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【第177通常国会】 衆議院・本会議 ○穀田委員 私は、日本共産党を代表し、菅総理に質問します。(拍手) 質問に入る前に、東日本大震災で犠牲となられた多くの方々に哀悼の意を表します。今なお不自由な生活を余儀なくされている被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。また、困難な中で、被災者救援、地域の再建のために全力を挙げておられる皆様に敬意を表します。 まず、一刻も待てない避難生活の改善です。 地震発生から一カ月半以上が過ぎましたが、依然として一万一千名以上の方々の安否が確認されておらず、わかっているだけで、十三万人を超える被災者が避難生活を強いられています。巨大地震と大津波から助かった命を失うことがあってはなりません。 水道や電気が復旧していないばかりか、トイレがあふれている劣悪な環境の避難所がいまだに放置されています。一カ月半以上たっても、温かい食事がない、一度もふろに入っていない、間仕切りが全くない、医師や保健師の巡回もない、あっても十日に一回程度など、人間らしい生活にはほど遠い、極めて深刻な状態が続いています。感染症の拡大が危惧され、長引く避難生活のストレスの影響も懸念されています。 自治体も被災し、その機能の一部を失いながら努力されていますが、その自治体にただ要請するだけでは対応し切れないことは明らかであります。具体的な避難所を特定し、被災自治体と連携して、国が責任を持って課題を解決していくことが必要ではありませんか。明確な答弁を求めます。 被災者に人間らしい生活を保障するためには、避難所から一刻も早く仮設住宅等へ移ることができるようにすることが求められています。希望者全員が入れる仮設住宅の建設を大規模かつ早急に進めなくてはなりません。そのためには、公有地の提供はもちろん、民間用地の借り上げ、民間住宅の借り上げ、可能な場合は個人の宅地内への建設など、考えられるあらゆる手だてを尽くすことが必要です。答弁を求めます。 第二は、被災者の生活再建と地域の再建の問題です。 重要なことは、復興の土台は被災者の生活再建と地域社会の再建ということです。そのことに政府は責任を持つべきです。同時に、生活を支える農業や漁業、水産業、中小企業の再建にも国が責任を持って取り組むことを明確にすることが必要です。 その進め方は、計画は住民合意で、実施は市町村が主体に、財源は国が責任を持つ、この原則を貫くべきです。国が上から復興計画を押しつけるやり方はとるべきではありません。これを基本とすべきです。総理の答弁を求めます。 被災者にとって、生活再建に国が全面的に支援するというメッセージは、困難を乗り越える励ましとなります。手元資金として、義援金や災害弔慰金、被災者生活再建支援法に基づく基礎支援金を一刻も早く被災者に届け切ることが必要です。 また、生活再建を進める上で、被災者生活再建支援制度、個人補償の抜本的拡充がどうしても必要です。 菅総理は、先月三十一日、我が党の志位委員長に対し、被災者生活再建支援法を協力してつくった経過にも触れながら、上限三百万円の支給額について、私も引き上げが必要だと思うと述べました。ところが、第一次補正予算には計上していません。なぜでしょうか。被災者の実態に即して、再建を可能とする支援金制度とするために、正面から取り組むべきではありませんか。明確な答弁を求めます。 また、生活を支えるなりわいであり、地域を支える農業や漁業、水産業、中小企業への支援が決定的です。これらを再建してこそ、地域経済の再建、雇用の基礎をつくり出すことができます。 津波で、住宅や車を初め、農地、船や漁具、店舗や事業所、機械も失われました。残されたのは借金だけと悲鳴が上がっています。マイナスではなく、せめてゼロからのスタートを、被災した皆さんの一致した切実な訴えです。借金返済の心配と負担をなくし、再建へ集中してもらう、この条件をつくるのは国の責任ではありませんか。被災者が住宅を再建するために、津波で流された住宅のローンを抱えたまま新たな借金をしなければならないという二重ローンを強いることは絶対にやめなければなりません。 さらに、地域を支える被災者のなりわいを再建するための直接支援も必要です。 被災農地を一たん国が買い上げて再生させる、被災漁業者が負担なしで漁船の建造、再建ができるようにする、中小企業には休業補償を行う、被災者の返済不能となった債権を地域金融機関から買い取る仕組みをつくり、債務の凍結、免除を行うことなどを検討すべきです。総理の答弁を求めます。 地域の再建を進めるためには、地域社会の核となるべき機能の再建が不可欠です。 被災地では、公立病院や保健所の役割が改めて問われています。これまでの構造改革路線を改め、医療関係者と行政が一体となった地域の保健医療体制の確立こそ行うべきです。公共交通の機能回復も急がなければなりません。広域化や合併ではなく、職員の増員など、消防力の強化や被災者に身近な役場機能の強化も優先課題として取り組まなければなりません。総理の答弁を求めます。 また、復興の財源について、消費税の増税を検討することはやめるべきです。消費税は、被災者にとりわけ重い負担となり、生活再建を妨げ、被災地の産業復興の大きな障害となることは明らかです。 復興の財源は、まず、今年度予算を抜本的に組み替えて、法人税減税や証券優遇税制の延長をやめること、原発の建設推進予算、不要不急の公共事業、米軍思いやり予算などを中止してつくり出すべきであり、さらに必要な財源は、二百四十四兆円に上る大企業の内部留保を活用するべきと考えます。 第三は、東京電力福島原発事故の問題です。 菅総理、あなたは、今回の原発事故はあってはならない事故だと言いましたが、それは、安全神話に立って、必要な対策をとってこなかったために起きたものです。事故が起こってからは、法律で定められたことさえやらずに、被害を拡大してきたのです。その責任は重大です。 総理、あなたは、一昨日、今回のような深刻な事故は起こり得ない、多重防護だから安全などとしてきたこれまでの政府答弁が誤りであったと認めました。こうした見地に立つのであれば、あなたのやるべきことははっきりしています。 一つは、事故の拡大を防ぎ、一刻も早く事態を収束させることです。 原発事故の収束なくして復旧復興はあり得ません。東京電力が作成した工程表の根拠となっているデータのすべてを提出させ、それを公開すること、内外の英知を集め、客観的な評価を行い、事態の収束の見通しについて明らかにすることです。 二つは、原発に起因するすべての被害について、速やかに補償することです。 政府に促され東京電力が開始した仮払いは、三十キロ圏内に限定され、漁業や農業被害などは対象外とされています。原発から二十キロ圏内、三十キロ圏内、三十キロ圏外を含む南相馬市では、仮払いによって住民が分断されることまで起きています。総理、あなたはこれでよいと考えているのでしょうか。 事故により深刻な事態を引き起こしたばかりでなく、その補償をめぐっても住民を混乱させる、こんなやり方は直ちに改め、原発に起因するすべての被害を補償する、このことを明確にさせるべきではありませんか。 三つは、今回のような深刻な事故が起こり得るとの前提で原発行政を見直すことです。 現在設置されている原発は、すべて、安全神話に基づいて国がお墨つきを与えてきました。新増設の計画は直ちにやめるべきです。全国五十四カ所すべての原発の総点検を急ぎ、安全が確保されない原発は直ちに停止するなど、あってはならない事故の危険をなくす努力を真摯に行うことです。さらに、原発依存から脱却し、自然エネルギーへの計画的な転換を決断すべきです。 総理の責任は重大であり、明確な答弁を求めます。 最後に、もとの生活を取り戻したいとの切実な思いを実現するため、被災者の皆さんと御一緒に力を合わせて奮闘することを表明して、質問を終わります。(拍手) ○内閣総理大臣(菅直人君) 穀田恵二議員にお答えを申し上げます。 まず、避難所に対する国の支援についての御質問です。 震災から一カ月半以上たった現在においても、全国で十三万人にも上る方々が避難所における不自由な生活を強いられておられまして、大変申しわけなく思っております。 避難所における被災者の方々の生活環境の改善については、各市町村が懸命に取り組んでおり、政府としても、被災者生活支援特別対策本部を中心に支援を行っております。例えば、予備費を使用してパーティションを調達し、各県の要望に応じて配付するなどの取り組みを行っているところであります。 今後とも、政府としてやれることは何でもやるとの覚悟のもと、被災者の方々の立場に立って、県、市町村の取り組みを全力で支援し、生活環境の改善に向けて努力してまいります。 次に、仮設住宅についての御質問にお答えします。 応急仮設住宅については、約七万二千戸の建設が必要とされているところ、五月末までに約三万戸が完成する見通しであります。一刻も早くすべての仮設住宅が完成するよう、用地の確保も含め全力を挙げて県を支援するとともに、民間賃貸住宅の借り上げ等も促進し、できるだけ早期に住宅確保が図られるよう全力を挙げてまいります。 次に、復興の進め方についての御質問をいただきました。 今回、被災地域は、農山漁村であると同時に、部品などの供給拠点があり、我が国の経済、産業にとっても重要な地域であります。被災された事業者や企業が一日も早く活動を再開できるよう、地域の方々の御意見をよく聞いて、漁港施設の復旧や瓦れきの撤去などに早急に取り組んでまいります。 また、地域の経済や雇用を支える被災された中小企業の再建を支援するため、今回の補正予算では、資金繰り支援を抜本的に拡充するとともに、中小企業の工場施設等の復旧支援を行うこととしているところです。 いずれにせよ、復興に向けた取り組みは、国が上から押しつけるのではなく、地域住民の意向を尊重しつつ、国と地方公共団体が連携して取り組んでいくことが不可欠であり、東日本大震災復興構想会議においても、被災状況や被災地域の地元の声、関係市町村の取り組みをしっかりと把握し、これを審議の過程に織り込んでいくことといたしております。 次に、被災者に対する手元資金の早期支払いについての御質問にお答えします。 被災者の方々に少しでも早く義援金等をお届けすることは大変重要だと思っております。義援金については、本日、四月二十八日、岩手県の自治体、野田村において、二百五十九件、額にして一億四千二万円が被災された方のお手元に届くと伺っております。また、災害弔慰金については、二十二日現在で、十四件が既にお手元に渡っております。被災者生活再建支援金については、本日から支援金の支給が開始されるものと承知をいたしております。 今後とも、できるだけ迅速にお手元にお届けできるよう、全力を挙げてまいりたいと思います。 次に、被災者生活再建支援金の引き上げについての御質問にお答えします。 今回の大震災では、地震や津波によって、多くの方々が、住む家に被害を受け、生活に大きな支障を来しておられます。いまだ被害の全容が明らかになっていないところでありますが、まずは、基礎支援金百万円を速やかに支給できるよう、今般の補正予算案において五百二十億円を盛り込んだところであります。 今後とも、今般の被害の甚大さを踏まえ、震災により住居を失った方々に対し十分な支援が行われるよう努めてまいりたいと考えております。 次に、二重ローンについての御質問です。 今回の震災で被災された方々の住宅ローンの返済については、住宅金融支援機構からのローンについて、返済方法の変更が可能となるような措置を今回の補正予算に盛り込んでいるほか、民間金融機関においても、被災者からの返済猶予等の貸し付け条件変更の申し込みに積極的に対応しているものと承知をいたしております。 いずれにしても、被災者の方々が住宅に係る二重ローンで困窮しないよう、引き続き、さまざまな支援策を講じてまいりたいと考えます。 次に、被災農地の貸し付け、漁船の建造、中小企業の休業補償や債務の減免についての御質問にお答えします。 御指摘の点は、例えば、漁船の建造、再建については、国、県の助成と漁船保険金により約九割の費用が支払われるほか、雇用調整助成金による雇用の維持、金融機関による被災中小企業への貸し付け条件の変更への積極的な対応など、現行制度で対応できる措置は迅速に講じているところであります。 また、農林漁業を含めた被災地全体の復興については、復興構想会議の議論や地元の声なども踏まえ、未来に向けた創造的な復興となるよう、早急かつ十分に検討してまいりたいと考えます。 次に、地域の保健医療体制の確立についての御質問です。 地域の医療関係者が連携して被災地の保健医療体制を体系的に再構築していくことは極めて重要だと考えております。このため、平成二十三年度第一次補正予算案に、医療機関や保健所の災害復旧の経費やその国庫補助率の引き上げ等を盛り込むとともに、既に措置してある地域医療再生基金について、被災地に重点的に配分するなどの措置を講じたところであります。 次に、公共交通の機能回復についての御質問です。 今般の震災では、鉄道、バス等の公共交通機関においても甚大な被害が発生し、東北新幹線や仙台空港発着の航空便など、関係者の御努力により順次運行が再開されてきているものの、いまだ完全復旧には至っておりません。 被災地域の復旧を進める上で、公共交通の機能回復は重要な課題であると認識しており、被災地の状況を分析し、効果的な手法の検討を進め、国として必要な支援を行ってまいります。 消防力や役場機能の強化についての御質問です。 消防力や役場機能の充実強化を図ることは重要であり、その方策については、合併や広域化も含めて、市町村みずからが選択していくべきものと考えております。 政府としては、今後とも、そのような市町村の自主的な取り組みを積極的に支援してまいりたいと思います。 復興の財源についての御質問です。 復興については、まず財源論ありきではなく、復興構想会議で未来に向けた創造的復興の事業内容や方向性などを御議論いただいた上で、歳入歳出にわたり幅広く検討していきたいと考えております。 その際、既存の歳出を見直すことはもちろんですが、経済の活性化や安全保障など政策全般の推進にも意を用いる必要があると考えております。 次に、東電の工程表の根拠データ提出と事態の収束の見通しについての御質問です。 今回の事故を一刻も早く収束させるため、必要なデータをしっかり収集し確認する、また、原子力安全に関する国際的な議論も踏まえつつ、幅広く意見を聞きながら収束に向けた作業を進めてまいっているところであります。これからも全力を挙げてまいります。 原発に起因する被害の速やかな補償についてであります。 原発事故との相当因果関係が認められる損害については、漁業や農業被害なども含め、原子力損害賠償紛争審査会が定める指針に沿って判断され、賠償されることとなります。この指針の早期策定を進めるとともに、被害者の方々が可及的速やかに補償が受けられるように、しっかりと政府としても対応してまいりたいと考えております。 次に、原子力行政見直し、原発の総点検についての御質問にお答えをいたします。 今回の原発事故の検証に当たっては、独立した調査委員会を設け、予断なく事故原因の徹底的な検証を行い、抜本的な対策を講じていくことが必要と考えております。これにより、すべての原子力発電所の安全確保に万全を期することが必要です。その検証を踏まえつつ、今後の原子力政策のあり方については白紙から検討していくことが必要だ、このように考えております。 以上、答弁とさせていただきます。 |
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