国会会議録

【第174通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2010年4月7日)



○穀田委員 私は、日航問題についてきょうは質問します。

 二月二十六日にも大臣と質疑を交わしました。そこで私は、日航の再建に当たって、国民監視のもとで、安全第一、公共性の確保を基本として進めなければならないという立場を明らかにしたところであります。その際に、安全運航を支えるのは現場のモチベーションの高さだと指摘しました。そして、それは、タスクフォースの調査報告書も指摘しているとおりであります。

 大臣は私の質問に対して、「働く方々のモチベーションをいかに維持し高めていくかということは最も大事なポイント」だ、さらに、「私自身も、チャンスをとらえてできる限り現場の方々と意見交換をさせていただいて、安全を確保していただき、そしてまた仕事に誇りと自信を持ってやっていただけるような、モチベーションを高めていただけるような、そういった意見交換をぜひいろいろな会社といろいろな機会で持たせていただきたい」とお答えになりました。

 大臣にお聞きします。その後、現場の労働者と意見交換はなさいましたか。

○前原国務大臣 穀田委員にお答えいたします。

 企業の再建に当たりましては、第一義的には、経営者が現場の労働者の声を聞いて、経営再建に反映させるとともに、社員の力を結集させていくことが必要であると考えております。稲盛会長も、会長就任後、速やかに羽田空港などの現場に赴かれまして、社員との直接対話を開始されていると伺っております。

 私といたしましても、公共交通機関の使命たる安全運航のためには、これを支える労働者の皆さん方のモチベーションの維持、高揚が重要であると考えております。機会をとらえまして、現場の方々の意見にも耳を傾け、安全を確保し、そして仕事に誇りと自信を持って取り組んでいただけるように、意見交換を行いたいという思いは変わっておりません。

 なお、今まで、労働組合の幹部の方々と二度にわたりまして意見交換はさせていただいております。

○穀田委員 引き続き、今、やはり事態がいろいろ推移していきますから、その節目節目で必要だと私は思っています。

 なぜこんなことを言うかというと、日航が進めているリストラで現場のモチベーションが著しく低下していると感じているからです。

 四月二日、厚生労働委員会において、我が党の高橋議員がこれらを問題にしました。大阪と福岡を拠点にしている、ある意味では基地というんでしょうか、勤務している客室乗務員五百十人に対して、七月から成田か羽田へ異動、転勤するか、それとも、四月九日締め切りの特別早期退職優遇制度に応募するよう会社が迫っています。

 六月末に基地を閉鎖するので、七月から羽田か成田へ異動を、または特別早期退職に応募をという形で、三月九日に突然一方的に提示。特別早期退職の締め切りは四月九日、ずっと決まっているわけですから、そうしますと、わずか一カ月で人生の大きな選択を迫るという、余りにも乱暴なやり方と言わなければなりません。

 この拠点、基地には、客室乗務員だけでなく、パイロットも整備関係の地上スタッフ労働者も所属していて、なぜ客室乗務員だけが対象になるのか。大阪には約四百五十人、福岡には約六十人が所属しています。多くの乗務員が大阪や福岡に自宅を持っておられ、子育てや介護をしながら働いているため、直ちに転勤に応じるのは難しいということだとお聞きしました。直接お話を聞くと、本当に身につまされます。

 客室乗務員の方がおっしゃるには、私たちは閉鎖自体に反対せず、リストラにもできる限り協力する、これまでも安全運航とサービス向上に努め、再建に向けて頑張ろうと思っていたのに、なぜ客室乗務員だけがやめざるを得ないように迫られるのか。家族も含めて、毎日本当に悩んでいる。

 さらには、再生会社になったのですから、黒字転換のためコスト削減に協力したいという気持ちは大いにあります。事業所が不採算なので閉鎖というなら理解できるのですが、大阪空港支店は存続し、整備の方もKDも空路も閉鎖にはならない、なのに、なぜ乗務員だけが引っ越しをしなければならないのでしょう。さらに、せめて四月九日の特別早期退職締め切りは延期してほしい、異動するにしても、子供の学校や親の通院などの問題もあり、猶予期間を設けてほしいと訴えておられます。

 労働組合は会社に対して、大阪、福岡に住み続けながら乗務できるよう工夫すること、当面、大阪と福岡の客室乗務員については四月九日の特別早期退職締め切りを延期することなどを求めて交渉しておられるようですが、昨日までの時点で、会社側は締め切り延期に応じていないということだそうです。

 転勤できなければやめるしかない。これは事実上の退職強要であります。高橋議員の質問に対して、厚労大臣は、「会社更生手続であるか否かにかかわらず、企業が人員や労働条件の見直し等を行おうとする場合には、労働組合と誠実に交渉を行うことが求められている」と答弁しておられます。

 日本航空は誠実に交渉しているのか。国交省としてどう確認されておられるのか、お聞きしたい。

○前原国務大臣 大阪の方から、私も、二通お手紙をいただきました。一通は、私の選挙区にお住まいの方でありましたし、お一人は、直接電話でかけてこられまして、お話を伺いました。個別のお話を聞いていますと、それぞれの生活があり、大変な思いをされているということについては、私も大変胸が締めつけられる思いをいたしました。

 ただ、このJALグループというのは破綻をしたんですね。会社更生法の申請をして破綻をして、再生途上であるということでございまして、この大阪、福岡基地の閉鎖及び特別早期退職の募集については、日本航空の経営改善策の一環であるという認識をしております。

 稲盛会長や大西社長さんも苦渋の決断をされていると私は思いますけれども、こういった問題については、労使の話し合いで解決すべきものでありまして、航空行政を所管する国土交通省の立場からコメントすることは差し控えたいと考えております。

○穀田委員 それだと、コメントするのは差し控えたいというふうにはなかなかいきませんよ。だって、少なくとも長安政務官だって、この事態についてはきちんと見守らなくちゃならぬということまで言っているわけですよね。それで、なおかつ、誠実に交渉することが求められているというのは、これは政府の、厚労大臣の発言なんですよ。正規の発言なんです。

 この話と同じ政府を構成して、しかも、安全の基本となるモチベーションを高めなくちゃならぬというところの肝心の方々がそんな形で悩んでおられるというのに対して、誠実に交渉しているかどうかについてはやはり見守る必要があるし、どうなのかという判断が要ると思うんです。私は、およそ誠実に交渉しているとは言えないと思うんです。

 なぜ、直ちに七月から転勤しなければならないのか。確かに、おっしゃるように、破綻した問題はあるでしょう。しかし、そのことと、では労働者をどうするのかということについては、きちんと納得できる説明がなければなりません。必要であります。

 労働組合は、しかも、たとえ基地をなくしても大阪や福岡に住みながら乗務することは可能だ、これまでやっている、全員羽田や成田に引っ越せば、大阪にフライトしたときは、全部、宿舎費などがかえってかかり、余計に経費がかさむ、経費がかからないやり方もある、こう言っておられるわけですよね。つまり、今のリストラという問題とのかかわり合いで、どうするかということについても積極的に提言しているわけですよ。

 さらに、天候の影響などで羽田から飛行機が飛べないときに、大阪や福岡に住む客室乗務員がいれば運航を確保できる。リスクをしょっているという意味でも、分担をしてきちんとやっているという、その意味でも、安全からいっても欠かせない問題なんですね。最近もそういう事態があったわけです。したがって、安全運航を確保するためにも、無理に転勤させるのはおかしいんと違うかということなんですよ。

 ところが、会社は、こうした組合の指摘に対してまともに回答せず、とにかく四月九日の期限は延長できないと、転勤か退職かの決断を迫っている。こうしたやり方で、大臣が言うような労働者のモチベーションが果たして保たれるのか。安全を確保し、仕事に誇りと自信が持てるのか。転勤できなければやめるしかないと事実上の退職を強要するやり方はやめよ、そういうことが言えないのかということを言っているんです。

○前原国務大臣 繰り返しになりますけれども、日本航空は二兆円以上の負債を抱えて破綻をしたんですね。会社更生法の適用を今申請して、裁判所で更生計画を立てているところでございまして、大幅なリストラというのは不可避であります。そうしないと再生はできないわけであります。

 ただし、その過程において、働く方々のモチベーションを上げて、何よりも安全運航というのを確保していくというのは大変重要なことでございます。その意味においても、労使の問題は、両者の納得と合意をしっかりと粘り強く目指していかれることが重要であるという認識も持っております。

 しかしながら、いかなる企業であっても、労使の問題というのは、両者の話し合いというものがベースで解決されるものでありまして、航空行政を所管する国土交通省の立場からこれについてコメントすることは差し控えたいと思っております。

 ただ、一般論として申し上げれば、企業が人員や労働条件の見直しを行おうとする場合には、労働組合と誠実に交渉を行うことが重要だと私も考えております。

○穀田委員 だから、誠実に行うことが必要だ、納得と合意が要るんですよ。しかもそれは、会社更生法が適用されたからといって、労働者の条件が、勝手にリストラされるから勝手でいいんだという理屈はないんですよ。今までそういったためしは一度もないんですよ。そんなことを許したら、それはもう労働者の基本的権利が奪われるという事態になってしまう。

 そういう意味でいうと、労働者の基本的権利が奪われたり、安全が損なわれたり、おっしゃるような合意と納得が得られていない状況があるとすれば、それは物を言っていただく必要があるということを言っているんですよ。一々全部関与して、こうしろ、ああしろと言っているんじゃなくて、少なくとも誠実にやれよと。

 それから、モチベーション、安全性を高めるためのモチベーションという問題がある。仮にリストラということ自体があったとしても合意と納得が必要だ、そういう時々の視点といいますか、肝心かなめの点についてはきちんと物を言う必要があるということを言っているんです。その辺はいいんですね。

○前原国務大臣 私も稲盛会長とはお話をいたしましたけれども、非常に心を痛めておられますし、真摯に、やはりこういったものについては労働組合とも話をして解決をしていかなくてはいけないという御認識を持っておられると私は思います。

 いずれにしても、一般論でございますけれども、企業が人員とか労働条件の見直しなどを行う場合においては、労働組合と誠実に交渉することが重要だと考えております。

○穀田委員 ですから、誠実に対応することができているのかどうかをきちんと見る必要があるということですよ。一般論というのは、少なくとも、この問題が今JALの再建問題にかかわって出てきていることなわけだから、それにかかわっている大臣として当然の仕事だということだけ言っておきたいと思います。

 では、もう一つ聞きたいと思うんです。

 会社更生手続中の日本航空と管財人の企業再生支援機構は、新たに国際十六路線、国内は三十一路線を廃止、撤退するリストラ案をまとめ、取引銀行団との交渉に入ったと日経では報道されています。また、三月から二千七百人削減を前提に特別早期退職を募集しているが、さらに四千八百人上積みし、計七千五百人と三倍近くにふやし、当初の一万五千七百人からリストラは二万人規模となるとも報道されています。

 まず、撤退する路線の上積みや人員削減の積み増し計画の報道は事実ですか。

○古川副大臣 お答えいたします。

 会社更生手続の中でまだ確定しておらない事項につきましては、その事実関係を含め、コメントにつきましては差し控えさせていただきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、今後とも、日航の抜本的な再生のために、機構が関係者との調整を図りつつ、適切な措置を実施していくことが重要であるというふうに考えております。

○穀田委員 そんなあほなことはありませんで。だって、そういう報道がされているということに対して、事実であるかないかと。ということは、平気でそういう世論をつくっていくということになるじゃないですか。

 では、そういうやり方自体が間違っておるということは言えるんですか。

○古川副大臣 繰り返しになりますけれども、会社更生手続の中でまだ確定しておらない事項でございますので、その事項につきましては、その事実関係を含めて、コメントする立場にはないということを御理解いただきたいと思います。

○穀田委員 それは違うよ。そういうことが報道されていることについては、それはおかしいというふうに、違うんだったら違う、それから、そういうことも含めて、やり方がそんなことがあってはならないとするのか、事実があるんだったらあるのかというコメントの問題でしょう。つまり、事実について言えと言っているんじゃないんですよ。そういうやり方は、では、あなた方がやっているようなやり方とは違うということなんでしょう。そういうやり方自身が今度は問われる問題じゃないですか。そこを言わなきゃ。

 では、コメントできないって、コメントしないと言いながら、報道ベースでどんどん流していくというやり方はいいのかということが問われるわけじゃないですか。そこははっきりせなあかんと私は思うんですよ。そんなことを許しておったら、報道で何でも流してそういう世論をつくっていくというやり方が許されて、結果として、そういうものを政府が見過ごしていたという責任は厳しく問われることがあるということだけ言っておきたいと思います。

 なぜかというと、前原大臣は読売新聞のインタビューに、路線のさらなる見直しを進めてほしいと答えています。三月下旬に稲盛会長にも伝え、大筋で合意いただいたとも述べています。

 もともと、一月に企業再生支援機構が支援決定する際に提示した事業再生計画では、不採算路線からの撤退として、合わせて国内、国際四十一路線、人員削減は、先ほど述べたように、一万五千数百人としていたわけです。当初のこの計画を進めれば再生できるとしていたわけですよね。

 もちろん、途中で見直しということはあり得ると思うんです。そんなことを別に言っているわけじゃないんです。問題は、その根拠が要るわけですよね。だから、大臣はなぜ見直す必要があると判断したのか、根拠を明らかにすべきじゃないのか。

○前原国務大臣 一月十九日に会社更生法が適用された時点においては、企業再生支援機構がまとめた再生計画、これを着実に実行する、これが再生への道筋だということでございましたし、それについては私も納得、合意をしておりました。

 ただ、しばらくたっておりますが、こういった問題は、議員も私から申し上げるまでもなくおわかりだと思いますけれども、航空需要の問題、世界の景気の問題、こういった問題とかかわってまいります。今までの日本航空の窮境原因の一つが不採算路線の問題でございまして、今の航空需要は残念ながら引き続き低迷をしておりまして、企業再生支援機構による支援決定後に公表された平成二十一年度の第三・四半期の決算におきましては、千七百七十九億円の赤字ということになっております。

 これらを踏まえますと、本年夏ごろをめどに策定される更生計画の内容は、窮境原因となっている要因を抜本的に改善するものでなければならないと考えておりまして、二次破綻は絶対に避けなくてはいけない、このように考えております。したがって、路線のさらなる見直しを進めてほしいという見解をお示ししたものでございまして、その方向性については稲盛会長にもお伝えをしております。

○穀田委員 ただ、その一例をもってしてすべてというわけにはいかないんですよ。

 なぜかというと、この問題について言えば、透明性、国民の目線でと、わざわざ官房長官はこの問題の解決に当たっての姿勢を示しているわけです。そうなると、国民目線と公開性という問題、二点からすると、今の発言では極めて不十分だということだけ一言言っておきたいと思うんです。根拠というのは、すべからくすべての点を明らかにしてこそ、もちろん、すべてというのは一切合財の状況を明らかにせいというんじゃないんですよ、基本的にはそういうことだと。

 二つだけ言っておきたいと思うんですよ。そういう問題の際に、やはり路線を変更するとなると、地方空港の場合は地方自治体が絡んできます。それから、リストラという問題になってくると、今度は労働組合との話し合いも必要です。そういうことを含めてきっちりしなければならない、そういう点での再生計画を進めるべきだというのが一つです。

 もう一つだけ最後に言いますと、こういう問題の際に、やはり、あわせて、空港の収支、経営状況を明らかにすべきだと思っています。国管理の空港はもちろんのこと、地方管理空港の収支、経営状況を明らかにしてこそ、対策がつくられます。

 したがって、その二点についてお答えいただければ幸いです。

○前原国務大臣 委員は先ほど古川内閣府副大臣に対して、新聞にいろいろリークさせて既定路線をつくってという話をされましたけれども、そういうことは我々は当然ながら政府としてしておりません。しかも、各紙見ますとばらばらのことが書いてありまして、恐らく推測記事も含めた、私は、まだ確定をしていない中での推測記事が書かれているんだろうということでありまして、そのような、既定路線をつくるためにこちらがリークしているということは一切ございません。

 その中で、二つのお尋ねがございました。

 撤退路線の上積み、人員削減の積み増しに際して地方や労働者にどう納得をさせるかという御質問でございますけれども、これも先ほどの答弁にかかわってまいりますけれども、とにかく再生を着実にやっていくということになれば、再生計画あるいはそれを深掘りしたものになるであろう更生計画に基づいてしっかりやっていかなくてはならないわけでありまして、路線や人員の大幅な縮小というのは不可避だと思っております。その際に、委員もたびたび御指摘をされておりますように、地方への説明、あるいは労働組合、労働者への誠実な対応を求めるべく、しっかりと話し合いをしていく、交渉していくということは大事なことでございます。

 また、国管理空港や地方管理空港の収支いかんということでございますが、国については御承知のとおり開示をしております。そして、地方におきましても、長野、これは松本空港でありますが、それから神戸空港、これは神戸市でございますけれども、開示をされておりまして、さらにこういった地方管理空港の経営状況もしっかり開示するように国土交通省としても促してまいりたいと考えております。

○穀田委員 最後に、今お話ありましたけれども、私は、二月二十六日の際に、この質疑の中で参考人を呼ぶべきであるということを既に主張していますが、改めて、JAL会長の稲盛和夫氏、前社長の西松氏、それから働いている方々の代表である航空労組連絡会の代表者、さらには企業再生支援機構責任者の参考人招致を要求したいと思います。それで、終わります。

○川内委員長 ただいまの穀田恵二君の参考人要求については、理事会で後刻協議をさせていただきます。