国会会議録

【第174通常国会】

衆議院・予算委員会
(2010年3月1日)


○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 昨年の総選挙で示された国民の意思は、政治を変えてほしいということでした。新政権のもとでつくられた二〇一〇年度予算案は、その声にこたえるものでなければなりません。

 日本共産党は、去る二月十七日、政府予算案に対して、旧来の悪政の根本にメスを入れ、政治の転換に踏み出す予算にとの組み替え提案を明らかにし、私ども志位委員長と鳩山首相との党首会談で検討を申し入れたところであります。

 その第一の柱は、自公政権の社会保障費削減路線がつくった傷跡を是正する、とりわけ、改悪された医療、介護、福祉制度をもとに戻し、拡充への第一歩を踏み出すこと、さらに、総合的な子育て支援、教育条件拡充を実行することであります。

 きょうは、その立場から、子供の医療費無料化を国の制度として実施すべきであるという問題と、特別養護老人ホームの待機者をなくすための計画的建設の問題について質問いたします。

 まず、子供の医療費の問題です。

 私たち日本共産党は、子育て世代の経済的負担の軽減、乳幼児医療費の無料化を一貫して求めてまいりました。

 鳩山総理は施政方針演説で、命を守りたい、若い夫婦が経済的な負担を不安に思うような社会を変えていきたいと述べました。

 経済的な負担の不安といえば、子供の医療費負担は大きな比重を占めます。子供を育てる親にとって一番の心配は子供の病気です。子供が病気になったとき、親のお金があるなしで病院に行けないことがあってはなりません。費用の心配がなく、安心して病院にかかれるように、子供の医療費を無料にすることは切なる願いです。命を救うためにどうしても必要だと考えます。

 子供の医療費、まずは小学校入学前までの子供を対象に無料にすることを提案します。総理、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、海江田委員長代理着席〕

○鳩山内閣総理大臣 穀田委員にお答えを申し上げます。

 先般の党首会談の中でも、命を守るという私どもの考え方に対して、特に社会保障を充実するという考え方において共産党さんと共通する部分があるということは理解をさせていただきました。いろいろとまた御提言をいただければと思いますが、その中で、きょうは子供の医療費の助成の話をいただいたところでございます。

 言うまでもありません、少子高齢化が進んできている中で、私どもは、子供を社会で育てる、子供の育ちを社会で支えるという方針のもとで、子ども手当というものを支給することを決めたところでございます。ある意味で、今のお話の医療費の問題も、基本的にはこの子ども手当を厚くすることによって一つの道はあろうか、そのように考えているところではございます。

 今現実の施策としては、平成二十年に、乳幼児の方々に対する医療保険制度における自己負担の割合を三割から二割に軽減させていただいている。これは旧政権のもとでそのようになっているということでございまして、さらには、未熟児とか、あるいは難病をお持ちのお子さんに対しては手厚い施策を考えさせていただいているところでございます。

 今、無料化ということに対しては、地方自治体においてさまざまな努力がされているということではございますし、そのことにさらに国が大きく補助を出せという御意見だと思います。

 それに対しては、財政的な部分での難しさが現実にはまだ立ちはだかっている、そのようには考えております。そんな中で、今申し上げたような施策というものを中心にしながら、子ども手当というものを乳幼児の方々の、特に病気になられたときの一つとしてお使いいただくことも考えていきたいと思っておりますが、なおさまざまな考え方もこれからあろうかと思っておりまして、私どもとしても、乳幼児に対する医療費の問題に関しては関心を持っているということを申し上げておきます。

○穀田委員 子ども手当を厚くすればすべてオーケーというわけにはいかないんです。

 子育ての土台というのは、私どもがこの間主張していますように、やはり保育所の増設で待機児童をなくすことや、義務教育の完全無償化などで、給食代だとか修学旅行だとかそういったものに対しても保障する、さらには、大事なのは、子供の医療費無料化などで土台を整備するという二つ、両方あってこそ、それが成るんだということをあえて私は申し上げたいと思うんです。

 問題は、なぜ無料に今しなくちゃならぬかということなんですよ。それは、学校の養護の先生に聞きますと、病院に行かずに保健室に来る子がふえている。子供に病院に行くように言っても、親が給料前だから病院に行けない、このようにはっきり言う子供がふえたと言われています。また、お金がないからと親が病院に連れていくことをちゅうちょしているうちに、急に悪くなれば命にかかわる、こういった問題だから今私どもは提起しているわけです。

 総理も今、地方自治体のお話がありましたが、医療費の無料化は、命を救うために本当に切実な声です。だからこそ、既にすべての都道府県、市区町村で何らかの助成制度が行われています。

 これを見ていただきたいんです。全国の都道府県の二〇〇九年度の医療費助成の実施状況です。

 すべての都道府県で実施されている。赤く塗ってあるのが、通院、入院ともに小学校入学前まで、あるいはそれ以上を対象に助成している県。三十五県あります。圧倒的に多いわけです。ピンク色は、入院のみ小学校入学前まで、通院はそれより対象年齢が低い県。八県あります。黄色は、入院、通院ともに対象年齢が三歳未満から六歳未満。これが都道府県の現状です。多くの市区町村は、都道府県の制度にさらに上乗せして対象年齢を引き上げている。

 小学校入学前か、それ以上の年齢まで助成の対象にしている市区町村はどれだけあるか、お答えいただきたい。

○長妻国務大臣 今御指摘の、都道府県のお話はいただきましたけれども、それに上乗せというか付加してやられておられるという市区町村は、通院については千六百九十五カ所、全体の九四%、入院については千七百五十五カ所、九八%だというふうに承知しています。

○穀田委員 今答弁ありましたように、入院では九七・五%、約九八%、市町村が就学まで助成している。

 これはパネルをつくりましたけれども、小学校就学前まで助成の対象としている市町村が九四%、そして小学校三年生までが三八%、小学校六年生までが三〇%、中学校三年生まで、あるいは高校三年生までが一九%、都道府県レベルで一部負担がある場合、市町村が上乗せ助成して完全に無料にするなど努力をしています。

 今、二つの資料をお示ししておわかりのように、すべての都道府県、市区町村で何らかの医療費助成制度が実施されています。しかし、県や市町村の独自制度なので、自治体の財政状況などにより、対象年齢や窓口の負担のあるなしなど格差があります。中学生、高校生まで対象にしている市町村がある一方で、六%の市町村では小学校入学前までの子供であっても医療費の助成が受けられない、対象が二歳児まで、三歳児までなどと限られている。

 ここなんですね。命を守る制度に格差があってはならない。国として制度をつくり、市町村を支援すべきだ。

 先ほど総理は財政の問題についてもお触れになりました。しかし、では、就学前までの子供の医療費を無料化するのに一体全体幾ら必要なのか、お答えいただきたい。

○長妻国務大臣 役所で試算をさせますと、年間三千億円程度だという数字でございます。

○穀田委員 三千億円あれば無料化できるということになりますよね。

 だから、先ほど子ども手当の問題もお話ありましたけれども、私は、命を救うためには直ちにこれを実施すべきだと。そして、医療費にかかるお金を支援すれば、必ず子供のために使われるという特性があるわけです。

 小学校就学前までの子供たちの医療費無料制度を国が創設するよう求めて、二〇〇一年、乳幼児医療費無料制度を国に求める全国ネットワークが結成され、毎年さまざまな活動を行っています。

 昨年五月までに百二十万人を超える署名を提出していまして、無料制度創設など負担軽減措置を国に求める地方議会の意見書が、四十一の都道府県、七百六十六の市区町村議会で採択されています。

 就学前の国の医療費無料制度創設に賛同し、署名した国会議員は、昨年六月時点、総選挙前ですが、私ども日本共産党はもちろん、当時の与党である自民党、公明党から、今与党の民主党、社民党、国民新党、そして無所属の議員、党派を超えて百三十人以上います。閣僚の中にも、長妻大臣、福島大臣、前原大臣、枝野大臣、亀井大臣が署名されています。

 子供の命を守るために、ぜひ一緒に実現しようじゃありませんか。国民の願いにこたえて、国の制度で無料化を実現に向けて直ちに検討し、実行すべきだと思いますが、長妻大臣と福島大臣に一言ずつお願いしたい。

○長妻国務大臣 この件でございますけれども、先ほども御紹介を申し上げましたように、県あるいは市町村でも、かなり多くのところが一部あるいは全額無償にされておられるということであります。

 今、喫緊の課題として、限られた財源で使わなければならないと考えておりますのは、一つは医療、同じ医療でありますけれども、医療の充実ということで、小児科について、今、医療崩壊が言われ、お医者さんの数が少ない、あるいはNICUという、本当にお子様あるいは生まれたての方の集中治療室のベッド数が足りない、これについても我々措置をするということと、あるいは、NICUのベッドで治療をされておられる方が、その後、後方ベッドというか、どこに移動するのかということも診療報酬で新しく今回措置をいたしまして、そういう意味では、そちらに我々としてはお金を今使わせていただきたいということで、診療報酬でも措置をしているところであります。

    〔海江田委員長代理退席、委員長着席〕

○福島国務大臣 子供が病気になっても医療を受けられるということは極めて重要で、街頭やいろいろなところでも、親御さんの期待、あるいは子供の医療費の無料化については要望も強いことは本当に承知をしています。

 子ども・子育てビジョンにおいても、例えば親が……(穀田委員「知っています。それは見ています」と呼ぶ)はい。子ども・子育てビジョンにも書いております。ですから、今御指摘のとおり、子供の医療費を無料にすることは極めて重要な課題だと認識をしております。

○穀田委員 重要な課題だということだけでは済まないんです。今実現すべき課題なんだということを私は提起しているんですよ。

 総理、一言どうですか。

○鳩山内閣総理大臣 先ほど申し上げましたが、穀田委員が大変切実な問題として提起をされておられる。今、内閣の中にも署名をされた方が五人いるということも伺いました。

 私は、大変重要な課題をいただいている、そのように思っています。財政との相談の中で、優先的な課題としてこれから扱ってまいりたいテーマだというふうに理解をさせていただきたいと思います。

○穀田委員 財政の話は先ほどして、それほど大きな話じゃないということを言っているわけですよ。

 そこで、地方自治体の話が先ほど総理からありました。国の助成制度がないために地方自治体が独自に助成しているわけですけれども、国は、こうした自治体に水をかけるやり方をこれまでしてきたんですよ。自治体が窓口負担をなくしたり減らしたりすると、国民健康保険への国の負担を減らすペナルティーを科しています。二〇〇七年度、一千三百五自治体、約六十五億円をやっています。

 これを来年度も続けようとしているんですが、直ちにやめるべきだ。そのぐらいできますか、総理。

○長妻国務大臣 これは、ペナルティーといいますか、これは一定の、国保に対して国庫の補助を入れさせていただいておりますけれども、一定の係数を掛けて、そういうような乳幼児の方の無料をやられているところもそうでないところも同じ係数を掛けて補助をさせていただいている、こういうようなことでありまして、無料にされて医療費がふえた部分についての国庫補助というのは、結果としてその部分はつかないというのはございますけれども、前の水準を減らすということではありませんで、基本的には同じ係数で全国の国保に補助をしている、こういうことであります。

○穀田委員 それは、調整という名前をやっているけれども、減額していることは事実なんですよ。そんなことを言っていたら、ちょっと話は違うけれども、前の自公政権の時代の官僚答弁とさして変わらぬということじゃないですか。その当時でいえば、舛添さんだって、我が党の高橋議員の質問に対して、何らかの前進を考えたいとこの問題については言っているんですよ。本当にがっかりする。冗談じゃないと私は思いますよ。

 窓口払いが高いと、親は財布の中を気にして、安心して子供を病院に連れていけない。だから、国の制度がないもとで多くの自治体が窓口負担をなくす努力をしているじゃないですか。

 総理、先ほども、地方自治体の努力と言うんだったら、そういう命を守るための積極策に、そんな形で調整と称してペナルティーを科すやり方はおかしいと思いませんか。総理に聞いているんです。

○鳩山内閣総理大臣 穀田委員のお尋ねであります。

 今、長妻大臣が答えましたけれども、私としては、何か、それこそ舛添大臣が答弁されたという話でありますから、これは旧政権からの課題だ、そのような認識の中で、前進ができるように努力してみたい、そのように思います。

○穀田委員 これは前進ができる努力をぜひしていただいて、実現を図るために私どもも今後詰めていきたいと考えています。

 では最後に、一刻も放置できない介護保険制度に関する緊急対策について、総理の基本姿勢と決意を伺います。

 介護保険制度は、制度開始から丸十年となります。この間、社会保障切り捨ての構造改革のもとで、高い保険料、利用料を負担できず、制度そのものを利用できない、保険料を払っているのに、いざ利用となったら施設がいっぱいで利用できないなど、現実は保険あって介護なし、契約違反ともいうべき事態が深刻であります。

 この間も私どもの仁比聡平議員も質問しましたが、介護を苦にした痛ましい事件が後を絶ちません。このような政治は一刻も早く変えてほしい、また変えなければなりません。

 介護保険制度の現状をどのように認識しているのか、鳩山総理にお聞きします。

○鳩山内閣総理大臣 穀田委員から、介護制度の問題、保険制度の問題に関してお尋ねがありました。

 介護保険制度ができてから、これは、利用者がふえてまいる中でなかなか保険料の徴収などには厳しさがある、また一方では、介護の職員の皆様方の報酬が低い、さまざまな議論が進められている、そのように思います。すなわち、問題点がかなり大きなところに来ているな、そのようにも思っております。

 厚生労働省の調査で、例えば特別養護老人ホームへの入所申込者が四十二万人おられる。中でも、在宅で要介護度の重い方が約六・七万人、六万七千人に上っておられる。こういう方々には、できれば一刻も早く介護施設に、特養に入所をされるべきだ、私はそのように思っております。

 したがいまして、まずは施設の整備の問題が一つあるかと思っております。我々としては、まず、過去の三年間に対してこれからの三年間の間で倍増させようということで、十六万床を目標に整備を取り組んでいるところでありますが、さらにこれに拍車をかけなければいけないかな、そのぐらいにも感じているところでございます。

 また、介護報酬の問題も、せっかくやりたい人たちが、むしろ介護のヘルパーをやめてしまわれるという方もたくさんおられる。きつい割に報酬が少ない、そういうこともあろうかと思っておりまして、こういうところの充実も図ってまいらなければならないと思っておりまして、介護保険制度にはこれからも大きな改善点が求められていくという認識は有しております。

○穀田委員 多々問題点はあり、改善の方策をとらねばならないということです。

 今総理からお話あったように、実は、昨年の十二月、厚生労働省の発表では、特別養護老人ホームの入所待機者は四十二万一千二百五十九名と発表されています。問題は、この〇六年の三月の調査と比べると三万六千人もふえています。

 内訳を見ると、要介護度別では、寝たきりの人や移動に介助が必要だったりするため特養ホームに優先的に入所できるとされている要介護五と四の人だけで合計十八万人、待機者の四二%を占めています。メディアでも報道されていますが、娘が保育園のころは保育所の入所待ち、今は要介護五の母の特養ホーム待ち、どうにもならないもどかしさと不安で息苦しくなると訴えられた声を紹介しています。

 問題は、この深刻な実態をどのように解決するか。先ほど数字はありましたけれども、問題は、待機者をなくすための緊急五カ年計画をつくり、国の財政支援を拡充し、積極的に進めるということが必要だ。そういう決意はおありでしょうか、総理。

○長妻国務大臣 今おっしゃられたような問題意識を我々も有しておりまして、今後三年間、介護施設のベッド数は十六万ベッドをプラスする。これまでは、過去三年間、八万ベッドの増加でしたから、二倍のスピードでふやしていく。

 そして、もう一つ重要なのは、やはり施設だけじゃなくて、御自宅で介護を受けたいという方も一方でいらっしゃるわけでございまして、今現在、在宅サービスを受けておられる方が二百八十三万人おられます。そういう在宅のサービスも拡充をして、施設、在宅、御希望がかなえられるような整備をしていきたいというふうに考えておりますけれども、おっしゃられたように、今、現状はまだまだ不十分だという強い危機感を持っておりますので、今、雇用も大変厳しい状況で、一方で介護の職員の方は人手不足になっているということで、このミスマッチも埋めていくという努力を今あらゆる政策を使ってしているところであります。

○穀田委員 特養ホームの問題についてはこれからも追及していきますけれども、私は、やはり緊急整備五カ年計画という形で本当に計画的に進めなくちゃだめだということを一つ思っています。

 同時に、療養病床が廃止されると行き場がない、それから、九十日を超えると病院から追い出される、こういう点も今深刻な実態があることは総理も御承知かと思うんです。今のままでは、たくさんの医療難民や介護難民が生まれかねない。したがって、私は、療養病床の廃止や病院からの追い出しをやめ、基盤整備をしっかりやる政策に大きく転換することを求めたいと思います。

 このことが、政治を変えたいという国民の期待にこたえることになる。その点での総理の決意を最後にお聞きしておきたいと思います。

○鳩山内閣総理大臣 私も、先般、ある病院を訪れまして、一般の病室とそれから療養病床群、両方が階が一階違うだけで同じような症状の方々が寝ておられました。それを見て、療養型病床群の廃止の問題というのは、これはやはり深刻に見直していかなきゃならぬという思いに駆られたところでございますし、その方向で今努力をしていきたいと考えております。

 介護の問題は、私どもいわゆる団塊の世代が、これからあと十年、本当に元気でいられればいいけれども、介護が必要になってくるかもしれない。そういう人たちが今いるわけでありますから、介護の問題に関して何らかの形の、今お話がありましたように、五カ年計画みたいな話がありましたけれども、我々は三カ年ごとにやろうかと思っておりますが、しっかりとした介護に対する方向づけというものをつくり出してまいりたい、そのように考えております。

○穀田委員 行き場がないお年寄りをこれ以上つくっちゃならぬということを申し上げて、質問を終わります。