国会会議録

【第180通常国会】

衆議院・予算委員会第四分科会
(2012年3月5日)




○穀田分科員 平野大臣、私は、きょうは文化財の問題について質問したいと思います。

 文化財保護法の策定の契機は、一九四九年の法隆寺の金堂の焼失にありました。重要文化財建造物を火災から守らなければならないということで、この焼失の日に当たる一月二十六日に、毎年、文化庁、消防庁、また地方自治体の消防や消防団とも協力して、文化財防災デーとして訓練が行われています。

 阪神・淡路大震災や東日本大震災を受けて、地震を含めた災害から文化財を守るための取り組みの抜本的強化が必要と私は考えます。その点についての基本的なお考えを大臣にお伺いしたいと思います。

○平野(博)国務大臣 文化財を災害から守るための取り組み、この強化については私も異論のないところでございます。国民の貴重な財産であります国宝、重要文化財の建造物等を災害から守っていくためには、一つには、やはり自動火災報知機、消火設備等々の防災施設の整備を図っていくということと同時に、建物の耐震診断の実施、耐震化などを進めていかなければならないと考えています。

 文科省としては、文化財の所有者との御相談ということも当然あるわけですが、所有者等が実施をする防災施設の整備等の事業を補助していく、こういう経費を計上しておるところでございまして、平成二十四年度予算案におきましては、前年度六億円をふやし、二十四億円を計上しているところでございます。したがいまして、国宝、重要文化財等の適切な防災対策を図っていくように努めてまいりたいと思っています。

○穀田分科員 二〇〇八年の中央防災会議において、中部圏、近畿圏の内陸地震による文化遺産の被災の可能性について報告されております。それを受けて、重要文化財建造物及び周辺地域の総合防災対策について、検討会が重ねられました。

 近畿圏にある重要文化財建造物は千六百六十四棟、全国の約四割を占めています。国宝は百九十二棟で、全国の七四・七%と、近畿に集中しています。その中で、重要文化財建造物の九一%に当たる千五百十三棟が木造です。また、かつては市街地から離れ、郊外に位置していたけれども、今では周りまで市街地が隣接し、しかも木造住宅に囲まれるようになっています。

 そのことを踏まえ、今大臣からも若干お話ありましたが、検討会では三つのことが指摘され、確認されています。一つは防災設備の耐震改修、二つは重要文化財の耐震診断及び耐震改修の必要性、そして第三に、さらに周辺も含めた総合的な防災計画ということになっています。

 そこで、防災設備の耐震改修で指摘されている耐震性貯水槽について聞きます。

 近畿の重要文化財建造物のうち、木造のものへの耐震性貯水槽は幾つ整備したか。二〇一〇年度より実施した緊急防災施設耐震改修事業の対象は幾つで、実施件数は幾らか。御報告されたい。

○河村政府参考人 お答え申し上げます。

 重要文化財建造物、御指摘のようにほとんどが木造でありまして、火災に対して脆弱でございます。こういうことから、もともとは昭和二十五年から、国庫補助事業として、自動火災報知設備、放水銃や貯水槽等の消火設備の設置などの整備に補助を行ってまいりました。

 近畿地方、六府県でございますけれども、近畿地方にあります重要文化財建造物で消火設備の設置が必要とされておりますものが五百四十五カ所あるのでございますけれども、この中で建物自体が木造というものが五百三十一カ所でございます。その約八割には、これまでの文化庁の補助事業により消火設備が設置されておりますけれども、この中で、貯水槽があり、かつ、地下にあるので耐震性が高いというふうに判断されるものは二百七十七カ所、つまり、木造の建造物の中で五割強ございます。

 ただ一方、近畿六府県の国宝、重要文化財の建造物におきましては、消火設備の経年化が進んでおります。設置後三十年以上経過した貯水槽を含む消火設備等の件数がおおむね百件程度あるものというふうに認識しております。

 平成二十二年度から、これらの経年をしておりますものの耐震改修を行う緊急防災施設耐震改修事業を実施しておりまして、これまで九カ所において行ってまいりました。

○穀田分科員 今、報告ありましたように、三十年を経過した施設設備、そういうところでいうと、その改修事業というのは百カ所対象としているけれども、やられているのは九カ所。もちろん、先ほどありましたように、地下にあるものが二百七十七なのはわかっているんですけれども、ただ、そういうものを通じて二〇〇八年にいろいろなことが行われ、そして二〇一〇年から具体的に実行されたものでは、百のうちまだ九しかないということは、これは一割しか実行されていないということで極めて少な過ぎるし、問題だと私は思うんです。

 そこで、次に、先ほど述べた重要文化財建造物本体の耐震診断と耐震改修の進捗についてはいかがかということです。お聞きします。

○河村政府参考人 重要文化財建造物の耐震対策の考え方でございますけれども、まず耐震性に関する基礎的な情報を得る必要があるというふうに考えております。

 このため、文化庁では、平成二十年度から、一部の小規模なものを除き、所有者の御同意が得られた全ての木造の重要文化財建造物を対象とした予備的な耐震診断を実施しております。平成二十二年度までに二十四の都府県で千八百三十四棟で実施をし、平成二十五年度までに全ての都道府県で実施する予定でございます。

 これまで、平成二十二年度までに実施しました予備的な耐震診断の結果、さらに対策を行うことが必要であると判明したのが約六割ございます。これらについて、逐次専門的な知見に基づく耐震診断及び耐震補強を実施しておりまして、平成二十二年度までに百八十二棟で実施し、なお現在六十六棟で実施中という状況でございます。

 引き続き、これら耐震診断と耐震補強について推進していく必要があると存じます。

○穀田分科員 今、予備調査を行って耐震診断を行う必要性があるというようなものは、簡単に言うと、今までに行ったところで、二十四都府県でやったものでいくと千八百強だ、そのうち大体六割が耐震診断を行う必要がある、こういうことですよね。

 となりますと、大臣、全国で、その総数でいうと大体四千棟近くある、それが仮に全部終えたとしても六割が診断を行う必要がある、大体こういうことになりますわな、理論的数値としては、推計としては。そうしますと、二千四百近くのものが必要になるということになりますよね。単純に言ってですよ。若干の上下はありますけれども。

 そうすると、今百八十二でしか行われていないとなりますと、これはやはり極めて少ないということになると思うんですね。簡単に言うと、四千近くあって、そのうち仮に六割として二千四百。二千四百のうち、大体二百近くしかないということになりますわな。

 そこで、阪神・淡路大震災では、建造物が地震で倒壊をして、なおかつ、同時多発的に火災が発生した。検討会では、近畿では今、地震発生の切迫性が高まっていると指摘しています。今、私は、二つの点の問題について指摘しましたけれども、対策が二つともおくれているというのははっきりしていると思うんですね。このおくれている原因を大臣はどのように認識しておられるか、お聞きしたいと思います。

○平野(博)国務大臣 今議員御指摘のところは、私も同じ認識でございます。

 特に、建物の耐震改修については、保存修理を行う際に、必要な耐震性の向上をするために耐震補強をやはりやってきました。平成二十一年度から、修理を伴わない耐震補強を行う、いわゆる緊急防災性能強化事業、こういうことで予算案に約五千万円を計上したところでございます。少ないとおっしゃるかもわかりませんが、五千万円計上しました。

 また、貯水槽を含む消火設備等の耐震改修については、二十二年度から近畿を中心に実施をしてきましたが、平成二十四年度の予算案におきましては九億円ということで、対象エリアを近畿から全国にやはり拡大をしよう、こういうことで取り組んでいこうとしているところでございます。

 しかし、委員指摘のように、これだけのパイがあるのにえらい少ないじゃないか、こういう御指摘に対しては、やはり我々としても非常に大事であるという認識はしておりますので、今後とも、より拡大を目指して取り組みを進めてまいりたいと思っております。

○穀田分科員 認識は共通し共有していると。まあ、お金が少ないということだけは、大臣はお笑いになって言っていましたけれども、本当に、少ないというのは率直に思いますよね。

 そこで、宗教法人や財団、地方公共団体、それから個人という重要文化財の所有者は、その保護に責任感を持って、必要な対策へも心を砕いておられます。それで、私は、文化財の保護の重要性、あわせて、今日の防災の発展性といいますか重要性といいますか、その認識を共有して、所有者の日常の努力に応えるべきだと考えているんです。

 京都の清水寺は、防災の先進としても全国で有名です。ハード面での国内最大級の耐震性貯水槽の整備や、ソフト面では、一九四八年一月以来、一日も休むことなく継続されている文化財レスキューの活動などを行っています。

 清水寺の森さん、法務・庶務部長に私どもはお話を伺ってまいりました。国の文化財保護のための防災面での補助金は二分の一、最大でも八五%であり、残りが所有者の自己負担となる、重要文化財を抱えて、地震に対する備えなど防災対策が必要だと思いながら十分な対応をできずにいる社寺があるのではないか、必要な対応ができるところは一割にも満たないのではないでしょうかと危惧されています。私は、そのとおりだと思うんですね。

 ですから、私は、この機会に、耐震性貯水槽の整備と重要文化財建造物の耐震改修を全部完了させるにはどうすればよいか。それは第一に、完了の目標と計画を持つこと、それから二つ目に、所有者とよく相談をし、事業の理解を相互に深め、その意向を尊重して事に当たること、三つ目に、先ほど大臣もお話あったように、やはり少ない予算をさらに上積みする、そういうことが必要じゃないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

○平野(博)国務大臣 そういう御指摘は受けとめておきたい、こういうふうに思います。

 ただ、一方で、一つだけ言いたいことは、やはり個人の所有者があるということですから、個人の所有者とも十分相談をしなきゃならない、こういうことと、財政の問題、我々の役割としては、予算をしっかりとりながら何とかカバーをしていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

○穀田分科員 ですから、私、所有者自身が例えば認識を深めていただく、国の方もそういう認識をお互い深めていただくということを言ったわけですよ。

 次に、重要文化財民家の支援の問題について聞きます。

 これは相続税の減免支援のことなんです。

 現在、重要文化財民家は四百二十三件で、そのうち個人所有は二百三十二件です。文化財保存のために、財政面も含めて大変な苦労をされています。この間、重文民家を個人で維持できずに、所有者を公有化する事例がふえています。この間、聞きますと、百二十五件とのことだと思います。随分ふえています。

 私は公有化そのものを否定するつもりはありません。しかし、長い間、重文民家を守り続けてきたNPOの全国重文民家の集いの皆さんは、重文民家は、愛着の思いで見守る家族とともにあることが望ましいというふうに訴えています。これは、文化財を守る上でとても大切な観点だと私は考えています。

 一九八五年、国は、重文民家通達を出して、固定資産税や相続税を減免する制度をつくりました。所有者が居住している民家への配慮を行ったものです。二〇〇〇年五月に、私は、国指定の文化財建造物、民家に対する質問主意書で、当時六〇%だった減免率のさらなる増率を求めました。二〇〇四年一月には、減免率が七〇%に上がりました。

 しかし、それではまだ実態に合わず、不十分だと私は考えるんです。さきに紹介した重文民家の集いも、要望書で、個人所有者の相続税の減免率の一層の増率をと、その後も毎年要望しています。

 個人所有の場合、相続税の減免率の増率が必要だと思うんですが、その点の御所見をお伺いしたいと思います。

○平野(博)国務大臣 重文民家の相続税の減免に関しての御指摘でございます。

 委員からのこういう御要望もあり、百分の六十から七十に上げていただいた、またその改正をしてきたところでございます。

 民家の相続税についてさらなる税制上の軽減措置が必要かどうか、必要だという先生の御指摘でございますが、どうかについては、文化財の保護に当たっての規制をしている今のあり方も含めて、慎重に検討していかなきゃならない課題であると思っております。

○穀田分科員 規制のあり方の問題というふうにいつも言われるんですよね。

 そこで、私は、私権の制限がどの程度されているかという議論をしているんですね。それが七割だというのが言い分で、だから七割減免している、こういうふうに言うんですけれども、なぜ七割なのかという根拠は余りないんですよね。大体こんなものだろうというのは、こう言っては悪いけれども、はっきり言って、では数理的根拠はあるのかというと、なかなかないんですね。

 私、京都の二条陣屋のお話を聞いてみますと、小川さんは、個人で住んでいても、個人分は一〇%、あとの九割は国にかわって管理している、そういうつもりだとおっしゃっていました。それから、奈良屋記念杉本住宅の杉本さんは、文化財とは、日本の過去のものではなく、日本のアイデンティティーであり、希望だ、このようにおっしゃっています。

 ですから、財政が厳しかったり、規制の問題がいろいろあるというふうには思うんだけれども、重文民家のうち個人所有というのは、先ほど言ったように二百三十二件なんですね。毎年相続が発生するわけじゃないんですよ。年度にすればわずかなものであって、しかも、私は一定の額を増率したらどうかと言っているわけですから、無理を言っているわけじゃなくて、これはやはり検討の価値があるんじゃないかと思うんですね。

 一言、いかがでしょうか。

○平野(博)国務大臣 先ほども答弁しましたが、検討しないとは言っておりません。慎重に検討します。

○穀田分科員 慎重にというのは、なぜ七割なのか、所有者の方々の思い、それから、それを負担する側は何も自分のものとして所有しているんじゃなくて、なおかつ未来へのものとしてやっていこうとする、その気持ちを、思いを尊重してほしいなと思っています。

 大きな三つ目に、民俗文化財について聞きます。

 国は、有形、無形民俗文化財のうち、特に重要なものを重要有形民俗文化財、重要無形民俗文化財に指定し、その保存と継承を図っていると考えますが、間違いございませんね。

○河村政府参考人 文化財保護法では、我が国民の生活の推移の理解のために欠くことができない衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術の無形の文化財のうち特に重要なものを文部科学大臣が重要無形民俗文化財に指定するとともに、これら衣食住、生業等の民俗文化財に用いられる衣服、器具、家屋等の有形の民俗文化財のうち特に重要なものをやはり大臣が重要有形民俗文化財に指定して、保存、継承に努めております。

 また、その所有者等が行う重要有形民俗文化財の修理や防災設備の設置に対する補助を行いますとともに、保護団体等が行う重要無形民俗文化財に指定されている行事等に用いられる用具の修理、新調、あるいは伝承者養成等に関する補助を行っている、こういう体系でございます。

○穀田分科員 体系はそうなんですけれども、簡単に言うと、問題は文化財保護という考え方の哲学ですね。そこには、国の任務として、歴史、文化等の正しい理解は欠くことのできないものなんだという位置づけと、したがって、その保存が適切に行われるよう努めなくてはならぬ、こういう任務がある、この関係をやはり踏まえなきゃならぬと思うんです。

 そこで、祇園祭に関係して聞きます。

 祇園祭は、重要有形民俗文化財である山鉾や装飾品を使って、重要無形民俗文化財である行事、山鉾巡行を行っています。そのため、重要有形民俗文化財である山鉾などのいわゆる道具、用具の劣化は避けられないわけです。

 そこで現在、装飾品は、新調、政府の言葉で言うと新しくつくり直す新調という言葉を使って、私ども地元で言うところのレプリカ、これを作製することが認められている。これ自身、相当な価値があり、技術で完成されたものというのは私ども認識しています。

 問題はそこです。重要有形民俗文化財の保護、そして、オリジナルと、私が言うレプリカの活用に当たって二つの問題点があります。一つは、装飾のもともとの文化財、オリジナルが劣化しなければレプリカの作製の許可がおりない。二つ目に、レプリカが作製されると、オリジナルが重要有形民俗文化財の指定を外され、保護されなくなるという点なんですね。

 祇園祭の関係者は、貴重な歴史的文化財であるオリジナルを保護するためにも、劣化する前にレプリカを作製する許可を与えてほしいと言っています。そして、あわせて、新しく新調されたレプリカも大事だけれども、オリジナルも、それは当然使われなくなるわけですから、そのオリジナルも引き続き重要有形民俗文化財として保護すべきではないかという要望をしておられるんですが、いかがでしょうか。

○河村政府参考人 重要有形民俗文化財については、通常は、文化財そのものの劣化の進行を食いとめるというために保護する必要がありますことから、修理事業に対して支援をして保護、継承するわけですけれども、祭礼行事での現実の使用を伴う、今先生がおっしゃっております山、鉾、屋台については、その性質上、劣化の防止が困難ですので、修理だけではなくて、必要な場合は新調事業をお認めして、国が支援をしているということでございます。

 このように、山、鉾、屋台の新調を行う場合は、これまでに使用されていた用具と同等の価値を有するように製作をしていることから、新調されたものを重要有形民俗文化財として取り扱うことといたしておりますが、それぞれの、山、鉾、屋台の劣化の状況に応じて、少しでも早く新調が行えるように努めてまいりたいというふうに存じます。

 また、かつて使用していた用具の件でございますけれども、それが大変大事なものであるということは私どもも認識をしておりますけれども、新調の際にはある程度劣化が進んでいるものでございますので、その文化財が、歴史上または芸術上価値が高いということで民俗文化財とは別の類型の重要文化財に指定されている場合を除きましては、特段、国がもとの方の用具についての保護のために規制と補助を行うべき対象になるとは考えていないものでございます。

○穀田分科員 大臣、わかりましたか、今の話。

 どんなものかというので、きょうは少し持ってきました、報告書を。これがそれなんですね。こういうとてもすばらしい装飾品なんですね。これは、本当に、外国から来ているものもあれば、それから京都の古いところでつくられたものもある。それが、今お話あったように、劣化を避けるために新調するということになって、同等のというのまではわかるんです。だけれども、これ自身が歴史的価値があるわけですよね。これを例えば、少し劣化をした、新しいものを新調した。そうしたら、こっちに価値があって、これの価値がなくなるのか。価値がなくなるとお思いですか。

○平野(博)国務大臣 個々のところは承知いたしておりませんが、そもそも、祇園祭のトータルとしての価値として認めておる。その中に当然パーツがあるわけですから、パーツについて補修する。こういうトータルで動かすための部分を認めて、パーツについても当然あるわけですから、パーツについて補修することについては認めておる、こういうことですよね。

 今、穀田先生がおっしゃったのは、そのパーツというのは、もともとトータルで価値があるんだから、パーツも価値があるから、それを新調してもそれは認めなさいよ、こういう話なんだろうというふうに思いますが、私は、取りかえたところについては、新調であろうがトータルとして認めますから、それはオーケーですよということでありますから、その中でも、特にまた世界的に価値があるということについてはその限りではありません、こういうくくりで処理をしておるんだろうと思っていますが。

○穀田分科員 これは、単に祇園祭だけじゃないんですよ。屋台の関係というのは日本で五つありまして、日立の風流物だとか、秩父のものや、高岡、高山、祇園祭を含めて五つあるわけですよね。

 それで、トータルでと言っているんですけれども、それはそのとおりなんです。でも、一つ一つの部品が大きな価値があるということは、みんな、この報告書も含めて、これがどれほど大きな価値があるかということについて、新調したり、新しいものにつくりかえるたびに新聞紙上をにぎわわせます。

 先ほど次長からありましたように、私どもの新しい問題提起は若干御理解をいただいたと思うんですね。つまり、劣化してからやるというのでは間に合わないんですよ。一刻も早くやっていただきたい。それは、連合会だとか、それから実際に保存しておられる方々の御意見も聞いて、タイミングをしっかり逸せずにやらなくちゃならないということが一つなんです。

 もう一つは、では、その一つ一つに価値がないか。そんなことはないんですよ。トータルとして山鉾は価値があるけれども、一つ一つについて、ペルシャから来た、イラクから来た、それからエジプトから来た、または日本の古来のものだ、それぞれにそれ自身やはり価値があるんですよ。それを、一旦新調してしまったら、これは全く価値がないというわけにはいかない。

 だって、皆さん、途中で、価値があるものを直すために、先ほど大臣は補修と言いましたけれども、補修と新調は違うんですよ。新調するまでにどれだけ補修しているか。大事に大事に扱ってやっているんです。それを、新しいものがレプリカとして新調された途端に、これの価値がなくなるということはあり得ないんです。これは歴史的価値はあるんです。

 文化的価値はあるんです、新しい、新調したもの、レプリカは。ですから、これについて保護したいという気持ちは、誰だって思うわけなんですね。皆さんに供するために、新調は要る。だけれども、もともとのものも大事だ。この思いをしっかりと行政が支援してやる必要があるんじゃないかということを言っているわけです。いかがですか。

○平野(博)国務大臣 考え方は、私、そう違わないと思いますよ。

 同じような考え方で、ただ、その中でも、本当に重要なものについてのレベルの問題を論じておるような気がいたしますから、そういう視点では、本当に価値がある、私も専門家ではありませんからその価値の評価については語れませんが、そういう判断で、やはり我々としても、必要なものについては保存している、継承していく、こういう判断に立っていると思います。

○穀田分科員 先ほど次長もおっしゃったように、重要文化財に上げてしまう、そういうことはことで、例えば全部が重要文化財になるんじゃないんです。もともと無形、有形文化財として使われていたものを大事にしようと。それは、例えば市なり府なり含めて、地方自治体や、また連合会を含めて、大事にしているお気持ちを尊重して、しかも歴史的価値はあるということはお互いに認めているわけですから、それをどうしたら保存できるかということに対する支援は、やはりやる必要があるんだと。

 確かに、金がないとか、いろいろあるでしょう。だけれども、金にはかえられない価値があるというのが文化財なんですね。そうすると、その基盤を支えるということについていえば、保護法にある任務を果たさなければならない、努めなければならない、この根本によるんじゃないかということを申し上げて、終わります。