角度はいろいろあるんですが、本当にこの増車と低賃金という二つの問題が今日一番の問題だということに着目した場合は、まさに国交省として経営実態に踏み込んだ指導監督、そのためにも厳格な法規制をすべきじゃないのかということについて、大臣、いかがですか。 ○金子国務大臣 実態は私はわかりませんが、今委員のお話を伺っている限り、かなりぎりぎりというんでしょうか、五つの指標については一応クリアしているというお話もありましたけれども、総体として見ると相当ひどいと。これもちょっと私、委員がおっしゃったことが、逆によく理解できなかったんです、五つの項目が全部クリアされて、全部を足し合わせるとひどいというのは。だから、それは別としまして、やはりそういう実態もいろいろ御指摘いただく部分もあるんだろうと。 そういう意味で、この法案が施行されたときに、そういういわば公共交通機関としての役割、あるいは運転手さんへの名義貸しというお話も大分出ましたけれども、禁止されているもの、最低賃金制、それから累進歩合というあり方、これについて、今、これまでは厚労省がチェックしていて、ある意味情報共有しながらもそこで終わっていたようなところもあるかもしれませんが、今度この法案を運営していく上で、ある意味、そういう厚労省の労働基準局の調査というのもきちんと共有してもらって、そういうものを踏まえて経営監査に国交省として当たってもらうということは当然やっていきたいと思っています。 ○本田政府参考人 補足をさせていただきますと、タクシー事業の場合に、やはりさまざまな問題の要因に歩合制賃金があるという認識から、交通政策審議会答申におきましても、「歩合制賃金については、その実態を所与の前提とするのではなく、営業形態や運行管理の実態等を踏まえ、合理的な範囲内で、例えば固定給のあり方など、タクシー運転者の賃金システムの改善の可能性等につき、関係者で検討を深めていくべきである。」という指摘をいただきました。 この指摘を踏まえ、本年三月三十日に、厚生労働省にも御参加いただく形で、関係者で構成されますタクシー事業における賃金システム等に関する懇談会を設置し、運転者負担制度、こういったことも含めた賃金システムのあり方について検討を行っていくこととしております。その検討を踏まえ、所要の改善を図ってまいりたいと考えております。 ○穀田委員 その検討の際の基本は、労働者の実態であり現実だということを私は言っておきたいと思うんです。 タクシーの需要が増大しないにもかかわらず、なぜ増車が続くのか、この根本原因は、歩合給、とりわけ累進歩合給の事実上の蔓延があるからなんですよ。また、低運賃競争がなぜ可能なのか、それは、事実上のリース制によって、収益が減るリスクは運転者に負わせ、経営者が損をしない仕組みとなっているからなんですよ。経営者は、運賃値下げもしくは増車によって一台当たりの営業収入が減っても、台数をふやすことによって売り上げを維持ないしは増加させることができるわけであります。 つまり、歩合制、累進歩合制と事実上のいわゆるリース制をとっていること自体が、必然的に増車、値下げ競争が激化する産業構造なんです。ここがポイントなんですよ。だから、ここにメスを入れることが今後のタクシー業界の発展にかかわると私は考えています。 だから、私はいつも言っているんです。一番最初に言ったように、最後の質問のときに言ったように、労働者の労働実態、生活実態を改善することに視点を置けば、必ずここがきいてくると思っています。 最後に、大臣に一言。今、政府提出のタクシー法案と野党提出の二法案が修正協議が行われています。これが実った場合、やはり国交省としてきちんとした、実行するかどうかについてだけ、決意をお聞きしておきたいと思います。 ○金子国務大臣 与野党共同修正というお話を、おまとめになりそうだという話も伺っております。法律をつくっても運用ができないようではしようがありませんから、きちっと体制を整えて運用させていただきたいと思います。 ○穀田委員 終わります。 |
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