国会会議録

【第180通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2012年3月14日)



○穀田委員 大震災から一年、被災地の復旧復興に欠かせない被災鉄道のうち、JR線の復旧整備が進んでいません。三陸鉄道は国が支援し復旧のめどは立ちましたが、JR線はまだはっきりしていません。

 きょうお配りした資料一を見ていただきたいと思います。黒い実線がありますように、JR山田線、大船渡線についてです。

 JR社長らが、軌道を舗装してバスを走らせるバス高速輸送システム、BRTにしたいという旨の発言を行っています。これが鉄道の復旧をやめるという趣旨ならば、私はけしからぬことだと思います。地元の岩手県や市町村は、鉄道の復旧を粘り強く要求しています。特に強く要求していると言えましょう。そして、JRの姿勢に、BRTでの仮復旧が恒久的な措置になりかねないということで反発をしています。

 国交省はこの問題をどう把握し、これまでどのように関与してきたのか、報告願いたい。

    〔委員長退席、小宮山(泰)委員長代理着席〕

○久保政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の山田線、大船渡線につきましては、基本的には鉄道事業者が鉄道による復旧を決定するんですが、まずは安全ということが最重要課題だと思います。すなわち、津波に対する鉄道の安全運行の確保が最優先課題であって、そのために具体的な検討を進める必要があります。

 そういう状況にありますので、私ども国土交通省といたしましては、大船渡線、山田線の復旧に向けて、沿線地方自治体、JR東日本会社、東北地方整備局、東北運輸局から成る復興調整会議を設けまして、その場を活用して、早期復旧に向けた自治体とJRとの調整を私どもとしても支援してきたところであります。

○穀田委員 その復興調整会議ですけれども、山田線、大船渡線についてはいずれも十一月に会議を行ったきりで、本来二月に引き続き開催されるべしというのが、いまだ開かれていないわけです。

 そもそも被災地の復旧復興のまちづくりというのは、地元市町村の復興計画に基づいて行われ、それを国が支援する、こういうスキームになっているわけですね。鉄道がある地域はどこでも、駅を中心に市街地が形成されてきました。復興まちづくりを進める上で、駅は欠かすことができません。陸前高田市は、線路を陸側に変更してJR線を再建する。大船渡市は、従来のJRの線路と同じ場所で、線路敷部分をかさ上げして第二堤防の役割を果たさせ、その陸側に町を形成する。大槌町も、JRを中心にして集合住宅、商店街を再建する計画になっています。

 今局長からお話があったように、いずれも、安全のことを考えながらどうしてまちづくりを進めていくかということで議論して、計画をつくっています。いずれも、鉄道駅を町の玄関と位置づけた復興計画を既に練っています。これがそれであります。

 例えば大船渡市などでいいますと、大船渡とそれから盛という鉄道の路線を中心にまちづくりを進める。それから高田市も、大体、線路を移動して、今までは海沿いだったものを上の方、陸側にやって、いずれもそういう形で安全対策を考えながら復興計画を練っています。ですから、その中心的な鉄道の復旧がなければ、こうした復興計画は成り立たない。

 政府は、このようなまちづくりと一体になった鉄道を含む市町村の復興計画を支援する、そういう意味で復興交付金など予算をつけたはずです。そうと違うんですか。その辺の基本的姿勢を明らかにしていただきたいと思います。

○久保政府参考人 先生御指摘のように、鉄道の復旧に当たりましては安全運行の確保が最優先でありまして、そのような観点から、防潮堤の整備だとか、御指摘のような町自身のかさ上げ、あるいはルート変更、奥地、内陸部へ振るといったようなこと、また、ソフトでは避難路の整備等の対策が必要でありまして、そういう要否について詳細な検討を行った上で、町の方でも、今先生からお話しのように一定の方向でプランは練られているんですけれども、周辺と一体となった鉄道の具体的な復旧計画を策定する必要があります。

 現時点では、これら路線については、確かにおっしゃるように一定の方向のプランは出されているのでありますけれども、具体的な復旧計画がまだ描けていない箇所がございます。そういうことから、そこの詰めを急ぐ必要がある、このように考えております。その上でさまざまな支援が考えられるかと思います。

○穀田委員 さまざまな支援というお話がありましたけれども、描けている部分が全面的に、全部できるというようなことはないですよ。今、徹夜で地元の市町村は仕事をして、プランを上げては査定庁と呼ばれるところで蹴られたりしているという実態もありまして、本当に大変な仕事をしているわけですよ。

 陸前高田市で、我が党議員の、復興計画と公共交通におけるJR線の重要性はいかんという質問に対して、市当局は次のように答弁しています。真の復興には、個々の町の再建とともに、町と町をつないで人や物の流れを再生する地域連携が重要であり、生活再建、産業復興、流通網の強化、域外の交流など、鉄道復興の果たす役割は大きく、また、交通弱者と言われる住民や沿岸地域を訪れる観光客にとっても必要不可欠、このように答弁している。まさにそのとおりなんです。

 前田大臣は記者会見で、JRの駅はまちづくりの中心になる施設、まちづくりの支援を通じて相当の支援ができると答えています。線路を従来の場所でかさ上げする、陸側に移転して再建する、駅を中心に市街地化を進めるなどはまちづくりの話であります。したがって、一体となったまちづくりを支援するのか支援しないのか、そのことの根本が問われているわけです。その辺は大臣、いかがですか。

○前田国務大臣 一体となったまちづくりを支援したいと思います。

○穀田委員 一体となったまちづくりを支援する、これはとても大事な観点だし、答弁だと私は思います。

 そこで、先ほど一番最初に述べたJRの鉄路の復旧問題については、何が問題の焦点か。それは、JR東日本が鉄路再建を渋っていることにあるわけですね。国は、JRの事業者としての責任を問い、まず鉄道路線の復旧、鉄路再建を明確にすることだと私は考えます。

 大臣は、先ほど述べた会見の前半でこうも言っているんですね。やる前から見通しのつかない将来のことについて言うよりも、まず一歩でも二歩でも進めていくことが重要、こう言っているんですね。私は、住民の気持ちを逆なですることだと思うんですね。だって、見通しのつかない将来じゃないんですよ。こういう見通しをしようといって、みんな計画を練っているんですよ。そのときに、将来は必ずやりましょうねという見通しが必要なんですよ。

 陸前高田の戸羽太市長は、JRに対して、暫定的だというお話、つまり、BRTが暫定的だと言っているわけですわな、一応。そういうことも言っているわけですから。そういうお話だったので、じゃ、十年後なら十年後に必ず鉄道を復活しますと一筆書いていただいたら私たちは市民に説明しますと言ったら、それはできませんと明言されましたと述べておられるんですね。JR東は、こういうときだけは暫定的だとかいろいろ言っているけれども、肝心なところは明言しないんですよ。こういう問題がある。

 私は、JRの態度は、大臣が言っている、まず一歩でも二歩でもなどという話が通用するものでないと。大体、この間JRは何をやっているかということで聞いてみますと、JRのバス代替運行がひどいんですね、これも。高校生が通学する際に、学校の目の前にバス停があっても、JR東日本が駅のかわりのバス停と指定していない場合、通学定期が使えずに一キロメートル先のバス停でおりる不便だとか、すし詰め状態、こういうことがずっとあるわけですよ。このような対応に住民から批判が起きて、JRの言動に不信を持つのは当然ではありませんか。

 まして、今のまちづくりの計画が、将来の鉄道建設を前提に既につくられているわけです。先ほど局長は、まだ不十分なところがあるとか抜けているところがあると言っているけれども、大枠はもうできているんですよ。ですから、そういう意味で、必ず鉄道は再建しますということさえはっきりすれば、それまでの期間についての公共の足の確保をどうするかということは広く議論できるんですよ。

 私は、国交大臣としてJRに鉄道路線の復旧、鉄路再建を迫るべきではないかと思うんですが、いかがですか。

○前田国務大臣 穀田委員の今の御指摘の中、高等学校の前のバス停留所でとめないで一キロ先。もともとあったんですか、一キロ。そういうのは初めて聞いたわけでございますが、こういうのはちょっと鉄道事業者としておかしいと思いますね。

 今の穀田委員の御指摘でございますが、ここの陸前高田は、あれだけ非常に悲惨な被災をこうむったところであります。そして、大船渡市。一体性のある地域ですね。だから、そこをちゃんとつなぐ公共交通、特に鉄路というものは確保するべきだと思います。

 今委員の御指摘等もありますし、私自身も調べてみますが、あの地域の鉄路の確保、そういったことについてはJRにも大きな責任があるわけでございますから、その辺はよく確かめた上で指導をいたします。

○穀田委員 もちろん、この問題については県議会で議論になって、若干の改善はされているわけですよ。だけれども、そういうことをやっているということ自体が不信を生んでいて、要するに、あの人たちは肝心なところを、再建しますと、十年後なら十年後、十五年後でもいいですよ、そういうまちづくりとの関係で一体となったこれをやっておるわけだから、そういうものに応えてやりますというのがないのは指導せなあかんということを私は言っているんですよ。

 私は、JRが鉄路を復旧できない理由は全くないと考えています。先ほども述べましたが、大臣は相当の支援ができると言っているわけですから、JRに何でもかんでも全額負担させるというわけではないわけで、線路施設など、ほとんど公費で賄われることもあり得るわけですね。そうした場合、上下分離方式と変わらぬわけであります。

 まず、JRは、東日本大震災発生後の四月、被災した東北沿岸七路線については全て復活させる、それから、被災地の復興やまちづくりと一体になって進めていくと表明しているわけですよ。そういうみずからの言動に反すると私は思います。

 それから、私、きょう、JR東日本が発行している「トランヴェール」という雑誌を、新幹線に乗りましたらたまたまあったので持ってきました。そうしたら、何と書いているか。これはこういう雑誌なんですよ。

 「全国からの応援に応えて完全復旧の道を進む」、どこのことかなと思ったら、「三陸鉄道[北リアス線]」と書いているんですね。そして、文章は、「今年四月には、陸中野田〜野田玉川間の線路も再建され、分断されていた鉄路が田野畑までつながる予定だ。 全線が運休している南リアス線も、今年四月から一部で運転が再開され、平成二十六年には全線の工事が完了する予定だという。」こんなふうにしてJR東日本は大々的に北リアス線の宣伝をしているんですよ。

 だったら、皆さん、JR東日本というのは、三陸海岸のすぐれた自然景観を岩手の観光地としてアピールしたいという思いで復旧歓迎と書いたんでしょう。せっかく紹介するんだったら、その先のみずから経営している路線もつなぐようにしていますと言うべきじゃありませんか。ここからは途切れて、JR管理のところはバスですよというわけにもいかぬでしょう。つないでこそJRにもプラスになるわけです。

 したがって、被災自治体も被災地住民も望んでいる鉄路の復旧は、公共交通機関であるJRの社会的責任。先ほど大臣も責任があるとおっしゃっていましたから、この問題は、やはり明確に相手が、少なくとも鉄路の復旧については、先ほどありましたように、しないと明言しないというんじゃなくて、すると明言するまではっきり詰めてもらうということを望みたいんですが、いかがですか。

○前田国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、やはりこの三陸の鉄路をつなぐということは復興にとって非常に重要なことだと思いますから、その方向で指導をいたします。

    〔小宮山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

○穀田委員 きっぱり指導していただきたいと思うんですね。

 この問題というのは、先ほど述べたように、見通しが立たないというんじゃなくて、まさに住民はその見通しを求めているわけですよね。将来の希望の光が見える、将来はこういう方向なのだということを確定することが皆さんの復興への意欲をかき立てるわけですね。その意味からいっても、これは決定的だと改めて指摘しておきたいと思うんです。

 そのことを確認した上で、次に、整備新幹線の未着工区間の問題と在来並行線問題について述べたいと思います。

 整備新幹線の未着工三区間の新規着工を今、決定しようとしています。昨年末、財源の手当てはつきましたけれども、収支採算性、投資効果、JRの同意、並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意など、残りの条件について有識者を入れて検討中と言われています。三月中には着工の方向で結論を出したいとしています。

 そこで、聞きたいと思うんです。北海道新幹線札幌延伸の件です。

 北海道新幹線は、現在、新青森から新函館まで工事中ですが、新函館から札幌まで延ばそうとしています。資料二を見ていただきたいと思います。薄い四角の点線で示しましたが、そのルートは、長万部、倶知安、小樽を通って札幌へ向かいます。つまり、在来線の函館本線に沿ったルートになります。

 未着工区間の着工を認可するには、並行在来線をJRの経営から分離することが条件の一つになっている。この函館から札幌までの在来線はどうするのかということについて、扱いは決まっているのですか。

○津川大臣政務官 お答えをいたします。

 先生からは決まっているかという御質問でございますが、回答としては、決まっていないという状況であります。

 ただ、ちょっと御説明させていただきたいと思いますが、この未着工区間につきましては、総務大臣政務官、財務大臣政務官と国土交通大臣政務官の三政務官によります整備新幹線問題調整会議というものを開催しておりまして、関係する方々あるいは有識者の方々からの意見聴取等々いただいてきたところでございますが、その中で、JR北海道の当時の中島社長から、整備新幹線の未着工区間であります新函館―札幌間を営業主体としてJR北海道が受け入れるときには、函館本線の函館―小樽間を経営分離したい旨の意向の表明があったところでございます。

 現在は、そういった意向を受けて、関係自治体、地元で協議をいただいているという状況でございます。

○穀田委員 では、もう少し具体的に聞きたいと思います。

 今話がありましたけれども、函館本線の函館から札幌までの区間というのは、どう見たって新幹線ルートに並行して走っているというのが、在来線が走っているのが見えますよね。誰が見たってそうですよね、これ。

 この中で、では、小樽―札幌の区間というのはJR北海道から経営分離するという方向なんですね。

○津川大臣政務官 函館から小樽までが経営分離ということで意向表明されておりますから、札幌―小樽間についてはJR北海道が引き続き経営をするということが言われているところでございます。

○穀田委員 逆に言えばそういうことなわけですよね、要するに。

 私、おかしいと思うんですよね。地図を見ていただくとわかるんですけれども、函館から札幌まで、新幹線のルートはほとんど在来線と並行なんですね。これは誰が見たってわかるんですよ。なぜこの区間だけ分離しないのか。結局、この区間が黒字路線、ドル箱路線だということかと。津川政務官のお話では、函館から小樽まではというような話をしたとき、逆の方の話をしているんですね、私の方は。そこは、要するにもうかる場所だ、ドル箱路線だからということで、しないということですか。

○津川大臣政務官 これはJR北海道からの意向の表明でありますので、私どもとして説明を受けたことを御説明させていただきますが、まず、この小樽―札幌間というのは、いわゆる札幌の都市圏の輸送を担っている。列車の運行も、札幌、小樽、それから千歳空港の方面あるいは岩見沢の方面、こういった方面の札幌都市圏の運行ということを一体的に、実際に列車の運行も行っているということでございます。

 それに加えまして、JRからは、特にこの札幌圏の運行については、拠点、車両基地、これが札幌と小樽の途中にあります手稲の付近にあるということもありますので、この札幌―小樽間については引き続きJRで経営分離をしない形で営業をしていきたい、こういう説明をいただいたところであります。

○穀田委員 もしそういう説明で納得しているとしたら、要するに、都市間の運行だということが大きな理由なんでしょう。簡単に言うと津川さんの説明はそうですよね。いや、津川さんの説明というよりは、相手の説明がそうだということを津川さんは言っているわけだけれども、それで納得しているとしたら、私、ちょっとけったいな話やなと思うんですね。

 新幹線の新函館から在来線の函館区間というのは、これは地図をよく見ますと、ぐりっと回っておって、これは並行していないんですね。地図を見たらわかりますけれども、並行していないんですよ、ここだけはぐりっと回っていて。それなのに、JR北海道から経営分離すると言われている。だから、誰が見ても並行している小樽―札幌間は分離せずに、新函館―函館間は並行していないのに分離する。どう見てもおかしい。

 そもそも誰が経営分離する並行在来線だと決めるのかということについてお答えください。

○津川大臣政務官 まず、私の考え方か会社の考え方かと先ほどありましたが、先生のおっしゃる問題意識は、私も実は十分によくわかっております。

 ただ一方で、並行在来線というものの考え方でありますが、これは従来からの話でありますが、実は具体的に定義があるわけではないところであります。要するに、経営分離をすることとなるものがどういったものであるのかという考え方についてはこれまで整理をしてきたところでありますが、一つには、今先生から御指摘があったように、まさに物理的に並行している区間というものが一つあります。もしくは、JRの旅客会社が現に経営をしている鉄道区間のうちに整備新幹線が開業することで旅客輸送量が著しく低下することが見込まれる路線という、この二つのどちらかということが一つ考え方として整理をされているところであります。

 その上で、同一のJR旅客会社において整備新幹線と在来線の経営が二重投資になる在来路線、こういったものが並行在来線に該当するのではないかというふうに考えられるところでありまして、函館と新函館間というものが物理的に並行していないではないかという御指摘であります。これはJRの考え方でありますが、JRの考え方としては、在来線の特急の需要というのがこの区間の需要の中心であって、まさに札幌から函館まで走るJRの現在の在来線の需要が新しく整備をされる整備新幹線に大きくシフトをする区間、そういうふうに説明を受けたところであります。

○穀田委員 今の話を聞いて皆さんわかるように、要するにJRの言い分で決まっているということなんですな、簡単に言うと。あれやこれや言っているんだけれども、JRが著しく困るようなことがあればと。要するに、何でもJRの判断で決まるということですわな、簡単に言えば。私はやはりおかしいと思うんですね。

 今話があったけれども、つまるところ、新幹線をつくることによって影響を受ける、影響を受けるということはもうからなくなる。だから、もうかる路線については継続するけれども、もうからない路線は切り離す、簡単に言えばそういうことなんですよ、あれやこれや言うけれども。要するに、最初に物理的に並行しているとか言うけれども、次の方で言っていたように、JRがそのことで著しく打撃を受けたり損をしたりするようなことがということなんでしょう。だから、JR北海道のさじかげん一つで決められるということなんですね。私は大変身勝手な話だと思うんです。

 そもそも、新規着工の条件にこんな身勝手をさせる経営分離をなぜ入れたのかということについて簡潔にお答えいただきたい。経営分離の仕組みを入れたのはなぜか。

○津川大臣政務官 一つには、これから整備新幹線を整備していくに当たりまして、これを営業主体であるJRに同意していただく必要があります。その際に、現在経営をしている並行在来線との関係というものについて、JRで、これはまさに企業として判断をしていただく必要があるというのがまず一つであります。

 ただ、今先生の御指摘の中で幾つかございましたが、仮に赤字であれば全て切り離していいというふうに必ずしも単純に考えているものではありません。実際に、過去の整備新幹線の開通のときにも、全て経営分離をしてきたというものではないというのがまず一つ。

 それから、私どもも、そういったJRの同意と、加えて関係自治体の同意というものも当然重要であるというふうに考えております。手続上は、国土交通省として決定をした後にJRあるいは関係自治体の同意をいただいていくという作業でありますが、先ほど申し上げましたように、整備新幹線問題調整会議、あるいは国交省政務三役によります整備新幹線問題検討会議におきまして、このJRの経営分離の考え方、あるいは関係自治体の同意、関係自治体が同意をされるということは、分離をされた鉄路についての運営のあり方についても含めて国交省として判断をしてまいりたいというふうに考えておりますので、JRの身勝手によって全て決定するものではないというふうに考えております。

○穀田委員 仕掛け、仕組みの話をしているんですよ。同意があるというのは、そんなことは知っているんですよ。だけれども、仮に赤字があればなんて言っているけれども、それは当たり前ですよ。鉄道というのは全部、いろいろあって赤字もあり黒字もあり、プールでやっているわけですよ。それは要するに、黒字路線を放さないというところに特化している実態が北海道の場合あると。しかも、ほかはやはり切っていくということなんですよ。事実じゃないですか。

 そして、事は、JRにとって過重な負担かということなんですね。経営分離された路線を担わなければならなくなるのは、利用者である住民や自治体なわけですね。経営分離対象になった地元ではどういう状況か。

 函館市や小樽に近い余市町など、沿線住民の反対運動が広がっています。函館市では、経営分離の合意に反対する署名が十一万人も集まっています。時間があれば十八万、十九万集まったと町内会連合の方々も言っているほどなんですね。まさに全住民規模で集まっています。ニセコ町でも余市町でも、有権者の過半数が在来線の存続を求めています。余市の町議会では、経営分離の同意に反対する決議まで採択されていますね。

 ところが、こうした住民の声を受けて経営分離に同意しなかった余市町長などに対して、同意しなかったら札幌延伸が認められない、潰す気か、こういった北海道知事や周辺から恫喝まがいの圧力がかけられて、苦渋の選択で同意を表明しているようなありさまなんですね。だから、何かというとすぐそういう話をするけれども、実態はそうなっているんです。

 だから、私は、JRにとってまことに都合のいい、身勝手、津川さんは何かというと身勝手じゃないと言うけれども、まさに身勝手じゃないですか。住民や自治体に負担を押しつける、そういう経営分離を条件にするということはそろそろやめるべきじゃないのかということを言っている。

 大臣、その辺どうですか。

○前田国務大臣 整備新幹線の認可の条件として、五条件ですか、あって、その中の一つの重要な基本的な条件でありますから、事は北海道だけにはとどまらないと思うんですね。そういう意味では、こういう条件をつくったときの背景等も踏まえて考えると、特にJR北海道の場合には、必ずしもJR東だとかとは違う、経営的に非常に難しい面は抱えていると思います。

 加えて、サービスすべき範囲というのは非常に広く、しかも、先ほど来の議論にもありましたように、公共交通として非常に大きな役割を持っていると思うんですね。だから、そういう意味では、持続性ということを考えると、確かに余り過重な負担を強いるようなことをすると持続性という意味でいかがかなというようなこともあって、この五つの条件というのはあらゆる整備新幹線の条件になっておりますので、これは守っていただきたいと思います。

 しかし、地元のことについては、在来線をどういうふうに維持するかということについては、これはまた国としてできるだけの支援は講じていきたい、このように思っております。

○穀田委員 最後の方に言っているのは、在来線の方の援助はいろいろしますからというような話になるんだと思うんだけれども、そういう仕掛け自身がおかしいのと違うかと私は言っているんですよ。

 というのは、政権交代直後、前原大臣は、並行在来線の経営分離の前提について、現在のあり方はJRにはリスクが低い、いい話だった、覚悟をJRにも求めていかなければいけないということを二〇〇九年の十二月に言っているんですね。

 つまり、その負担が大変だと言うけれども、では、JRにとって負担が大変だというんだったら、その負担はどこに持っていくかといったら、結局それは、ずずずずっとこうやって住民と関係自治体が負担するという構図になるわけじゃないですか。そっちは大丈夫なのかということで、その仕掛け自身が私はおかしいと思うし、当時、今述べたように前原大臣もおっしゃっていて、並行在来線の経営責任を自治体だけでなくJRにも負うように求める考えを示していたじゃありませんか。

 小樽―札幌間はドル箱だから経営分離しないという、JRにとっては典型的ないい話じゃありませんか。経営分離はJRに赤字路線の切り捨てを認め、もうけを保障する優遇策でしかないと私は考えます。経営分離を前提にすることをいよいよやめるべきだと思うんです。

 私は、地域住民の足を守るのは国と自治体の責任であって、公共交通機関であるJRの社会的責任だと。先ほど私は東北の話をしましたけれども、そういう社会的責任なんだ。並行在来線の経営は、JRと自治体に加えて、国が責任を持って経営に当たる仕組みをつくるべきじゃないかと考えますが、そこはいかがですか。

○久保政府参考人 並行在来線を含めまして、地域鉄道を守っていくということは、先生からもお話があった件ではありますけれども、その維持や経営の安定化を図るということが重要な課題であるということは私どもも認識しています。

 その観点で、先生は御指摘もされていましたけれども、今年度から支援の強化をしているところでありますけれども、さらに引き続いて、住民の足を守るという観点から、並行在来線の支援については今後も適切に対処してまいりたいというふうに考えております。

○穀田委員 いつも最後に、適切に対処してまいりたいと思いますと。違うんです。私は、仕掛けが間違っておると。

 いつも前提条件なんですと言うんだけれども、そんな前提条件をいつつくったかというと、自民党の時代に政府と与党の合意でつくられた話にすぎないんですよ。ですから、そこの根本を見直すべきだと。

 当時、政権交代のときに、それらも含めておかしいんじゃないかとあなた方は言っていたじゃないか。それを見直す結果にはならなかったですよ。私は、そこが結局だめなんだと言っているわけですよね。

 だから、JRに対しても、整備新幹線の整備に関する基本方針の中で、「並行在来線の維持のあり方」という文書をつくっていましたよ、政府は。その中にも、JRについても経営分離後の並行在来線の維持のために協力と支援を求めていくということを言っているわけですから。

 そういう意味でいうと、では聞きますけれども、JRに並行在来線の経営についてどういう協力を要請して、JRはどういう協力をすることになっているんですか。

○久保政府参考人 並行在来線に対しての支援のスキームとしては、例えば、経営分離後の安定的な経営のために、要員の派遣をしてもらうとか運行面での協力をするとか、これは過去において整備新幹線に伴う並行在来線について第三セクターに対しての支援を行ってきておりまして、そのことに対して、私どもとしてもJRに対して指導をしてきたところであり、今後ともそのようにしたいと思っております。

○穀田委員 だから、JRがどういう協力をするのかというのは非常に話が小さいんですよ。金の話というのは国が支援するという話が出るんだけれども、JRにどうさせるんだという話になると、話が物すごく曖昧で小さくなるという、これは皆さん聞いていておわかりいただけると思うんですね。ここが問題だと言っているんですよ。

 最後に、私は、ほんまに今、整備新幹線の着工自身を急いでやらなければならないかという疑問を呈しておきたいと思うんですね。

 社説では、「着工ありきでなく十分検証を」、これは読売です。「人からコンクリートへ」「新規着工の無責任さ」、これは毎日で、「優先度が高い公共事業か」、こういう批判的論調が出ています。「厳しい財政状況下で消費税を増税しようというときに大型公共事業を始めるというのでは説得力を欠く。」これは南日本新聞です。九十八の空港、格安航空会社の就航など「既存の交通インフラの活用策と合わせて考える必要もある」「今後、老朽化したインフラの維持・更新費が増えるのは避けられないだろう。それだけに新規に着手する事業は徹底的に絞り込む必要がある。」これは日経なんですね。

 ですから、大体、未着工区間というのは、先ほど言いましたけれども、〇八年の十二月に麻生内閣のときの政府・与党合意で決めたわけですね。当時、これに対して、政権交代で前原さんは、全くの白紙、自公政権の政府・与党合意にとらわれず整備新幹線のあり方を決めていきたい、ここまで表明しているんですね。ですから、要するに、あのとき約束したことは百八十度変えたということなんですよね。だから、私はそこを問題にしています。

 ですから、既にこの間、大臣と予算委員会で、新規の問題についてもさまざま議論をいたしました。私は、この三区間の新規着工を認可するというのは、三兆百億円の大型開発事業を復活させることだと。したがって、費用対効果も乏しく、既存の交通インフラとの調整をどうするかなど曖昧なままやるやり方については、急ぐべきでないということについて最後に申し上げて、終わります。