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【第174通常国会】 衆議院・予算委員会公聴会 ○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。 公述人の皆さん、本当にきょうは貴重な御意見をありがとうございます。 私は、今、多くの方々の、国民の暮らしの現状を見て、ほんまに大変やという実感をしています。特に雇用の関係でいいますと、規制緩和で派遣切りや、さらには使い捨て労働が蔓延している。中小零細企業というのは、単価の切り下げや発注切りなどで苦難を強いられています。こういう経済危機から国民の暮らしを守るために、政治の根本的な転換が求められていると私は考えています。 そこで、自民党・公明党政権が、この間、構造改革、成長戦略の名前で進めてきた、強い企業をもっと強くすれば経済が成長し、暮らしもよくなるという路線は完全に破綻していると考えます。したがって、この路線の抜本的な転換が経済危機の打開の道であると考えています。 高橋伸彰公述人は、トリクルダウンは幻想と批判しておられます。また、菊池英博公述人は、小泉構造改革のもとでよくなったのは大企業の収益、輸出の増加として、ビジョンなき破壊活動と批判しておられます。また、高橋紘士公述人は、市場万能主義ではないという形での、福祉の現場からさまざまな提言をされています。 それぞれのお立場に、そして観点に立つとき、こうした路線の転換をする上で何が今肝心なのかということについて、お三方からお聞きしたいと思います。 ○高橋(伸)公述人 一言で申し上げれば、そのために政権交代が必要だったのではないかというふうに思います。 以上です。 ○高橋(紘)公述人 私の考えの一端はきょう申し上げた中に含まれておりますけれども、私は、小泉内閣のときに増税をやるべきだというふうに、非常に皮肉な評価をしておりますが、最も重要なときに最も拙劣な施策をしたのは小泉内閣の政策だというふうに思って、唯一生き残ったのは介護保険です。要するに、三・六兆を七兆にしたのは、あの介護保険がいかにファイナンシングの仕組みを、小泉内閣の重圧の中で、三千二百億の重圧の中で伸ばしてきたかという知恵をもう一度考えていただきたい。 従来型の思想はもうやめた方がいいだろうというのが、これは共産党さんのお考えも含めて、私の持論でございます。 ○菊池公述人 今、何が転換すべきなのか、求められているか。端的に言えば、やはり国民の多くが幸福になるためにはどういう政治をすべきなのか、こういうことだと思います。 端的に言いますと、先ほど穀田先生もおっしゃられましたとおり、アメリカのレーガニズムといいますか、それから特に小泉構造改革は、一部の強者、金持ち、そういう者が幸福になれば、それで全体が引っ張られるんだということを考えてきたわけですね。 ところが、国民は幸福になるどころか不幸になった。例えば、一人当たりの給与というのは既に十年間マイナス性向であります。それから、社会福祉関係も、ようやくここで何とかストップしようとしていますけれども、相当破壊されています。ですから、そういう意味では、政策の転換の基準というものは、できるだけ多くの人がどうしたら幸福になれるんだろうかということだと思います。 釈迦に説法のようなことを申し上げますが、経済というのは経世済民の略と聞いています。これは荻生徂徠の弟子がつくった言葉だといいます。経世済民というのは、世を安定させ、そして国民を幸福にする。これが経済なんですよ。だから、経済学だとか経済を語る人は、やはり国民を本当に幸福にすることをしなきゃいけない。 ところが、小泉構造改革時代、大変失礼ながら、御用学者と言われるような方々は全く逆のことをやってきたわけですね。すべて経済は結果ですから。ですから、そこをいかに転換するか、そこだと思います。 ○穀田委員 政権交代をして何をするのかという問題が問われていると私は思うんですね。 ですから、高橋伸彰公述人には、こんなこともおっしゃっているので、そこの具体的な点についてもう少し聞きたいと思うんです。東京に派遣村ができるというところに日本の経済構造の深刻な問題があることを指摘されています。私は、まともな雇用への立て直しを図る上で極めて大事なことは何かということについて聞きたいと思うんです。 特に、今、政権交代をした。でも、労働者派遣法の抜本改正というものを当時の野党三党は約束していました。政権交代というのは変化ですから、期待ですから、やはりそういう約束を守る必要が当然あると思うんですね。 そうしますと、労働法制などのもともとの約束と現在の政府の対応について、どういうふうに考えられておられますか。 ○高橋(伸)公述人 私は、基本的に、市場の持っているメカニズムを全面的に否定するものではありませんが、しかし、営利の対象としてはならない分野というものがやはり人間が生活していく上であると思います。その一つは職業紹介でありましょうし、教育でありましょうし、医療でありましょうし、介護でありましょうし、今議論になっている郵便事業でもあろうかというふうに思います。 つまり、そうした営利の対象としてはならないものは、市場に任せずに、政治が責任を持って、その公共サービスの配分について考えていく必要がある。お金がないから、不足する分は全部あとは市場に丸投げしてしまうというような改革は好ましくないというふうに思います。その意味で、何を営利の対象とせずに公共の対象とすべきか、そのことについてしっかりと議論を重ねていく必要があるというふうに思います。 繰り返しになりますが、私は、職業紹介、教育、医療、介護といった公共サービスの分野は営利の対象としてはならないというふうに考えております。 以上です。 ○穀田委員 労働法制のそういう今の改正といいますか、現実に起こっている、例えば派遣労働法の改正についての具体的な事実を少しお聞きしたかったんですが、またそれは次にしたいと思います。 あと、お三方に財源論についてお聞きしたいと思っています。 私は、これまでに大幅に引き下げられてきた法人税については上げるべきだと考えています。公述人の皆さんは、特に、弱者を救済し、消費の低迷を打開するためにも、所得の再分配機能を強化する必要があると。所得の再分配機能についてのことは大体皆さんお話しになっています。私は、その意味では、今、法人税率を引き上げるということが効果的ではないかと思っているんですが、いかがか。 もう一つは、欧米に比べて優遇されている、大資産家に対するとりわけ証券取引への課税を強化すべきではないか。 これが一番わかりやすいものですから、その点、二つについてお話しいただければ幸いです。 ○高橋(伸)公述人 法人税率の引き上げという形をとるかどうかは別として、私は、法人の負担をふやすことには賛成であります。 ただ、今の法人税は法人の収益にかかわるものですから、大変大きな変動をいたします。二年前に十六兆あったものが、ことし、来年度は五兆に減ってしまうということでありますので。 家計は赤字になっても税金を払っています。そういう意味では、企業が赤字になっても企業活動をしているという点では非常な社会サービスを受けているわけですから、それに見合った外形的な課税をかけるべきであり、それから、後半言われた部分については、私は、穀田先生の言われるとおり賛成であります。 ○高橋(紘)公述人 私は税制の専門家ではございませんが、公正さということをどう考えるかをきちんと議論しなければいけない、そういう意味では、私は、資産課税の問題は相当重要な問題だというふうに思っております。それだけ一言申し上げます。 ○菊池公述人 まず、法人税の引き上げでございますが、これは先ほど公述で申し上げましたとおり、景気振興策、需要喚起政策というのは、やはり政府がきちっとベースはやらなければいけないと思います。といいますのは、特に、大変なデフレ、私は平成経済恐慌だと思っているからです。ただ、それに伴って政府の負担もありますし、やはり法人税というのははっきり言って下げ過ぎですね。だから、これを上げるべき。やはり、法人税も所得税も、最高税率は一〇%は最低上げるべきだと思います。だから、そういう意味で、法人税というものを一〇%上げることをやるべきだと思う。 それから、証券税制につきましても、いわゆる証券取引税は今もう日本は廃止されていますし、一方、キャピタルゲイン税でも、日本は相対的には税率は非常に低いですね。ですから、これもある一定の金額以上は高くするとか、そういうような累進性のものを入れていってもいいんじゃないかと思います。 それから、資産課税の件ですけれども、これもやはり金額によってもう少し累進度を高めてもいいんじゃないかと私は思っております。現在ですと、五千万以下の場合ですか、その分は無税ですが、この辺のところは大体庶民の段階ですからいいんですが、特に、十年ぐらいの間にかなり所得の格差というのは拡大してきているんですね。 つまり、高額所得者は減税の恩恵を実質相当受けている、それがやはり資産なんかの形で蓄積されていると思いますから、そういうものに対する課税を強化するという意味で、資産課税の税率をもっと上げていいと思います。ですから、相続税もやはりその対象としていいんじゃないでしょうか。そう思っています。 ○穀田委員 最後に、高橋紘士公述人にお聞きします。 お年寄りや障害者が地域で人間らしい生活を送るためには、政治、行政による支えと、地域における人々の支え合いが大事で、それで結びついてこそ可能だと私は思うんですね。福祉現場の実情から見ますと、それを支える側の問題もあると思うんですね。 それらを含めて、政治と福祉行政に対して、介護だけではなくて、少なくとも今これらの点についてぜひに改善する必要がある、こういう点を最後にお聞かせいただければと思います。 ○高橋(紘)公述人 一言では申し上げにくい大きな課題を出されましたが、一言だけ申し上げます。 私は、地方自治体行政というのが非常に重要な役割を果たすというふうに思っておりまして、公務員の教育等もいろいろお手伝いをしておりますが、政策専門性等、地域がわかるコミュニティーワーカー型公務員と僕はよく言っているんです。要するに、机の上で仕事をしないで、地域に出て、そして課題を受けとめることのできる資質のある公務員。 民主党さんの支持基盤は自治労さんでいらっしゃいますので、ぜひそのことを肝に銘じていただきたいんですが、総体的に高給をはんで、アウトソーシングするときに、二百万円というような形で専門職を使うという委託事業なるものが非常にふえているわけです。そういう意味では、私、素人行政官が多過ぎると。専門性を高めた誠実な地方公務員、もちろん国もそうでございますが、そういうものをどうやってつくるかというのが、意外と大きな、余り言われない課題でございますが、私、日々実感をしております。 以上でございます。 ○穀田委員 高橋伸彰公述人に、最後にもう一度。 先ほどの労働法制でいいますと、今、派遣労働についての問題がありますよね。当時、三野党で言っていたときの製造業の原則禁止などを初めとした問題を提起していた。それが今日、全体として大穴があくんじゃないかという形で私どもは問題提起しています。 ですから、労働法制を見る上で、この間の規制緩和と今日のその強化していく必要性について、今日の政府の提案について若干私見をお伺いしたいと思います。 ○高橋(伸)公述人 派遣労働については、私は基本的には反対でありますし、特に製造業のような、いわゆる収入だけではなくて住居とセットになったような現場に派遣として送るということは、まさに収入を断たれたと同時に生活も断たれることになります。そういう意味で、職業紹介というのは営利の対象としてはいけないというふうに考えます。 ○穀田委員 ありがとうございました。終わります。 |
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