国会会議録

【第174通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2010年5月11日)


会議録 第174回国会 国土交通委員会 第18号(平成22年5月11日(火曜日))

    午後二時八分開議


○穀田委員 法案について質問します。

 一九八二年、国連海洋法条約の採択がありました。そして、九四年に発効したわけであります。その時点で政府は、我が国の排他的経済水域等の境界を根拠づける基線についての重要性をどのように認識して取り組みを行ってきたのか、これをお聞きしたい。特に、国際的な各国の取り組みと比較して御報告いただければ幸いです。

○前原国務大臣 海洋国家といたしまして、管轄海域を構成する領海、排他的経済水域といった我が国の主権をしっかり守り抜く国家としての意思を確固として持ち続けることは大変重要でございまして、そのために、これらの管轄海域の根拠となる基線、とりわけ基線を有する離島は、御指摘のとおり重要なものであると認識をしているところでございます。

 他国の例をということでございましたけれども、また、他国の例については調べてお答えをさせていただきたいと思います。

○穀田委員 私は何でこんなことを言ったかというと、一九八二年に国連海洋法条約は採択されている。それまでに、この問題についてのさまざまな交流や意見交換があったわけですよね。そして、今大臣もお述べになった排他的経済水域等の境界を根拠づける基線について、大体の認識がずっと高まってきたわけですよね。それを、主権との関係や離島との問題についてお述べになったわけだけれども、国際的には非常に大きな流れがありまして、それぞれの境界線をきっちり規定していくという取り組みが行われたというところが特徴があるわけですね。

 それが、今の段階で答えることができないというのはちょっと変な話で、要するに、どういう取り組みをされているかというのは、他国の取り組みがどうなっているのかということについては、いかがかと思うんですね。つまり、はっきり言って、ちょっと対応が遅いんじゃないか。これは、二〇〇七年に海洋基本法をつくっているわけですが、先ほど述べたように、八二年に海洋法条約採択、それから、発効が九四年ということであります。

 そこで、なぜ今まで基線の根拠となる低潮線の保全に取り組んでこなかったのか、この点についてだけお聞きしたいと思います。

○前原国務大臣 他国の例はともかくとしまして、我が国がどういうことをやってきたかといいますと、平成八年六月に、先ほどおっしゃったように、国連海洋法条約を批准した、同年七月に、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律などの関係法を整備して、そして排他的経済水域等の設定及び漁業資源等の保全、利用を図ってきた、これはやってきているわけですね。

 それで、ただ、ほかのことについてはできてこなかったということでありますし、この海洋基本法ができたといっても、例えば、先ほど経済産業省の高橋大臣政務官が答弁されていたように、では、国連海洋法条約を批准して、海洋法条約に基づいてすべての項目について国内法が整備されているかというと、まだ整備されていないんですよ。

 ですから、そこはこれからやはり順にやっていかないと、条約上は批准をしているのに国内法の整備ができていないということは結構あるんですね。これは領海内においてもそのとおりなんです。ですから、ここがまだまだ私は通過点だというふうに思っておりまして、やはりさらなる整備をしっかり行っていかなくてはならないと思います。

 いずれにしても、今回のこの法律をしっかりと行うことによって、日本のいわゆる主権であるその基点をしっかりと決めるということと、あとは、離島の保全というものをしっかり行うことによって、排他的経済水域の水産資源、あるいは主権、また海底資源をしっかり確保していくということの意思を内外に示して、そして着実に進めていくことが大事だと考えております。

○穀田委員 大事だという点では認識は一致しているんですよ。ただ、おくれている、はっきりおくれているということを指摘しているということですよ。

 経過はおっしゃるとおりで、もちろん、前政権のことだ、何となくそんな感じの顔をしているけれども、ただ、海洋管理のための離島の保全・管理のあり方に関する基本方針がありますよね。それを見ていますと、「排他的経済水域等の根拠となる基線は、国連海洋法条約において、沿岸国が公認する海図に記載される海岸の低潮線等と定められている。」こう述べているわけで、すなわち、海洋法条約が採択、発効したときからその重要性は明確だったわけですよね。だから、その点で対策がおくれたことは明白だということを私は指摘している。

 それは、何も私が言っているだけじゃなくて、当時、この問題の海洋基本法をつくっていく際の研究会ですら、「国連海洋法条約・アジェンダ21体制への対応が遅れている。」と指摘したほどなんですね。ですから、私は、ここをはっきりさせぬとあかんということを言っておきたい。

 しかし、今後の対応、対策についてはこの法案は必要だと考えておりますので、私どもは賛成したいと思っています。

 そこで、話は飛びますけれども、海洋における事故について少しお聞きしたいと思うんです。

 二〇〇九年度船舶海難隻数二千五百四十九隻のうち、プレジャーボートの海難隻数は一千十三隻と約四〇%、漁船の海難隻数は八百十二隻と約三二%を占めています。海上保安庁と国土交通省海事局や同じく省の運輸安全監理官室などが協力し合って対応せねばならないと思いますが、その実態はいかがか、お教えください。

○前原国務大臣 プレジャーボートでございますが、それぞれの航行目的や航行進路がさまざまであることや、あるいは操船者の操船練度、知識等にも差がありますことから、おのおのの事情に応じたきめ細かな対策が必要だと考えております。

 このため、国土交通省では、船舶検査により構造、設備の安全性を確保して、操縦免許制度により知識、能力を担保しているほか、海難防止講習会、あるいは訪船指導、全国海難防止強調運動及び小型船舶安全キャンペーン等によりまして、海難防止意識の高揚、啓発を図ってきているところであります。

 また、気象、海象等の安全運航に必要な情報をプレジャーボート操船者に対してパソコンや携帯電話で提供し、海難の予防に取り組んでいるところでございます。

 このように、国土交通省といたしましてもプレジャーボートの安全対策に総合的に取り組んでおりまして、今後も、引き続き安全対策に万全を期していきたいと考えております。

○穀田委員 万全な体制をとっていただきたいとは思います。

 そこで、私、資料をいただいたんですが、国土交通省大臣官房運輸安全監理官室が、「事故、ヒヤリ・ハット情報の収集・活用の進め方」というパンフレットを発行しています。海の事故を少なくするために、船舶事業者への指導が今の中心として活動されているようです。これは、それに資するパンフだと思うんですね。

 このパンフレットによると、ヒヤリ・ハット報告用紙というのがありまして、それにもプレジャーボートの、相手の船舶として、いわばどんなことが起こっているかということで掲げられています。

 そして、事例集では、一、場所別ヒヤリ・ハットでいえば沿岸地域が多いこと、二、相手別では漁船、プレジャーボートが六三%を占めている、そして、航行状態では横切りが多いことが特徴だと。これらの傾向に着目すれば、漁船とプレジャーボートへの指導が大切だということがわかると思うんです。

 先ほどありましたけれども、私は、こういうヒヤリ・ハットなんかも含めて、やはり教育過程だとか五年ごとの免許更新の講習などに組み込むことが必要じゃないかと思うんですが、簡単に、意見があれば。

○前原国務大臣 それはそのとおりであります。これは国土交通省の大臣官房の運輸安全監理官室がつくっているものでございまして、しっかりと周知徹底をしていかないといけないものだと感じております。

○穀田委員 続いて言いますけれども、プレジャーボートなど小型船舶の検査というのは三年ごとになっています。前回検査を受けたが、三年後に受けていない数が二万から三万件あると聞いています。検査を受けていない船舶への対応はどうしているか、お聞きします。

○前原国務大臣 委員御指摘のように、小型船舶の総隻数が四十一万八千隻であります。平成二十年度に船舶検査を受検すべき隻数が約十三万三千隻でございましたけれども、そのうち適正に船舶検査を受検した隻数が約十万三千隻。ということは、約三万隻が船舶検査を受検していないということでございます。

 こういうふうに、三万隻の受検していない船があるわけでございまして、小型船舶安全キャンペーンなどによりまして、法令遵守が徹底されるように今後も指導してまいりたいと考えております。

○穀田委員 今ありましたように、三万隻が受検をしていないと。結構な数なんですよね。これがまた放置につながりかねない問題があります。それで、放置された船が油汚染や事故の原因になりかねないと指摘されているわけであります。

 そこで、今度は、プレジャーボートの放置隻数、放置される原因について、どのように把握、認識しておられるか、お聞きします。

○長安大臣政務官 この放置されるプレジャーボートについて、これはもう本当に問題が多いと認識をしております。

 現在まで、平成十八年度に国交省と水産庁で合同で全国実態調査を実施いたしまして、放置隻数について把握をしております。平成十八年度の調査結果では、港湾、河川、漁港というこの三つの水域における放置隻数の合計は十一万六千隻でございました。プレジャーボートの総隻数が二十一万七千隻でございますので、半数以上が放置艇となっているわけでございます。

 この放置の原因について申し上げますと、やはり施設の収容能力が絶対的に不足していること、さらには規制措置が不十分であったこと、また、所有者の意識が低かった等々が考えられます。

○穀田委員 半分がいわば放置されているという現実なんですね。ですから、これは大変な問題になっていいわけですね。

 プレジャーボートを購入する際に、自動車の車庫証明のように、係留、保管場所を明確にする制度が必要じゃないかということで、例えば私が住んでいます京都府漁業協同組合なども対策を求めていますし、以前からそういう点は繰り返し指摘されています。最近でも、二〇〇七年、今後の放置艇対策についてということで、三水域連携による放置艇対策検討委員会が提言をしています。

 提言では、「放置艇問題を解消する抜本的な方策として、プレジャーボートの」「保管場所確保の義務化を図る制度の法制化が待たれている。」ということを指摘していますが、その検討はどこまで進んでいますか。

○長安大臣政務官 御指摘の保管場所の義務づけということの重要性は認識しております。今、現状では、具体的に、義務づけを行うということまで決めているわけではございませんが、このように多くの放置艇があるという現実をかんがみますと、今後、鋭意検討していかなければならないと認識しておるところでございます。

○穀田委員 その鋭意検討していかなければならないと思っていますという程度では、半分が放置されているという現実に、およそ、これをなくすためにまともに接近しているとはちょっと思えないんですね。だって、検討委員会の提言では、「法制化が待たれている。」「検討を推進し、」「早期にその法制化を図るべきである。」と述べているわけですよね。だって、二〇〇七年から提言をされているわけで、そこで実態調査もやられて、さっきの数字が出ているわけでしょう。

 しかし、調査では、確かに、前回、二〇〇二年の調査に比べて、放置艇は一万八千隻減少しているんですね。そこで、当時問題になっていた保管場所の絶対数が足りない、そういう事態からすれば、減ったことによって可能性はあるということをわざわざ指摘しているわけですよね。その指摘を踏まえたらそんな話にならないわけで、もう少し前に進める話をしなければ、幾ら長安さんといっても、それは前の提言のところの話を繰り返しているだけにすぎないということになりはしませんか。

 私は、せめて、ちょうど今年度、改めて実態調査をするんでしょう、そういうことも述べ、一つ私ども提案しておきたいんですけれども、やはり国の責任で保管場所の整備を進めること。高過ぎる保管料の問題というのも解決するというのが一つ。

 二つ目に、やはりこの際に、あわせて、保管場所確保を義務づける法制化の検討を直ちに開始する。

 次に、これはメーカーの責任も重大なんですね。売っているわけですから、売るときに大体どうするかという問題を、いよいよ、お互いのことで、これはだめよという話をやらなくちゃならぬわけですよね。それを求めるべきだと思うんですね。

 最後に、四つ目の提案は、水産週報などを見ていますと、賠償責任保険に加入しているプレジャーボートの事故発生率は低く、マナーもよい、こういう指摘もあるほどであります。したがって、プレジャーボートの責任保険加入の促進も一つ考えるべきだと思うんですね。

 ですから、私、四つの提案を今しているわけですけれども、それらの方向性について、では、最後に大臣、お答えいただけますか。

○前原国務大臣 御提言は御提言として、謹んでお聞きをいたしました。

 いずれにしても、先ほど長安政務官からお答えをさせていただきましたように、三水域連携による放置艇対策検討委員会から提言がなされておりますので、この提言をもとに、何ができるかということをしっかりと我々も省の中で議論して、やれるところからしっかりやっていきたい、このように考えております。

○穀田委員 やれるところからというわけですけれども、やるべきことは、二度の提言の中で書かれているのは法制化なんですよ。ですから、義務化をする、係留その他についての場所を確保して、そういうことについて車庫証明のような形での義務化をするということが求められているわけですよね。そこはもうはっきりしているんですよ。

 私は、それに加えて、今、謹んでということを言っていましたけれども、余り別に謹んでもらわなくてもいいので、現実的な問題として、そういうことに踏み出せば、我々、海洋国だとかいろいろ言うんだけれども、そこで起きている事態の事故を本気になって減らすということとの関係でいけば、そういう点も私は大事だと思うから言っているわけで、やはりそれはきちんと受けとめていただいて、次、この問題の調査が行われた暁にはいよいよそういうところに踏み出すべきだということを申し述べて、終わります。